東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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どうもー龍狐でぇす。

 最近のコロナのせいで、バイト辞めなきゃならなくなったよー。
 コロナ、ユ゛ル゛セ゛ヌ゛!!



――――では、どうぞ。


30 アイザック・ニュートン

―――ゲンムの脳が、止まる。

 一瞬の出来事だった。可能性の片隅でしかなかった出来事が、現実になったから。

 闇の斬撃がゲンムを襲い、たじろいだ。

 

 

『な―――ッ!?』

 

 

 攻撃を受けたゲンムは後ずさり、ウラノスから手を離してしまった。

 そしてそれが、ウラノスにチャンスを与えてしまった。

 

 

「はは!そう、それでいいんだ!ルーミア、私が逃げる時間を稼げ!」

 

「―――――」

 

 

 ルーミアは無言のまま、闇の剣をゲンムに向ける。

 その現実を見たゲンムは、困惑した。

 どうしてルーミアが……裏切ったか?――――いや、違う。ルーミアは裏切ってなんかいない。操られているだけだ。

 

 なぜなら、彼女の目も、また兵士たちと同じように虚ろな目をしていたからだ。

 それに、先ほどのウラノスの妄言。あれは『命令』だった。

 ウラノスの能力、『指揮をする能力』。これさえ使えば彼女を操ることは可能なはずだ。

 だが、この能力の効果範囲を完全に失念していた。

 

 ゲンム(零夜)はこの能力が効く対象は自身の配下だけだと思っていた。

 だけど、完全に違っていた。ウラノスのこの能力は、すべての者に対して使用可能なのだ。

 事実、目の前で操られているルーミアが、それを確証づけていた。

 

 

『クソッ!あいつは何をしている!?』

 

 

 ルーミアには『ニュートンゴースト』をつけていたはずだ。

 彼女が今まで隠れていたところを見るも、ニュートンゴーストはいなかった。

 

 

『どこいったアイツ!クソがッ!』

 

 

 ゲンムはアームを伸ばしてそれをグルグル巻きにしてルーミアを捕縛する。

 ルーミアは抵抗しているが、それでもゲンムの強靭な拘束を解くことはできなかった。

 ルーミアは無力化した。だが、肝心のウラノスが―――。

 

 

『クソッ!逃げられた!』

 

 

 すでにどこにもいなかった。

 その場に残っているのはゲンム、操られたルーミア、取り残された未だに倒れ伏している兵士たち、そしてウラノスの鎧のみだった。

 

 

『―――あいつは取り逃がしたらヤバい。今からでも追わねぇと――がッ!?』

 

 

 そんなときだった。

 突如、ゲンム(零夜)を襲った謎の倦怠感。ゲンムの体は光輝き、元の人の身―――零夜へと姿をもとに戻したのだ。

 

 

「な、なに、が…!」

 

 

 零夜の困惑とともに、とあるものが『ガラッ』『カチャン』と言う擬音とともに地面に落ちる。

 音からして、二つ落ちた。零夜がそれの正体を見ると、目を見開いた。

 

―――その正体は、ボロボロになった『ゲーマドライバー』と、無傷の『ゴッドマキシマムマイティXガシャット』だった。

 

 やられた。

 あのときだ。ウラノスに操られたルーミアが、始めに攻撃したあの一閃。

 あの一閃が、ゲーマドライバーを破壊したのだ。いくら最強クラスのライダーに変身したとはいえ、ベルトを破壊されればただでは済まない。

 それに、ベルトを破壊したのが『ルーミア』だと言うのも、また原因の一つだった。

 ライダーのベルトはそんじょそこらの衝撃などでは破損しない。だが、時空間に介入できる闇の力ならば、破壊は可能だった。

 

 ガシャットが無事だった理由は、ドライバーの傷が中心につけられていたのが物語っている。

 偶然にもガシャットには攻撃が届いていなかった。

 だが、もし届いていたとしてもこのガシャットだけは破壊されることはなかっただろう。なぜなら、神の力のがシャットなのだから。

 

 唖然としている零夜だったが、すぐ現実に戻される。

 

 

「しまった!ルーミアが…!!」

 

 

 今だにウラノスに操られているであろうルーミア。

 アームで拘束していたのに、急な強制解除のせいで拘束が解けてしまったはずだ。

 まずい、このままでは攻撃を喰らう羽目になる。

 急いで警戒態勢を取るが―――その時、零夜の目や口からから大量の血が放出される。

 

 

「ゴプッ―――!?ガホッ!!?」

 

 

―――来てしまった、反動が。こんな時に。

 体の内部が寒い。体の表面が温かい。零夜の体から急速に血液が失われていく。

 その血液ですら、猛毒のように錯覚(かん)じる。

 

 この現象は、前にも一回あった。ゲレルとの闘いの時に『ライジングアルティメット』に変身した時と同様の症状だった。

 この症状は、強力なライダーの力を使った反動だ。

 レベルビリオンの基本能力値の操作などの体の酷使、強力な能力な上での反動。その全てが、今零夜に襲い掛かっていた。こんな、最悪な状況で。

 

 

「ア゛、ガ…!」

 

 薄れゆく意識の中、零夜が目にしたのは地面に膝をついたままそのまま動かないルーミアだ。

 急な拘束解除により、体がまだ混乱しているのかもしれない。

 それでも、状況が整理されてしまったら、彼女の手にある闇の剣は、自分に振りかざされる。それだけはなんとしなくても阻止しなくては――。

 

 

「(クソ…ッ逃げすワケには…だが…!これは、流石、に…)」

 

 

―――そんな信念をもってしても、人の身である以上、体調不良には勝つことができず―――気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

「あ…が…」

 

 

―――暖かい。

 零夜が目覚め、まず始めに思ったことはソレだった。

 体が動かない。意識が朦朧とする。目がかすむ。声が枯れている。耳に雑音のようなものが入ってくる。―――体が異常をおこしている。血を流し過ぎたのだ。

 

 人の身で言えば、血とはロボットで言うオイルや電池。ロボットがそう言った動力源がないと何もできないように、人間もまた血がなければなにもできないのだ。

 

 

「おや、起きたのかい?」

 

 

 突如、聞こえた誰かの声。

 その声は今の零夜には男性なのか女性なのか判別することは、今の零夜には不可能であった。かろうじて、目に映る景色から、情報を読み取ろうとする。

 ぼやける景色の中、そこにはいた。絶世の美女の顔が。

 

 

「―――大丈夫かい?」

 

「――――ッ!」

 

 

 時間が経つにつれ意識が回復してくる。視力も回復し、聴力もある程度問題なくなった。

 それでも、まだ体は動かず声もまだだ。体が五感などの回復を優先した結果かもしれない。

 だからこそ、分かった。今の声は、目の前の彼女―――ルーミアが発している声だ。

 

―――彼女の声に違和感はない。いつも通りの美声だ。だが、口調が可笑しい。明かにいつもの彼女とは食い違っている部分だ。

 それに、なにやら雰囲気が違う。それだけではない。彼女の()()()だ。いつもの彼女の瞳は燃え盛るような深紅の瞳。だが、今の彼女の『蒼蒼(そうそう)』とした瞳を見て、ルーミアではないと言う判断材料にしたしたのだ。。

 目の前のルーミア?に零夜は警戒を強めた―――が、それも一瞬にして終わる。

 

 なぜなら、今の零夜の体制は横になる、頭が体より少し浮いて、ルーミアの顔が目の前にある状態―――俗に言う、膝枕をされていたからだ。

 

 

「――――ッ!?」

 

「驚くのは無理もないだろうが、とりあえず落ち着いてくれ」

 

「な、んだ…お前、は?」

 

「あ、声は出せるようになったのかい?よかったよ」

 

 

 今目の前にいるのは、間違いなくルーミアだ。でも、ルーミアじゃない。

 そんな矛盾、支離滅裂な条件が揃った現状に、血を大量に失った零夜は―――考えることをやめ、擦れた声で、率直に言葉を発した。

 

 

「お、前、は、だれ、だ…!」

 

「喋らないでくれ。君の喉が大変なことになる。―――まぁでも、まずは名を名乗ろう」

 

 

 ルーミアの姿をした謎の人物は、ルーミアの姿のまま、ルーミアの声のまま、自分の名を名乗った。

 

 

「―――私の名は、アイザック・ニュートンだ」

 

 

 目の前の人物―――ルーミア、ではなく、―――【アイザック・ニュートン】は、ルーミアの顔でにっこりと零夜に笑みを向けた。

 

 

「――――ッ!?」

 

 

 目の前の人物―――ルーミアの姿をした別人が、【アイザック・ニュートン】と名乗ったのだ。

 

―――アイザック・ニュートン。

 イングランドと言う国の生まれで、自然哲学者、数学者、天文学者、物理学者、科学者などで知られ、『万有引力の法則』を発見したことで有名な偉人だ。

 

 すでに死んでいる偉人の名を名乗るなど、本来なら嘘であることがバレバレだが、今回の場合信憑性が増し増しだった。

 理由としては、消えたニュートンゴーストがルーミアの体に憑りついたと言うのなら、いなかった理由にも説明がつく。

 ルーミアの体に憑いていたのなら、いなかった理由は分かるが、憑いていた理由は―――。

 

 

「―――突然のことで驚いているだろうね。大方、どうして私が彼女の体を使っているのかについてだろうけど」

 

 

 零夜の意図を予知し、ルーミア―――ニュートンがゆっくりと語り始める。

 

 

「あの男―――ウラノスの能力を内側から解けないかと思ってね」

 

 

 ウラノスの能力、『指揮をする能力』。この能力が味方だけではなく敵にすら作用すると分かった今、ある意味警戒するべき能力だ。

 『天を操る能力』は物理的に厄介だが、『指揮をする能力』は精神的に厄介だ。

 『指揮をする能力』は精神に直接作用するから、自力で解くにはそれ相応の自我や耐性が必要だっただろう。自我ならルーミアはかなり強い方だが、ウラノスとの闘いで精神が極度に摩耗していたために、耐えることができなかったのだろう。

 だからこそ、ニュートンはルーミアの体に入り内側から能力を解けないか画策したのだろう。

 

 

「―――そして、それがこの結果さ。私は彼女の主導権を得た。……ただ、その代わり彼女の精神が眠りについてしまったけど」

 

「そ、れは…?」

 

「何故、と言いたいのかい?それはね、単純に彼女の精神が摩耗――つまり疲れが原因だ」

 

 

 ニュートンの話によると、ルーミアはウラノスとの闘いで心身ともに摩耗し、極度の疲労状態にあったらしい。 零夜が来たことによって、体を休めることができたが、その時にウラノスの『能力』でルーミアは操られた。そのため疲労が嵩張り、睡眠状態に陥っているのだそうだ。

 

 

「憑りついたとき、彼女の『意識』は心の奥底にあった。それほど心身ともに摩耗していたんだろう」

 

「―――――」

 

「とにかく、彼女は無事だ。安心したまえ」

 

 

 零夜はそれを聞いて安心する。

 捕虜だと言うのに死なれでもしてしまったら、捕虜としての意味もないし、そもそも死なせてしまったら面目がたたない。

 これで、懸念していた結果は回避した。と、なると次の疑問が出てくる。

 

 

「どう、やって…ウラノス、の、能力を、解除、した?」

 

 

 一番の疑問、ウラノスの『指揮をする能力』の解除方法。

 精神を完全に支配されていたルーミアの心と体を、どうやって解い(救っ)たのか。

 それさえ分かれば、『指揮をする能力』への対抗策を作れるはず―――。

 

 

「残念ながら、そこは力になれそうにない。急に能力が解除されたからね」

 

「な、んで…だ?」

 

「―――可能性としては、ウラノスが命令したのは『逃げる時間の確保』だ。それを完遂できたために、能力が発動しなくなったのかもしれない」

 

 

 ニュートンの憶測に、零夜もそれが正しいのではないかと思う。

 ウラノスの命令は『逃げる時間の確保』。それが完遂されたなら能力が解除されてもおかしくない。能力が解除されたならばニュートンがルーミアの体の主導権を『指揮をする能力』から楽に取り返したのも納得がいく。

 

 

「ク、ソ…!」

 

「悔しいのは分かるが、まずは安静にしてくれ」

 

 

 零夜はすぐにでも暴れたいほどの衝動に駆られるが、今の場合ニュートンの方が正しいし、なにより体を動かしたら体がもたない。

 零夜は心に宿る激情を無理やり抑え込む。

 

 

「―――でも、ウラノスを逃がしたのは痛かったね。…このままだと、まずい」

 

 

 ニュートンが危惧していること、それは『情報漏洩』だ。

 襲撃のことはシロが派手にやらかしたために月全土に知れ渡っているが、その能力などは一切謎。

 しかも、零夜はヘプタ・プラネーテスの四人と綿月豊姫を殺している。ここは月だ。情報の共有がおろそかなワケがない。おそらくこれも知れ渡っているだろう。

 そんな存在の能力の一部を持って帰られてしまったら、こちらが不利になる。無論あれは零夜の能力の一部でしかないのだが、それでも情報を持って帰られたのは痛い。

 

 ヘプタ・プラネーテスのようなイレギュラーがいるだけではなく、この月にも『仮面ライダー』の存在があることを知ったのだ。

 相手のライダーの能力がどんなものかわからない以上、また強力な力で対応するしかない。

 だが、それらのライダーの力を使うとなると、今の状態を繰り返すことになる。

 

―――零夜の能力と、ライダーの力は無関係だ。

 故に、ライダーに変身する際のデメリットなどを消すことなどは出来ない。

 例を挙げると、ゲレルと戦った際にクウガアルティメットになって、その後体への大ダメージをもらった。完全な強力な力を使った故の代償だった。

 

 つまりは、強力なライダーの力を使うたび、零夜はこの状態を何度も繰り返すことになるのだ。

 

 

「―――零夜くん。今の君はすぐにでも本拠地に突撃したいだろう。だが、今は駄目だ。体を休めないと」

 

「――――」

 

「納得がいかない、と言うような顔をしているが、君も内心分かっているはずだ。大丈夫、仲間は私たちだけではないだろう?」

 

 

 ニュートンの言う仲間とは、シロのことだ。

 確かにシロの力なら大抵の敵でも相手にならないだろう。

 いつものヘラヘラした態度からは想像もつかないような圧倒的な強さ。零夜ですらその力の真骨頂を知らないが、それでも強さだけは一級だった。

 それゆえに、シロなら力に関しては信用できるのだ。

 

 

「――――」

 

「納得できた、と言う顔だね。ならよかった」

 

 

 今の彼は何をしているんだろう。

 大方、敵を虐殺しているビジョンしか想像できないが、今も彼は戦っているだろう。

 

 

「零夜君」

 

「――――?」

 

「せっかくだから、そのまま聞いてくれ。これは、ウラノスへの突破口となる話だ」

 

 

 ニュートンの言葉を聞いたその瞬間、零夜の表情が強張る。

 あのウラノスへの対抗策?ぜひとも聞きたい。あの圧倒的な攻撃力と防御力。そして、仲間すら操るあの男への突破口となる話。聞く以外に選択肢はない。

 レベルビリオンですらウラノスのダメージを与えることはできなかった。だが、ゴーストたちはダメージを与えられた。

 ウラノスの能力の仕組みさえ分かれば、それが突破口となる。そして、それがニュートンの口から語られようとしていた。

 

 

「おそらくこれは、私でなければ分からなかっただろう。だから、他の皆も私を残してくれたんだ」

 

「――――」

 

 

 ルーミアを助けた際の状況を思い出す。

 確かにあの場にはニュートンゴーストしかいなかった。

 春雪異変の時、博麗の巫女たちを足止めするために召喚したゴーストたち。あの時は『レイラ』や『シロ』と言ったイレギュラーな存在が出てきたために、ゴースト達のことを零夜はすっかり忘れていた。

 そのままゴースト達はルーミアの手に渡り、彼女とともに戦っていたのだろう。

 

 

「他の皆の犠牲――とは言い難いね。皆はもう私を含め既に死んでいる。眠っていると表現した方がいいだろう。彼らが残してくれたこの数少ない情報から、私はウラノスの突破口を見つけた」

 

「―――――」

 

「それでは、語ろう。彼への突破口を―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

「はぁ…!はぁ…!」

 

 

 一人、月面を全速力で駆け抜ける男の姿があった。

 その体はとても痛々しく、片腕はほぼ潰れていると言ってもよく、胴体には複数の斬り傷が存在しており、肉が、骨が、血が露出していた。

 そんな状態だと言うのに、彼はそんな痛みも知らないと言わんばかりに月を走っていた。

 

 

「あと、もう少し―――!あと、もう少しで―――!!」

 

 

 息を切らしながら出た枯れた声は、恐怖…否、怒りで埋め尽くされていた。

 若干の恐怖も交じっているだろう。だが、そんな恐怖よりも怒りの方が勝っていた。

 まさか、あんな存在がいるなんて思いもしなかった。強者であり、支配者である自分が、あんなに蹂躙されるなどあってはならないことだ。そう何度も自分に言い聞かせながら彼―――ウラノス・カエルムは走った。

 

 

「クソ、クソ、クソがッ!この私を―――俺を超えるなんて、あってはならねぇんだよ!!」

 

 

 先ほどの彼とは打って変わり、一人称が変化し、言葉もさらに荒くなった。

 上品で丁寧だった最初の口調はどこへやら。彼は豹変―――いや、これが彼の本性なのだろう。

 ウラノス・カエルムと言う、醜い醜い男の本性。

 

 

絶対(ぜってぇ)許さねぇ…!あの男も!あの女も!」

 

 

 どうしようもない怒りを、二人(零夜とルーミア)にぶつける。

 彼の怒りの矛先はある意味正しい。あの二人(三人)が月を襲撃してきたことで、自身は前線に出て、こんな醜態をさらす羽目になった。

 ―――そこで、ウラノスはもう一つの失態に気付く。

 

 

「あックソッ!あのゴミ共の掃除を忘れていた!俺の失態を知られるワケには―――!!」

 

 

 ウラノスの言うゴミとは、自分の兵士たちである。

 あれらが生きて帰ったら、自分が尻尾をまいて逃げたことが都中に広がるかもしれない。それだけはなんとしなくても阻止しなくては―――。

 ウラノスの心に焦りが生じると同時に、安寧も生まれた。そうだ、あいつ(ゲンム)が殺しているはずだ、と。敵対者に容赦がないあいつらなら、きっと一人も残さず殺してくれるはずだ、と。

 死ぬほど恨んだ相手に、かすかな希望を託す、そんな矛盾しまくっているウラノスの考えは、歪んでいるの一言だ。

 

 

「だが、それとこれとは別の話!―――そうだ、あの男は随分とあの(アマ)のことを大事にしているな。あの女をあの男の目の前で犯してやる!クックっ、ヤツの絶望する姿が目に浮かぶ―――!」

 

 

 届きもしない理想を語り、ウラノスはご満悦だ。

 一度大敗している癖に、一体何を言っているのだと言いたくなる。

 

 そんなことを考えながら、目前と見えてくる、都。

 都は半透明の膜のようなもので囲まれており、守備は万全だった。

 あの膜は、都の防御の役目を果たすと同時に、穢れを排除すると言う役割を持っている。完璧な守備を保有していた。

 

 

「とりあえず、あいつらに見つからないようにしなければ…」

 

 

 見張りの兵士にこんあ無様な姿を見られたら、それこそ笑いものだ。

 ウラノスは都とは少し離れた物陰に移動する。

 

 

「確か、ここら辺に―――」

 

 

 そう、言いかけた瞬間だった。

 ウラノスの見ていた景色が、地面に落ちた。

 

 

「な゛…ッ!?」

 

 

 突如ウラノスを襲った、腹部からの痛み。

 痛い、痛い、痛い。血が零れている感覚がする。寒い微粒な風が肉と骨に直撃し、さらに痛みを促す。

 そしてなにより――――下半身の感覚がない。

 

 

「え…ッなッ!?は?えッ!?」

 

 

 困惑と恐怖がウラノスを襲った。

 ウラノスは腕で体を動かし、自らの後ろを見た。

―――そこには、ウラノスの下半身が血を拭きながら前に倒れていた。

 

 

「ひぎゃぁああああああああ!!!!」

 

 

 下半身を見て。ようやく状況を理解した。

 自分の上半身と下半身が、裂かれたのだ。

 ウラノスの頭が、ついに恐怖と困惑によってオーバーヒートした。

 

 

「な、なんで!?い、一体誰だ!!?」

 

 

 ウラノスの防御は、レベルビリオンですら貫けなかった。

 ならば、ゴーストたちかと、ウラノスは周りを見渡すがそこには誰もいない。

 なら、一体誰g―――。

 

 

『うるさいなぁ。そんなにわめかないでよ』

 

 

 声が、聞こえた。その声は、まるで子供のような幼い声。

 ウラノスはその声が聞こえた方角を見た。そこは、上空だった。

 この声の持ち主が、上空からウラノスに語り掛ける。

 

 

「お、お前は―――!」

 

『あ、まだ喋れるんだ。すごいなぁ。僕なら卒倒しちゃうよ』

 

「な、なんでこんなことを…!()()()が、黙っていないぞ!」

 

『なんでって、その『お父さん』から、君を殺せって言われたんだよ?』

 

「な、なんだと!?そ、それはどういうことだ!?」

 

 

 その人物の言う、『お父さん』からウラノスの殺害命令が出されていた。

 それを聞いた瞬間、ウラノスが顔面蒼白になる。

 

 

「ど、どうして…!?」

 

『そんなの僕だって知らないよ。ただ、一つ分かってることは、もう君はいらないってさ』

 

「な――――――ッ!!!??」

 

 

 『お父さん』からの伝言――切り捨て宣言に、ウラノスは絶句する。

 自分はもういらない?ふざけるな。俺はまだ生きていなくてはならない―――!

 

 

「ふ、ふざけるのもいい加減にしろ!俺はまだ、生きるべきで―――!」

 

『それを決めるのは『お父さん』であって、君じゃないよ?さて、もういいや。死になよ』

 

 

 その時、ウラノスの首に鉄線―――鎖のようなものが巻かれる。

 それがだんだんと締まっていき、ウラノスの首を圧迫し―――。

 

 ブシュッ。

 

 ウラノスの首と胴体が、()かれた。

 ウラノスだったものの胴体が、自らの血で汚れる。

 

 それを見届けた謎の人物は、一言。

 

 

『お仕事終わり~っと。えへへ、『お父さん』に褒めてもらえるかな?『お母さん』にも、帰ってきたら褒めてもらおうっと』

 

 

 

 まるでその声に似あった、幼子のように、陽気に仮面越しでほほ笑んだ。

 

 





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