東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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 受験シーズンの三月と言うのも相まって時間がすごくできたこの頃。
 滅茶苦茶書きます。


龍狐「サプリメント、飲まなきゃ」

零夜「目はちゃんと休めろ」





39 『地』の零番

「――――――」

 

 

―――時間は遡り、薬物開発室。

 そこに存在する生命は、たったの一つだけだった。

 

 

「―――これ、か」

 

 

 たった一つの生命、白装束の男―――シロは、目の前にある緑色の神々しいオーラを放つ巨木を見ていた。

 室内にあるには、とてもじゃないが大きすぎる巨木。そんなものが、わざわざ室内にあるのだから、それは必ず意味があるはずだ。

 シロは巨木に触れ、精神を集中させる。

 

 

「確かに、感じる。――――」

 

 

 シロは、先ほどまで生きていた男の話を思い出す。

 

 

『あの木、には……特別な『実』が成る。その『実』から、回復薬などを、造っている…!』

 

『その『実』の、本当の効果は、精神的作用を促すもの、だ…。それを、肉体的なものに変換する技術を、確立し、て…』

 

『その技術、は……デンドロン様が、一任、している…!私は、ここではナンバー2だから…これくらいしか知らない!これで、私が知っていることはすべてだ!だから、助けゴブッ!』

 

 

 男からは、ある程度の情報は接種できた。

 だからこそ、もう生かす価値はないと判断した。生かしたら、余計な波紋を生じかねないからだ。

 

 

「確かに、これなら回復薬の材料になり得る…。―――だが、同じなのは()()だけか…」

 

 

 情報を得たシロは、満足するどころか、逆に落ち込んでいた。

 

 

「まぁいい。こいつは――」

 

 

 シロが巨木に、掌を向けた。その拳を握ろうと力を入れると同時に、白いオーラがシロの掌を包んだ。

 それと連動するように、巨木が徐々に押しつぶされていく。

 

 やがて完全に拳を握ると、巨木が球体となり、重力に従い落下すると同時に神聖な輝きは失われた。

 

 

「処分に限る。これで、薬は造られることはないはずだ。―――にしても、本当に不愉快だ」

 

 

 シロは言葉に義憤を混ぜてそう言い放った。

 彼にとって、この薬がここで造られていることが、不愉快以外の何物でもないようだ。

 

 

「そう言えば、デンドロンって奴だけ、『能力』が不確かだったな……」

 

 

 シロの『権能』で零夜経由で入手した情報だ。

 死んだ奴の能力などどうでもよかったが、今は違う。よくよく考えれば、なんで死ぬかもしれない最前線で、自分の力を発揮しなかったのか。今になって、疑問が尽きない。

 

 

「なんで死ぬ間際でさえも、『能力』を使わなかったのか……分からん。」

 

「デンドロンの『能力』。あいつの『能力』で、この『神の木』を育てていたのは、確かかな」

 

 

 男の話を信じるならば、『神の木』に関してはデンドロンが一任していたとみて間違いない。そして、『神の木』などと言う大層な名前がついているだけ、育てるのは困難を極めるはずだ。それを可能とするのが、デンドロンの『能力』。

 

 

「まさか、デンドロンは〈非戦闘員〉……?」

 

 

 ありえない。―――いや、あり得るかもしれない。

 『火』『水』『海』が積極的に攻める中、『木』だけが遠距離攻撃―――つまりは消極的な攻撃方法だった。それに、矢を射るとき、必ず三人が隙を作ってから射貫いていた。

 つまりは、デンドロンは素人に毛が生えた程度の実力だった……?そう考えることもできる。だが、これも予測の一つでしかない。

 

 

「ヘプタ・プラネーテス……僕にとっては雑魚でしかないけど、他からしたら十分脅威なのに…そんな連中の中に、雑魚を放り込むか?」

 

 

 一般人からすれば、十分脅威になりえるヘプタ・プラネーテス。そんな猛獣の檻の中に、小動物を入れるのと同じようなことを、するとは思えない。とてもじゃないが、利益を考える人間の考えることではない。

 

 

「だけど、デンドロンが目立った行動をしてなかったのも事実……。せいぜい、零夜の行動を睡眠効果で妨害しただけ…。とても力があるとは思えないんだよなぁ…」

 

 

 その睡眠を促す薬が、一体何なのかは、今だに不明だ。

 だが、所詮は睡眠。自分には効かないと自らを納得させ、シロは様々な機材に目を向ける。

 

 

「いくら、造るための過程などが違かろうが、本質は同じ。そんなものが他の奴に造られてるなんて、許せるものか。著作権守れやバカ野郎ども」

 

 

 手に剣を召喚し、機材へと振るった。剣から生み出された白き一閃が、大量の機材を凪った。

 倒壊した機材が、また機材へと連鎖し、やがて全壊の予兆を生み出した。

 

 

「これは、残してなるものか。圭太への侮辱は、『僕』が―――『俺』が、許さない」

 

 

 ゆっくりと歩みを進め、シロはこの部屋から消えていき、この時代の、月の『薬物開発』は、終わりを告げた。

 

 部屋を出たシロは、フードを深々と被り直した。

 

 

「―――――――」

 

「見つけたぞ!」

 

「穢れた地上人め!覚悟しろ!」

 

「死して償え!」

 

 

 案外、あっさりと警備兵に見つかった。

 レーザー銃を構え、脅迫をする兵士たち。

 

 

「―――僕はさ、今とっても機嫌が悪いんだ。だから、八つ当たりさせろ」

 

 

 シロの体が、灼熱の劫火に包まれる。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「この場所ごと、てめぇら燃え尽きろォォオオオ!!!」

 

 

 劫火はドーム状に広がっていき、人の肉を、骨を、血を、焼き焦がすのに、1秒もかからなかった。

 

 シロは破壊をし続けた。あとから来る仲間のことなど考えずに、ただ、怒りのままに。理性など焼ききって、ただただ、破壊するだけのマシーンとなり果てて。

 

 シロが通った場所は、何も、残らなかった。

 

 破壊をし続けること、何分、何十分かかったかも分からない、そんな時間。

 シロは目の前にある、大きな扉を見た。

 

 

「ここかぁ…!?臘月は!!」

 

 

 手の形を獣の形にし、両手を振りかざす。

 すると、扉は専用の刃物で切った豆腐のように、粉々になった。

 

 扉を強引に開き、その奥に広がっていたのは――――。

 

 

「―――花、畑……?」

 

 

 シロの視界に広がる、一面の花畑。

 理性を崩していた怒りすら忘れるほどの、美しい花畑。その花畑にはスミレ、アジサイ、アサガオ、パンジーなど、季節に関係なく、様々な種類の花が咲いていた。

 

 

「この花畑は…!いや、そんなはずがない!この花畑はあいつにしか作れない、特別なフィールドのはず…!」

 

 

 花畑を見た瞬間、シロに『焦り』の感情が芽生えた。

 普段冷静なシロのこんな状態を見たら、零夜はさぞ驚くだろう。

 

 

「そうだ……。ここは月だ。他の花を咲かせることなんて、実現出来ていても、おかしくはない…」

 

 

 焦っていたからこそ、忘れていた。

 この月は、『穢れ』の源である『自然』を忌み嫌っていることを。だから、『自然』の一部である『花』をわざわざ育てるわけがない。

 

 花吹雪が、舞う。

 花びらが舞い、シロの視界を一瞬覆った。そして、晴れると同時に、シロの目の前に一人の青年が現れた。

 

 白髪の、ボロボロの服言えない布切れを纏っている青年だ。

 青年が、シロの方向を振り向く。

 

 そのハイライトのない、黒く淀んだ黒真珠のような瞳が、シロを見据えた。

 

 

「――――圭、太……?」

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 シロは、絶句した。目の前の存在に。

 

 

「『圭太』…、何故、ここに…?お前は、すでに…」

 

「―――――」

 

「おい、なにか、言えよ。―――「『俺』だよ、『俺』!」

 

 

 シロの、声質が変わる。独特な男性の声だ。

 シロの態度から、目の前にいる青年は、シロの知り合いなのだろうか。それじゃなければ、こんな態度も取らないし、わざわざ声を変える必要もない。

 そして、知り合いと言うならば、声も元に戻すはず。つまり、これがシロの本当の、声。

 

 

「何か言えよ圭太!なんなんだよその髪!?お前の髪は、そんなんじゃなかっただろ!?お前の髪は、『俺』と同じ『黒』だったはずだろ!?」

 

 

 シロのフードの隙間から、純白の白髪が見える。彼の今の髪の色は、間違いなく『白』だ。

 シロの言う、黒髪は間違っている。だが、一つ、黒髪が白髪になるとすれば―――。

 

 

「そうか……。お前も……。なぁ『圭太』、お前に、なにがあった!?なぁ教えてくれよ、圭―――」

 

 

 瞬間、『圭太』の姿が掻き消える。

 それを目にしたシロは、腕を前に出し、あるものを掴んだ。

 

 

「――――」

 

「『圭太』…!?どうして攻撃する!?」

 

 

 それは『圭太』の腕だった。

 『圭太』はあの一瞬でシロに近づき、攻撃を仕掛けようとした。しかも『圭太』の両腕には二対の(いかづち)の短剣が握られていた。

 

 

「―――――」

 

「だんまりかよ!クソッ!」

 

 

 シロが悪態をつくと同時に、『圭太』はシロの拘束から外れ、雷の短剣を振り下ろす。

 いつの間にかシロが手にしていた―――二対のゴム製の短剣が、それを防いでいた。

 

 

「『俺』は武器ならなんだって創れる…!それに、お前の主な攻撃手段はそれしかねぇ。ならば、ゴム製の武器が、それに対抗できる手段!」

 

 

 ゴムは絶縁体だ。絶縁体は、電気を通さない。つまり、雷で形成された武器の、弱点でもある。

 雷の短剣を弾き、短剣を振るった。『圭太』が後退するが、『圭太』は自身の頬から血が垂れていることに気がつく。

 

 

「ゴムだからって、なめんじゃねぇぞ。―――にしても」

 

 

 突如、『圭太』の傷から緑色の光が発生し、徐々に傷を治していっている。

 やがて、傷が完治した。

 

 

「お前のその『権能』、面倒臭いったらありゃしないんだよ……なッ!」

 

 

 今度は、二人の姿が掻き消える。同時に、横方向に 暴風が吹き荒れる。それがカマイタチの刃ようになり、花を一直線に狩っていった。

 

 

――バチ、バチバチバチ!!

 

――ドンドン、ゴォン!!

 

 

 短剣を扱う闘いで、本来鳴らないはずの音が鳴り響く。

 その独特な戦闘音は、誰にも聞かれることなく、ただまっすぐ横に通り過ぎていく。

 

 まっすぐ、まっすぐに、ひたすらまっすぐに突き進み、二人は壁に激突した。

 その壁の奥は、空間だった。

 

――――一言で言えば、それは、部屋。

 

 

「ここは、記憶で見た、臘月の部屋…!って、ことは!」

 

 

 シロは壁に手をかざすと、シロの手から衝撃波が発生する。

 その勢いで、壁が崩れ―――階段が現れる。

 

 

「こっちだ、追ってこい、『圭太』!」

 

「――――」

 

 

 シロが、階段を使わずに飛び降りた。

 『圭太』はシロの挑発に乗ったのか、乗ってないのか分からない表情で同じく飛び降りた。

 

 飛び降りた『圭太』の視界に広がったのは、一寸先の闇。

 何も見えない、ただの闇。シロは、この先に逃げたはず。だが、彼は動かなかった。『圭太』は目を閉じ、集中した。

 その時間が10~20秒ほどだろうか、経ったあと、『圭太』は目を開けると同時に、走った。

 

 『圭太』がシロを追っていると、突如『圭太』の目の前が、白く光った。

 強大な光量に、思わず『圭太』は目をつむった。だが、次の瞬間無理やり目を見開いた。この光は明かりではない、攻撃であることを悟ったからだ。

 

 

「これで、目ェ覚ませ!『圭太』ァアアアアアア!!」

 

「―――――ッ!」

 

 

 『圭太』は、反射的に、一つの『槍』を取り出した。

 槍を突き出すと同時に、爆発的に速度が上昇する。

 『圭太』と槍を、竜巻が、激流が、電撃が纏わりつき、それが円錐状になって、光と直撃した。

 

 

――――地下が、割れる。

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 あの攻撃で、シロはダメージを負ったのだ。それが、白い服にこびり付く、血が証明している。

 『圭太』は、元々服がボロだったため、目立った外傷はない。シロがダメージを負った攻撃だ。『圭太』もダメージを受けていないはずがないが、この様子だとすぐに回復しているようだ。

 

 そして、現在に至る。

 

 

 

『―――『地』の、零番?』

 

 

 臘月は、確かにそう答えた。

 まだ、いたのか?ヘプタ・プラネーテスが。もうヘプタ・プラネーテスは出し切って、全滅したかに思えた。

 だが、まだ残っていた。【零番】と言う、【圭太】と言う、男が。

 

 

「零番…?なんだその名前は!」

 

 

 シロは、自身が『圭太』と呼んでいる人物が、『零番』と呼ばれていることに、腹を立てていた。確かに、零番と言うのはとても名前とは思えない。

 

―――『名前』と言うより、そのままの意味で『番号』だ。

 

 

「俺が付けた名だ。似合ってるだろ?」

 

「どこがだ…!そんなの、『名前』じゃねぇ!ただの『番号』だ!」

 

「おいおい、人が付けた名を『番号』呼ばわり…。酷いと思わねぇのか?」

 

「それはてめぇだ!」

 

 

 シロは今までの穏やかな口調とは正反対の乱暴の口調のまま、手を振りかざすと、それに反応するように、臘月だけが()()した。

 人体爆発を起こし、焦土が生まれる。

 

 

「おいおい、急に人を爆破するなんざ、どういう教育受けてんだ、あぁん!?」

 

「無傷…!?」

 

 

 服装も身体も、無傷の臘月が、怒りを露わにして爆煙の中から出てきた。

 やはりか、とアナザーリュウガは舌打ちをする。シロの攻撃でも、依然と臘月は無傷だ。

 シロにも驚愕の色が出ていた。

 

 一体、臘月の『権能』とやらは何なのか、それを解明できなければ、勝つ術はない。

 思い切って、シロに聞くことにした。

 

 

『おいシロ、……『権能』って、なんだ?』

 

「――ッ、何故、君がその言葉を…!?」

 

『やっぱ知ってる風だったか。臘月の野郎が、『権能』って言ってたぞ。』

 

「あの野郎、余計なことを……、って、ことは、やはりアイツも転生者か。いや、それでもおかしい。攻撃が通じないなんて…『権能』はしっかりと作用してるはず…。まさか、『権能』でも無傷でいられる別の要因があるのか…!?」

 

 

 なにかをブツブツと喋っている。あまりにも小さすぎるため、アナザーリュウガの耳に届くことはなかった。

 しかし、『権能』がなにかしらのキーワードであることは確かだ。

 

 

『おい、『権能』と転生者に、なんの関係が―――』

 

 

「おい!人の話を無視してそっちで話を進めるなよ!俺をのけ者にして、可哀そうだと思わないのか!?」

 

 

 とんでの所で、臘月の邪魔が入った。

 

 

『なんだ、憐れんで欲しいのか?』

 

「誰がいつそんなこと頼んだ!?俺が言ってることはそういうことじゃない!そんなことも分からないのか?」

 

「じゃあなんだって言うのかな、是非とも教えてくれないかい?代金は『死』で払うけどね!」

 

 

 シロを中心に、剣、斧、槍、矢などが、次々と出現した。

 どれもこれもが神々しきオーラを放ち、普通の武器ではないことは一目で分かるほどだ。

 シロが手を振りかざすと、武器が一斉に臘月へと放たれる。

 

 

「なッ!?」

 

 

―――が、その直前に『零番』が臘月の前に立ちふさがり、手を横に振りかざした。

 同時に、黄金の雷が(ほとばし)り、投擲した武器が全て破壊された。

 

 

(いかづち)…!?いや、それ以前にシロの創った武器を破壊した…!?俺ですらぶっ壊したことがねぇのに…!』

 

「当たり前だ。『俺』の創った武器は所詮()()()。『本物』には勝てない…!」

 

『本物…?それって、どういう「おいこら!この役立たずが!」ッ!?』

 

 

 臘月の怒気を込めた声が、響き渡る。

 二人がソレを見る。

 

―――ソレは、臘月が『零番』を蹴り倒し、何度も何度も踏みつけていた光景だった。

 

 

「さっさとお前が倒しとけばこんな面倒くさいことにはならなかったんだよ!俺がこんな不快な気分になることはなかったんだよ!お前が役立たずなせいで!」

 

「―――――――」

 

 

 理不尽に、不条理に蹴られていると言うのに、『零番』は何の反応も示さない。

 それどころか、感情がないように見える。『痛み』を、感じていないように見える。

 

 その理由は、案外すぐ分かった。臘月によって踏みつけられできた怪我が、淡い緑色の光が放たれ、瞬間的に完治していた。

 怪我をしても、治る。それが『零番』が悲鳴を上げない理由だった。

 

 

「『圭太』になにしやがるクソ野郎!!」

 

 

 シロの背後の地面が突如盛り上がる。やがて、その土や岩が巨大な人の形―――岩石男を思わせる形となる。

 シロが右手を突きだすのと連動し、岩石男もその巨大な右手を臘月へと振り下ろした。

 

 

「――――」

 

 

 蹴られている『零番』が、手をかざした。

 その瞬間、『零番』の手から眩い光が指し、岩石男、シロ、アナザーリュウガに当たる。

 

 

「ッ、しまった!この光は―――!」

 

 

 光に当たった瞬間だった。

 突如、岩石男が砂と化した。それだけじゃない、零夜の変身が、解除された。

 

 

「変身が…!?それに、体が、重い…!?」

 

 

 突如体に降りかかった、倦怠感。

 「体を動かしたくない」「体を休ませたい」。そんな衝動に駆られる。

 

 

「―――『圭太』!何故だ、何故そいつを守る!?」

 

「決まってんだろ?『奴隷』がご主人様を守るのは、当然のことだろう?」

 

「なッ―――」

 

 

 臘月の言葉に、シロが絶句した。

 見えないシロの瞳は、感情は、見えなくとも感じられた。これは、『怒り』だ、『憤怒』だ。だが、それ以前にその『憤怒』に、なにか別の感情が見え隠れしているようにも見えた。

 

 

「『奴隷』、だと…!」

 

「あぁそうとも。他の奴らはもちろん、これはウラノスや無月すら知らない、俺だけの道具!俺だけの特権だ」

 

「だったら、てめぇを殺して、『圭太』も救う!がぁああああ!!!」

 

 

 シロが獣のような咆哮を上げる。

 それと同時に、シロと零夜の体から光の粒子が抜け出た。

 すると、零夜を襲っていた倦怠感が、一気になくなった。

 

 

「今のは…?」

 

「零夜!今の消耗している君じゃ、臘月にも『圭太』にもまともに戦えない!だから―――」

 

 

 突如、零夜の体をエネルギーが膜のようになって覆った。

 

 

「時間を稼ぐ。だから、その内にルーミアを見つけて、逃げろ!」

 

「ふざけんな!お前ひとりを残して行けってか!?俺に、『仲間』を見捨てて恥をかかそうってのか!―――あっ」

 

 

 思わず出た、『仲間』と言う言葉。

 今まで、思ってもいなかった。ただの、計画の『協力者』としてしか、見ていなかった。それなのに、いつの間にか、自分はシロを『仲間』として、見ていたのか?

 自分でも分からない、どうして、そのように考えるようになったのか。自分でも、理解できない。

 

 

「そうか…。よかった。ようやく、『僕』を、『仲間』と認めてくれたんだね」

 

「おい、勝手に決めつけんじゃ「零夜!実は、言って置きたいことがある」」

 

 

「――――ヘプタ・プラネーテスが、八人いること、実はその言葉を知ってから予想はしていたんだ」

 

 

「な―――ッ」

 

 

 何故それをもっと早く言わなかった?それを早く知っていれば、あの時教えてくれていれば、こんなことにはならなかったはずなのに―――。

 

 いや、違う。これはただの方便だ。

 もう一人いることを知ったって、その時何ができた?相手の能力も知らないのに、どうやって対策などできた?これはただの、都合のいい解釈だ。

 

 

「本当に、ごめん」

 

 

 謝るな。謝られたら、なにも言えない。許してしまいそうになるじゃないか。

 

 

「―――零夜、本当に、これが最後。『俺』の隠し事の一部、教えるよ。地球(ほし)の本棚で調べてくれ。キーワードは、『月の都』、『ギリシャ語』、『ローマ語』。さぁ行け!!」

 

 

 それが、何を意味しているのかは分からない。

 だが、零夜は後ろを向いて走った。自分の無力さを、憎むように。

 

 

「――――畜生ァアアアアアア!!!」

 

 

 

 やがて、その姿が、見えなくなり―――。

 

 

「―――――茶番は、終わったか?」

 

「あぁ、終わったよ。待っててくれて、ありがとう。始めて君に感謝の念を抱いたよ」

 

「それは光栄だ。あぁ言う感動シーンは、俺も嫌いじゃないからな。仲間を救うために、自身が犠牲になる。いい物語じゃないか。でもまぁ、それも無駄に終わるんだけどな」

 

「終わらせないよ。俺はここで、君を倒して、『圭太』を救う」

 

「だから、『圭太』じゃねぇって言ってんのによ…」

 

「君がどう言おうが、彼は『圭太』だ。それだけは、決して変わらない。そして―――、」

 

 

 

「―――『俺』の、『仲間』と言う事実も」

 

 

 

 シロは、今まで最初しか使わなかった、腰に携えた【紫色のエンブレムがついた剣】を手に持った。

 

 

「なんだその剣?玩具?まさかそれで戦うつもりか?」

 

「あぁそうだよ。これで、お前を倒す」

 

「ハハッ!とんだ爆笑もんだな!そんな玩具でどうやって俺を倒すっていうんだ!?」

 

 

「――――なぁ、『ミク』。現実って、本当に残酷だな」

 

 

「は?」

 

 

 突如、シロが語った独り言。その独り言に、臘月は首を傾げた。

 

 

「覚悟はしてた。()()を使うときが、いつか来るかもって。だけど、それを、『圭太』に使うだなんて……。『俺』は、できれば、これを使いたくなかった」

 

「おい、何を言って――――」

 

「ごめんな、ミク。こんな俺を、許してくれ」

 

 

 臘月の言葉を無視し、独り言を続けるシロ。

 その態度に、臘月の小さい堪忍袋の緒が切れ、怒りの声を上げようとする。

―――が、黙らされた。

 

 

 

聖剣 ソードライバー!

 

 

 

 剣を腰にかざすと、剣を包むように、ベルトが生成された。

 そして、そのベルトに装填されている紫色の【本型のデバイス】が三つ、存在していた。

 

 本の名前は

―――【ブラッドバジリスク】

―――【ポイズンスパイダー】

―――【スノウホワイト】

 

 

 剣を力強く持ち、叫ぶ。

 

 

「変身!」

 

 

―――剣が引き抜かれる。

 

 

毒牙抜刀!

 

 

―――本が、開く。

 

 

天を(むしば)む魔の化身が、光闇を支配する!

 

デッドリーバジリスク!

 

毒牙三冊!諸刃(もろは)(つるぎ)聖魔(せいま)を穢し、全てを滅ぼす!

 

 

―――頭上に、漆黒の雪が降り注ぎ、

―――その雪が蜘蛛の糸へと変化して全身を巻き取り、

―――巨大な蛇が、全身を包み込む。

 

 

 蛇が消失し、【仮面ライダー】は姿を現す。

 全身は紫、黒、白の三色で統一され、蛇の右半身、蜘蛛の胸部と紫のマント、ドレスのような左半身。

 黒く光る複眼が、恐怖を一層に引き立てる。

 

 

 

『これが……俺の、【仮面ライダーベノム】だ!!』

 

 

 

 




今回のシロのイメージCV【内山昂輝】➡【石田彰】

 オリジナルライダー登場!仮面ライダーベノムの活躍にご期待ください!
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