東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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45 藤原妹紅

「う、うーん……」

 

 

 藤原妹紅は、意外にもスッキリとした気分で目覚めた。

 

 どうやら、仰向けで眠っていたようで、空の色が確認できた。綺麗な、夜空だった。

 だが、それ以前に気になったことがあった。

 眠りにつく前と、起きた直前、この違いが一瞬で分かるほど、違っていた。

 

 まず、体の汚れがなかった。

 まともに洗っていなかったこの体、いつも水洗いで誤魔化していたのに、今はとても爽やかな心地よささえ残っている。

 それに、髪。水洗いでボサボサだったのに、今はとてもサラサラだ。

 

 

「なんで、私の体…?」

 

「あ、起きた」

 

「大丈夫?痛いところない?」

 

「――――」

 

 

 まず、目覚めてから聴覚に反応したのは、男の声と女の声だ。

 この声に、妹紅はすくみ上がった。見られた。自分の異常性を。罵られる、罵倒される。

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い―――。

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ―――。

 

 

「ヒッ!」

 

 

 逃げないと。聞きたくない罵倒の声が、頭に響く。

 

―――『化物』『怪物』『妖怪の子』『呪い子』…。

 

 事実無根の悪意が、幼い少女を襲った。

 逃げて、逃げて、逃げて、逃げないと!

 

 

「―――アレ…?足が、動かない…!?」

 

 

 動かなかった。

 動こうとしてるのに、逃げようとしているのに、その肝心の脚が動かない。動かなかったら、逃げられない。

 腰が抜けた。あまりの恐怖に、腰が抜けてしまったのだ。

 

 

「あ…あ…あァ…ッ!」

 

 

 再び、幻聴が聞こえる。

 笑い声だ。いや、これはただの笑い声じゃない―――嘲笑だ。悪意の笑い、悪意の感情。

 

 

「やめて…!やめて!」

 

 

 体を縮こまらせ、頭を手で抑える。

 叫んでも、悲願しても、悪意は収まらない。むしろ増長する。

 少女一人で抱えることなど不可能なほどの悪意の量がかさ増しし続け、彼女の器は壊れた。

 

 

「誰か…誰か助けて…!」

 

「――大丈夫」

 

 

 声が、聞こえた。

 この声は、前も聞いた。優しい男性の声だ。だが、それでも妹紅は動かない。自分の秘密を知った以上、自分を人間として見てくれる人なんて…!

 

 

「大丈夫。僕らは既に分かってる。君が、普通の人間とは違うってことも」

 

「―――」

 

「でもね、君は人間さ」

 

「え…?」

 

「君が、人間であることは変わりない。だって、君は、感情が豊かな、人間にしか、僕には見えない」

 

「―――」

 

「僕だけじゃない。彼も、彼女も。君のことは人間だって思ってる。僕は、君がどんな辛い目を経験したのかは、全く分からない。でも、その度合いは、今の君の反応を見て分かった」

 

「―――」

 

「すぐには信用できないかもしれない。だけど、話くらいは、聞かせてくれないかな?」

 

 

 この人は、この男の人は、周りとは全く違うのかもしれない。

 まだ正直、この人が言っている通り、信用は出来ない。だけど、他の人とは違う。話を聞いてくれる。ちゃんと、私の言葉に耳を傾けてくれている。

 

 少しだけど、信用しても、良いのかもしれない―――。

 妹紅は起き上がり、目の前の、白装束の男性に、ゆっくりと頷いた。

 

 

「う、うん…」

 

「ありがとう。それじゃあ、とりあえずご飯にしよっか」

 

「え…?」

 

 

 妹紅の顔が唖然となる。話そうと言うのに、なぜに飯になるのか?

 

 

「お腹、空いてるでしょ?」

 

「え、あ、うん…」

 

 

 妹紅の目の前に、パチパチと音を立てる炎があった。

 そして、その炎の上に、独特な香りが漂う汁が入った鍋があった。コトコトと、音を立てながら、妹紅の嗅覚を刺激する。

 同時に、お腹の虫が鳴った。

 

 

「――――」

 

「ほら、食えよ」

 

 

 黒装束の男性が、妹紅に木製のお椀に入った白い汁を手渡した。

 

 

(とても、いい匂い…)

 

 

 妹紅はヨダレを垂らしながら、その汁を見る。白い汁など見たことないが、匂いが食欲をそそってくる。

 だが、どうしても疑問になる。毒など入っていないだろうか。

 その疑問が一瞬頭をよぎったが――。

 

 

「ハムハムハムハムッ!!」

 

 

 ものすごい勢いで汁を食べている金髪の女性を見て、その疑念も杞憂に終わった。

 妹紅はゆっくりと、お椀に注がれた汁を飲んだ。

 

 

「―――」

 

 

 暖かい。様々な野菜や肉が混合して入っており、柔らかく仕上がっている。

 何より、この白い汁が美味だ。今まで飲んだことのない、全く新しい味だった。白い汁が野菜や肉と絡み合って、また美味になる。

 

 

「おいしい…おいしいよ…!」

 

「そうか。シチューって言うんだけど、三人で作ったんだ。口に合って良かっ――」

 

「うゥ、うう…ッ!!」

 

 

 泣いている。大粒の涙を流しながら、泣いている。

 その涙が、シチューに入る。だが、そんなことを気にせず、妹紅はシチューを食べ続ける。

 

 

「「「――――」」」

 

 

 それが、どれだけ彼女が渇望しているのかを、身に染みて理解できた瞬間(とき)だった。

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

「お腹いっぱい食べれた?」

 

「うん。……ありがとう、おじさん」

 

 

 おじさん。そう言われ、シロはガクッとこけた。

 その様子を見て、二人は笑う。

 

 

「おじさんって…!まぁ歳はそのくらいだけど、おじさんは…」

 

「よっ、おじさん」

 

「おじさん…( ̄m ̄〃)ぷぷっ!」

 

「二人とも……悪乗りしないでくれないかな…?」

 

 

 シロの言葉に、若干のどす黒さが混じった。流石のシロも、おじさん呼びは堪えたようだ。

 

 

「あと……もう一人のおじさんと、お姉さんは…」

 

「お兄さんな」

 

「ちょ!なんでルーミアちゃんだけおお姉さん呼びな訳!?不公平だ!」

 

「だって、おじさんたち。顔見えないんだもん」

 

「「「――――」」」

 

 

 妹紅に指摘され、零夜とシロは黙る。ルーミアも、「そうだった」と言わんばかりに顔を二人に向ける。

 今の二人は正体バレ―――と、言うより素性を知られないためにフードを被っている。これでは、妹紅も歳を識別できなくても仕方ないかもしれないが―――、

 

 

「いいや!僕はまだ認めないぞ!そう、声だ!声はお兄さんだろ!?」

 

「それを言うなら俺もだぞ。俺もまだ若い方だし」

 

「た、確かに…」

 

 

「二人とも、なに意地になってんの?」

 

 

 ルーミアから、そう言われる。

 見た目が若い二人からしてみればおじさん呼びはなんとしても抗議したいところ。

 それが、ルーミアにはバカバカしく見えた。

 

 

「何言っているんだ!これは大事なことなんだ!ルーミアちゃんだって、おばさん呼びされたくないでしょ!やーいおばさん!」

 

「なんですってこのクソ野郎!」

 

 

 ルーミアの闇を纏った拳が、シロの顔面に直撃し―――シロの姿が霧となって霧散する。

 それを見て、ルーミアと妹紅が驚愕する。

 

 

「なッ!?」

 

「残念でした!僕はここだよ!」

 

 

 後ろから、シロの声が聞こえる。

 すぐ振り返ると、そこには片手を振って余裕をかましているシロがいた。

 

 

「今のは幻影さ。まんまと騙されたね!」

 

「この…ッ、素直に当たりなさいよ!」

 

「そう言われて、当たるバカがどこにいるかな?」

 

「おい、静かにしろ!周りに気付かれるかもしれな―――」

 

 

「フフッ、アハハ、アハハハハハハハハ!!」

 

「「「――――」」」

 

 

 その時、三人の隣から笑い声が聞こえた。

 その声の主の候補は、一人しかいない―――妹紅だ。

 

 

「アハッ、アハハッ、ハハハハハ!!」

 

「え、なに?」

 

「―――ご、ごめんなさい……。おかしすぎて、笑っちゃった…」

 

 

 やせ細っている少女からは想像もできないほどの大きな笑い声だった。

 暖かい食べ物を食べて、元気がついた証拠だろう。

 

 

「お兄さんたちって、とっても面白いね」

 

「そうか?ただ(やかま)しいだけに思えるが」

 

「そんなことないよ。とっても、楽しかった。面白かった。私も、お父さんとこんな話ができればなァ…」

 

「「「――――」」」

 

 

 悲壮感を孕んだ妹紅の言葉が、暖かった雰囲気をまた冷ました。

 妹紅も、それに後から気づき、慌てる様子を見せた。

 

 

「ご、ごめんなさい!こんな話、聞きたくもなかったよね…」

 

「―――いいや。聞かせてほしい」

 

「えっ?」

 

 

 そう切り出したのは、シロだった。

 

 

「いずれ、この話を切り出すつもりだったんだ。だから、ありがとう」

 

「え、いや、そんな…」

 

「……まず、言わせて欲しい。ごめん」

 

 

 シロは、頭を45度下げた。

 突然の謝罪に、妹紅は困惑するばかりだ。催促して、シロが言葉を続ける。

 

 

「あれは、君にとってみられたくなかったもののはずだ。それを、無理やり見るようなことをして、本当にすまない」

 

「も、もう、いいよ…。私と、こんなに楽しく接してくれる人なんて、今までいなかったから…」

 

「そう言ってくれると、僕も心が安らぐ。それで、そのことについて、話してもいいかな?」

 

「わ、私の、呪いについて…?」

 

「呪い?」

 

「そう。私の、痛みを感じない呪い…」

 

 

 痛みを感じない呪い。

 妹紅は話を続ける。その呪いがあることを知ったのは、4歳ほどの頃だった。

 

 4歳ともなれば、外で遊ぶことが当たり前の時期だ。

 走っていたとき、妹紅は転んで肘と膝に怪我をした。周りの人間がすぐに駆け付けて手当てをするも、妹紅は平気そうな顔をしていた。

 

 父親に心配されるも、妹紅は「平気」だと答えた。

 そのときはまだ、父親が我慢をしているだけだと思っていたが、子供は活発だ。たくさん動いて、たくさん怪我をする。

 怪我をしたとき、何度も妹紅は平気そうな顔をしていた。

 

 それだけではない。その年の夏。妹紅はたくさん走り回ったと言うのに、汗一つかいておらず、熱くもないといっていた。

 それは冬も同じだ。雪が降る中、妹紅は薄着で外に出てはしゃいでいた。父親がそれを問いただすも、寒くないからと言う一点張りだった。

 

 不審に思った父親は、妹紅を医師のもとへと連れて行った。

 そして、判明した、『温覚や痛覚がないと言う事実』が。

 

 

 そこからだった。何気ない日常が崩壊していったのは―――。

 

 

 まず、父親の態度が明らかに変わっていた。

 服はスベスベな絹製のものから、荒目の服へと変わった。部屋が屋敷の離れへと移され、父親と会う機会が一向に減っていった。当初の妹紅は、何故こんなことをするのか、分からなかった。

 

 一日に三回、飯は与えられるがそれは今まで食べたことのない質素な食事だった。冷たく冷めたご飯とみそ汁、漬物の三つのみ。

 最初は小さな声で抗議したが、持って来た使用人の、奇怪な者を見る目に恐怖し、そのまま黙ったままだった。

 

 そしてある日、外に出てみた。使用人の目を掻い潜ってだ。

 久しぶりに浴びた、外の光、風。妹紅は歓喜した。外とは、こんなにも清々しいものだったのかと。

 実際、妹紅が脱走できた理由は警備がザルだったからだ。だが、それを知る由もない妹紅はただただ駆けだした。

 

 だがしかし、子供が一人で生きていけるわけもなく。都の外に出た時、妹紅は絶望した。

 まず第一に妖怪の存在だ。子供が、妖怪に太刀打ちできるわけもない。それを知らなかった妹紅は、ただ逃げることしか考えていなかった彼女は、その法則に見事に引っかかった。

 

 そして、襲われていたところを、シロたちが助けた――。

 ここで、話は現代に戻る。

 

 

「それでね。父上とはもう、会ってないんだ…」

 

「「「――――」」」

 

 

 聞かされた、妹紅の壮絶な過去。

 幼い少女には、到底抱えることのできない、人間の悪意。

 

 この時代は、まだ医学が発展していない時代だ。

 人間は未知なるものに恐怖し、排除しようとする傾向にある。この出来事も、例外ではない。少し後に生まれていれば、それを理解してくれる時代だ。

 つまり、これは価値観(時代)の違いによって生まれた悪意。

 

 それに、この妖怪が蔓延る世界で、いくら結界があろうとも女性一人で生きていくなど、無理をしているにも程がある。

 この目の前の少女は、そんな選択をしなければならないほど、窮地に追い込まれていたのだ。

 

 

「―――妹紅ちゃん。その、呪いなんだけど…」

 

「……やっぱり、気持ち悪いよね…。私、やっぱり人じゃ…」

 

「違う。それは―――厳密に言えば病気だ」

 

「……え?ど、どういうこと?」

 

 

 妹紅は戸惑いを隠せず、思考が混乱する。

 急にそんなこと言われても、理解が追いつかない。

 だが、そんなことを気にせず、シロは話を続ける。

 

 

「その病気の名は、先天性無痛無汗症。生まれつきの、病気だよ」

 

 

―――先天性無痛無汗(むつうむかん)症。

 痛みを感じる『神経線維』が最初から存在しておらず、痛み、熱さ、寒さ、かゆさを感じないと言う欠点がある。

 その名の通り汗もかかず、全身の温覚、痛覚が消失することにより、様々な症状を引き起こす病気だ。

 

 

「この病気の人間は、日本全国に200人ほどいると言われていて、治療不可能な難病だ」

 

「治療、不可能…」

 

 

 病気であれば、治すことも可能だ。しかし、治療不可能と言うのであれば、そのままの意味で治すことは不可能。

 希望の橋が、あったようで、それは幻に過ぎなかった。

 

 

「期待させてしまって済まない。だけど、自分の体のことくらいは、知っておいた方がいいと思って…」

 

「ううん、いいの。ありがとう。今まで、ずっと『呪い子』って言われていて……呪いじゃないって分かったら…ウッ、ウッ、ウワァアアアアアアン!!!」

 

 

 彼女の涙腺が、崩壊を起こし、瞳から滝のように涙が流れた。

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

「すゥ…すゥ……」

 

 

 妹紅の小さな寝息が響く。

 あれから泣き疲れた妹紅は、そのままぐっすりと寝た。その隣でルーミアも寝ており、二人は静かな寝息 を立てて、寝ていた。

 二人の体には毛布が掛けられ、とても暖かそうだ。

 

 そして、その近く。

 焚火の目の前で、黒装束の男と白装束の男が対面で会話をしていた。

 

 

「まさか、藤原妹紅が難病持ちだったとはな…」

 

「それは、僕も驚いたね」

 

「だが、なんでだ?『原作』じゃ藤原妹紅がそんな病気を持っているだなんてなかったぞ?」

 

「それは、『原作』で彼女の過去があまり語られていないのが原因じゃないかな?」

 

「どういうことだ?」

 

 

 シロはある仮設を立てる。

 藤原妹紅。彼女の過去はある程度語られてはいるが、父親が輝夜に恥をかかされた――。と言うところからスタートしているため、それ以前の過去が明らかになっていない。

 それに、この世界は『原作』を際限しているとはいえ、なんらかの齟齬があってもおかしくはない。

 

 

「非常に曖昧な仮説だけど、この世界はパラレルワールドで、原作世界であるようでそうじゃない」

 

「まぁ、原作世界って言うのなら、俺らの知識通りに進んでる訳だしな…」

 

「で、このパラレルワールドができた唯一の原因は―――」

 

「俺達、転生者ってことだな?」

 

 

 原作世界とは、本来定められた流れをそのまま突き進む世界の事だ。

 だが、ずっと過去から転生者が蔓延っているこの世界は、原作世界とはいえるだろうか?否である。

 

 

「今更だが、もう俺らの知っているこの世界じゃねぇってことか…」

 

「そうだね。彼女の不幸も、僕たちは直接は関係なくとも、間接的には関係があるのかもしれないしね」

 

「本当に曖昧な仮説だな。だが、今考えても仕方ないか…?」

 

「そうだね。僕たちには僕たちの。彼女には彼女の物語がある。―――ところで、話は変るんだけど、未来の彼女についてだ」

 

「――――」

 

 

 そう言われ、零夜の顔が凛々しくなる。

 その議題が、零夜も、シロも、一番気になっていたことだ。

 

 

「こいつが『ホウライジン』になった未来……無痛無汗症の特性を受け継いでいるようだった。あれは何故だ?」

 

 

 未来の妹紅は、痛みを感じないと言っていた。あれは、生まれつきの病気が原因だったのだ。

 しかし、『蓬莱人』の特性である病むことが無いと言う特性がしっかり働いているのなら、矛盾が生じている。

 

 

「蓬莱人の特性でも、生まれつきの病気には作用しないのか…?」

 

「いや…蓬莱人の特性は魂を不老不死にすることだ。僕の仮説が正しければ、死んだ際に体が一から作り変えられるから、正常なものに戻ってもおかしくはないはずなんだけど…」

 

 

 本来の体だと無痛無汗症だったとしても、蓬莱人になった後、体は何度も作り変えられている。

 その際に『神経線維』も復元されている可能性だったある訳だ。蓬莱人の体が、病を放っておくわけがない。

 

 

「これに関しては僕も分からないことだらけだ。何故【藤原妹紅】の先天性の病気が蓬莱人になっても受け継がれているのか…謎でしかない」

 

「―――(まさか、蓬莱人じゃなくて、『ホウライジン』であることが関係しているのか?)」

 

 

 従来の不老不死であること以外なんら変わりない『蓬莱人』と、特別なケースである先天性の病気であったがために、『蓬莱人』の特性がうまく作用しなくなった『ホウライジン』の二つに分けていた。

 『ホウライジン』のケースが先天性の病気である妹紅限定であることは分かったが、それだけだ。何故『蓬莱人』になっても病気が治らなかったのかは、まだ不明だ。

 

 

「『原作』でも、『蓬莱人』の特性が先天性の病気に作用するかどうかなんて、書かれてるわけもないし…」

 

 

 いくらこの世界が零夜たちも知らない設定があるパラレルワールドだとしても、『蓬莱人』の特性だけは変ってはいないはずだ。

 そう考えると、どうしても矛盾が生じる。一体、なにが違うと言うのだろうか?

 

 

「―――まぁ、分かんないこと考えたって、なんの得にもならねぇか。それにしても、お前、藤原妹紅にすげぇ肩入りしてるな。まさか、お前にそんな優しさがあったなんてな。驚いたよ」

 

「君さ、僕を鬼畜ソ野郎や腐れ外道だとでも思ってた?」

 

「正直思ってた」

 

「随分とはっきり、辛辣に言うねぇ。僕にだって人の心は少しくらいはあるんだ」

 

「そんなんじゃないさ。ただ――気に入らないんだよ。この時代の価値観が

 

 

 シロの体から、可視化できるほどの黒いオーラが放出される。

 これは、シロが感情の起伏が起こった際に、よく見えるオーラだ。そして、その威圧感も半端じゃない。

 

 そのオーラは、敵意とも、殺意ともとれるほど、存在感があった。

 

 

「何!?」

 

 

 瞬間、ルーミアが飛び起きた。

 シロのオーラに反応したのだ。

 

 

「あぁ、安心しろ。シロのオーラだ」

 

「なんだ…。シロ、やめてくれない?ゆっくり寝れないし、この子起きちゃうでしょ?」

 

「あぁ……ごめん」

 

「本当に、全くもう…」

 

 

 頬を膨らませながら、再びルーミアは寝た。

 

 

「本当に、自分のオーラの威圧をもっと自覚しろ」

 

「はは、ごめんね。ただ、今言ったのは心からの本心さ。―――零夜、ちょっと余計なことになるけど、いいかな?」

 

「……内容による」

 

「僕の、いや、『俺』の敵が、もう一匹増えた。そいつを、完膚なきまでに追い込んでやる…!」

 

 

 シロの、敵。その敵が誰なのか、零夜はすぐに察することができた。

 だが、だからこそ、歴史に影響がでないか心配だ。

 

 

「おいおい、歴史に影響が出るんじゃねぇのか、それ?」

 

「大丈夫。最悪無理をしてでも軌道修正を施す」

 

「出来るかねぇ…そんなこと」

 

「できるできないじゃない。やるんだよ。あと、僕もだけど、君もちゃんと、演技、しっかりやってくれよ?」

 

「はいはい、分かってるよ。それじゃあ……明日が本番だ。待ってろよ、【臘月】。てめぇの計画、全部ぶっ壊してやる…!」

 

 

 そう言い、零夜は光り輝く月を見て、拳を握った。

 

 

 

 




 こういうの書いてると、自分でも胸糞悪くなってきますよね。

 そして次回、ついにかぐや姫と邂逅します。

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