龍狐です。
投稿しまーす
「「はぁあああああ!!」」
零夜と紅夜。二人の叫びが響く。
互いの刃がぶつかり合い、火花を散らす。力で押しあって、勝った方が先手を取ることができる。重要な戦いだ。
「はぁ!」
そして、その戦いの勝利を掴み取ったのは―――零夜だ。
零夜は力で紅夜を押すと、それと同時にがら空きの腹部を蹴った。
「グフッ!」
紅夜の短い悲鳴が聞こえる。
その間に、零夜はその勢いを利用して跳躍する。空中回転して、一回転したあとに、無双セイバーの『ブライトリガー』を引く。
『ムソウマズル』から強力な弾丸を発射する。
「これは…ッ!」
紅夜の周りの地面が、爆ぜる。
空中回転中と言う、不安定な状態での発砲故の、ミスだ。それに、これは特訓であって、当てるつもりはさらさらない。当てるとしても、カスる程度に留めておく。その調整は、零夜の【繋ぎ離す程度の能力】――略称し、『
紅夜は銃弾の威力を感じ取り――本能的に『危険』だと直感する。
故に、頭の中で、それの脅威から身を守る方法を、既に画策していた。
紅夜は、能力を発動する。
「―――ッ!」
フィールドに広がるのは、無数の岩の壁だ。してやられた。銃弾による攻撃で、一番厄介な防御が、定型的な壁で防ぐ行為だ。
紅夜は、あれを見ただけですぐさま突破方法を編み出し、実現してみせたのだ。
紅夜が岩の壁の間を抜けながら、疾走する。
――撃つ、撃つ、撃つ。しかし、強化された銃弾でありながら、銃弾は岩の壁を少し削ることしかできていなかった。
岩を操る能力者、岩の硬度すら操ることができるのかとすら感服する。
ともかく、銃弾はもう使い物にならないと見ていいだろう。
――通常ならば。
「はぁあ!!」
左手に持った、【ブラックライジングタイタンソード】を、力任せに振る――漆黒の稲妻が、迸る。
破壊の力を司った稲妻は、轟音と共に周りの岩をすべて破壊する。
タイタンソードの重量は常人は愚か、クウガですら他のフォームでは持ち上げることも出来ない程重く、突きや薙ぎ払いの一撃一撃が絶大な破壊力を有する剣だ。
さらに、ライジングタイタンソードともなると、タイタンフォームですら持てないほど重くなる。
そこに稲妻の力が加われば、破壊力は絶大を超える。
そして、そんな超重量のものを何故片手で持てるのかと言うと、理由は単純明快だ。
零夜の常人離れした筋力と、『離繋』の能力によって支えられているからだ。零夜は能力を用いてタイタンソードから『重力』を『離した』。重力という概念がなくなったライジングタイタンソードは、浮く。まるで宇宙空間に放り出されたゴミのように。
この理屈によって、重力の支配から解放されたライジングタイタンソードは軽くなる。
しかし、それはあくまで持ったときのみ。振るうとなれば、話は別だ。タイタンソードが浮く理屈は、重力がなくなったからだ。本体の重さ自体が、なくなったわけではない。
つまり、持つのに力はいらないが、振るうための力が必要になという意味だ。
その動作は、零夜の筋力が行っている。
「ふッ!」
再び、今度はライジングタイタンソードを縦に振るう。
地面を
「はッ!」
紅夜が跳躍し、稲妻を避けたと同時に、紅夜の真下の地面が隆起する。
柱状となった岩のテッペンに、紅夜が立ち、零夜を見下ろす。
紅夜が、手を掲げる。それと同時に、地面から複数の全長3~5メートルほどの巨大な
手を振るう。複数の石礫が、零夜に向かって飛んでいく。
ブラックライジングタイタンソードはまだ使えない。振りかぶった反動で、振るうのに時間がかかる。
しかし、無双セイバーの攻撃ではあの岩を防ぐので手一杯だ。
だったら――、
『離繋』の能力で無双セイバーに【ブラッドオレンジロックシード】を『繋いで』トリガーを引く。
刃にエネルギーを集中させ、それを飛ぶ斬撃として紅夜に向けて放つ。
刃は石礫たちを破壊しながら、紅夜へと向かって行く。
そんな中、彼は―――、
(あいつ…冷静にしてやがる。当たる直前だぞ!?なに考えてやがる…?)
意外にも、冷静にしていた。
そんなとき、紅夜に変化が起こった。
――紅夜から深紅のオーラが噴き出し、それが紅夜の持つ刀の刃へと移っていき、深紅のオーラは刃へと纏わりつき、深紅の刃へと変化した。
「刃の色が…!?」
そうしていつ合間にも、無双セイバーの必殺技は紅夜を傷付けようと向かって行く。
そして、斬撃が当たる瞬間――、紅夜は斬撃を、深紅の刃で一刀両断し、斬撃は二つに分かれ、爆散した。
「……ッ!」
爆発を背景に、今度は紅夜が動いた。
深紅の刃を振りかぶり、無双セイバーの必殺技にも似た技を放った。それも、一度ではない。何度も降って、何度も斬撃を飛ばした。
「連続で可能なのかよ!めんどくせぇ!」
瞬間的に、今度は【イチゴロックシード】を無双セイバーに『繋げて』、『クナイバースト』を発動させる。
無双セイバーを振り、無数のイチゴクナイを紅夜に向かって発射する。
イチゴクナイと斬撃がぶつかり合い、その対立は拮抗している。だから、後押しする。
ライジングタイタンソードを振りかざし、漆黒の稲妻を発生させ、斬撃をイチゴクナイごと破壊する。爆発が起き、砂煙が舞う。
互いに目の前が見えない中、先に動いたのは――、
零夜だった。無双セイバーに『バナナロックシード』を『繋げて』、相手の足元から複数のバナナのオーラを突き出し攻撃する技、『スピアビクトリー(スパーキング)』ならぬ『セイバービクトリー』を発動させる。
この技は、バナスピアーを使って発動する技だが、バナナのオーラを纏わせるだけなら、無双セイバーでもできるはずだ。
故に、その理屈で無双セイバーを地面に突き刺し、一本の巨大なバナナのオーラを紅夜の立っていた
「―――ッ!」
紅夜も、足元から瓦解していっている岩柱の異変に気付いたのか、上空に跳躍して回避する。
そのまま零夜へと向かって行き、刀を振り上げた。
「はぁッ!」
そのまま重力に従って落ちると同時に刀を真っ直ぐに振るった。
なんの工夫もひねりもない、ただの攻撃だ。
故にただ腕と拳に力を籠め、無双セイバーで受け止め――、
「ッ!」
その時、零夜の背中の地面から「ボコッ」と言う地面が盛り上がる音が聞こえた。それを本能で察知して、タイタンソードを体の回転させながら振るった。
岩が、弾ける。
零夜の背中に向けて岩の柱が斜めに突出してきていた。これで体勢を崩してその隙を狙うつもりだったのだろう。
そして、現に――、
「はぁ!」
背後の岩柱に気を取られて、前の防御が疎かになった。
衝撃で、周りの空気が二人を中心に押し出される。紅夜は両手で持っているのに対し、零夜は二刀流の都合により片手だ。筋力に、圧倒的な差があった。
零夜の立っていた地面が、陥没する。
(こいつ…ライラに教え込まれてるから騎士道精神旺盛かと思ってたが……実戦向きに特訓されてやがる!)
先ほどの不意打ちで、確信した。
彼の技術は正々堂々などと言う騎士道精神に反しており、完全な殺し合いを想定した実戦向きに訓練されている。
不意打ちや騙し討ちなどをしない騎士道と逆にそれをする実戦、どちらが勝つかと言えば実戦形式が圧倒的に勝つ確率が高いだろう。
だって、騎士道精神を持つものは、そう言ったことは絶対にしないから。
「ふんッ!」
受けとめた状態から、タイタンソードを力任せに振るう。
――漆黒の稲妻が、迸る。
「ハッ!」
それを察知した紅夜は無双セイバーの刀身を足場に後ろの跳躍。さらに岩で壁を作ることによって稲妻を防いだ。
しかし、その壁も稲妻の威力に難なく破壊される。
迫りくる稲妻。一度地面に着地した状態で、再び跳躍し、避ける。
その後に岩の塔を建設し、そのテッペンで零夜を見下ろす。
(こいつ……出来るな)
もう、決めつけも先入観で捉えるものやめよう。
少なくとも、生身で勝つには難しい相手であることは確かだ。
ならば、変身するか?――否。
ここまで来て、勝てる確率が少ないから変身する?これは実戦じゃない、決闘だ。だからこそ、「勝てそうにないからより強くなる」などと言う後出しは、零夜の中に選択肢として存在していない。
「だからこそ、生身で戦うことに意味がある!」
零夜は無双セイバーを放り投げると同時に、無双セイバーは消失する。
そして次に、零夜が変わりに亜空間から取り出したのは、【仮面ライダーグレイブ】が使用する『醒剣グレイブラウザー』だ。
そこにすかさず『マイティ』のカードを『繋げて』読み込み、刃に重力場を発生させる。
「はぁ!」
そして、ライジングタイタンソードを振るう。漆黒の稲妻が迸り紅夜の目の前の地面に直撃し、大量の砂埃が舞う。
(当てることを目的としていなかった…?目くらましか?だったら、煙の動きをよく見て…!)
目くらましを行った以上、必ずどこからか仕掛けてくるはずだ。目くらましとは、そのためのものなのだから。
――しかし、だからこそ、だった。
その先入観こそが、零夜の罠だった。
「―――ッ!」
気配を、感じた、真後ろから。即座に振り向くと、そこには、グレイブラウザーを横に振って重力場の斬撃――『グラビティスマッシュ』を放っていた零夜の姿があった。
――何故、どうして、いつの間に? 様々な考えが紅夜の頭の中で交差する。
移動してきたとしても、おかしすぎる。だって、煙には全くの異変が感じ取れなかったから。
いや違う。今はこんなこと考えている場合じゃない、すぐにでも、これに対応しないと。
紅夜が動くのは、速かった。
深紅のオーラが再び紅夜から大量に滲みだし、それはある形を成した。――刀だ。
深紅のオーラが深紅の刀へと形を変え、紅夜は零夜と同じ二刀流となる。
そして、その刃を、投げた。と、当時に疾走する。
投げた刃はグラビティスマッシュとぶつかり合い、爆散する。
その煙の中から、紅夜が零夜に向けて走ってきた。
「……もうそろそろ、決めさせてもらうぞ」
グレイブラウザーを放り投げて、消失させる。
そして、取り出したるはもう一振りの【ブラックライジングタイタンソード】。これも同様に、『離繋』の能力で重力から解放している。
二振りのブラックライジングタイタンソードを装備し、刀身に漆黒の稲妻を纏わせる。
これで、ラストフィニッシュだ。
紅夜が助走の勢いと共に深紅の刃へと変化した刀を両手で振りかざし、零夜は全力でタイタンソードを振りかざして――刃が、ぶつかり合う。
今までの何よりも強力で強大で、大きい爆発が鳴り響いた。
「「「――――」」」
これには、今まで黙ってみていた
煙の向こう、二人はどうなっているのか――。
「――え?」
そのとき、ルーミアがそんな声を出した。
なぜなら、あの大量の砂煙が、一瞬にして晴れたからだ。
しかし、その謎現象のおかげで、今の現状を知ることができた。
三人の目に映ったのは――、
「あなたは…ッ!」
「シロ…ッ!!」
水色のオーラの壁を生成して、二人の攻撃を防いでいるシロの姿があった
「二人とも…これは特訓、親善試合的なものなんだからあれはやりすぎだって。あのまま激突してたら、どちらかが大怪我してても不思議じゃなかったよ?」
「「―――」」
そう言われ、二人は黙るしかなく、無言で獲物を降ろした。
零夜も紅夜も、熱くなりすぎてこれが特訓であることをすっかり忘れていた。あのまま言っていたら、相手を怪我させてしまっていても、おかしくはなかった。
こればかりは、止めてくれたシロが正しい。
「…そうだな。やりすぎたか」
「確かに、そうですね。止めてくれてありがとうございます」
零夜は二振りのブラックライジングタイタンソードを消失させ、紅夜は刀を鞘に納刀した。
「零夜!」
「お兄さん!」
「紅夜!」
ルーミアと妹紅、そしてライラが二人に駆け寄る。
「大丈夫だった?」
「あぁ、別に問題ない」
「紅夜も、大丈夫だったか?」
「はい、師匠。心配してくれてありがとうございます」
ルーミアとライラは二人の身を案じた。
しかし、ルーミアはともかく、ライラが紅夜の心配をするなど、先ほどまでの鬼畜っぷりを見せられては、珍しい事のように見えた。
「―――」
「どうした?私の顔に何かついているか?」
「いや、別に」
流石にそれを言ったら、叩かれそうなので、黙っておくことにする。
それにしても―――、
「紅夜、お前のあれ……なんだったんだ?」
「アレ、とは?」
「紫紺の刃だよ。お前の体から滲み出てたが、あれは…?」
「あぁ、アレのことですか?あれは『妖力』ですよ?」
「妖力…!?」
紫紺のオーラの正体が妖力だと知った零夜は、絶句した。
妖力は妖怪ならば誰しもが持っている力の総称だ。それを、認識できなかった?
そんなはずはない。『霊力』や『妖力』などには日常的に触れているのに、それを認識できないどころか分からないだなんて、あり得なかった。
零夜が黙って考えていると、ライラがそれを補足した。
「紅夜は、昔から『隠す』ことが得意なんだ」
「…『隠す』?」
「身を隠したり、気配を隠したり、力の流れを隠したり。とにかく隠すのが得意なんだ。実際、あの時岩に隠れていたとき、私が察知できなかったのも、これが原因なんだ」
つまり、紅夜は隠蔽能力に長けていると言うことか。
隠蔽能力は、自身の力量や能力を知られないための、重要な能力の一つだ。それが長けているとなると、敵に回るとかなり厄介だ。
「そんな能力が…意外だな」
「そ、そうですか?」
「あぁ、すげぇ実戦向きだと俺は思う」
「あ、ありがとうございます。そう言って頂けると、嬉しいです」
紅夜は照れ臭そうに自身の頭を撫でた。
何度も言うが、あれはすごいことだ。オーラの正体すら掴ませないほどの隠蔽技術、あれは零夜ですらできないし、シロですら出来るかどうか分からないほどだ。
隠蔽と言うため、完全に隠すことは無理だろうが、それでも極限まで隠すことは可能なはずだ。
それほどの技術を習得するために、どれほどの時間を費やし――いや、ライラの話であれば、紅夜の隠蔽技術は先天性の才能だ。
それに、妖力をあのように刃に纏わせたり、妖力自体を刃のように形作ったりする技術もあっぱれだ。
あそこまで事細かに精密に操作できる技術も「すごい」の一言に尽きた。流石すぎて、言葉が出ない、絶句状態とも言えるだろう。
――そんなとき、零夜の隣から、シロの声が聞こえた。
「『隠す』……『隠蔽』が無意識に発動しているのか?」
シロはシロで、独り言を喋っていた。
彼の独り言はもう慣れっこであり、この言葉の意味もなんとなく理解できる。彼の隠蔽能力は才能だ。だったら、その力が無意識的に発動してもおかしくない。
つまり、無視しても構わない。
色々と考えているうちに、今度は紅夜が零夜に質問をした。
「そういえば、あの砂煙の中、どうやって俺の後ろにまで移動したんですか?俺としてはそっちの方が気になります」
「あぁ、それはだな――」
瞬間、零夜の姿が掻き消え、紅夜の肩に、何者かの手が乗った。
「―――ッ!!」
咄嗟に反応した紅夜は、拳を肩に手を乗せた者に対して全力で振るった。
そして、それを止められる。
「おい、危ねぇだろうが」
「いつの間に――!」
その正体は、零夜だった。いつの間にか自身の後ろへといられたことに、驚きを隠せない紅夜。
移動したような形跡は、見当たらない。となれば、どうやってここまで――?
「それは、一体…?」
「瞬間移動だよ」
「瞬間移動?」
聞き慣れがないためか、頭を
零夜の『離繋』の能力で『場所』と『場所』を『繋げて』距離間をゼロにして、実質的な瞬間移動を行っていたのが、紅夜の疑問の正体だ。
「まぁ、能力を使って、足を使わずに移動できる方法って思ってくれ」
「そんな方法があるんですね…」
零夜の説明に、紅夜は納得と感心を持ったように考える仕草を始めた。
これは、完全に自分の世界に入っているだろう。
「本当に零夜のそれって便利だよね」
「お前に言われても自慢にしか聞こえねぇんだが」
瞬間移動の手段を持っているのにも関わらず、そんなことを言われると自慢にしか聞こえない。
「……あのさ、前から思ってたんだけど、零夜の能力、あれ名称長いから、略して『
「離繋?」
「そ、離すの
「―――カッコいい云々はともかく、それでも構わねぇぞ」
少し雑談を含んだ後、零夜はライラの方を向き、
「……にしても、ライラ。少し意外だったぞ」
「―――なにがだ?」
「紅夜の戦い方だ。お前の性格上、騎士道――不意打ちなんて絶対させない戦い方を教え込んでいたと思っていたから、あの行動は予想外だった」
「何を言っているんだ?正々堂々戦って、なにになる?世の中には卑劣な行為を平然と行う外道だっているんだぞ?そんな闘い方を教えていたら、そう言ったものへの対処ができなくなるじゃないか」
「――現実的だな」
「そういう風に教えているからな」
戦っている最中にも思っていたが、ライラは紅夜に現実的な戦い方を教え込んでいる。確かに、騎士道精神は『悪』が絶対存在する『世界』では、尊くもあるが、儚くもある。
生きるために手段を選ばない生き汚さを持つ者にとって、騎士道は都合の良い存在だ。
それゆえに、ライラはそんな世界へ適応できるよう、そう言った教育を施しているのだろう。
そして、ライラの言う『外道』とは――、
(ゲレル…。本当にあいつは害悪だな)
どこへ行っても悪影響しか及ぼさないあのクズは、本当に何故生きているのかとすら思うほどだ。
(3年間、やることもほとんどねぇし、ゲレルの捜索も視野に入れとくか…。そのためにも、シロと計画の変更を話し合っておくか)
「ねぇ、そろそろご飯にしない?零夜と紅夜も、お腹空いてるだろうし」
そう考えているとき、いつの間にか零夜の隣にべったりとくっついているルーミアがそう提案した。
そう言えばと、腕時計で時間を確認して見てみると、時間はまだ10時ほどだった。
昼食を食べるには、まだ早すぎる時間帯だ。
しかし――、
「そうだな。動いたら腹減って来たし、食うとするか」
今回ばかりは、彼女の意思を尊重することを決めている零夜は、それを了承した。
許可してくれたことに喜びの表情を見せたルーミアは、
「それじゃあ準備しましょう!今日はなににする?」
「お肉!」
すかさず、妹紅が候補を上げた。どうやら、この世界の妹紅は肉が好きなようだ。
しかい、肉ばかりだと栄養が偏るので野菜も食べさせてはいるが、肉ばかりだとどうしても栄養が偏ってしまう。
(バーベキュー形式でやるか?確か肉に野菜を巻いて食べる方法があったはずだ。あれなら野菜も一緒に喜んで食べてくれるだろ)
「それじゃあ、肉焼くぞ。今日は特別に、炭火焼きだ」
「炭火焼きか。あれで食べる肉は格別にうまいからな。私も好きだ」
「あ、それ分かります。前師匠に食べさせてもらったときの味は忘れられません」
炭で焼く肉は、特別にうまい。これは現代人だけでなく、過去の人物も共感を得られた。
と言うか、炭火を使ったことがあるのかと驚いた。
「それ食べたい!」
「はいよ、じゃあ準備するから待ってろ」
「あ、それじゃあこの肉焼きたいんだけど、いいかな?」
そう言って、シロが懐から取り出したのは、30cmほどある長い鉄製の串に突き刺さった、巨大な肉の塊だった。
「でけぇよ!それ、なんの肉だ?」
「なにって、別に?この時代に生息している生き物の肉だよ」
「いつの間にそんなの取ったんだよ。それにしてもデカすぎだろ。そんな巨大な肉を持つ奴なんていたか?あぁ、もしかして複数体から剝ぎ取ったのか?だったら分けてやれよ。一人占めしようとすんな」
「いやいや、違う違う。これ、一匹から取ったんだよ?」
「――――」
頭が、痛くなる。
複数体から取った肉だと言うことの方が、まだ納得できた。それなのに、その巨大な肉がたった一匹から取った肉?
非常識的にもほどが―――あ、そう言えばここは非常識の世界だった、と、零夜は改めて認識した。
それにしても、こんな巨大な肉を持った生き物なんて、生息しているのだろうか?
「……その肉を剝ぎ取った生き物の名前は?」
「え?―――龍だけど。かぐや姫の難題の【龍の頸の玉】の、龍の尻尾」
「―――」
「実はライラと戦った場所が、その龍の生息地だったんだよね。戦いを邪魔してきたから、二人で一斉にぶっ飛ばしちゃった」
「良いところだったのだが、邪魔が入ったのが不快だったな…」
「まぁ過ぎたことだしいいじゃないか。生かした代わりに、難題の宝を持って来たんだから」
「―――」
シロの予想外の行動に驚かされるのは、もういい加減に慣れてきた。
だがしかし――、
(それ、強盗と変わりなくね?)
それだけは、心の中で秘めた思いだった。
* * * * * * * *
―――その日の、夜。
零夜とシロは、昼間の内に都へと帰還し、かぐや姫に【龍の頸の玉】を献上した。本物かどうか当然疑われたが、それは零夜の知るところではない。
それよりも、零夜は『レイラ討伐』の報告を行った。
その報告の内容とは――『中断』だ。
零夜は『レイラ討伐』を諦めると宣言したのだ。当然、反発はあったが、その理由を『面倒くさくなったから』の一点張りで通した。
そしてさらに、『面倒くさいことをするより、あと三つの宝物集める方がよっぽど楽だ』とも言い放ってきた。
各方面から叩かれそうな挑発文句だが、それらをすべてスルーしたり逆に脅し返したりして、帰って来た。
なお、帰る際に再び刺客に出会ったが、当然の如く返り討ちに。シロの権能で刺客を送って来たのが【龍の頸の玉】を持ってくる予定だった『
通常より何年も早く持って来たことへの腹いせか、刺客を送って来たのかもしれない。
しかしながら、未来では五人ともかぐや姫と結ばれないことは確定しているし、そしてなにより笑い者になる未来を回避させてやったのだから、感謝してもいいほどだ。
だがまぁ、本人はそんなことは当然知らないだろうが――。
「今日も、散々な一日だったな…」
「お疲れ様です。これどうぞ」
紅夜が、鉄製のコップ(零夜持参)に暖かいお湯を入れた状態で手渡した。
中身を飲むと、口に入れるのにちょうどいい温度になっていた。
「温けぇ……サンキューな」
「それが誉め言葉かどうかわかりませんが、誉め言葉として受け取っておきます」
「そうしてくれると助かる。……で、聞きたいことがあるんだが」
「―――『声』、についてですよね?」
「あぁ」
その話に入ると、紅夜の顔が真剣な面影になる。それと、自責の念も。
昨日のその話が、紅夜自身のせいでおじゃんになったし、昨日の責をまだ引きずっているのだろう。
だがしかし、そうでないと困る。
「何度も言ってるが、俺はもう気にしてねぇ。こいつは……俺はこいつじゃねぇし、断言はできねぇが、たぶん大丈夫だろ」
そう言い、零夜の近くで妹紅と熟睡しているルーミアを見る。
ちなみにだが、シロとライラは留守だ。理由は、特訓である。
「ご迷惑をかけて、本当に申し訳ありません…」
「良いんだよ。にしても、ライラに感謝しないとな。お前をこんないい奴に育ててくれるなんてよ」
「へへ、そうですか?……師匠のこと、そんなに褒めてくれるなんて、嬉しいです」
「自分のことじゃねぇのに…。あれか?仲間が偉業を成し遂げた時にそれを周りに伝達したくなり心境か?」
「まぁそれと同じような感じだと思ってください」
「そう思うことにするよ。で、お前は『神の声』をいつから聞くようになったんだ?」
「―――」
零夜の質問に、紅夜は考え込むようになって、しばらくした後―――、
「あの、質問を質問で返すような真似をしてしまいますが、大前提として、あなたはあの『声』を神のものだと思っているんですか?」
どうやら紅夜は『天からの声』を『神の声』とは認知していなかったようだ。
『声』から説明はなかったのだろうか?
いや、ライラすら『声』の正体が神だと知らなかったのなら紅夜が知らなくとも当然だ。
「逆に、お前はなんて思ってる?」
「―――不思議な『声』、としてしか思ってません」
「……そうか」
その答えはここまでこれば案の定だったが、とりあえず今この場で確定している一つの事実がある。
――紅夜は、『権能』覚醒への入口に、とっくに突入している。
シロは言っていた。『神の声』が聞こえることが、『権能』覚醒への兆しであると。
つまり、紅夜も、『権能』の蕾を保有していると言うことだ。
「あなたは、『声』の正体が神だと思っているんですか?」
「……あぁ。正体を定義しておかねぇと、不安だろ」
「定義と言うより、憶測のようにしか聞こえませんが…まぁ認識は人それぞれですからね」
零夜はあえて、『神の声』だと確定させず、紅夜に『声』のことを『謎の声』として定着させた。
理由としては、説明を求められたら面倒だからだ。自分ですらよくわかっていないのに、質問を迫られたら対処の仕様がない。
零夜はもっと情報を得るために、次の質問をした。
「そのことを、ライラは知っているのか?」
「いえ、知りません」
「―――ッ」
即答だった。即答で、否定された。
ライラは、紅夜が『神の声』を聞こえるということを知らなかったようだ――と、あの話を聞く前までだったら、そう思っていただろう。
『権能』に完全に覚醒したものは、他の『権能』保持者の気配を読み取ることができる。
そして、その兆しが見えている零夜からも、その気配が微弱に読み取ることができると、シロも言っていた。
つまり、完全に覚醒しているライラが、紅夜の気配に気づかないわけがない。となると、ライラは紅夜のことを黙っていたことになる。
よく考えれば、あの話の中、ライラはある場面から完全に黙りこくっていた。それは、紅夜のことを考えていたからではないだろうか?
(そこら辺はライラを問いたださねぇと分からねぇな)
「そのことを、なんでライラに言わないんだ?」
「師匠のことです。幻聴として片付けてしまうでしょう。だから、言っていません」
「―――そうか」
――ライラも神の声が聞こえる。そう言おうとしたが、自制した。
零夜の口から説明するのは、あまりにも不躾だからだ。これはライラと紅夜の師弟関係の問題。部外者である零夜が口を挟んでいいレベルのことではない。
それに、『声』が聞こえるなんて話、通常なら誰も信じないだろう。紅夜の選択は、ある意味正しくもある。そして、ライラも同じ悩みを抱えているかもしれない。
もうこれは、いずれ互いに話すときが来るだろうと、ただ信じて待つのみである。
「じゃあ、次に、お前はいつから――いや、どうやって『神の声』を聞けるようになったんだ?」
その時、シロの忠告が脳裏に浮かんだが――取っ払う。
シロが、「聞けば達成が難しくなる」と言う『権能』覚醒への条件は別にあり、『神の声』が聞こえる段階はファーストステージでしかない。
それに、同じ『権能』未覚醒の状態である紅夜から何かを聞けば、覚醒への手がかりになるかもしれない。
「―――どうやって、ですか?」
「あぁ、因果律――『原因と結果』って意味で、何かを成せば何かしらの結果が生まれるって意味があるんだが、それに
「原因、ですか…」
「なにか、思い当たる節はないか?」
「うーん……すみません。思い当たる節はありません。ですけど、聞こえるようになった時の話なら、できますけど、いいですか?」
「あぁ、それでも構わない」
「―――それじゃあ話します。それは、数年前の出来事でした」
なんかテキトーに終わった感じがあるな…。まぁでも、次回は紅夜が『神の声』が聞こえるようなった時の物語から始まります。
ぜひ、お楽しみください。
評価・感想お願いします。