東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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 どうもー龍狐です。

 ついに明日はスーパーヒーロー戦記の公開日!いやー明日が楽しみですね!
 オーマジオウ、電王、ジオウ、ゼロワン!楽しみだなぁ!

 それにしても、個人的にシンケングリーンがレジェンドキャストとして出てきたのが驚いたな。

 それでは、どうぞ!


58 蜘蛛VS蜘蛛――龍

 あのG(ゴキブリ)騒動から一日経った。

 あの後、なんとかあの嫌悪感を具現化したような怪物を三人で撃退したときは、何とも言えぬ絆が三人の間で生まれた。

 ついでに、その隣で妹紅が首を傾げて『?』のマークを浮かべていたのは余談だ。

 

 騒動が終わった後にあの『G』の話を聞いてみたら、時々野生として出てくるらしい。

 あの『妖怪』の黒い外皮はとても硬く、並大抵の攻撃では通らなかった。アレを貫通するには、かなり強力な攻撃が必要だったため、零夜も無意識的に本気になったほどだ。

 

 それに、あの『妖怪』はライラや紅夜も嫌悪感を抱いており、見つけ次第即刻排除しているとのことだ。

 やはり、Gは全国万人共通の天敵だと再認識させられた。

 

 そして、今零夜はシロと共に湖にいた。

 時間帯は朝、目的は、洗顔だ。

 

 水をパシャッと言う擬音と共に顔に投げつけ、目やになどを眠気と共に洗い落とす。

 創ったタオルで顔を拭いて、既にやることをし終えていたシロに話しかけた。

 ちなみに、また声は変化している。

 

 

「――にしてもよぉ、あんなのまでいるとは想定外にもほどがあったぞ」

 

「そうだねぇ。僕もあれには内心驚いた。まぁ僕はもちろん?子供の前だからちゃんとした()()()()()を見せたからね。フフッ」

 

「そのムカつく言い方を辞めろ。結局怖かったんじゃねぇか」

 

「仕方ないじゃないか。流石の僕もアレは生理的に無理だ。――根絶やしにした方がいいかな?あのゴキ――」

 

「待てッ!」

 

 

 零夜が突如大声を張り上げた。

 

 

「一体どうしたんだい?」

 

「―――せめて、せめてGと言ってくれ。その方が、まだマシだ」

 

「……君、意外とそう言うところ気にするんだね。そう言うところが僕とは全く違うよ」

 

「あぁそうだな。本当に。俺はお前と違ってわざわざライダーの能力を使わねぇと火とか水とかの元素系が使えねぇんだよ」

 

「君が言いたいこと、僕が変わりに当てるよ。……靴とか剣とかをアレの体液で汚したくないんでしょ?」

 

「そうだ。アレだけは、本当に無理なんだ」

 

 

 アレに出来るだけ近寄りたくないというのは、生物に植え付けられた本能の様なもの。

 零夜も、その例に洩れなかった。

 

 

「全く、贅沢な悪人様だよ。悪人もGも忌避されると言う点においては同じなんだから、同類同士仲良くすればいいじゃん」

 

「おいこら。それだけは聞き捨てならねぇぞ。俺をGと一緒にすんじゃねぇよ」

 

 

 悪者と言う立ち位置にいる以上、様々な罵倒や悪口を言われることを覚悟してはいるが、流石にGは無理だ。そう言ったヤツを手あたり次第殴れる自信がある。

 同じ黒繋がりなんだから、別にいいじゃん、と言うシロに「やかましいわ」と叫ぶ。

 

 

本当にそこら辺俺と違うよなお前って。お前だってゴキブリ怖いんだろ?」

 

「怖いと言うより、僕の場合はただ嫌なだけさ。嫌いだから嫌悪感を表す。嫌いだから処分する。人間の心理に依存した考え方だ。違うかい?」

 

「――いいや、間違っちゃいねぇよ。それが、人間だ」

 

「そうかそうか。それじゃあ、もうこの話は終わりでいいよね?」

 

「あぁ、別に構わねぇ。しかし、もう一つ気になることがあってだな」

 

「なんだい、それは?」

 

「いや単純なことだ。マクラのことだ」

 

「マクラ……あぁ、紅夜のペットのことだね」

 

 

 マクラ――紅夜の友達の蜘蛛妖怪の名前だ。見た目がほぼマスコットキャラのためどうしても警戒が薄れてしまいそうな印象を持つ妖怪だった。

 

 

「ペットて……まぁあながち間違いじゃねぇけどよ。まぁいい。そのマクラなんだが、どのくらいの強さなのかと思ってな」

 

「強さ?」

 

「あぁそうだ」

 

 

 零夜は話を続ける。

 零夜が気になったのは、単純にマクラがどの程度強いのか、だ。紅夜とマクラがどのような経緯で仲良くなったのかは知らないが、それでも紅夜が『強い』と評価しているのならば、一度戦った、もしくは戦いを見たことがあると言うことだ。

 

 

「これから少々、長い付き合いになるからな。出来るだけ、あちら側の戦力も確認しておきたい」

 

「ペット――友人を戦力に入れるのは、ちょっと微妙なところなんじゃないのかな?」

 

「それでも一応、知らないよりは知っておいた方が良い。違うか?」

 

「――いや、まったく違わないね」

 

「つーわけだ。やること終えたし、直接本人に頼み込んでみるとするか」

 

 

 それで話を終え、零夜とシロは帰路へと着く。

 しばらく歩き、元の場所へと戻ると、そこにはいつもの光景――とはいかないが、ほぼ変わらない景色がそこにあった。

 いつもと唯一の相違点は、マクラがいることだ。マクラは現在、糸を使って妹紅と遊んでいた。

 

 そして、帰って来た二人を、紅夜の声が出迎えてくれた。

 

 

「あ、お帰りなさい。お二人とも」

 

「あぁ、今帰ったぞ。……ところで、ルーミアは?」

 

「彼女なら、あそこにいますけど…」

 

 

 そう言い、紅夜は木の物陰に隠れているルーミアを見る。

 

 しかし、なんとも端切れの悪い回答だ。だが、こうなるのも仕方ない。先ほどマクラがいること以外にいつもと変わったところはないと言ったが、それは間違いだ。

 もう一つ加えるとするならば、ルーミアの状態だ。ただでさえトラウマをほじくり返す存在である紅夜と一緒に行動すると言う凶行をしたにも関わらず、Gの追い打ちがかかり、彼女の心は今、圧迫されている。

 

 本当にGは、いい意味でも悪い意味でも今のメンバーの心に影響してきていた。

 

 ライラが立ち上がり、零夜に近づく。

 

 

「夜神。言ってやれ。あの状態では、隣にいてくれる誰かが必要だからな。この中で、お前以上の適任はいない」

 

「え、なんで俺が適任――」

 

「千年、一緒にいたんだろう?だったらお前以外に選択肢はない。それに、男の自分よりも女の私の方が良いと言う提案は受け入れないぞ。こういうのは付き合いが長い相手を隣に置くのが定石だからな」

 

「うッ――」

 

 

 正論だ。何も言えないほどの、正論だった。

 それに、ライラから「ルーミアと前を見て向き合え」と言われたばかりだ。それを踏まえると、適任は自分以外しか思い浮かばなかった。

 

 

「……とりあえず行ってくる」

 

「あぁ、行ってこい」

 

 

 促されるままに、零夜はルーミアに近づいた。

 

――その瞬間、世界から隔絶されたような感覚が零夜を襲う。

 

 

「―――ッ!?」

 

 

 辺りを見渡すと、先ほどとなんら変わりのない景色が辺り一面に広がっているが、唯一違うのが、先ほどまでそこにいたはずのライラやシロの姿、ましてや紅夜や妹紅、マクラの姿すらも見失ったことだった。

 

 

「なんだこれは…!?まさか、転生者――」

 

(零夜)

 

「――ッ!」

 

 

 突如、頭の中からシロの声が聞こえた。

 

 

(おいシロ!?これは一体どういうことだ!?)

 

(それは僕の『権能』で生み出した元の世界と隔絶された空間さ)

 

(お前の仕業かこれは!)

 

 

 突然やってビックリしただろ!と、零夜は心の中で憤慨する。

 何の前触れもなしにそんなことをされたら、誰だって驚くし怒る。零夜の反応は当然のことだった。

 

 

 

(夫婦水入らずって言うしね!これなら誰にも聞かれることはないから、安心しな!)

 

(安心できる要素がこれッぽっちもねぇよ!あと、誰が夫婦だ!)

 

(それ以外にいい言葉が見つからなかったんだ。言葉の綾ってやつだよ)

 

(違うよなそれ、絶対違うよな!?―――まぁいい。一応感謝しとくぞ)

 

 

 勝手に相談なしでやったことには怒っているが、周りに誰かいると話しにくいのも事実。それ故に、今回は素直に感謝することにした。

 そこでシロとのリンクが途切れ、零夜は目の前の問題に集中する。

 

 

「――――」

 

「おい、大丈夫かルーミア?」

 

「――――」

 

「大丈夫…な訳ないか。――怖かっただろ?まぁ俺もアレだけは無理なんだけどよ」

 

「――ッ、零夜にも、怖いもの、あったんだね」

 

 

 ようやく喋った。しかしながら、その声はか細く、力のない声だった。相当心が病んでいることが伺えた。

 零夜はやっと喋ったことに微笑して、さらに言葉を続ける。

 

 

「おい、俺を何も怖がらない冷徹な男みたいに言うなよ。怖いものがないなんて、そんなことはありえねぇんだからよ」

 

「――そう、だよね」

 

「例えば、なにか失うことが怖いとか、死ぬことが怖いとか、そんなもんがある」

 

「……零夜も、そんなこと思うときあるの?」

 

「あぁ、()()()()。まぁ俺のことはどうでもいいんだ。……それで、本題に入っていいか?『アレ』はまぁ……今度会ったら見つけ次第処分するぞ。いいな?」

 

「う、うん…」

 

「それでだ、俺も聞きたかったことがある。昨日のアレはなんだ?紅夜は悪くないとはいえ…それでもゲレルの血縁であることは間違いないんだ。あいつの気配に当てられて、トラウマが再燃していたはずのお前が、どうして積極的に紅夜と仲良くしようと思ったんだ?」

 

「―――」

 

 

 ルーミアはなにも答えない。

 依然として、無言のままだ。

 

 

「――そうか。別に、答えたくなかったら答えなくても「だって…構ってくれなかったんだもん…」は?」

 

「だって!ここ(過去)に来てから、ずっと零夜はシロだったりライラだったり紅夜だったりにずっと付きっ切りで…私にほとんど構ってくれないじゃない!」

 

「――――」

 

 

 まさか、それだけか?

 そんな子供じみた理由で、自分のトラウマを(えぐ)ってまで自分の気を引こうとしたのか?

 

 

「まさか……本当にそれだけか?」

 

「―――」

 

「そんな子供じみた理由で、自分のトラウマ抉ったのか?」

 

「―――」

 

「……一言言わせてもらうぞ。お前、バカなのか?」

 

「ウグッ」

 

「自分の怖い記憶掘り起こしてまで大人に構って欲しい子供すらいねぇってのに……お前、この千年間でだんだんとポンコツになってきてないか?」

 

「ポ、ポンコツって…!」

 

 

 ルーミアは裏返った声で否定するが、説得力が全くない、皆無だ。

 

 

「そりゃそうだろ。ポンコツっつーか知能が幼くなってるぞ」

 

「だ、だって…」

 

「……はぁ……とりあえず、そんな無理をするのはやめとけ。構って欲しかったのなら、暇な時ができたらいつでも構ってやる」

 

「本当に!?」

 

 

 大声と同時に顔を近づけて来て、零夜は困惑する。

 うるさいし顔が近い!そう心の中で叫んだ零夜は、ルーミアの両肩を掴んで引き離す。

 

 

「近いっての!本当だからあんまり近づくな!」

 

「たった今構ってくれるって言ったじゃない!」

 

「分かった分かった!それじゃあ――」

 

 

 零夜は正座した後、ルーミアの頭を持って優しく自分の膝の上に乗せた。

 

 

「ふえッ…」

 

「とりあえず、今は寝ろ。人払いは出来てるし、寝てもなにも問題ねぇよ」

 

「うん……ありがとう。……でもごめんね。それは出来ない…。それが、私なりの罪滅ぼしだから

 

 

 そうして、しばらくした後、彼女の可愛らしい寝息が、零夜の耳に入って来た。

 

 

 

 

 

 

「―――(にしても、なぁ。少しチョロすぎやしないか?)」

 

 

 ルーミアが眠った後、零夜は心配そうにルーミアを見る。

 世の中にはこんな言葉がある。『機嫌が悪い女性を慰めるのは大変』だとかなんとか。正式な言葉は忘れたが、確かこんな感じだったはずだ。

 だが確かに、女性の心は複雑で機嫌を直すのはかなり苦戦を強いられると零夜は思っていた。だが現実はどうだ。子供を慰めるようにやったら、それが成功した。これは零夜自身かなり驚かされた。

 

 

(世の中の女が厳しいのかそれともコイツが正常なのかと聞かれたら、確実に前者が正しいって言えるな。千年前は知性的な雰囲気があったってのに。千年でここまで変わるもんなのか…)

 

 

 思い出すは千年前。凛々しく可憐で、今思えば畏敬すらも感じたあの頃。

 それらを見比べると、どうしても見劣りする。だが、彼女がそうなってしまったのも理由と原因――因果律が存在する。

 ソレ(因果律)を作ったのは、紛れもなく夜神零夜その人だ。

 

 千年、戦いと無縁の生活を送らせてきたがためだ。

 

 

(時間は人を変える…。正に言葉通りだな。……この状態じゃ、いつか変な男に引っかかってもおかしくなさそうだな。まぁ、そんな日は永遠に来ねぇが。そういやなにか、コイツ眠る前になにか言ってたような…まぁいいか。)

 

 

 解放するつもりがないため、そんな日は永遠に来ることはないだろう。

 それと同時に彼女には申し訳ないが、彼女に本物の自由は、永遠に来ないだろう。

 

 

(いや…あるっちゃ、ある、か)

 

 

 いや、ある。

 彼女が()()()()()()をされる日は、いずれ来るだろう。

 

 夜神零夜の、計画が完遂した暁には―――、

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

 

「―――」

 

『―――』

 

 

 あの日から、また一日。

 結局、あの隔絶空間でまる一日を過ごした。

 

 あの後零夜も寝て、結局その日は一日寝ると言う事実だけを残しただけだった。

 

 零夜が能力でシロに思念で出たいと言う言葉を送った後、隔絶空間はガラスが割れるかのように音を立てて急速に崩壊して、元の光景へと戻った。

 急に現れたことによりシロを除いた全員に驚かれた。シロが前持って説明していたようだが、それでも急に現れたと言うことに驚かれたことに変わりはなかった。

 

 

 そして、時間帯は昼。場所は紅夜と親善試合を行った場所と同じだ。

 今零夜の目の前には、紅夜の友達、『マクラ』がいる。

 

 

「二人とも、頑張ってください!」

 

「マクラと夜神…どちらが強いか、見物だな」

 

「零夜ー!頑張ってー!」

 

「二人とも頑張れー!」

 

「――――」

 

 

 外部からの応援が、耳に響く。

 正直、零夜にとって応援などあまり意味がない。その理由としては、閑話だが『ご都合主義』がある。漫画で、外野からの応援で力が湧いて、自分より強い敵を倒すシーンがあるが、零夜にとっては「なんだこりゃ」だ。

 現実のルールから離反しているとしか思えない現象だ。そう言ったことで能力が上がるスキルがあるなら話は別だが、生憎零夜にそんなスキルはない。

 故に、零夜にとって応援はその言葉通りの意味合いなため、あまり意味はない。

 

 

 

「よろしくな、マクラ。お手合わせ頼むぜ」

 

『―――』

 

 

 マクラは無言だが、首を縦に振った辺り、了承したと言うことだろう。

 

 

「いくぜ」

 

 

 零夜は【ビルドドライバー】を取り出し、腰に装着し、【キルバスパイダー】に【キルバススパイダーフルボトル】を振ってセットする。

 

 

 

キルバスパイダー!

 

 

 零夜がハンドルを回すと蜘蛛の巣状のスナップビルダーが広がり、それに前後から挟まれるとさらに中心の空間が歪む。

 

 

 

Are You Ready?

 

 

 

「変・身」

 

 

 

スパイダー! スパイダー! キルバススパイダー!

 

 

 ブラッドスタークとビルドを合わせたような見た目。全体的に赤・黒の二色で塗装され、脚等に真っ赤な毒が泡立っているかのような模様がある。顔と胸の前から見たクモのような意匠、肩や腰のクモの脚のような飾りが特長がある―――【仮面ライダーキルバス】へと変身し、マスク越しにマクラを見つめる。

 

 

「姿が、変わった…!?」

 

「私と戦った時とは、また別の鎧だな」

 

「かっこいー!」

 

 

 三人からそれぞれの感想を戴いた後、ルーミアとシロを見るが、二人は見慣れてるおかげか、無言だった。

 そう言えば、紅夜と妹紅は零夜の変身を見るのは初めてだったため、驚きは十分にあっただろう。

 

 

「それでは、また私が審判を務めるぞ。それでは―――はじめ!」

 

 

 ライラの言葉と共に、零夜――キルバスは地面を蹴って跳躍し、マクラに紅いエネルギーを纏わせた拳を叩き込む。

 それに即座に反応し、マクラは自身の脚に紫色のオーラ―――妖力を纏わせ、キルバスに対抗する。

 

 

(『妖力纏い』!こいつもできるのか!)

 

 

 『妖力纏い』。自身の力を放出してそのまま拳に纏わせるのではなく、筋肉の繊維や血管一本一本に妖力を纏わせることで、ただ纏うだけの効果より数倍の威力を発揮させる技術だ。

 『妖力纏い』はこの世界はもっとも難しい高難易度の技術の一つだ。失敗すれば自身の体を傷つける行為だからだ。そしてそれは『妖力』に限らず、『霊力』も同様である。

 

 『神力』は――試したことがないため不明だが、神と言う超越的な存在が扱う力のため、纏うことは造作もないかもしれない。

 

 力の衝突で衝撃波が生まれ、互いに後方に吹っ飛ばされる。

 

 

『だったらこいつだ!』

 

 

 キルバスは【ドリルクラッシャー】と【ホークガトリンガー】を装備する。

 ドリルクラッシャーを『ガンモード』へ切り替え、【忍者フルボトル】をソケットに装填する。

 

 

忍者!

 

 

 ドリルクラッシャーが分身して複数の銃口がマクラに牙を向ける。

 さらに追い打ちをかけるようにホークガトリンガーのリボルマガジンを10回回転させる。

 

 

100(ワンハンドレッド)! フルバレット!

 

 

 100発の玉を装填し、ドリルクラッシャーとともに一気に発射する。

 同時に何十発も撃ったがために、砂煙が大量に舞う。

 

 

『―――』

 

 

 これほどやったのなら、流石にダメージは負うだろう。そう考えてはいたが、決して油断はしていない。

 その理由としては、外野にある。前回、危なくなったところでシロが止めに入った。しかし今回はそれがない。零夜はちらりと外野を見る。そこには全員がすまし顔でこちらを見ていた。

 

――つまり、まだ終わっていない。

 

 

『―――ッ!』

 

 

 その予感が的中した。煙の中から、一筋の光がキルバスに向かって飛んできた。

 咄嗟にホークガトリンガーを前に向けると、ホークガトリンガーに純白の糸が絡みついた。

 

 

『糸放出か、蜘蛛らしいじゃねぇか!』

 

 

 ドリルクラッシャーを投げ捨て、【スチームブレード】を装備し、バルブを操作する。

 

 

アイススチーム!

 

 

 スチームブレードは冷気を纏い、ホークガトリンガーを絡めている糸に押し付ける。

 すると、その部分から糸が凍り付いて、そのまま砂煙の方へと氷が広がっていく。

 

――煙の奥から、ブチっと何かが切れる音がすると同時に、糸が力尽きたように地面に落ちた。

 それと同時に、地面に巨大な影が生まれる。この場に影を生むような場所はない。つまり――

 

 

『上か!』

 

 

 キルバスは上を見上げると、そこにはマクラの姿があった。あの巨体で、よくぞあそこまで飛べたものだと感心する。

 そして、その感心とは裏腹に、キルバスは両の武器を投げ捨て、【カイゾクハッシャー】を装備する。

 

 

各駅電車・急行電車・快速電車・海賊電車!

 

 

 黄緑色の電車、【ビルドアロー号】をエネルギー状にして、上空のマクラに向けて放つ。

 対してマクラは、首を下に向け、地面に向けて糸を発射した。糸を巻き戻すことによって、その力を湯用して自身に放たれたビルドアロー号を避けた。

 そのまま地面に着地したマクラは、妖力を球状してキルバスに向けて発射した。

 

 

『なるほどな。そんなこともできるってわけか!』

 

 

 再び【ドリルクラッシャー・ブレードモード】と【トランスチームガン】を装備したキルバスは、【ユニコーンフルボトル】をドリルクラッシャーに、【扇風機フルボトル】をトランスチームガンのソケットに装填する。

 ユニコーンフルボトルの力によりドリルクラッシャーのドリル部分にユニコーンの角を模したエネルギーが纏われ、ドリルが勢いよく回転する。

 扇風機フルボトルの力で、トランスチームガンの銃口に風が集束する。

 

 

『ついでにこれもだ』

 

 

 もう一つの【トランスチームガン】を取り出し、【スケボーフルボトル】をソケットに装填し、トリガーを引く。

 エネルギー状のスケボーを召喚する。キルバスはスケボーに乗り、ドリルクラッシャーを前方に、扇風機フルボトルを装填したトランスチームガンを後方に突き出し、トランスチームガンのトリガーを引く。

 

 今まで集束していた風の力が一気に放出され、超速スピードで直線に突き進み、ユニコーンの力で貫通力が強化されたドリルクラッシャーでマクラに向けて突進する。

 

 

『―――ッ!』

 

 

 マクラが自身の目の前に糸を放出して、蜘蛛の巣状にする。それにどう言う訳か、空中に糸がくっついていて、それで形を保っている。

 しかしどうであれ、突っ込むことに変わりはない。蜘蛛の巣なぞ、破壊して――、

 

 

『――何ッ!?』

 

 

 しかし、それは叶わなかった。

 蜘蛛の巣にぶつかった瞬間、蜘蛛の巣にくっつくことはなかったが、その代わり強力な弾力性が、キルバスの行く手を阻んだ。

 まるでゴムのように、蜘蛛の巣が突進によって引っ張られるがユニコーンの力で貫通力が強化されているにも関わらず、貫通する様子が全く見られない。

 そしてゴムに弾かれるように、キルバスの体が後方に吹っ飛ぶ。

 

 

『クソッ!』

 

 

 背中から巨大な蜘蛛のかぎ爪を、4本出現させ、地面に突き刺して体を固定する。

 固定しながらも勢いは止まず、そのまま木に激突してしまう。

 

 さらにマクラが追い打ちをかけるようにキルバスに向かって糸を吐く。それが右手に当たり、木と完全に固定された。残された左手で無理やり引きはがそうとしても、ビクともしない。

 

 

『今度は粘着!?そういうことか!』

 

 

 キルバスは腕力を使って木を無理やり持ち上げる。

 【4コマ忍法刀】を左手で装備し、忍法刀のトリガーを三回押す。

 

 

風遁の術!竜巻斬り!

 

 

 竜巻切りで右手を固定していた糸を木ごと斬り刻み、細かく斬られた木が地面に落ちる。

 

 

『マクラ。お前の力、大体読めたぜ。弾力性のある糸に、今度は粘着性のある糸……お前の能力は、糸の性質を変える能力だ。加えて『妖力纏い』…紅夜が強いと評価するワケだ』

 

 

 マクラの能力。それは『糸の性質を変える』能力だ。

 放出する糸を弾力性のある糸に変えたり、粘着性のある糸に変えたりなど、様々な性質を含む糸に変える能力。

 それは、様々な状況に適応できる糸を生み出すことができると言う、マクラ特有のアドバンテージだ。

 

 

『しかしだな、今の俺も、糸の力はアドバンテージなんだよ』

 

 

 トランスチームガンとスチームブレードを合体させ、ライフルモードにし、【冷蔵庫フルボトル】をソケットに装填して、構える。

 

 

フルボトル!

 

 

『―――』

 

 しかし、これでは避けられてしまう未来が見える。だからこそ、予想外の一手をかます!

 キルバスは自身のスペックを駆使して紅い残像が見えるほどの高速で動き、マクラのすぐ近くにまで移動する。

 

 

『―――ッ!』

 

 

スチームアタック!

 

 

 流石のマクラも、この行動は予測できなかったようで、驚いた表情をしていた(表情は分からないが)。

 そしてトリガーを引き、冷気がそのまま氷となり、マクラの下半身を固定する。

 

 

『足さえ奪えば、もう避けられるもんも避けられねぇだろ』

 

 

 キルバスはドライバーのレバーを回す。

 

 

Ready Go!

 

キルバススパイダーフィニッシュ!

 

 

 背中から巨大な4本の蜘蛛の鉤爪を展開し、そのままマクラを叩き潰した。

 その勢いでキルバスを巻き込んで周りに爆発が起こる。

 

 

「マクラ!」

 

 

 紅夜の悲痛な叫び声が聞こえた。あの至近距離での超強力な必殺技だ。まともに喰らえばタダでは済まない攻撃。さらに追加で爆発までときた。これでは、中にいた二人が――、

 

 

『フィ~……』

 

 

 しかし、その爆発の中からマクラを背中の鉤爪で担いだキルバスが出てきた。

 ゆっくりとマクラを降ろした後、紅夜が二人の元に駆けつけ、マクラの状態を確認した。マクラは目をクルクルと回しながら、気絶していた。

 

 

「よかった…死んでなかった」

 

『当たり前だろ。「親善試合なんだ。死なせてたまるかよ」

 

 

 ベルトを外して、変身を解除した零夜はそう言う。

 

 

「零夜!大丈夫!?」

 

 

 他の皆も駆けつけ、それぞれの状態を確認した。その隣でシロが黄緑色の光と共に、マクラの傷を回復させていく。

 相変わらず、便利な能力だ。

 

 

「俺は大丈夫だ。それに、殺すつもりでやったわけじゃねぇし、時間が経てば時期にマクラも回復するはずだ」

 

「――そうか。それで、どうだった?マクラと戦った感想は」

 

「……正直、危なかったな。バリエーションの多さ……つっても分からねぇか。物事の変化って意味なんだが、それが多くなかったら、あいつの能力に翻弄されて、負けてたかもしれねぇな」

 

 

 例えば、ドリルクラッシャーやトランスチームガンなどの武器、そしてフルボトルが使えない状態でのバトルだったとしよう。

 こうなったら頼れるのはキルバス自身の圧倒的なスペックだ。

 

 つまり、このIF(イフ)が現実だった場合、キルバスのスペックVSマクラの『妖力纏い』と『性質変化』と言う図柄になる。

 特徴の数ですら負け、尚且つ『性質変化』と言う特性を見抜けなければ、負けていた確立が高かったはずだ。

 それに、()調()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

「―――」

 

「紅夜。俺が言うのもなんだが、そんなに気落ちするな。そいつ、強いんだろ?お前が認めてんだ。だから、大丈夫だって」

 

「そう…ですね。ありがとうございます、励ましてくれて」

 

「お礼なんて必要ねぇよ。……少し、湖の方に行ってくる。汚れた体を洗いたいんだ」

 

「分かった。マクラの方は私たちの方で看病しておくから、行ってくるといい」

 

「あぁ、そうさせてもらう」

 

 

 

 そういい、零夜は湖に向けて歩き出し、森の中に消えた。

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 

 

 

「ふゥ……」

 

 

 湖で上半身裸になって、汗を洗い流す零夜。

 零夜は先ほどの戦いを、思い出していた。

 

 

 

キルバススパイダーフィニッシュ!

 

 

 

 マクラに必殺技を叩き込む瞬間、零夜は手加減するようにしていたが、その次の瞬間、マクラは自身の体に(まゆ)のように糸で体を巻き付けたのだ。

 手加減した状態でその繭に必殺技を叩き込んだが、キルバスの必殺技でもヒビを入れることしかできなかったほどの強度を誇っていた繭に、思わず本気に近いほどの力を入れて叩き込んでしまった。

 

 しかし、それでもようやく繭を破壊できたほど硬かった。

 あれはおそらく、糸の性質を『硬性』にしていたのだろう。ならば、あの硬さも納得である。

 

 

「あのまま手加減してたら、あれで終わらなかったはずだ…。あれほど強力な奴を、どうして俺は未来で見なかった?」

 

 

 零夜は疑問に思った。あれほど強大な力を持っていたにもかからわず、どうして未来では姿を見せなかった?討伐されたとはとても考えにくい。

 と、なれば、封印されたと言う可能性が濃厚だ。未来では地底にでも封印されていたのかもしれない。

 

 しかし、それは妄想の域でしかないため、考えても無駄だと言うことで頭から振るい払う。

 

 

「ゴホッ、ゴホッ!」

 

 

 突如、零夜が咳をし、口に手を付ける。手になにか吐瀉物(としゃぶつ)が付着し、その正体を零夜は見た。それは血液だった。

 

―――そう、仮面ライダーと言う強力な力を使う代償として、零夜は様々なデメリットを肉体的ダメージに能力で変換しているのだ。

 ただし、デメリットのないライダーならば、デメリットなしに使えるため、それはそれでいいのだが……。

 

 

「キルバスだっただけ、まだマシか…。俺のハザードレベルはいくつだ?」

 

 

 ハザードレベル――それは【仮面ライダービルド】の専門単語で、ネビュラガスへの耐性のレベルであり、ビルド系の仮面ライダーに変身するために必要なレベルのことである。

 ビルドドライバーを使うのに必要な最低レベルは『3.0』。スクラッシュドライバーを使うのに必要な最低レベルは『4.0』。ちなみに常人だと『2.0』だ。

 

 

「―――ハザードレベル……『6.4』、か。マジで人間やめてんじゃねぇか……」

 

 

 ハザードレベル『6.0』は、人間の限界を超えた数値だ。

 とっくに受け入れていることなため、あまり心にダメージはない。ただ、こういったところで人間を辞めていると思うと、心にくるものがある。これは零夜に残っている人間としての矜持が原因だ。

 しかし、そんな矜持など持っているだけ無意味だと、無理矢理割り切る。

 

 

「これがエボルドライバーだったら、反動がどんだけ苦しいのか……想像できるけど想像したくねぇな」

 

 

 すでに想像を絶する苦痛は、何度も味わっている。例を挙げるとするならば【アルティメットクウガ】と【ゴッドマキシマムゲーマー】だ。

 あのライダーに変身した後のデメリットを肉体ダメージへと変換した後の苦痛は、思い出したくもないレベルだった。

 

 

「よし、そろそろあがるか」

 

 

 零夜は木の枝にかけていた自身の上着を持って、湖から出る。

 

 

「マクラが起きたら、とりあえず―――ん?」

 

 

 そのとき、零夜の真上――上空から巨大な影が零夜の全身を覆った。いや、全身どころじゃない。湖すら覆うほどの、巨大な影だった。

 何事かと、零夜は上空を見上げる。すると、そこにいたのは、巨大な緑色の鱗で覆われた蛇のような見た目(かたち)をした生物だった。

 

 

「あれは…!?」

 

 

 あの見た目に、零夜は見覚えがあった。実際に見たわけではない。ただ、伝承や絵本などで、見たり聞いたことがある程度だ。

 あの、あの生物は―――、

 

 

 

 

愚かな人間どもよ!返せ!我が宝を返せ!我が宝たる玉を!返せぇええええ!!

 

 

 

 

「龍…!!」

 

 

 

 伝説上の生物が、そこにはいた。

 

 

 

 

 




 トランスチームガン、零夜が何故二つ持っているのかと言う疑問についてですが、それは単純にビルド本編で【ナイトローグ】と【ブラッドスターク】用の二つがあったためです。
 二人ともダークライダーに分類しているので、これが二つ持っている理由です。

 そしてマクラがどの程度強いのか?
 キルバスはNEW WORLDでも高スペックであり、スペックをフル活用していたらマクラと互角に戦えた…って感じですかね。
 ただし、これは58話本編でも話した通り、IFの話であることを考慮してください。

 要約すると、マクラは肉弾戦に限定するのならキルバスと互角に戦えるほど強いです。さらに自身の能力である『糸の性質変化』を加えると、幅の広い戦いが可能だったため、肉弾戦限定のキルバスだったら、勝敗はマクラに傾いていたことでしょう。

 そして、龍の登場。あの龍は言動で分かるように、【龍の頸の玉】の持ち主の龍ですね。
 さて、次回、どうなるのか!


 シロの今回のイメージCV【近藤孝行】

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