東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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――前回、14歳になった零夜は、転生後(東方project)の世界にて家族を失った。これが自分の『シナリオ』であることを知っている零夜は、泣けばいいのかそれとも割り切るべきなのか分からぬまま、人里を後にする。

 夜の森の中、【仮面ライダー武神鎧武】となって襲い掛かってくる妖怪たちを血祭りにあげ、後処理を行おうとしたとき、金髪の美女――【ルーミア】が現れた。


3 常闇と究極の闇

「お前は…確か……」

 

 

零夜は、何度も彼女の姿を、本で見たことがあった。

それこそ、八雲紫同等気にしなければならない危険な妖怪。

その妖怪の名は、ルーミア。

 

 

「私、今ね、このあたりにたくさんの血と肉の匂いがあるから来てみたんだけど、いたのは人間一人だったから、今とってもがっかりしてるわ」

 

 

ルーミアと名乗った女性が、ここに来た理由が分かった。

零夜が殺した妖怪たちの残骸の匂いを、彼女は辿ってきたのだ。

 

 

「せっかくごちそうを奪えると思ったのに…残念でしかないわ」

 

 

ルーミアは心底がっかりしていた。

見ただけでその様子がわかる。

 

 

「それで、お前はどうする気だ?」

 

「そんなの決まってるわよ。私ね、今とてもお腹が空いているの。だから――」

 

 

彼女の言葉の続きと同時に、零夜の右腕が吹き飛んだ

 

 

 

「だからね、あなたを喰らうことにしたの」

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

彼女は、いつの間にか零夜の後ろに立っていた。それだけではない、彼女の右手には黒く、血塗られた長剣があった。先ほどまではなかったも物だ。

そして、その血は自分の物であると零夜は気づく。

 

 

「あら?最初はこれだけで悲鳴を上げるのに。あなたって結構胆力があるのね」

 

「こちらと…普通の人生過ごしてねぇんだよ…!」

 

 

傷口の手前を押し、血の流れを止める。

そして彼女は零夜の傷口を心底おいしそうに見つめる。

 

 

「あぁ……。やっぱり人間の肉っていいわね…艶があっていいわ…」

 

「お前が人喰い妖怪だっては知ってたが……いきなりすっかよ…」

 

「あら?それが人喰い妖怪よ?」

 

「そうか…。だったら、やることは一つ!」

 

 

零夜は能力を行使する。能力を使い、引き裂かれた腕を『引き寄せ』、傷口の『肉』『骨』『神経』と『繋げる』。動作確認をすると、ちゃんと腕は動く。

 

 

「…ッ!驚いたわ。まさか直接再生するならまだしも、斬られた腕を元通りにするなんて…」

 

「…能力で、それはお手の物なんだよ」

 

「こちらとしては、あなたの能力は気になるものね。せっかくだから教えてくれないかしら?」

 

「敵に教えるほど馬鹿じゃねぇよ」

 

「あら、残念」

 

 

そう言いルーミアは嘲笑(ちょうしょう)する。

嘲笑(あざわら)っている。この妖怪は、人間をいたぶって殺すのを。それが、人喰い妖怪の――妖怪のサガなのかもしれない。

 

 

「お前の闇を操る程度―――いや、闇を操る能力は厄介だからな。できれば会いたくなかった」

 

「あら、釣れないこと言うわね。それに、私の能力まで知っているなんて…。あなた何者?」

 

 

このとき、零夜は思った。――――あ、こいつバカだ、と。

そもそも、零夜のあの発言には彼女、ルーミアの情報秘匿能力を試したのだ。

闘いの始まりは、お互いの探り合い。より相手より多くの情報を入手すれば勝利に近づく。たまにその理論すら無視するほどの強敵がいるが、同等程度だったらこの理論が通る。あそこは、ただ無視するか誤魔化すかしてほしいところだ。初対面の相手に自分の手の内を知られているのだから、それくらいの配慮はしてほしかった。

 

 

「……で、このあとどうするおつもりで?」

 

「もちろん、あなたを骨の髄まで貪りつくすわ」

 

「…やめろ、と言ったら?」

 

「私がそれを聞くとでも?」

 

「そうだよなぁ…」

 

 

そして、零夜が黙る。先ほどまであれほどペラペラ喋っていた男が急に黙り、ルーミアは不思議に思う。

 

 

 

「どうしたの?急に黙って?」

 

「いやぁ…。そうだよなって思っただけさ」

 

「は?」

 

 

突如、なにを言い出すのかと困惑するルーミア。

だが、そんな彼女を無視し、零夜は話を続ける。

 

 

「この世は弱肉強食で、理不尽で、不条理で、不公平なんだ。いづれこうなることは予想できてたじゃないか。俺。こんなんで驚いてどうする?こんなんで立ち止まってられない。俺にだってやらなきゃいけないことがある。そのためには……殺す!

 

「なに?自己暗示でもしてるの?そんなの聞いてるほど私は優しくないわよ?」

 

「できれば、これは使いたくなかったんだがなぁ!!」

 

 

その瞬間、零夜の体から強烈――とてつもないほどの闇が放出された。

 

 

「ッ!?この闇は…!?一体なんなの!?」

 

 

 突然のことで、驚きを隠せないルーミア。

 彼女の能力は【闇を操る程度の能力】。その名の通り、闇を操る能力だ。

 だからこそ、闇にはとてつもなく敏感なのだ。

 

 

「この闇…私と同等か、それ以上か…!」

 

 

 ルーミアは、笑っていた。それはまさに、狂った笑みを浮かべて。

 

 

「いいじゃない…!やってやるわよ」

 

 

ルーミアは剣を構える。

そして、零夜もそれと同時に、ポーズをとる。

 

 

「変身」

 

 

零夜の体が、闇に包まれる。

エネルギーを流動させる血管状の組織が出現し、徐々に姿が変わっていく。

全身を包む黒の鎧。血管状組織が全身に周り、黒き複眼を持った超戦士。

 

 

 

仮面ライダーアルティメットクウガ・ブラックアイ

 

 

 

「なによ…その姿?もう、人間と言うより、私たちと同じ妖怪じゃない」

 

『…………』

 

「姿が変わっただけで、ここまで雰囲気が変わるなんて…。あなた何者なの?」

 

『仮面ライダー……』

 

「仮面ライダー?なんだかわからないけど、危険な奴だってことは分かるわ」

 

 

そういい、ルーミアは早速行動に出た。クウガに近づき、下から振り上げる一撃。

これをクウガは難なく手で受け止める。そして、もう片方の拳に闇のエネルギーを溜める。

 

 

「ちッ!」

 

 

ルーミアは危険を察知したのか、剣を離し、クウガから放たれた拳を闇の壁を生成し、ガードする。

が、それも無意味に終わり、直撃した拳はそのままルーミアを遠くまで吹き飛ばす。

 

 

「あがぁ…!」

 

 

彼女は足の力でなんとか踏みとどまるも、その過程で周りの草木、地面が抉れている。

口から血が吐き出る。それを口で抑える。

それを見届けたクウガは、闇の剣を破壊した。

 

 

「なッ…!?私の剣が!?」

 

『この剣も元は闇。破壊できて当然だ。俺は、究極の闇だからな』

 

「究極の闇、ね…。言ってくれるじゃない。常闇の妖怪である私に直接喧嘩を売るなんて…」

 

 

そう言いながらも、先ほどの余裕とは違い、ルーミアには冷汗が流れていた。

ルーミアの本質は『闇を操る』こと。相手を闇の空間に堕とし、混乱しているところを一気に仕留めると言う闘い方をしてきた。大抵の相手はこれで終わっていた。だが、相手は同じ闇を操るもの。しかも上位の存在ときた。

 

 

『…残念だ』

 

「なによ?突然」

 

『……俺は、これでもつい先ほどまではお前のことを恐怖の対象として見ていた。だが、姿が、力が変わった程度でこんな赤子のように見えるとは…。ここの連中が弱すぎるのか、それともライダーの力が強すぎるのか…。それとも、両方か』

 

「~~ッ!!バカにして!」

 

 

クウガの一言でルーミアの怒りに触れ、再び闇の剣を作り、クウガに突撃する。

それを見たクウガは、同じく剣――『呼称*1』【ブラックライジングタイタンソード】を装備し、ルーミアの剣とぶつかり合う。

漆黒の黒き闇と、漆黒の(いかづち)の闇が衝突しあい、二人を中心としたすべてのものが無に還る。

 

ルーミアは一度剣を引き、再び3時の方向から剣を振るう。だが、それはクウガの左腕によってガードされる。

 

 

「なッ!?」

 

 

闇のもう一つの特性。それは次元にまでも干渉する無の力。

次元を斬る。つまり次元まで貫通すると言うことだ。どんな防御ですら斬り伏せるまさに最強の力と言っても過言ではない。だが、光が闇を、闇が光を打ち消すように、闇と闇も、またお互いに干渉し、なかったことにする。

 

それだけではない。この鎧の強度もだ。すべてを貫通する闇の力が、この鎧と敵の闇に、防がれている。

 

 

「くッ!」

 

『では、今度はこちらからだ』

 

 

そのとき、クウガはタイタンソードを二本生成した。

刹那、音速を超える速度で振るわれた二本の剣が、ルーミアの闇の剣を二本とも砕く。

 

 

「ッ!?」

 

 

自分の闇の剣が破壊されたことに驚愕したルーミアだったが、すぐに冷静さを取り戻し、再び二本の剣を創って対峙する。ルーミアは考える。何故自分の闇の剣が破壊されたのか。闇は実体を持つようで持たない。闇は空間そのものを飛び越え、歪ませている。絶対に壊れることのない不壊の産物。それがどうして壊れたのか、必死に考える。

 

そんなことを考えている合間にも、作った剣は次々に自分の作った剣を破壊していっている。

そして、一つの結果にたどり着く。

 

 

そうだ。クウガは最初に行っていた。自分は『究極の闇』だと。つまり自分と対等の闇の存在。ルーミアの闇の剣の原理は、『次元接触』。空間そのものを飛び越える闇は、この次元では見えているが、実際は別の次元に本体は存在している。相手が同じ闇ならば、同じ次元に本体があるはず。つまり、次元が重なり合って、壊れる理由はただの強度。ルーミアの剣は、タイタンソードに負けている。

 

それを理解したルーミアは、一度クウガから下がる。

 

 

『…このまま張り合っては、勝ち目はないと踏んだか』

 

 

クウガがそう呟いた次の行動。それは二本のタイタンソードを強烈な勢いで地面に刺したことだ。それにより周りが肘引きを起こし、地面が不安定になり、木が倒れる。バランスを少々崩してしまうルーミア。そんなことは知らずと、クウガは右腕を突き出す。

その右腕が徐々に棘が生えてくる。そして、その棘を右斜め、二時の方向に上から振り下ろした。

それは、直撃した。

 

後ろに下がると同時に、ルーミアの胸や腹のあたりに激痛が走る。なんとかそれに耐え、傷口を見る。

服が破け、血がドバドバと垂れている。自分の素肌が見えない。それほどまでに紅く染まっている。

すぐに自分の再生能力で、傷を治し、自分の素肌が見えてくる。

 

だが、最後まで自分の再生を許してくれるワケもなく、次の攻撃が来た。

 

 

『―――ッ!』

 

 

『呼称』【ブラックライジングペガサスボウガン】の先端を、引く。銃口を中心に空気が回転しながら収束する。そしてボウガンに、黒き雷が纏わりつき―――発射した。

黒き雷を纏った空気弾が連射され、ルーミアを襲う。

 

 雷を纏った空気弾は、音速を超える。

 そしてさらにクウガは速度――威力を増すためにある工夫をする。そのためにクウガはある能力を発動させた。その名も【超自然発火能力】。

 この能力は周囲の物質の原子、分子を操って物質をプラズマ化させ、対象を発火させる能力だ。周囲の物質――木の葉。先ほどの地響きを起こした際に倒れた木から舞い落ちている木の葉。それをプラズマ化させ、発火させる。

 それにより炎は酸素を欲し、自動的にルーミアに向けて向かって行く空気弾に縋った。炎は空気弾に燃え移り、結果、炎雷(えんらい)の弾丸が出来上がった。

 

攻撃を喰らったばかりのルーミアはその攻撃を避けることも受けとめることもできず、再び直撃。

 

 

「がッ…!!」

 

 

貫通こそしなかったものの、凝縮された炎頼弾はかなりの質量と勢いを持っている。

その弾は、ルーミアの体力と体の自由を奪うのには十分な威力だった。

 

そして、クウガはゆっくりと、ルーミアに向かって行く。

その手には、黒い薙刀、『呼称』【ブラックライジングドラゴンロッド】を手にしている。そして、その薙刀に黒い電流が走る。

 

そして、ルーミアは悟った。あれを喰らえば、ただでは済まないと。

そこで、ある一つの、無謀で無意味な賭けに出た。

 

 

「あのねぇ…。さすがに女の子相手に酷すぎなしないかしら?」

 

『戦場では男女関係ねぇ。逆にそんなんで見逃されるとでも思ってんのか?』

 

「ハァ…そこら辺も対策済みってわけね…」

 

 

元々、希望などなかった賭けだ。あまり絶望はしていない。

だからこそ、彼女ももう気を抜いてはいられない

 

 

いいわ。あなたには本気を出してあげる。この私を短時間で本気にさせたことを、後悔しなさい」

 

 

彼女からも、大量の闇が放出される。それと同時に周りが見えなくなる。

常人なら、これだけで混乱し、困惑し、狂乱し、不安と恐怖のどん底に落ちるだろう。

だが、彼女は分かっている。相手は自分と同じような闇の存在。こんなのは意味がないと。だが、少しの威嚇にはなる。

 

ルーミアは背中に闇の羽を生やし、両腕に闇の剣を持つ。

ルーミアの、これ以上ないほどの本気だ。

 

 

『来い』

 

「えぇ!来てあげるわよ!」

 

 

両者、忽然とその場から消えた。

二人の間――中心に二人が現れ、お互いの武器がぶつかり合う。

クウガはロッドを回して回転攻撃をする。その方向は横、縦、斜めと方向が徐々に違って行く。

 

ルーミアはそれを二振りの剣で防いでいく。

だが、押されている。力の差が圧倒的だ。一撃一撃をいなそうとするが、重すぎて衝撃ないなしきれない。

 

 

「くっ…!」

 

 

そのとき、一瞬の出来事だ。クウガは薙刀を回すのをやめ、一点集中で突きを行った。

それに感づいたルーミアは体を横に逸らすことによってそれを回避する、が、クウガが薙刀を横に振るった。

 

そのとき、『ゴキッ!』っと鈍い音が響いた。

おそらく背骨が折れた音だ。突然の出来事にルーミアは理解しきれず、そのまま地面に転がった。

 

 

「あ、が、あがぁ…!!」

 

 

すぐに再生を開始する。だが、相手はそんなの待ってはくれない。

 

 

『この世は弱肉強食。強い奴が生き残り弱い奴が死ぬ…。それが自然の理。お前が弱者で、俺が強者。それは覆らない。だから―――死ね』

 

 

そうして、クウガの拳の炎状のエネルギーがため込まれる。

 

 

「ま、待っt―――」

 

 

ルーミアの静止を聞かず、クウガは拳を彼女に向けて、振るった。

 

 

「ッ!!」

 

 

思わず、目をつむってしまう。

自分の死が近づいてきているための、少しでも恐怖を紛らわすための行動だった。

 

 

 

 

「………………?」

 

 

 

 

目を閉じて、しばらく立つ。

痛みがこない?そう疑問に思う。何故だろうとルーミアは恐る恐るゆっくりと、目を開けた。そこにいるのはクウガ。それには変わりなかった。だが、手が―――

 

 

 

『…………!!』

 

 

 

震えていた。まるで、殺す覚悟をしていないただの一般人のように。ただの未殺人者のように。

おかしい。先ほどまで彼から漂っていたのは明らかな血の匂い。自分と会うまで妖怪を殺していたはずだ。そんな彼が何故、自分を殺すことを拒んでいるのだろうか?ルーミアにはそれが理解できなかった。

とにかく、これはとてつもないチャンスだ。

 

ルーミアは自分を殺すことを躊躇っているクウガから離れる。

この間にも自分の骨の回復は済んでいた。なので逃げるのにはなんの支障もなかった。

 

 

ルーミアは、ただ逃げる。

自分の後ろに居る、自分を殺そうとしていた存在から。

不思議と、あの存在は自分を追ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!」

 

 

逃げなくては。そう何度も頭に響く。

初めてだった。自分があそこまで大敗したのは。

 

だけど、負けたというのに清々しい。殺されなかったというのもあるかもしれないがなにより、自分と同じようで格上の存在に負けるのは当たり前だからだ。あのクウガの強さは、納得せざる負えない強さだった。

 

 

「消耗が、激しすぎる…。どこかで、身を潜めない「見つけたぁ。ピッタリだよ。マジで」―――?」

 

 

そのとき、男の声が聞こえた。

聞いているだけで、男の声は、聴いているだけで不快になるほど不愉快だった。

この男からは妖力を感じる。つまりは妖怪だ。

 その妖怪は、天然パーマの短い金髪、赤い瞳をしている青年だ。

 

 

「あんた、誰?」

 

「は?お前これから主人になるヤツにため口聞いている?」

 

「は?」

 

 

ルーミアは理解できない。

突如現れた男に、主人になると言われたら当然だ。この男からさっきのクウガとは違い、特別な力は感じない。ルーミアは弱者の戯言だと解釈する。

 

 

「急に何を言い出すのかと思ったら…。戯言もいい加減にしなさい。弱小妖怪が」

 

「あのさぁ。今の聞いてた?お前、下僕。俺、主人。格下で低俗で視野が狭くて男に媚び売って次の次世代―――子供を産むことしか能がない女がさ、権力的にも上な男に指図して、抵抗するワケ?ないわぁ~~~」

 

「勝手なこと言ってくれるわね…。大体、あんたなんてこちらからお断りよ」

 

「今の話聞いてた?性別を第一人称で隠蔽するなよ。元より男って言う生き物はね。行動一つ一つが、存在自体が正義なんだよ?」

 

 

そう言い放ち、男は気持ち悪いほどの、心の底から嫌悪するほどの凶相を浮かべる。

 

 

「―――ちッ」

 

 

話が通じていない。ルーミアはそう直感した。

目の前の男は自分の考えを押し通そうとしている。誰の考えも受け付けず、ただひたすら自分の考えることを正義と、正しいと信じて突っ走っていくタイプの生き物だ。

 

ルーアミはそう言った生き物に嫌悪感を抱いている。

もとより、正義など飾りだ、と考えている彼女。ずっと生きているからこそわかる価値観。見方。考え方。

 

過去にも人間の中に、結果さえ出さればその過程で失うものなどどうでもよいと、それが正義だと語る人間。考えは妖怪的には共感できた。が、この人間は後に誰からも信用を失い途方に暮れる人生を過ごしていた。

 

また、1を斬り捨て10を救うと言う言葉しか通用しない状況で、一人も死なさず助けようとする正義を掲げる人間もいた。この人間も、結局それができず1を人質に取られ、結果的に1も10も捨てられた。そして、その人間も死んだ。

 

これだけではない。

たくさんの、正義を掲げる人間を見てきた。正義なんて存在しないのだ。そもそも、正義か悪かだなんてそんなの人間が勝手に生んだ概念、妖怪である自分に使えるわけがない。そもそも、使おうとは思えない。

 

 

「古来より、女って生き物は男より格下の存在なんだ。女が男の意思や意見に従うのなんて、当たり前なんだよ。つまり、俺がお前に股を開けって言ったらお前は開かなきゃなんないの。わかる?ほら分かったって言えよ。そんで、股開け」

 

 

どこまでも、見下げたクズだとルーミアは嫌悪する。

この男の考え方は、時代で言えば江戸時代辺りの考え方だろうか?この辺りから男尊女卑がある。つまりこの男は江戸時代辺りの―――なんてどうでもいい。

 

この男の口ぶりからして、女を本当に道具としか見ていない発言。

そして淫猥な考え。見ているだけで虫唾が走るほどの外道ぶり。

 

 

「こっちはね、今とっても疲れてんの。あんたごときに構ってる暇はないのよ…」

 

「は?お前の都合なんてどうでもいいんだよ。あ、もしかして焦らしか?そうすることであえて俺の股間をうずうずさせて、それで一気に解放してくれるってワケ?あぁ~そういう考えか。すまんすまん。全く考えつかなかったわ」

 

 

どこまでも自分の考えだけで物事を進めようとする目の前の男に、いい加減ルーミアの堪忍袋の緒が切れた。この男は自分を性欲処理の道具としてしか見ていない。それが怒りのオイルとなって注ぎ込まれる。

 

 

「死ねぇ!!」

 

 

瞬間――ルーミアは闇の剣を作り出し、剣を縦に振り、あの男を一刻も早く殺そうとする。

ルーミアが放ったのは闇の剣により闇の斬撃。空間そのものを断裂し、敵の防御力関係なく貫き、斬り、撃ち抜く。そんな闇特有の攻撃を、男に喰らわせようとした。

だがその瞬間、闇の斬撃は男の目の前で消滅した。

 

 

「なッ!?」

 

 

これにはルーミアは驚きを隠せない。

クウガに自分の能力が効かなかったのは同じ闇だったから。同じ存在同士ならば効果も同じ。それは納得できる結論だった。だったら、今目の前にいるこの男は?先ほどまでこの男からは特別な力を感じなかった。では、どうやってあの男は自分の技を消滅させたのか?

 

 

「急にやってくれたなぁ。あの攻撃さ、縦にやってたよね。もしそのまま直撃したら俺の顔や胸、心臓だけじゃなくて俺の金的に当たってたよね?もし直撃しちゃったら、もう女を孕ませられなくなるじゃないか。もう女を泣かせられないじゃないか。女をヒーヒー言わせられなくなるじゃないか。女を快楽に堕とせないじゃないか。女を俺に屈服させられなくなるじゃないか。俺が楽しめないじゃないか。お前さ、女のくせに男である俺の楽しみ奪うわけ?こりゃあお仕置きが必要だね」

 

 

長ったらしいクソみたいに聞きがたい言葉を言い終えた瞬間、ルーミアの体は太陽光を一直線に浴びたように熱された。

 

 

「―――ッ!!」

 

 

すぐさまルーミアは自身の周りに闇を形成。

すべての概念から外れる瞬間だ。だが、そんな世界の(ことわり)から外れた存在を、丸ごと熱は闇をルーミアごと焼く

 

 

「あがぁあッ!!」

 

 

頭に理解不能の文字が浮かびながら、ルーミアは地面に転がっていく。

熱により、服の所々が焼けている。服だけならまだいい方だ。目が溶け、舌が縮れて、髪が焼け、皮膚が爛れ、骨が爆ぜて露出し、肉が焦げる匂いが漂う。意識が吹き飛びそうになるが、自分の本能がそれを許さない。妖怪の特性で、怪我は徐々に回復していく。そんな状態でも、男はただ見ているだけだ。この男の狙いはルーミア。殺すような真似はしないと分かっている。ただ、その男は嘲笑っている。

 

やがて、服以外が治ると、男は口を開いた。

 

 

「うーん。なかなかにいい見た目になったね。……でも、もうちょっと焼けてくれないかな?そうすればいいところが露出されるからさ。目に保養なんだよね」

 

「黙りなさい…!この変態のクズ野郎…!」

 

「は?男になにそんな口聞いてんの?何度も言ってるだろ?男は至高の存在なんだ。女は男の言うことはすべて聞くべきなのに、いつまでそんな口聞いてるつもり?いいかい?あぁ。もしかして意味を理解できてなかったのかな?俺は今お前にもういっそのこと服破いて全裸になりなよって意味。わかった?分かったらさっさとやれよさぁ!!」

 

 

あくまでも、自分の意見を押し通し、他人に強要させようとする悪性(あくしょう)。もうこの男にどんな言葉も届きやしないと、ルーミアは気づい―――否、最初から気づいていた。

 

 

「うるさい…ッ!それに、あんた今、どうやって、私の闇を…!?」

 

「あのさぁ!こちとら優しく要求してやってんのにそれを質問で返すとか馬鹿にしてんのか俺を!?―――――あぁ、分かった。うんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうんうん!!!いいね!そうだそうしよう!答えてあげるよ!!」

 

 

なにが優しくだ、先ほどから無理やり強要しているだろうと、誰もが思う結論。ルーミアもその一人だ。そしてなぜか先ほどの激情していたときとは打って変わり、しばらく考えこんでから考えを変えた。考えこんだ結果、ルーミアの疑問に答えることにしたのだ。

 

 

「君はどうして、自分の技が消えたのか、疑問に思ってるね?特別に教えてあげるよ。俺の能力は【光を司る能力】だ」

 

「光を…!?でも、闇と光は対極の存在…!お互いに打ち消されるはず!」

 

「まだ分からないかな。君の能力は闇を操る!対して俺の能力は光を司る!操ると司るは違うんだよ!司ることが上位互換!つまり上!絶対的な存在!司ることすなわち、神!いや、俺は神をも超える存在だ!」

 

「………ッ!!」

 

 

男の声を聴いているだけで、虫唾が走る。この男の目を見るだけで気持ち悪い。

いや、もはやこの男の存在そのものに嫌悪感を覚えている。

 

 

「まぁ。結局のところ。お前じゃ俺には勝てないの。逆にさ、感謝して、喜ぶべきなんだよ?こんな至高で優良で良質で優秀で、最高で究極で、至極、至上 、最上、無上の高見であり完成で完璧な存在である俺の遺伝子をもらえるなんて、これ以上喜ばしいことはないでしょ」

 

 

そう言いながら、男はルーミアに近づく。

ルーミアはなんとか立ち上がろうとするが―――

 

 

「ぐがぁあ!!」

 

 

瞬間、ルーミアの手が焼け、また膝から崩れ落ちる。

 

 

「太陽光より熱いものはないでしょ。それに、光の速さは一瞬。わかりにくいからこの星を一秒で30周できるほどの速さ。俺とお前の距離なら0.1秒もかからない。なにが起きたかわからないだろうから、教えてあげるけど、そのまま太陽の光を光線としてお前の手に当てただけさ。あぁちなみに、なんで俺がお前に俺の能力を教えたのか教えてあげるよ。それはね、お前の絶望する顔が見たかったから。司る力は神を超える力。そんな絶望的な力を前に、無力だったという顔を見ながら、涙を流しながら犯す女は―――たまらないッ!!たまらな過ぎる!!さてさて、無駄話が過ぎた」

 

 

長話をしていれば、すでに男とルーミアの距離は間近。あと一歩でも足を踏み込めばルーミアの背中を踏んでしまうほどの位地にいる。

男は足蹴りをしてルーミアを仰向けにする。

 

 

「うぐっ…!」

 

「さて、抵抗は無駄だよ。潔く俺に犯されな。大丈夫大丈夫。()()()のことまで、ちゃんと面倒見るからさ」

 

 

そうして、男はズボンのベルトに手を出す―――――刹那。

 

 

 

「ぐはぁあああああああ!!!!」

 

 

 

突如、男が『漆黒の拳』によって、殴り飛ばされる。

拳は男の顔に直撃し、地面を抉り、穿(うが)ち、草木が倒壊し、砂ぼこりが巻き起こり、辺り一帯が爆ぜた。

 

 

「――――――……?」

 

 

ルーミアには、一瞬の出来事で、理解するのに相当な時間を有した。

そして、その漆黒の拳の正体が、今、分かった。

 

 

「あなたは…!」

 

 

 その姿はまさに怪物。

 豪壮(ごうそう)な漆黒の鎧を有し、黄金の血管を思い浮かべる血管状組織。

そして、黒い複眼。

 こんな特徴を持った生物なんて、ただ一人。

 

 

 

『タイミング的にはちょうどいい…なんて言っている場合じゃないな。強力な妖力がしてみたから来てみたものの、まさかこんな自体になっているなんてな。で、大丈夫か?……なんて、俺が言える立場じゃねぇな』

 

 

 

 そこに立っていたのは、古代の超戦士・黒き光【仮面ライダークウガアルティメット】。究極の闇が、今、その姿を現した。

 

 

 

 

 

*1
名前を付けて呼ぶこと




変更点。ライジングアルティメットクウガからアルティメットクウガに。
理由は次回でわかります。


できるだけゴミクズなヤツ書いてみました。
書く度にゴリゴリとメンタルがやられていく…!!

この男がクズだと思う人、感想よろ!……どんなあいさつだろ?

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