東方悪正記~悪の仮面の執行者~   作:龍狐

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 どうもー、約一週間ぶりですね。
 ウラノスとの邂逅、どのような結果になるのか、楽しみな人が多いでしょう。

 それでは、どうぞ!


67 『天』と『星狩』

「―――初めまして、だな。【ウラノス・カエルム】」

 

「……貴様、何者だ?俺の名前を知っているなど…」

 

「聞いた。あんたらお得意の知恵者から」

 

「あの罪人からか。これは明確な裏切り……すぐさまに粛清しなくてはな」

 

「――――」

 

 

 あぁ、完全にウラノスだ。あの回想で見せた、空真の面影は微塵もない。もう、あれが妄想や幻想の類だったら、まだよかったのに。

 だが、現実は非情に、それが現実だと突き付ける。龍神の記憶が、何よりの証拠だった。

 

 

「……一つ、戦う前に聞きたい」

 

「なに?何故私が貴様の質問に応えねばならん。そんな無意味なことを―――」

 

「――龍神。この名前に、聞き覚えはないか?」

 

 

 瞬間、ウラノスは口ごもった。思った通り、反応してくれた。一番聞きたかった、その内容。

 今、聞けるかもしれない時が来た。

 

 

「地上で、龍神と会った。龍神はあんたの話をよくしてくれていたよ。なにせ、アイツが認めた数少ない人間だからな。だけど今のアンタは……一目で分る。昔と、龍神が話してた頃と、変わってる。何が、お前をそこまで変えたんだ?」

 

 

 空真がウラノスになった理由は、謎の失踪事件によるものだ。性格改変の理由は、それが有力候補だが、遠回しに聞いている。

 “お前に、一体なにがあったのか”と。

 

 ウラノスは黙った後―――口を開いた。

 

 

「お前、あのヘビと知り合いか」

 

「……ヘビ?」

 

「あぁ、あれだけ長いんだ。ヘビで合ってるだろう?」

 

「……仮にも、かなり仲良かったんだろ?何故そんな風に呼ぶ?」

 

「そんなの、見下しているからに決まっているだろう」

 

 

 直球だった。ウラノスは龍神を自分より『弱者』と罵り、罵倒した。『記憶』の中の彼からは、想像できない発言だった。

 

 

「……龍神は、一度も負けたことがないって自負してたぜ?」

 

「ふっ、所詮は弱小なヘビ。嘘をつくのが得意らしいな。この私が、ヘビ如きに遅れを取るとでも?私をまともに相手できるのは、月でもたったの()()。ヘビ如きがおこがましい。ごっこ遊びも疲れたよ」

 

「――――ッ!」

 

 

 血が煮えくり返るほど、激情しそうになるのを、ぐっと堪える。血迷うな、冷静さを保て。あれは、本心じゃないはずだ。

 あの事件のせいで、おかしくなっているだけなんだ。零夜は確証する。あの『地球の記憶』が、嘘じゃないって、思いたいから。

 

 でも、やられてばっかりじゃいられない。

 

 

「ウラノス……お前、嘘つきだな」

 

「―――なんだと?」

 

「お前は龍神より弱い。それは、龍神に挑んで完膚なきまでに負けた俺が、保証できる」

 

「ハッ、滑稽だな!弱者の保証など、なんの保障材料にもならない!よくそんな恥ずかしいことを堂々と言えるな!地上人は、口八丁(くちはっちょう)が得意のようだな!」

 

「だったら、試してみるか?」

 

「……なに?」

 

「俺とお前が戦って、俺がお前に勝てば、さっきの言葉は嘘ってことになるよな?だって、龍神に負けた俺にお前が負けたら、必然的にお前は龍神より弱いことになるからなァ!」

 

「貴様ッ!!この俺が下賤で下劣な地上人に優しく対応してやったのに、その態度!つけあがりやがって!後悔させてやる!」

 

 

 ウラノスは風を纏い、その風の勢いを利用して零夜に近づき、大剣を振るう。

 零夜は横に除け、咄嗟に虚空から【カイゾクハッシャー】を装備して、黄緑色の電車、【ビルドアロー号】をエネルギー状にして発射する。

 

 

各駅電車・急行電車・快速電車・海賊電車!

 

 

「小癪な!」

 

 

 ウラノスは大剣を地面に向けて振るうと、そこから瞬間的に凍り付いていき、氷の壁が生成され、ビルドアロー号が激突すると、砕け散ると同時にビルドアロー号も消失する。

 それと同時に、ホークガトリンガーを装備して、 ホークガトリンガーのリボルマガジンを10回回転させる。

 

 

100(ワンハンドレッド)! フルバレット!

 

 

 弾丸を百発、休みなしで発射する。ウラノスは大剣を振るうと、ウラノスを中心に竜巻が発生する。鋭利で繊細な竜巻が、銃弾の貫通を阻害する。

 竜巻の中から、ウラノスが零夜に向けて突撃してくる。

 

 

「ッ!」

 

「死ねッ!!」

 

 

 豪快に横に振り回された大剣。後ろに避けることで、ギリギリ直撃を免れた。

 空中で逸れた体を活用し、大剣の()を足蹴りにする。手から離れることを期待したが、大剣であることとウラノスの握力が強すぎたせいか、それはできなかった。

 

 そのまま空中で一回転して、着地する。

 

 

「よくも私の剣を…死にたいようだな!」

 

「……一応、お前にも騎士道精神の欠片はあるみたい…なのか?」

 

 

 一瞬そう考えるが、ただ自分の武器を蹴られたことへの恨みだろうと、自分の馬鹿な考えを切り捨てる。

 空真ならともかく、ウラノスにそれがあるとは思えない。

 

 

「なにをごちゃごちゃと言っている!さっさと―――」

 

「あぁ、そこ動くなよ。発動するから」

 

「なに――」

 

 

 瞬間、ウラノスの背後から衝撃波と金属音が響く。ウラノスが驚いてそこを見ると、短剣が地面にゴトリと置かれていた。

 そして、その瞬間を零夜は見逃さない。後ろを振り向いたウラノスの肩関節をめがけて、『離繋(りけい)』の能力で亜空間から()()()()()()()()()()()()()()()()()を取り出して、刺す!

 

 

「あがッ!」

 

 

 ウラノスの鈍い悲鳴が響く。本来刺さりそうにない刃とも呼べない刃。その刃が、ウラノスの肩関節めがけて見事に刺さったのだ。

 それを引き抜き、鮮血が飛び散る。零夜はウラノスと一定の距離を取る。

 

 

「予想的中、だな」

 

「貴様ァ!一体、()に何をした!?」

 

 

 一人称が私から俺に代わった。化けの皮が剥がれてきたようだ。絶対的な自信があったのだろう。自分の防御力に。それを貫通されたから、怒りと困惑で感情の枠が埋まっている。

 

 

「化けの皮が剝がれてきたな。お前にはそっちの方がお似合いだぜ?」

 

 

 挑発を混ぜてウラノスにそう言うと、ウラノスは激高する。

 

 

「俺は質問をしているんだ穢れた地上人め!どうやら貴様は脳も穢れてマトモな会話もできないようだな!」

 

「底辺な会話してんのはお前だろ。挑発に挑発で返す方が、返って底辺なんじゃないかな?」

 

「ぐッ…!!」

 

 

 思う所があるのか、ウラノスは押し黙る。そして――考えた末に、怒りに転結する。

 

 

「黙れ!挑発などする暇があったら、もう少しまともなことに知能を働かせたらどうだ!?」

 

「はいはいそーですね。じゃ、そっちの話はそれで終わりでいいか?」

 

「―――ッ!!もう許さんぞ!ここで散れ!!」

 

 

 ウラノスは頭の血管が浮き出た状態で、大剣に『炎』『風』『光』の属性を纏わせて斬撃として零夜に向けて放った。

 そして、それが零夜の足元付近で爆発を起こす。

 

 

「ハハハハハッ!これでお前も無事では――『済まされるんだよ、これが』なにッ!」

 

 

 煙の中から、籠もったような声が聞こえる。

 煙の奥から、口を開いて舌を出したヘビを真横から見た姿を思わせる赤い複眼が、ギラリと光る。

 頭部の星座早見盤のような球体が、星の輝きを放つ。

 

 煙が晴れ、その姿を表していく。

 

 

コブラ! コブラ! エボルコブラ!

 

フッハッハッハッハッハッハ!

 

 

 不気味な笑い声と共に、【仮面ライダーエボル・フェーズ1】がその姿を表した。

 変身した零夜―――エボルは、右手の人差し指をコンコンと、自身の頭に当てる。

 

 

『準備完了だ。どっからでもかかってきな』

 

「ふんッ。全身装甲か。臆病な奴め」

 

『さっきまで、生身で戦ってたんだがなァ…。フルプレートで生身の奴に傷負わされた奴に言われてもなァ』

 

「――殺す!」

 

 

 何度もウラノスの逆鱗に触れ、最早ご立腹のウラノス。手ぶらな左腕を力いっぱい落とすと、エボルを包むように大量の水がエボルに降りかかり、零れ落ちることなく、エボルを水の監獄で包んだ。

 

 

「そのまま、溺れ死ね!」

 

『―――』

 

 

アイススチーム!

 

 

 音声が――響き、水の監獄が氷結する。それと同時に、氷結の監獄が一瞬にして破られる。

 

 

「は――?」

 

『水圧が邪魔だったんでな、出るのも面倒だったし、凍らせてから脱出させてもらった』

 

「な、ならば!!」

 

 

 大剣を地面に突き刺すと、雷の群れがエボルを一斉に襲う。それだけではない。両腕に右に『炎』、左に『闇』を纏わせて、それを螺旋状にして放つ。

 上と真正面。二つの攻撃を捌くことは、実質不可能――のはずだった。

 

 それは一瞬の出来事。

 

 

スチームショット!

 

 

 【トランスチームガン】と【スチームブレード】を合体したライフルモードのエレキスチームの状態で、【コブラエボルボトル】を装填して、引き金を引く。

 電撃を纏った弾丸が、コブラのように曲がりくねるエネルギー弾を雷に向かって炸裂した。上空で爆発した。

 一瞬の出来事だ。『炎』と『闇』の螺旋攻撃が到達する前の出来事だ。

 

 次に、【エボルドライバー】のレバーを回す。

 

 

エボルテックフィニッシュ!

 

 

 足元に星座早見盤を模したフィールドを発生させ、エネルギーを右足に収束させて回転キックを見舞った。

 炎と闇の攻撃は、霧散する。

 この一瞬の出来事に、ウラノスは困惑した。

 

 

「あ、あり得ない!!俺の攻撃が、こんな一瞬で攻略されるなんて!!それに、『炎』はともかく、『闇』だぞ!?空間に直接干渉できる力だぞ!?それが、どうしてこうもあっさりと…!?」

 

『一つ教えといてやる。俺の必殺技発動時には、一定範囲の空間を圧縮・崩壊・爆発させる力があるんだよ。まぁ要するに超新星爆発ってワケだ』

 

 

――超新星爆発。

 太陽の8倍以上の比較的大型の恒星が最期に起こす大爆発のことだ。それに似た現象を、エボルの必殺技は可能とするのだ。

 当然、言葉の意味など知らないウラノスは、ただただ困惑するだけだ。

 

 

「なんだそれは!?非常識にもほどがあるだろう!?」

 

『それにな』

 

 

 超高速を用いて、残像が生まれるほどのスピードでウラノスに急接近して、拳を叩きこむ。ウラノスの腹に、激痛が走り、唾液を吐く。

 防御を無視した攻撃は、綺麗な花畑を蹂躙しながら突き進み、ウラノスは途中で地面を抉りながら不時着する。あの攻撃で、確実に内臓が傷ついた。

 ウラノスはヨロヨロと起き上がり、エボルはゆっくりとウラノスに近づく。

 

 

「ば、バカな――!俺の防御が、機能していない…!?」

 

『ちげぇよ。突破しただけだ。お前の――風の防御をな』

 

「な、何故それを――!?」

 

 

 ウラノスはあからさまな動揺を見せる。

 そう、ウラノスの防御力の秘密――それは、風の装甲だった。この風の防具は、不規則に吹く風が攻撃をずらしていたのだ。

 全身に風を纏うことによって、攻撃の軌道を変える。これがウラノスの異常なまでの防御力の秘密だった。

 

 フィーディーニの鎖の巻き付けで腕が潰れたのも、その時の風の向きが内側に作用していたためだ。

 

 あまりにも単純で、誰にも考え付けるような、簡単な防御だった。だが、気づけなかった理由は、その風があまりにも微量だったからだ。微風なのに攻撃を逸らすほどの風。この矛盾を概念として確立しているのは、『能力』の恩恵か。

 さらに大抵の攻撃はこれで防げるが、ルーミアの『闇』などは防ぎようがなかった。だからこそ、同じ『闇』で相殺していたはずだ。

 

――ゲンムの太陽の炎を纏った拳も『水』と『(二酸化炭素)』の元素でなんとか相殺して防いだから。

――隕石の落下で無事だったのも、『光』の力で逃げたから。その熱からも『水』の元素の力で相殺したから。

――腕力のパラメーターを上げまくった攻撃で、頭が潰れなかったのも『風』の力で衝撃を受け流し、『闇』の重力操作でダメージ軽減かつ、クレーターも自作自演。

 

 ニュートンの助言がなければ、気づけなかったことだ。彼の助言が今、ようやく役に立ったのだ。

 

 

「どうやって俺の能力を見破った!?絶対に気付かないはずなのに!!」

 

『悪いな。()()()()()()()()。対策さえ知っていれば、お前はどうだってことのない、ただの雑魚なんだよ』

 

 

 未来で苦戦した敵も、その情報(データ)を取得していれば、立場は逆転する。タネがすべて明かされて、その対策をしている以上、ウラノスはただの雑魚に成り下がったのだ。

 さっきのグニャグニャした刃でウラノスを傷つけられたのも、繊細かつ不織(ふしょく)式の風の刃の向きを利用して、隙間を狙うための武器だったのだ。

 

 それに、エボルの腕部・脚部のEVOゼノベイダーグローブEVOゼノベイダーシューズは接触した物体を自在に分解・再構築する能力を持っている。つまり、攻撃対象の装甲を無視して内部中枢に攻撃を叩き込むことが可能なのだ。

 

 風の装甲を完全に無視して攻撃を叩き込んだ。相当痛いはずだ。心身ともに。

 

 これを知った時は、臘月にも通用するのではないかと愚策したが、『権能』と言う絶対的な格差がある以上、エボルでも流石に無理だと考えた。

 

 ともかく、エボルの力なら、ウラノスの攻略など容易いと言うことだ。

 

 

「対策を知っているだと…!?誰も知らない方法だぞ!それをどうやって!?」

 

『うちにも優秀な科学者(ニュートン)がいてなぁ。そいつからの助言だ』

 

「だとしても!この短時間で見破れるはずが…!?」

 

 

 ウラノスは困惑する。たったこれだけの時間で、自分の防御の秘密を見破られ、尚且つ追い込まれていると言う状況に、憤慨した。

 

 

「認めるか…!ならば、力で潰してやる!!」

 

 

 ウラノスは大剣を投げ捨て、拳に『炎』を纏わせて、体を闇で覆った。地面を蹴って、エボルへと急接近した。

 拳を突き出し、エボルを後方3メートルまで吹き飛ばした。その際に地面についていた足の跡から摩擦によって煙すら出てくるほどだ。

 

 

「どうだ!」

 

『なるほどな。先ほどと同じに見えて違う。『炎』で攻撃力を爆発的に上げて、『闇』の重力操作で攻撃力の昇華…。これほど違うとはな』

 

「フッ!賢いようだが、これならば貴様も防ぎようがないだろう!」

 

『―――』

 

 

 エボルは殴られた腹を(さす)る。痛みはない。

 ゼノチェストアーマー*1EVOオムニバーススーツ*2の効果でほぼ傷はないが、それでも――、

 

 

『そうだな。2%程度じゃ、お前には物足りないか』

 

「―――は?」

 

 

 ウラノスの素っ頓狂な声が無視される。エボルドライバーからコブラエボルボトルを引き抜き、【フルボトルホルダー】から【ドラゴンエボルボトル】を取り出し、装填してレバーを回した。

 

 

ドラゴン!

 

ライダーシステム!

 

エボリューション!

 

 

 星座早見盤型のエネルギー、エボルの左右に出現し―――エボルを、包む。

 

 

Are you ready?

 

 

『エボルアップ』

 

 

ドラゴン! ドラゴン! エボルドラゴン!

 

フッハッハッハッハッハッハ!

 

 

――蛇は、龍を喰らう。

 仮面ライダーエボル・ドラゴンフォーム。またの名を【エボルドラゴン】。

 

 龍――かつてウラノス(空真)と関係のあるフォーム。

 

 

『フェーズ2。今度はこれで相手をしてやる』

 

「忌々しき姿だ!その装甲、潰してやる!」

 

 

 先ほどと同じ攻撃を、ウラノスはエボルに向かって放つ。エボルは動かずにその攻撃を――無傷で受け止めた。

 

 

「なにッ!?」

 

『今度はこっちの番だ』

 

 

 エボルは拳に蒼炎を纏い、ウラノスの頬をぶん殴る。目玉が飛び出そうな勢いで殴られたウラノスは下斜めに強烈な勢いで吹っ飛ばされ、地面と花を抉りながら、飛ばされ、途中で止まる。

 

 

「が、あ、がァ…!!」

 

 

 ウラノスは『光』の力で自身の体の回復を図る。その間にも、ウラノスの視界には――足元の花を蒼炎で燃やして歩く、エボルの姿があった。

 その姿は、まるで死神、悪魔――、

 

 

「舐めるなぁあああああああ!!!」

 

 

 激高して叫ぶウラノスは、『水』と『雷』の元素を混ぜた攻撃を、ユニコーンの角のような形状にして、エボルに放った。

 

 

『ふんッ――ん?』

 

 

 拳の炎でそれを一蹴(いっしゅう)すると、ウラノスは『氷』と『風』の元素を混ぜた氷礫(こおりつぶて)の竜巻をエボルを中心に発生させた。

 そんな礫と速度が合わさった、凶悪な攻撃――、

 

 

スマッシュスラッシュ!

 

 

――それは、蒼炎の斬撃でかき消される。

 晴れた竜巻の中心には、【ビートクローザー】を持つエボルの姿があった。

 

 

「何故だ…俺の力が、何故通用しない!?」

 

『そうだな……俺が教えてやれることがあると言えば、お前は()()()()()()()()()()心に驕りが生まれた。俺からみりゃぁそれが敗因だな』

 

「ふざけるな!そんな理由で俺が弱くなっているはずがない!なにかの間違いだぁあああああ!!」

 

 

 その言い分を認めない―――認めたくないウラノスは、体に暴風を纏い、発光する。これは、『風』と『光』の元素の力だ。

 突如、ウラノスの姿が掻き消える。残像が見えないほどに。

 

 

『―――ッ』

 

 

 瞬間、エボルの全方位から強烈な打撃が複数回叩き込まれる。この打撃の生みの親は、ウラノスだ。『風』と『光』。速度に特化した力で、蹂躙しようと企んでいる。

 だが――それもエボルには通用しない。

 

 攻撃されている最中(さなか)で、エボルは行動に移す。

 

 

ラビット!

 

ライダーシステム!

 

エボリューション!

 

 

 レバーを回して、星座早見盤型のエネルギーがエボルの左右に出現し―――エボルを、包む。

 

 

Are you ready?

 

 

『エボルアップ』

 

 

ラビット! ラビット! エボルラビット

 

フッハッハッハッハッハッハ!

 

 

 

―――龍は、兎を喰らう

 仮面ライダーエボル・ラビットフォーム。またの名を【エボルラビット】。

 

 速さに特化したフォームだ。

 変身の衝撃で、ウラノスは遠くへと吹き飛ばされる。

 

 

「うぐぅううううう!!」

 

『――フェーズ3。これで、十分だろ』

 

「戯けるなぁあああ!!」

 

 

 再び超高速を駆使して、エボルに近づくウラノス。一発目の拳を叩き込む――、

 

 

『ふんッ』

 

「ゲホッ!」

 

 

 瞬間、より早くエボルの拳がウラノスの腹に到達した。赤い衝撃波とともに腹に拳をモロに受けたウラノスは、そのまま膝から崩れ落ちた。

 頬を膨らませ、胃から逆流しようとしてくる胃酸をなんとか押し込める。息を荒げながら、叫ぶ。

 

 

「何故だ!?俺のスピードを超えるだと…!?『光』の速度だぞぉおおおお!!?」

 

『……悪いな。知り合いに、光を扱う能力者(ライラ)がいるんだ。光の速度は……もう感覚で慣れた』

 

「ふ、ふざけるな!『光』の速度だぞ!?慣れてたまるか!!」

 

『まぁそこら辺は人外補正ってことで、な』

 

 

 ちなみに、エボルラビットの【ラビットヘッド】には、

 

EVOイヤーフェイスモジュール*3

EVOツインアイラビット*4

 

 が存在しており、これの補正によって『光』の速度に対応できたと言うのは、秘密だ。

 

 

「認めるか認めるか認めるかぁ!!」

 

 

 ウラノスは怒りのままに速度にものを言わせた連撃を、再び放つ。それでも、動きが早いのはエボルだ。拳を拳で相殺して、逆に手数の多さでウラノスを殴ってダメージを蓄積させる。

 

 

「アガァアアアア!!」

 

『どうしたどうした!!さっきまでの威勢が、まるで嘘のようだぞ!!』

 

 

 やがて、ウラノスからの攻撃が来なくなり、こちらの一方的な蹂躙と化した。赤いエネルギーを纏ったエボルの速度は急速に加速してウラノスの唇と地面を接吻させた。

 

 

『どうだァ?バカにしていた奴に一方的にやられる屈辱は?―――そういやぁ、この姿のモチーフ……元となった動物は『兎』なんだ。どこかの月の兎を、思い浮かべるだろォ?』

 

「―――ッ!!」

 

 

 顔を見なくとも、ウラノスの顔が憤怒(ふんぬ)に染まっているのが分かった。月の兎――それは無論玉兎だ。

 レイセンが逃げていないこの時代――『玉兎奴隷化』が始まっていない今では、ウラノスはただ玉兎を見下しているだけのはず。

 そんな『兎』に負けたと言う屈辱が、ウラノスを支配した。

 

 殺したい。殺したい。殺したい。その衝動をもってして体を動かそうにも、体はピークを迎えて言うことを聞かない。

 そんなとき、

 

 

コブラ! コブラ! エボルコブラ!

 

 

 エボルはラビットフォームからコブラフォームに戻し、赤い複眼でウラノスを睥睨(へいげい)する。

 

 

『これで終わりだ。安心しな。命までは取らないでおいてやるよォ。だから、安心してイきな!』

 

 

エボルテックフィニッシュ!

 

 

 レバーを回してボトルの成分をさらに活性化。エネルギーを右拳に集中して、死なない程度に手加減を――、

 

 

ドゴォオオオオオン……!!

 

 

 そのときだった。天井が崩れ落ちた。

 

――そうだった。ここは、『室内』だった。花畑のおかげで、ここが室内だったことをすっかり失念していた。

 いやそんなことはどうでもいいのだ。天井を突き破って現れた謎の人物。煙はゆっくりと晴れて、その姿を表した。

 

 全身を包む深緑色のフルアーマー。そのアーマ―には龍を意識させるような装飾が事細かに施されており、芸術的価値があるだろうと一瞬で理解できるほど精巧な鎧を纏った二メートルくらい人の容姿。

 龍の頭部を模した兜はとても頑丈で、兜の奥から、深紅の二つの光が走るのが特徴。

 

 武器は両の腰には二メートルの人の容姿を持つ存在が持つにちょうど良いほどの大きな二振りの刀。その刀を納める鞘も、金や銀などと言った宝石が施されている鞘であり、とても上質なものだとわかる。

 

 

『お前は―――!!!』

 

 

 その人物は、忘れようとしても忘れられない、あの人物―――いや、龍物。

 三年前、かつて零夜を完膚なきまでに叩き潰した、強力な力の持ち主であり―――空真の大親友。

 

 

『龍神……!!』

 

「……久しぶり、と言えばいいのか?夜神」

 

 

 龍神が、月にて姿を表した。

 

 

 

 

 

 

 

* * * * * * * *

 

 

 時は約一時間前。アナザーデンライナーに乗ってから10分程経った頃だ。

 

 

 

ガタンゴトン ガタンゴトン

 

 

――列車は音を立てながら、夜の上空を走る。

 八両編成で構成されている列車の一両に、複数の人影があった。

 

 

「―――本当に、空を走ってるわね」

 

「本当ですね。レールが出たり仕舞われたり……どのような仕組みなのでしょうか?」

 

 

 輝夜と永琳が、窓から見える景色の感想を述べる。輝夜は単純に褒め、永琳は仕組みを気にしている。

 そして、その隣で、武器である刀を抱きながら、椅子に座る紅夜。初めて乗る乗り物への困惑と、くるかもしれない敵への警戒をしている。

 もっとも、困惑の方が大きいがために全く動かないのだが。

 

 

「驚きだな……空を走る鉄の塊があるとは」

 

「それを言うなら、月のやつだって同じじゃない」

 

「そ、それもそうだな」

 

 

 また、その奥ではルーミアと狐面を被った状態のライラ(レイラ)が固まって話し合っていた。常に冷静なライラも、この状況には困惑せざる負えないようだ。

 

 

「とりあえず、今後の方針は、あの二人を竹林に無事に置いてから、話会うってことでいい?」

 

「あぁ。だが、あの二人が無事に帰ってくれればの話だが…」

 

「不吉なこと言わないでよ!ただでさえ一回目だってギリギリだったんだから、この三年間、考えに考えたし、きっと大丈夫!」

 

「そうだといいんだがな…」

 

 

 不吉なことを言うライラの言葉をこれ以上聞きたくなく、ルーミアは別の方へと足を運ぶ。次の目的地は、紅夜だ。

 

 

「大丈夫?」

 

「は…はい…」

 

 

 ルーミアが紅夜の顔を見ると、何故か顔色が悪かった。

 

 

「大丈夫!?もしかして、食あたり!?」

 

「い、いえ……。ウォクスが言うには、『乗り物酔い』と言う現象らしいです…。乗っている間だけの辛抱らしいので、耐えます」

 

「あ、うん……」

 

 

 どうやら、紅夜は乗り物酔いしやすいタイプらしい。ウォクスからの助言で、治る状態異常だと言うことを認知して、耐えているようだ。

 こればっかりは彼女にはどうにもできない。と言うことで、そのまま放置することにした。

 

 そして、次に向かう先は残り一つのみ。輝夜と永琳のいる場所だ。

 

 

「やっほ、どうかしら?乗り心地は」

 

「そうね、内装も、景色も文句はないんだけど……明かりが」

 

 

 ちなみにだが、アナザーデンライナーのライトは、紫色なのだ。暗色であるため、気分が悪くなっても仕方ない。

 

 

「……我慢して。仕様だから」

 

「仕様って…やっぱこれ設計した人に文句言いたいわねこれ」

 

 

 文句垂れ流すなよ――と言いたげな口を無理やり閉じて、ルーミアは永琳の方を向く。

 

 

「…一つ聞いておきたいんだけど、……デンドロンについて」

 

「デンドロン…光輝のことね?それがどうかしたの?」

 

「えっと…まず、シロが疑問に思ってたことらしいんだけど、名前のことだって」

 

「名前…?それがどうかしたの?」

 

「えっとね…シロが、誰にも聞こえないくらいの音量で、『光輝の名前と称号が一致しない…』って呟いていたのを聞いたの」

 

「意味が分からないわ?名前と称号が一致しないってどういう意味?」

 

「それは――」

 

 

 ルーミアは永琳にシロが疑問に思っていたことを話す。

 

――デンドロンの真名(まな)が『光木』ではなく『光輝』と『光』の要素しかない疑問

――デンドロン・アルボルと言うのが、『ギリシャ語』と『ローマ語』で『木』を意味すること

 

 

「と、いうことなの」

 

「……ちょっと待って。確かに光輝の漢字はそれで合ってるけど、なんで漢字すら分かるの?私そこまで話した覚えないんだけど」

 

「け――能力じゃない?」

 

「そんな能力があるのね…言葉を文章で見返せる能力かしら?結構便利な能力ね、交渉とかで使えそう」

 

 

 永琳は数少ない情報から、シロの能力が会話を文章で見ることができる能力だと推測した。

 ルーミアは思わず『権能』と言ってしまいそうな口を閉じて、さらに話を続ける。

 

 

「それに、デンドロン・アルボルと言う言葉にそんな意味があったこと自体初耳よ。地上の言葉が使われていたということは……あの事件の犯人は、地上に詳しい人物と言う線が濃厚ね」

 

「そこは私はついて行けないから、次いくわね。前に月に侵入して情報集めた時に、ソイツの能力だけ分からなかったのよね。脅威になりそうな人物は大抵ピックアップしたんだけど…」

 

「仕方ないわよ。光輝の能力は、あまり戦闘には向かないし。まぁ…使い様によってはとても強力な能力になるんだけど、知れなかったのも無理ないわ」

 

「それで、一応知っておきたいの。デンドロンの能力について」

 

 

 今まで不透明だった、デンドロンの能力。ずっとあの男の能力を知れなかった理由は、誰もデンドロンについて詳しいことを知っていなかったからだ。

 詳しそうだったトヨヒメでさえも、曖昧にしか覚えていなかった。それほど、目立たない能力だと思っていたが、デンドロンへの不安要素が拡大していくこの現状では、知るほうが得策だ。

 

 それに、知れなかった理由はもう一つ。詳しそうな未来の永琳の心が完全に壊れていて、記憶を読み取れなかったとシロは言っていた

 流石に心の壊れた魂から記憶を読むのは不可能だそうだ。それを知った時は、『権能』も無敵ではないと安心すればよかったのか、同じ女性として二人のことを悲しむべきなのか、二つの感情が入り乱れて混乱した。

 

 

「デンドロンの能力。それは―――」

 

 

 

キィイイイイイイイ!!

 

 

 

「「「「「――――ッ!!!?」」」」」

 

 

 

 その瞬間、爆音と衝撃が一同を襲った。車体は横に傾き、今にでも落ちてしまいそうになる。

 

 

「なにが起こったの!?」

 

「車体の不備かなにか!?」

 

「いや、これは……()()()()()()()!!」

 

 

 そう、紅夜が叫んだ。全員が窓から見える傾いているのと逆の方向――つまり衝撃を受けた方向を見ると、森の中から燃え盛る弾幕のような攻撃が放たれていた。

 

 

「クソっ、ここまま迎え撃つぞ!」

 

「でも、中からじゃ攻撃できな―――」

 

 

 その瞬間、地面と天井が逆転した。

 レールから外れ、空中を真っ逆さまに落ちてしまった。

 

 

「きゃあああああ!!」

 

 

 輝夜の悲鳴が響き、空中で永琳が自らの腕と体で輝夜を包む。自らクッションになるつもりだ。彼女も蓬莱人だから問題はないものの、地面に落ちたら彼女のケチャップが飛び散るのは確定になる。

 そんな中、3人は冷静だった。

 

 ルーミアは妖怪としての本来の力で飛べるため問題はない。

 ライラも、光の速度で動けるために体は丈夫だ。落ちた程度ではどうにもならないだろう。そ

 そして、紅夜は―――、

 

 

ピィイイイイイイイ!!

 

 

 口笛を、鳴らした。

 この状況で、なんの意味もないだろうと思う口笛―――だが、彼だからこそ、意味があった。

 

 

――地面に直撃する一歩手前で、突如現れた蜘蛛の巣がクッションとなり、5人を支えた

 

 

 突然の出来事に、困惑する輝夜と永琳。

 蜘蛛の巣から降りた紅夜とライラは、暗闇が支配する森の奥から()()()()()()()()()()()が姿を表した。

 

 

「マクラ!」

 

「(^_^)/~」

 

 

 その正体は、紅夜の友達である蜘蛛妖怪の【マクラ】だった。

 タランチュラのような見た目に反して、マスコットキャラのような見た目をした強い力の持ち主だ。―――仮面ライダーキルバスと肉弾戦で互角に戦えるほどに。

 

 

「マクラか。助かった、ありがとう」

 

「本当、偉い子よねぇ~…」

 

「(≧▽≦)」

 

 

 ライラとルーミアも近づいてきて、マクラを褒める。

 そして、突如現れた生物に警戒していた二人も味方であることを知って安心する。

 

 

「この子が私たちを助けてくれたのね、ありがとう」

 

「(*^▽^*)」

 

 

 喜びを露わにするマクラ。その裏で、永琳は辺りを見渡す。

 

 

「姫様。話は後に……私たちの乗っている乗り物を襲撃した襲撃犯がいることを忘れてはなりません」

 

 

 永琳の一言で、全員が現実へと戻った。そうだ。アナザーデンライナーを攻撃し、墜落させた犯人がいるはずだ。

 少し奥で墜落したアナザーデンライナーが周りの木々を侵食しながら燃えている。襲撃犯は、この炎を目印にして、近づいてきているはずだ。

 落ちた衝撃で、どこから来るのかもう分からない。だからこそ、迎え撃つしかない。

 

 円形になり、360度を警戒していると―――()()()は現れた。

 

 

「あ、ああ……みーつけ、た…。見つけた見つけた見つけた……」

 

「「―――ッ!!」」

 

 

 その人物は、壊れた機械のように、乾いた声で同じことを何度も繰り替えす。

 目も虚ろで、口からはヨダレが垂れている。とても正気の人間には見えない。

 

 手には弓を持っており、背中には矢筒が。おそらく、アナザーデンライナーへの攻撃はあの矢で行ったのだろう。

 炎を纏っていたのを見るに、おそらくそれは能力によるものだ。

 

 だけど―――、

 

 

「あなたは…!」

 

 

 永琳と輝夜は、その人物を見た瞬間に顔を凍らせた。

 襲撃者が、予想外の人物であったことへの驚愕だ。

 

 

「なんだ、知っているのか!?」

 

「知っているも、なにも……!!」

 

 

 

 

 

「命、令、執、行!!殺す殺スこロすコロスころぉおおおおおおすぅうう!!」

 

 

 

 

 

 

 狂気的に叫ぶ、その男の『名』は――、

 

 

 

 

 

 

デンドロン・アルボル(光輝)……!!」

 

 

 

 

 

 

 ―――光輝こと、デンドロン・アルボル。

 ヘプタ・プラネーテスの、『表側』の最後の一人。今まで姿を隠していた最後の一人が、ルーミアたちの前に姿を表した。

 

 発狂し、目を血走らせながら―――。

 

 

 

 

*1
エボルボトルに含まれる未知の物質を圧縮・加工した装甲。地球上のどの物質よりも優れた耐久力を備えている。フェーズごとに耐久力が上がる

*2
いかなる天体においても完全に破壊活動を実行できるよう、全身を覆う遮断フィールドを展開し、過酷な環境や敵の反撃から変身者を保護する機能を備えている

*3
敵の気配やわずかな動作を捉えることで次の行動を予測し、素早い反撃を可能にする聴覚強化装置

*4
戦闘時の反応速度と索敵制度が高められた、陰に潜む敵を見つけ出すための特殊な嗅覚センサーも組み込まれた視覚センサー




 ウラノスとのバトル…。

 未来で大分苦戦したウラノスをエボルの力で圧倒する零夜!
 そして今回、東映さんの公式のやつ見て細部まで見て書いてみました。公式のを見ていると、「あぁ、仮面ライダーにはこんな装備もあるんだなぁ」って実感しましたね。
 今まではピクシブを見て書いていましたからね。ピクシブに書いていない装備の詳細とか、これから見て書いていこうと思ってます。
 まぁ、その分投稿ペース落ちますけど…。

 そして、トドメ(殺すとは言っていない)を刺す瞬間に、龍神が登場――!
 回想で『余程のことがない限り月に来ることはない』と言っていたところから、今回のことを『余程のこと』と認識したようですね。
 龍神は、一体何しに来たのか…。敵になるか、味方になるか…。まだ分からない。

 最後に、アナザーデンライナー襲撃犯は、デンドロンでした。
 デンドロンどこにいるんだよって思った方、ちゃんと登場しましたよ。

 『狂気』と言う特性をつけて。いや―本当、どうしてこうなっちゃったんだろうね?
 これ見てると、某『怠惰』の大罪司教を思い浮かべますよ。いやほんとに。


 それでは、さらばーい。


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