いやー、この話を書くの、ほんとすごく苦労しましたよ。次の展開、どうしようかなーって。
途中、悪ふざけ7・真面目3の確率で違う作品と混合させちゃったし、あー…、針治療したい。
まぁそれはそれとして、81話、どうぞッ!
『はァッ!!』
「アガッ!!」
駆紋戒斗――仮面ライダーバロンのバナスピアーを
追撃でバナスピアーを斜め下から上に振りかぶり、凪った。
この攻撃に臘月は衝撃のまま吹き飛ばされ、地面に体がバウンドする。
『フッ、粋がるだけの雑魚が』
「あなた…どうして臘月に攻撃を?」
依姫が出した疑問に、バロンは
『聞こえていなかったか?俺はあいつが気に食わない。理由はそれだけだ』
「だよなぁ…駆紋戒斗。お前という人間は、そういう男、だよな」
『なんだ、貴様。俺のことを知っているのか?』
バロンが怪訝そうに質問する。初対面のはずの男が、まるで自分のことを知り尽くしているかのような発言をしたのだ。気にならないはずがない。
「あぁ知ってるとも。ただし歴史としてね」
『―――歴史か…。俺が死んでどの程度経ったのかは知らんが、貴様のような奴にも知られているとは、な』
「おや、不服かい?」
『好きに解釈しろ。俺はあいつを殺すだけだ』
バナスピアーの矛先を臘月に構え、淡々と言い放つ。
「おや怖い。だったら、俺も混ぜてくれよ。お前のその体、大怪我なんてされたら困るからさ」
『……確か、お前の
「へいへい。お手柔らかにね…」
レイヤはバロンの隣に立ち、【スピカ・ヴィルゴ】で【暴風の斧】と【
どれも普通にも持とうとすると両手じゃないと持てないほどの重量を持っているが、流石はレイヤだというべきか、両方を片手で持っている。
「それと、君たちにはここにいてもらったら困るから、
レイヤは三人に向けて手をかざすと、オーロラカーテンが出現して、有無を言わさずに三人を転移させた。
その間に、臘月が立ち上がった。臘月の目の前にはバロンとレイヤの二人しかいない。あの三人に逃げられた、それが臘月に屈辱を焦りを与えた。ここで始末するはずが、情報を持っていったまま離脱された。このままでは自分の地位が――なんてことでも考えているんだろう。
その行き場のない怒りを、目の前の人物たちにぶつけた。
「クソ!!クソ!!クソ!!クソ!!あのゴミが!使えねぇどころか歯向かうような奴を降ろしやがって!!決めたぞっ!!今ここで廃棄処分してやる!!」
口から吐血したせいか、血を吐きながら叫ぶ。今の臘月は攻撃ステータスにほぼ全振りしているため、防御のステータスがほぼスッカスカである。その弊害でバロンの攻撃をまともに受ける羽目になった。だというのに貫かれない程度には防御に権能を回していたようだ。
そして“廃棄処分”の単語を聞いた瞬間にレイヤは戦闘隊形に入っていた。顔に血管を浮かばせた、怒りの形相で。
空間に波紋が広がり、そこから『炎』『水』『風』『土』『雷』『氷』『光』『闇』の属性を纏った剣と槍が
「死ね」
その一言。たった一言だけで武器たちが弾丸のような、またそれ以上の速度で発射された。
死の弾丸は臘月へと向かっていく。
対して臘月は――手を突き出した。ただそれだけだ。その瞬間、空中で武器がピタリと止まった。『固定』の権能で動きを封じ込められたのだ。
そこで腕を振るうと武器が
「残念だったな。今の俺は『固定』の力を攻撃に変換している。だから防御に集中していた時にはできなかった空間操作を可能としているんだ!!雑魚がいくら増えたところで、お前らに勝ち目はねぇ!」
なるほど、とレイヤは頭の中で思う。
ご丁寧に説明してくれたおかげで種が分かった。『固定』の『権能』を攻撃に回したことにより発現した空間操作、非常に厄介だ。
―――しかし、空間操作は臘月だけの特権というわけではない。
「空間操作がお前だけの特権だと思うなよ?――【
レイヤがそう呟いたとき、小さな直径10センチほどの黒い球体が複数個、レイヤの周りに出現する。
アリエス・ボテイン――羊の胃。レイヤの一番目の権能。ボテインは牡羊座のデルタ星で【小さなお腹】を意味している。それに由来してブラックホール→重力の塊→空間の渦という連想ゲームから生まれた権能。
【空間歪曲】という権能を持っており、その名の通り空間を操る権能だ。基本的にはゲームで言う【
黒い球体――ようするにブラックホールなわけだが。それを複数個作って臘月に向かって発射する。
しかし、臘月も負けずと空間を操作して攻撃を打ち消す。
空間系の攻撃がぶつかり合えば、どうなるか――。答えは簡単、対消滅だ。威力など関係なく、空間系の攻撃はぶつかれば対消滅する。
「残念だったなぁ!!いきってた攻撃がこうも無様に無効化されるなんて、哀れにもほどがあるぜっ!」
「問題ねぇよ。―――本命はこっちだからな」
『はァっ!!』
「あ――?」
突如頭上から鳴り響いた、不愉快な威勢のある声。臘月は上を向くと、そこにはバナナの鎧を着た戦士――バロンが降ってきた。
突然のことで臘月は思考が働かず、バロンのバナスピアーによる攻撃をまともに喰らってしまった。さらにそこから連撃、連撃、連撃の雨あられ。最後にバロンはカッティングブレードを二回降ろした。
バナスピアーに長大なバナナのオーラをまとわせ臘月を叩き切った。臘月は鮮血をまき散らしながら吹っ飛び、地面に体を殴打する。
バロンはバナスピアーで振るってついた血を振り払う。
臘月はフラフラと立ち上がりながら、叫んで、罵倒する。
「こんの卑怯者がァァアアアアアアアア!!!不意打ちしやがって!それでも戦士のやることかよォオオ!!?」
「お前、何様のつもりだよ。ていうか第一、お前が戦士を語るな」
『全くもって同意見だ。貴様のようなクズに戦士を名乗る資格などない』
「うるせぇ!!てめぇらのようなクズに俺が負けることなんて万に一つもありえねぇんだ!!」
『はッ』
喚き散らす臘月に、バロンは鼻で笑った。そしてそれを臘月は聞き逃さなかった。明らかな
「お前…今俺のことを笑ったな!?お前のような下等なクズが、『無敵』で『完全』なこの俺を、笑ったのか!!?」
『お前が完全で無敵?それを笑わずしてどうする。お前のようなやつが完全無敵だったら、他の奴らは神にでも至っている。自意識過剰も大概にしろ』
「なんだとォ…!?」
『それに貴様、俺のことを卑怯者だと罵ったな』
「あぁそうだッ!!空中から奇襲しやがって!卑怯者以外の何物でもねぇだろっ!」
『はッ。ここまでくると呆れるな。あれは立派な戦法の一つに過ぎん。無知で傲慢なお前に一つ教えてやろう。卑怯者というのは強いものを背中から攻撃するような奴だ!そしてそいつは、俺の敵だッ!!』
バロンはバナナロックシードを戦極ドライバーから取り外し、【マンゴーロックシード】を取り出して鍵を外す。バナナアーマーが消失し、頭上にクラックが開いて、閉じる。
戦極ドライバーにマンゴーロックシードをセットし、閉じる。
バロンが特徴のある下向きの2本角と大きなマントと山吹色の複眼と山吹と赤の2色のアーマーに変化した。
専用装備である重量級メイス【マンゴパニッシャー】を片手で持ち、構える。同時にレイヤも先ほど出したばかりの重量級アイテムを片手で持って、二人で突撃する。
「クソがクソがクソがッ!!ゴミの分際で、俺を傷つけるなんて、許されることじゃねぇんだよッ!!」
自分勝手な妄想を垂れ流しながら、臘月は地面から砂を握って投げる。固定され止まった砂の威力は衰えることなくまっすぐ進んでいく。たとえ鋼鉄の壁に阻まれても貫通していく狂気の弾丸だ。
その弾丸に、バロンはマンゴパニッシャーを持っていない方の手を突き出すと、突如として砂の弾丸の威力が落ちていき、地面に落ちる。
その様子を見て、臘月は驚愕と困惑の表情を見せた。
「ど、どういうことだ!?どうして俺の攻撃が――ッ!?」
「お前…今のそれは、デメテルの権能、
圭太の権能の一つ――盛衰。その権能はその名の通り『
本来は圭太の権能であり、バロンである駆紋戒斗が使えるはずがない。なら、いったいどうして…?
『そんなもの、頭の中に使い方が思い浮かんだからという説明以外俺にもわからん。だが、あり得る仮説を立てるとすれば、この体の持ち主の能力であるがゆえに、俺という『異物』が入り込んでいる状態でも使える。これが一番の最有力の仮説だ』
今の戒斗は圭太の体に入り込んでいる状態だ。ゆえに圭太の権能を使えてもおかしくはない――。ありとあらゆる疑問をそっちのけで放棄すれば、納得できる問題だ。
だが、どう考えても納得できない要素が、レイヤにはあった。
(だが、最初の事例じゃ圭太の体を乗っ取った奴は圭太の権能を使えなかった。いや、
過去に一度あった圭太の体が乗っ取られた事例。
あの時は軽いノリで『過去の英雄』を呼び出してみようという考えで【宮本武蔵】やら【服部半蔵】やらを降ろして試し合いをしていた。
その試し合いの時、事故が起こった。提案は自分からだった。【サークル】活動をしていた際に読んだ『
その英雄は
武器を無限と言っていいレベルで射出してくるものだから、二人係で三日三晩休憩なしの戦闘で、ようやく圭太の体からその英雄を追い出すことに成功。と、いうよりもその英雄が戦いに満足して自ら出て行ったというのが正しいか。
転生してからの初めての大敗北だった。一撃も与えることもできなかった。チート過ぎるだろうと心の中で愚痴った。
最後の彼の言葉――「フハハハハハッ!!雑種ども!見事であったぞッ!この我をここまで
そう言ってあの男は勝ち逃げしていった。めっちゃむかついたし、悔しかった。ちなみに戦いの場となった
あれから何度も俺たち弱すぎるな。もっと強くならなくちゃと思っていたのが懐かしい。
――ちなみにこの思想の間、【ラムダ・キャンサー】の力で0.1秒くらいしか経っていない。
ともかく、臘月の『固定』の権能を『デメテルの権能』で対処できた。これは新たな情報を収穫できた。
「考えるのは後だ!今はあいつをぶちのめすッ!」
レイヤは左手に持つ暴風の斧を振るうとトルネードと勘違いしてしまうほどの暴風が巻き起こり、臘月を襲う。結果、竜巻は臘月に直撃したが彼の体を吹き飛ばすことも傷をつけることもできなかった。
『固定』の権能で自らの足裏と地面を『固定』しているのだろう。体もある程度『固定』しているはずのため、傷がつかなかった。
「煩わしいんだよッ!」
臘月が手を突き出すと、竜巻が停止した。そのまま臘月は竜巻に手を伸ばすと、竜巻の一部を折った。比喩だったり、例えなんかではない。文字通り、木の枝を折るごとく竜巻を折ったのだ。
そのまま折った竜巻を振りかざすと、その衝撃で竜巻がガラス細工のように割れて、地面に散乱した。
これも『固定』の権能による力――。この現象をかつて零夜を通じてみたことがある。それは未来で零夜がアナザーダブルに変身して竜巻を纏って空を飛んだ時、臘月が『固定』の権能を使用したことで竜巻が止まった現象*2と全く一致していた。
「だったらッ!」
聖光の金槌をぶん投げる。回転しながら飛んでくる超重量アイテムはもはや凶器の域を超えている。普通に当たれば即死の一撃だ。
しかし、『固定』の権能を持つ臘月にはなんてこともなかった。そのまま『固定』で勢いを止められた。
「単調だなァ!地上の人間はいつから単細胞生物に変わったんだ!?」
「言ってろッ!それと――」
『俺を忘れるなッ!!』
「ッ!」
マンゴパニッシャーにエネルギーを纏わせ、臘月の右腰に直撃させた。しかし、臘月の体は少し動いて唸り声をあげただけだった。
『なにッ!?』
「死ねッ!」
臘月はバロンに向けて拳を握って振るった。『固定』された拳。それは何者にも勝る凶器だ。
「危ねぇッ!」
レイヤは【イェド・オフィウクス】を発動して、バロンの体をこちらに引き寄せる。
臘月の攻撃は間一髪の擦れ擦れで回避した。
「チっ!運のいいやつめッ!!」
『どういうことだ?なぜあいつの防御力が上がっている?』
「お前、圭太の記憶を共有していたんじゃなかったのか?」
『こいつの記憶にもあいつの力のことは記されていない』
「あ…ッ」
そういえば、あのネタバレ祭りを開始した際に圭太には耳栓をしていた。だからその間の情報は一切入っていなかったはずだ。だから記憶を共有していたはずの圭太の記憶から臘月の力を知ることができなかったのか。
臘月は『固定』の権能で圭太から自由意志のみを『固定』して命令を聞くだけの人形へとしていたはずだ。どういうわけか臘月が拾った際すでに廃人の状態だったらしいため、楽に人形にすることができたはずだ。
「そうだった…。だったら、これを割ってくれ」
そういってレイヤはバロンに青く光るガラス玉――記憶玉を投げ渡した。これは少し過去に遡る程度だがレイヤがルーミアに事前に手渡していたものだ。
これは割ると複製して内包された記憶を使用者に見せるという効果を発揮するアイテムである*3。
『なんだこれは?』
「記憶玉っていう特別なアイテムだ。割ると効果を発揮する。それにいろいろと情報入ってるけど、圭太の権能を使える今のお前なら、ヘルメスの権能【情報演算】があるから特に問題ない」
『…いいだろう。使ってやる』
バロンはレイヤの手から記憶玉を取って、その手で割る。この間、情報を「記憶」という形で入手するため、無防備になる。
いくらヘルメスの権能【情報演算】があるとしても、データ量があるだけに3秒ほどかかるはずだ。ヘルメスの権能はレイヤの【ラムダ・キャンサー】と同じで情報処理系の権能だ。こういうのがあるから、つい頼ってしまうのが傷だ。
「よそ見してんじゃねぇぞッ!!」
臘月が足で勢いよく地面を押すと、岩盤の一部が飛び出る。それを空中で『固定』して足で蹴って瓦礫に分解して勢いよくこちらに向かってくる。
レイヤは【イェド・オフィウクス】で臘月と同じく周りの岩を浮かして、ぶつけ合う。巨大な大剣を生成して、ぶん投げる。
「はッ!単細胞野郎がッ!いい乗り物をありがとよッ!!」
「なに!?」
臘月が大剣を空中で『固定』するとそのまま刀身に乗って、『固定』による空間操作で、まるで乗り物かのように使いこなす。
空中で大剣を足場にして、見下してくる臘月を見て、レイヤはある一つのキャラクターが思い浮かんだ。
「てめぇは
「どっちかっつぅと俺はブ○ック補佐派だよッ!!」
「裏切り確定キャラじゃねぇかッ!!」
「どのキャラを好感が湧こうと俺の勝手だろがッ!!」
『なにを雑談している貴様らッ!!』
するとレイヤの後ろから
「もう終わってたのか…」
『俺も正直驚いているがな。あんな膨大な量の
「それが権能の力よ。情報系のやつはマジで役立つんだよな」
『それより、貴様敵のあいつとなにを呑気に雑談している。遊びじゃないんだぞ』
「ごめんって。つい熱くなっちゃって。子供の小競り合いとでも思ってくれ」
『フン。もう少し見た目に合う判断力と思考を身に着けたらどうだ?』
「ははは、なにも言えねーや…」
バロンの煽りを、レイヤは軽く受け流す。大人な対応と言えるだろう。だがしかし、そんな対応もできない見た目は大人、頭脳は
「俺を、侮辱したなッ!?不意打ちしたあげく、そこの白服クソ野郎と、一緒に子供扱いしたな!?子供だと?この俺が、
子供扱いされたことが許せないらしく、無意識なのか、『固定』の空間操作の波動で衝撃波が二人を襲う。しかし、この程度の衝撃はレイヤはもちろん、圭太の体を使っているバロンにはなんのダメージにもなっていない。
『一気に叩くぞッ!!』
「あぁッ!」
逆上して回りが見えていない今が好機だ。バロンはカッティングブレードを二回降ろし、レイヤは手に持っていた暴風の斧の出力を最大にまで上げる。
マンゴパニッシャーに、花切りマンゴー型のエネルギー体が重なる。それだけではない。本来マンゴーロックシードの力にも、バロンとしての力にも、駆紋戒斗としての力にもなかった『権能』の力が加わった。武器にゼウスの権能【破壊】、ゼウスの神器【ケラウノス】、ポセイドンの【激流生成・操作】、慈母神ヘスティアの【向上】、デメテルの【盛衰】を重ね合わせる。同時使用による情報多可はヘルメスの権能で補う。
ゼウスの権能【破壊】はその名の通り『ありとあらゆるものを破壊する力』。要するに【フランドール・スカーレット】の能力の上位互換だ
篭の女神・慈母神ヘスティアの【向上】の権能はその名の通り自身の力を向上することを可能とする権能だ。デメテルの権能【盛衰】との違いは自分に使用できるか相手に使用できるかの違いのみ。
対してレイヤも暴風の斧に自分の16384もある霊力、魔力、
先ほど語ったあの男が切り札として持っている(使ってきたとは言っていない)剣がある。回転する三つの円筒が風を巻き込むことで生み出される、圧縮され鬩ぎ合う暴風の断層が擬似的な時空断層となって絶大な破壊力を生み出すという仕組みだ。
今回はそれを真似て、
防御が落ちている今なら、可能だ。
「あァえっーととりあえず……
バロンの隣で、“これ必殺技名あったほういいよね?”と考えたレイヤは即席で必殺技に名前を付けた。それがかっこいいか否かは画面の奥の皆さんに任せるとする。
ちなみにアシュヴィンはインド神話のアシュヴィン双神のことで、ディオスクロイは双子座になったとされる双子のことである。
そして、双子座は風属性である。
マンゴパニッシャーをハンマー投げの要領で振り回し、花切りマンゴー型のエネルギー弾を飛ばして相手を粉砕する【パニッシュマッシュ】と【
「は――?」
と、臘月が
通常のパニッシュマッシュに圭太の権能と【神器】を上乗せして、アシュヴィン・ディオスクロイの空間をも断絶し、暴風によって生み出された時空断層に直撃すればまず無事では済まない。
暴風と砂埃が舞い、あたり一帯を覆いつくす。
目の前の状況が確認できないが、やったのではないかと思う。
『やったか…?』
「それ、フラグにならないといいけどね…」
待つこと10秒。音沙汰はない。だがしかし、臘月の状況を確認できない以上気を抜くことはできない。じっと、目力を強くして目の前を見据える。
何も起きないため、待つことが面倒くさくなり、レイヤは暴風の斧を振り回すことによって風を生み、砂埃をすべて霧散させた。
―――そして、目の前には、誰もいなかった。
『いない…どういうことだ?』
「時空間断絶系の技だからなぁ…。跡形もなく消し飛んだとか?」
『…そう考えるのが妥当か。しかし、凄まじいな、この威力。本来の俺でも出せる威力ではなかった』
バロンはそう呟く。
バロンの最終形態【ロードバロン】の力でさえもあそこまでの力は出せない。というか【鎧武の世界】の【黄金の果実】の力があればこのくらいの力が手に入っていたのでは…?と思うがこれ以上考えないことにした。だって全然関係ないことだから。
バロンはバナナアームズに戻って、当たりを見渡す。周りを警戒しているのだろう。それに見習って、レイヤも手を出す。
「まぁ、でもなぁ、一応――サビク・オフィウクス」
あたり一帯に威圧系の蛇使い座の権能【サビク・オフィウクス】を発動した。
目の前にいる
そして逆に、心が弱い者には――、
「うわぁああああああッ!!!」
『「ッ!?」』
突如として鳴り響いた聞き覚えのある声での悲鳴。一斉にその方角(後ろの方)に振り向くと、臘月が腰を抜かしていた。その姿に、レイヤは微笑を洩らした。
いや、しかしそんなことはどうでもいい。問題はあの攻撃の中から、どうやって生還した?
『貴様…わざわざ後ろに回っていたとは…どうやらよほど俺に殺されたいらしいな』
「いやちょっとストップ。お前にとっちゃ激怒案件だろうけど今はそれ違う」
バロンが予想斜め上とも、予想通りともいえる態度を、レイヤはいち早く止める。【駆紋戒斗】という人間の情報を
「そもそもあの攻撃から生還しなきゃ俺たちの後ろに移動することもできやしない…なにをした、臘月」
レイヤはサビク・オフィウクスを解除する。すると調子が戻ったため、臘月が罵声を上げる。
「てめぇええええ!!なにをしやがったッ!!」
「質問してるのはこっちなんだが…。まぁいいか。威嚇だよ。ただの」
「威嚇だと!?ふざけるなッ!!俺が、この俺が威嚇なんかで怯えるはずがないッ!!なにをしやがったッ!!包み隠さず話やがれぇえええええええ!!!」
なんと、この男、あろうことか自分が怯えたという事実を認めたくないがゆえに存在しない事象を己の頭の中で生み出してそれのせいにした。そして、ソレを使用したであろうレイヤを罵倒したのだ。
そして、そんな臘月を、バロンは嘲笑った。
『はッ。ここまでくると憐れで言葉も出ないな。己の弱さを他人の
「――弱者、だと?てめぇ…この俺を、弱者だと!?ふざけるな!!俺は強い俺は強い俺は強い俺は強いんだぁ!!『固定』という無敵の力を手に入れた、それは生まれが違うからだッ!育ちが違うからだッ!才能が違うからだッ!てめぇのそれはそんな
『ほざいていろ。力に溺れ、あまつさえその地位という甘い汁を啜り続けているお前を、俺は強者とは認めない。嫉み?僻み?そんな感情を俺が感じる価値など、お前にはない』
「てめぇ―――ッ!!」
手も足も、口も出せないほどの論破に、臘月は唇を噛む。血が出てないところを見ると、改めて己をどれほど可愛がっているのかを実感する。
「もういいッ!!どっちにしろ、お前らは俺にもうダメージを与えることすらできやしないんだからなッ!」
「どういう……いや、まさか…」
『……なるほどな。奴の『固定』の力。それのほとんどを防御に回していたというわけか』
よく考えればわかることだった。臘月の権能『固定』は攻撃にも防御にも回せる。おそらく、攻撃が当たる瞬間に力のほとんどを体の固定につぎ込んだのだろう。
しかしそれだけではあの時空間断絶の技を逃れられるはずが――、
「いや、自身を『今』に『固定』したのか…!!」
自身の存在を『今』という時間軸と世界に『固定』すれば、空間断絶から逃れられることは十分可能だ。しかし、臘月は技の詳細を知らないはずだ。そこまで頭が回るはずがない。おそらくヤバイ攻撃だからとりあえず全部固定しちゃえ程度の感覚だったかもしれない。
「そして、今のお前は当初の状態ってわけか…」
「そうッ!!毒もそろそろ引いてきたしな。これでお前らをまた一方的に蹂躙できるってわけだ…玉兎もいねぇしなッ!!」
「――――」
この場に自分の唯一の弱点がないため臘月は完全に調子に乗っている。だがしかし、また窮地に追いやられたのは事実。あの状態の臘月を相手するには玉兎か【猛毒剣毒牙】しかない。猛毒剣毒牙を使うにしても体力の心配はないとは言え精神面で摩耗する。
そもそもレイヤは12番目の権能
握力、脚力、肺活量などの運動に必要なものすべてに無限の力を与え、五感などの機能向上も可能だ。さらに水瓶座の権能である『回復』と『再生』に必須の『栄養』はこの権能で補っているため、実質無限に再生可能。
テューポーンとは頭が天体を擦り、両腕は世界の端から端まで届く程の体躯を持ち、無限にも思える超絶な怪力、決して疲れない脚、耀く目玉、発声するだけで山々を揺らす声量、全ての種類の声を介し、恐ろしい火焔を目や口から出し暴風を司る超怪物である。
その権能の恩恵があるとしても、猛毒剣毒牙を使うのはためらってしまう。あの剣はそれほどのものなのだ。
だが――別の手がある。臘月を、肉体的ではなく、精神的に追い詰める方法が!!
「確かに、肉体的にお前を追い詰めることは不可能だろうなぁ…」
「ようやく自覚したか。お前らは俺に嬲り殺しにされる運命――」
「これ、なーんだ?」
そう言って、レイヤは右手を広げて天に掲げた。すると、その手に空飛ぶカラクリが乗った。
それを見て、バロンと臘月は困惑する。
『それは…』
「ドローン…?」
そう、そのカラクリの正体はドローンだ。実はこのドローン、零夜がアヤネとの戦闘の後のレイヤとの通信で“創ってくれ”と頼んでいた代物であった*4。
「正解。そして、注目すべきはここだ」
レイヤはドローンの一部分を指さした。その部分は――下に取り付けられている、【カメラ】部分だ。そこを指さした瞬間、臘月の脳裏に最低最悪の予想が
「まさか、嘘だッ!!そんなことできるわけがねぇ!!見てくれだッ!外見だけだッ!!」
「いい加減現実を認めろよ。ウチにはこういう機械工学系が得意な奴がいる(ウソ)んだよ。それで月のメインコンピューターハッキングして、ドローンのカメラに繋げてたんだよ」
時は遡り、零夜が空真ことウラノスと戦う前のこと。零夜はその前にアナザーエグゼイドに変身しており、その能力でドローンのカメラと月のメインコンピューターを繋げるという大事を可能にしていた*5のだ。
零夜が空真との闘いの前にモニタールーム的な場所――つまりメインコンピューター室のコンピューターをハッキングしていたのはこれが理由だ。しかし、零夜はレイヤがなにをしようとしているのかはある程度予想はついていたが知らない。
ちなみに龍神と歩いていた際レイヤが服の下でやっていたナニカもドローンの最終調整だったりする*6。
「おま、え…ッ!!」
臘月の額のこめかみがピクピク震える。その怒りはまさに爆発寸前の火山だ。
「ていうかさ、なんで依姫達がこの場所すぐに分かったと思う?答えは明白。この映像がず~っと流れてたからさ」
「この……クズ野郎がぁあああああああああッ!!!」
臘月は前のネタバレ祭りよりもさらに大きな怒声を放った。
当然と言えば当然だ。自身の権能がバレたことはまだなんとかカバーできた。だが、自分の悪行が全て月の民にバレてしまったとなれば、もう取返しがつかない。
そもそもレイヤは最初から、コレを狙っていたのだ。わざわざ臘月の権能のネタバラシショーを行ったのも、弱点を露見させたのも、すべてはコレのため。月の民に“臘月を新死んで当然だ”という印象を植え付けるためだったのだ。
「クズ野郎…。楽しいかッ!?嬉しいかッ!?俺をここまで追い詰めて、楽しいかぁあああああ!!!」
「あぁ楽しいよッ!!それに俺は言ったよな?
企みが、企てが、計画が、すべて成功した。途中予想外の事態にも発展したが、臘月を精神的に追い詰めるという計画は、今この場を持って成熟した。
『―――』
「どうした、駆紋戒斗。こんな俺を見て軽蔑したか?これが俺の本性さ。大切なもののため、人のためにどこまでも下郎に墜ちていく。それが俺の本分であり本性なのさ」
『――俺が言うことはなにもない。貴様のそれは策略の一つであり、ヤツはそれに気づけなかった。その時点でヤツの精神的敗北は決まっていたも同然だった。お前が思うことなどなにもない。奴は、
「ははッ。罵倒の一つでも、欲しかったのが、本音かな…」
過去に圭太の体を乗っ取った男の言葉が蘇る。
あの男は最終的には笑って帰っていったものの、途中は暴言が酷かった。当時強大な【能力】が開花したてで強大な力の意味を理解していなかったバカだった自分には、とても心に突き刺さる一言だった。
「フンッ。そこの男。貴様の強情なまでの胆力と根性は褒めてやろう。だがそれだけだ。―――そして、貴様はまるでダメだ。道化にもならんゴミだな。貴様の攻撃には何もない。この
その時は“
まぁ遅かれ早かれあの環境では天狗の鼻を折られるのは必須ではあったが。
あの時のように、いっそ罵倒してくれたの方が、精神的にも少しは楽だった。
「許さねぇ……ぜってぇに許さねぇッ!!こうなれば話は別だ…ッ!てめぇらさっさとぶっ殺して、大掃除する必要しかねぇなァ…。もうこの際だ、地上を第二の月の都にしてやるッ!!」
「お前…そこまでか」
この場合掃除というのは、月の民全員の、塵殺を意味する。そして、地上の月の都化。それは未来の、あの凄惨で性と欲にまみれた混沌都市のことを指していた。
『貴様が追い詰めたんだろうが』
「まぁそうだけどさ。ここで、決めようと思ってたしね」
そういって彼が亜空間から取り出したるは、毒に侵された聖剣―――【猛毒剣毒牙】。その剣を持ったレイヤの手が、紫色に変色する。
「これで、最後の最終決戦だ」
「やってみろよ。問答無用でぶっ殺してやる」
臘月の殺気をもろともせず、猛毒剣毒牙を腰にかざすと、聖剣ソードライバーが出現する。
そのまま【ブラッドバジリスク】のワンダーライドブックを取り出して――、
「待て」
そんなとき、その手をゴツゴツした鎧の手によって阻まれた。
レイヤの手を握るその強さはレイヤの腕力を上回り動かなくするほどの強力な力でありながらも、配慮といった優しさも感じられる手だった。
レイヤはゆっくりと自身の手を掴んだ人物を見た。
そこには龍を模した緑色の全身アーマーを着込んだ、2メートル越えの超人だった。その人物はレイヤの手を離すと、二人の前に出る。
「よくぞここまで持ちこたえた。あとは、我に任せよ」
『貴様…一体何者だ?』
バロンは急に表れた人物を警戒した。全く気配が感じられなかった。依り代である少年の力と、自身の生前に培った様々なスキルでさえも、この人物の接近を、声を掛けられるまで気づくことはできなかった。
バロンの脳内に、一つの確信的な、絶対的な一つの結論が浮かんだ――。
“この男は、自分よりも遥か格上の存在だと”
この人物に武器を向けるなんて無理だ。したところでなんの意味もないと、分からされてしまうほどの、圧倒的なオーラ。
事実、その勘は当たっていた。だって、目の前の人物。それは人を超えた存在――まさしく、“神”
「我が名は【龍神】。【
レイヤ
1 【アリエス・ボテイン】(羊の胃)
権能は「
その名の通り、空間を歪ませて自在に操る能力。
基本的な使用方法は、異世界ファンタジーで言う
応用として、一部を世界から隔絶させる空間を作り上げたり、強大な吸引力を有するブラックホールの生成を可能とする。
ボテインは、アラビア語で「小さなお腹」。吸い込んだ先を「胃」とし、宇宙全体を「体」と表現すれば、「巨大なブラックホール」も宇宙全体から見れば「小さなお腹」として捉えられる。
12
アルファーグ・パイシーズ(さかなのあたま)
権能の効果は【尽きることのない無限の力】
握力、脚力、肺活量などの運動に必要なものすべてに無限の力を与える能力である。
また、五感などの機能向上も可能。『回復』と『再生』に必須の『栄養』はこの権能で補っているため、実質無限に再生可能。
アル・ファーグは
テューポーンとは頭が天体を擦り、両腕は世界の端から端まで届く程の体躯を持ち、無限にも思える超絶な怪力、決して疲れない脚、耀く目玉、発声するだけで山々を揺らす声量、全ての種類の声を介し、恐ろしい火焔を目や口から出し暴風を司る超怪物である。
「無限の力」の由来は超絶な怪力と、決して疲れない足から来ている。
駆紋戒斗(圭太)
【全知全能の神ゼウス】
ギリシャ神話に登場する神で、オリュンポスの神々の
権能は「破壊」。
最高神であり、至善至高、全知全能の神として知られているゼウスは、変幻自在の能力を持つ神にして破壊神と創造主を兼ねた偉大な存在である。
その「破壊」から取った権能であり、全パラメーターの上昇し、神器による攻撃が本命。
【竈の女神・慈母神ヘスティア】
ギリシャ神話に登場する神で、竈を司るオリュンポスの神々の
権能は「向上」。
竈や炉は「火力」を「上昇」させる。それを元にし、すべての属性の威力を「向上」させることが可能になる権能。
【豊穣の女神デメテル】
ギリシャ神話に登場する神で、豊穣を司るオリュンポスの神の一柱ヒトリ。
権能は「
効果はヘスティアの権能とほぼ同じだが、上げるだけのヘスティアとは違って“下げる”ことも可能。
そしてデメテルの権能は“相手”にのみ使える権能。要するにRPGで言うサポート役である。
こことは全く違う作品からの【英雄王】
過去に一度圭太の体を乗っ取った際に憑依した人物。記憶の時系列は【UBW】終了済み。
レイヤではない人物の“胆力”と“根性”を褒めた。
しかし当時のレイヤのことはボロクソに評価。志がある分
ていうか何故圭太と
と、いうわけで今回はここで終わりです。次回は龍神VS臘月。
次回もお楽しみに!
評価と感想、お願いします。