最近バイトが忙しくて一話を作るのも大変な挙句、臘月の過去を考えるのに時間がかかりました。
今回は大ボリュームとなっておりますので、どうぞお楽しみにッ!!
クソが。クソが。クソが。クソが。
どうしてこうもうまくいかない?どうして俺の思う通りに自体が動いてくれない?なぜ、あのゴミクズどもは俺の楽園を、世界を、聖域を、そう易々と破壊できる?
俺はなにも悪いことなんてしていない。
他人の人権を奪ったから?大切な人を傷つけたから?自分の都合を他人に押し付けたから?
知るかよそんなこと
それに、そもそも人間なんてそんなヤツらばっかりだろーがよ。事実、俺の周りにはそんなクズな野郎どもしかいなかったからな。俺がクズなら、あのクソ黒野郎や白クソ野郎とかもクズだ。みんなクズだ。
俺が生まれた家庭環境は、お世辞にも“良い”とは言えねークソな環境だった。
親父は定型的なDVクソ野郎だし、お袋はそんなクソ親父を恐れて、どこでどう感情を拗らせたのかは知らねーが、ストレスの捌け口として俺に攻撃的になっていった。
まぁ要するに構図を説明すると、クソ親父の俺とお袋への暴力→お袋の仕事とDVで溜まるストレス=俺へ還元されたっつー形だ。
さらに両親ともども周りの政体やらを気にして半袖を着ても見えないような、例えば腹とかを狙って暴力を振るってきた、こんなクソ野郎どもでも、怖いものはあるんだなと思ったぜ。
そうなったのは小学生に上がったころだったか。世の中には教育法だかなんだか知らねぇーが、中学までは学校に行かなきゃならねぇ決まりがある。マジでクソみてぇな法律だ。
親父は酒に飲んだくれてまともに仕事はしねぇから、収入は実質お袋の稼ぎのみ。そんなんだから保育園にも幼稚園にもいけなかったわけだが、法律上仕方ねーから小学校に上がらせてもらったって感じだ。
当時ガキだった俺はそんな家庭環境だったことも相まって、根暗だった。そして、そんな俺に目を付けたのが、今でいうクラスのガキ大将やらマドンナ的存在だった。
そいつらは仲間とともに俺に
どんなことをされたのかは、思い出すだけでもむかつくから、言わねぇ。絶対言わねぇ。回想で思い出したくもなんかもねぇ。それくらい、クソみたいなことをされた。
家ではDVによ肉体的暴力、学校では“
学校の先生に相談?あいつらは俺を気味悪がって関わろうともしなかった。世の中クズばかりだよ。
学校は行ってる。だが
授業も受けてる。だが“痛み”で
給食も出てくる。だが
衣服も来ている。だが、いつも傷や泥で滅茶苦茶だ。
帰る家はある。だが
そんな日々を過ごすにつれて、俺は心を無心にして殺す術を身に着けた。本当に意味もねークソみたいなスキルだ。
そんな、なにも考える必要も、意味も、義理もないそんなゴミみたいな毎日、毎日、まい、ち、ま…――
「おーらッ!!」
「きゃははッ!」
下種な笑い声とともに、俺の腹は蹴られて
時期は確か小6。12歳ごろの話だったな。周りには俺を笑い者として標的にするクズが複数人。そしてそれを
毎度のことながら誰も味方などいないこの状況、もう慣れてきたもんだ。
「おら立てよ。まだ終わってねぇぞ?」
「ほんと惨めよねアンタ。こーんなに見てる人が大勢いるのに、誰もあなたを助けないなんて」
「仕方ないわよ。だって、コイツに味方するとか、マジ無理じゃない!?」
「あーそれ分かるッ!だってコイツウザいし汚いしなッ!!」
「ほんとそれな?」
「「「「「ハハハハハハハッ!!!」」」」」
汚らしい笑い声、本当にむかつく、いやになる。なぜここまでになっているのに誰も助けない?なぜ傍観を決め込んでいる?大人に言え、そうすれば何とかなる。
―――なんてことを思っていた最初のころが懐かしい。
今はもうそんなことを考える方がばからしい。世の中クズばかり。正義なんて存在しないことをこの年で思い知らされた。
救いなんてない、慈悲なんてない。学校では
休み時間が、早く終わらないかと、ただただ時間が経つのを待ついつもの時間――。そんな時、誰かの声がした気がした
降りるんだ。少年
「―――?」
あそこの窓が開いているだろう?そこから、降りるんだ
頭の中から、男の声が聞こえた。
最初は、幻聴だとバカにした。何言ってんだ。ここ、4階だぞ?ここから降りたら確実に死ぬだろうが。
死ぬことの何がいけない?
「―――ッ!?」
その声は、俺の心の声を見透かして、返答してきやがった。
今こそッ!肉体という枷から解き放たれ、痛みから解放されるのだッ!その畜生共に、お前の“死”と言う変えられない事実をもってして、絶望の底に叩きつけてやれッ!!
―――俺は乗った。
この死神の声に。死を促す、悪魔の声に。冷たいながらも温かい、救いの言葉に、俺は身を委ねた。
俺はすかさず、ゴミクズどもとは反対の方向に走る。
「お前、なにして――ッ」
「おい、そっちは窓――」
「やめ―ッ」
俺を殴り、罵倒したゴミクズ共の言葉なんて耳に入らない。入ってたまるか。俺はそのまま――。
「ハハハハハハハハハハハッッ!!!」
人生で初めて、心の底から
* * * * * * * *
「どこだ?ここ」
目が覚めると、真っ白な空間の中だった。
どこだここ?俺死んだはずだったんだけどな。
「目が覚めたか?」
突如聞こえたその声に、俺は咄嗟に振り向いた。そこには、強烈な光で顔が見えない『男』がいた。声が男だったから、間違いない。服は全身が隠れるくらいの白色で、今思えば『教祖』みてぇな恰好だったはずだ。
光は俺の真後ろから発生しており、後ろを向いたら目が焼かれそうなほど光っていた。だからこそ、目の前の男は、普通の存在ではないことが分かった。
「あ、あんたは…」
「……ふむ。この
俺の問いかけに対する言葉は、傲慢なまでの一方通行の言葉だった。
“最初はなんだこいつ?”と思いながら、話を聞くことにした。
「それで…ここは一体?俺は死んだはずじゃ?」
「そこらの説明も踏まえて、話してやろう。佐藤
その言葉に、俺は内心舌打ちをする。
俺を名前で呼ぶな、と。『無い』と『止める』で無止。キラキラネームかって呪詛を吐いたし、何より『無』と『止』なんて向上心も持てない漢字が使われている時点で、
『止』は1年生で習った。『無』は本来4年生で学ぶもんだったが、図書室の漢字辞典で調べてみて意味を知ったときは絶望もんだった。当時まだ小1だぞ?
「ふむ。名前を呼ばれるのは不快か?」
「な――ッ!?」
コイツ、気づいていやがった。愕然とした俺だったが、ただでさえこの状況が不可解なんだ。何が起きたって不思議じゃない
「貴様程度のことなら全て閲覧できる。貴様の家庭環境も、学校生活も、な」
「―――それで、なんで俺をここへ?」
舌打ちをしたい気分を我慢して、本題に入る。
今目の間にいるのは、俺程度の存在が太刀打ちなどできるはずもない強大な存在だ。そんな存在が、なぜ俺に目を付けた?
「突然だが、お前は死んだ。それは理解できているのな?」
「……当然だ。俺は4階から落ちたんだぞ。生きてるはずがない」
「そう。その通りだ。そして早速だが……コレを見ろ」
その
「な、なんだッ!?突然暗くッ!?」
『いいから私が手を掲げた方向を見るんだ』
あの存在の声が近くもなく遠くもない声量で、まるで頭の中に直接語り掛けてくるようにそう言った。
そして、俺の目の前には、映像が映った。それは、テレビのニュースだった。
『次のニュースです。3日前、○○小学校で、小学六年生の男子、【佐藤
『自殺の原因はイジメだったとみられ、警察は現在、教育委員会とともに事実確認と取るとのことです』
『さらに鑑識の結果、無止くんの体には無数の傷痕や打撲の痕があり、無止くんの両親【佐藤○○(33)】と【佐藤■■(32)】が虐待の疑いで逮捕されました』
突然舞い込んできた情報に、俺の頭がフリーズした。
俺が死んで3日経っていること?俺のことがニュースになっていること?あのクソどもが逮捕されて全国の晒し者にされていること?
なんだこのこみあげてくる感情は、
『次の映像は、これだ』
あの存在の声が聞こえると、指パッチンの音とともに、見ている画面が消失し、今度は5つのスクリーンが俺の目の間に現れた。
そこのそれぞれ映るのは、男3人女2人。誰もかれもが暗い表情をしていた。俺はその顔を忘れるはずがなかった。俺をイジメてきた主犯格の5人。そのクズどもだ。
画面の映像が、徐々にズームアウトしていき、詳細が分かった。
『『『『『―――――』』』』』
クズどもの暗い表情の原因。それは机に書かれている罵倒の文字だった。“死ね”“消えろ”“人殺し”“学校来んな”“罪人”なんていう言葉。かつて、俺の机に書かれていた言葉がほとんどだった。
しかし、俺でも見慣れない文字があった。“人殺し”とか“罪人”とかだ。俺はコレの意味をすぐ理解できた。
『この映像は貴様が死んでから1ヵ月経った後の映像だ。こやつらはそれぞれ別の学校に転校したようだが、貴様の自殺の件は日本全国民が知る大事件。当然情報は手に負えないほど広まり、こいつらは貴様へ行ったことへの制裁が待ち望む
俺の言葉をあの存在が代弁してくれた。
しかし、そんなことより、今は――、
「ひひっ」
笑いが、止まらない。どういうことだろう。生まれてこの方12年。笑うことなんてなかったのに、なんだこの感情は、一度知ったら抑えられない、止まらない。
「なんだ、なんだよ、これ?面白い?この感情は、なんなんだッ!?」
『それは『愉悦』という感情だ。面白いと思うと、思わず笑みが零れる。そんな感情だ。君を散々バカにしていた連中の墜ちる姿を見て、貴様は『面白い』と感じたのだ』
光のない空間に、再び光が舞い戻る。俺はその光に思わず目を瞑った。
「そして、貴様はその感情をもっとたくさん味わうことができる」
「ど、どういうことだ?」
あの場から一歩の動いていないアイツが、そう言った。
「貴様は今から、俺の手によって『転生』するのだ」
「て、てん、せい…?」
「要するに、生まれ変わるということだ。なぁに、心配することはない。貴様には『保存』という能力をくれてやる。それでなんとか生き延びろ」
暴論だった。俺の意思なんてまるっきり無視した、『転生宣言』。だがその提案に、少なからず俺は魅力を感じていた。
この感情を、もっと、もっと、もっと、もっと味わえるのかッ!!
「それに、この能力の使い方次第では、貴様は『最強』で『無敵』な存在へと進化できるかもな」
「『最強』!?『無敵』!?」
なんだその言葉は!?聞いたこともない、言葉の意味も分からない。だが、なぜかその言葉に魅力を感じる。惹かれるッ!!
俺が『最強』
「気になって仕方がないか?だったら行くがいいッ!!お前の第二の人生の、始まりだッ!!」
その言葉とともに、俺の意識は暗転した。
最後に、アイツはこんなことも言っていたな。
「にしても、『保存』だけじゃ物足りない。
その言葉の意味は、分からないままだったが。
* * * * * * * *
俺は生まれ変わった。【八意臘月】という人間として。記憶を思い出したのは12歳のときだ。クソッ、絶対アイツの嫌がらせだ。
まぁそんなことはどうでもいい。幸いとして、俺が生まれた家はかなりの良家らしい。というのも、俺の親の実のキョウダイの女――要するに叔母さんに当たる存在がかなりの天才らしくて、要するに俺の家の裕福さはソイツのおこぼれにすぎないってわけだ。
まぁ良い家であることには変わりないから、不自由はあまりない。
どうやら俺の生まれた時代は卑弥呼が生まれる前の時代らしく、かなり古い。つーか卑弥呼って誰だ?よく知らない単語も頭の中にインプットされている。現に、俺は前世でインプットなんて言葉を聞いたことがない。でも意味は理解できている。
心当たりが一つしかないが、まぁ賢くなったと思おう。
しかし与えられた知識で分かったことだが、この時代の文明がおかしすぎる。なんだこれ、ここ、異世界で昔の世界なんだよな?なんで現代より技術が発展してんだよわけわかんねぇ。
あとで調べて分かったことだがこれもすべて俺の姪のおかげらしい。すごすぎるだろ。
「さてと、やるか」
俺はそんな中、まず自分の地位を盤石にすることにした。俺の今の立場は天才の姪のおこぼれをもらっているに過ぎない。そんなんじゃバカにされる未来は明白だ。これは転生した意味がない。
俺は与えられた知識をもとに現代の技術などをノートに書き写した。この技術力で現代知識はほぼ無意味だと思うが、与えられた知識と今現在の都市を比べてみて、まだ現代には足りないものがいくつかあったからそれをそのままそっくり書き写した。
あとは、これをどうやってこの都市に広めるかだ。答えは一つに決まっている。
「えいりんッ!!俺が考えたすっげー発想ッ!見てみてッ!!」
「―――別に、いいわよ」
直接
俺はこいつにとってはまだ子供。無邪気を装って近づけば、子供の遊びくらいには付き合ってやろうと思ってくれるはず。正解だった。
永琳は俺のノートを見るたびに顔を険しくしていき――、
「これ、本当にあなたが考えたの?」
「そうだけど?」
それから事態は慌ただしく動いた。
説明は面倒臭いから割愛するが、とにかく俺はこの都市で盤石なまでの地位を手に入れたッ!!
―――それから6年後。
俺は18歳になり、この都市での地位を固め、盤石にした。
周りから「天才だ」だの「鬼才の血筋だ」などと言われて、俺は嬉しくなった。うれしい!!とてもうれしいッ!これが『愉悦』かッ!
「臘月」
「えっ、どうしたの?」
突如として、俺の後ろにいた永琳が声をかけてきた。そこには6年前と全く変わっていない永琳の姿が。
どうやらこの世界には「穢れ」という年を取らす悪いものがあるらしい。この都市にはその「穢れ」を浄化する装置があるから、年の人間は必要以上に年を取らないらしい。
マジかよ不老長寿って。
「突然だけど、あなた結婚するから。身支度整えときなさいよ」
「―――は?」
俺はその言葉の意味を理解できぬまま、数日経って豪邸へとお呼ばれされた。
あの後俺は永琳にめっちゃ質問攻めにした。話を纏めるとどうやら、永琳が家庭教師をしている姉妹の姉の方と、俺の結婚が密かに決まっていたようだ。勝手に決めすぎだろ。殺すぞ。
しかしそんなことを口にできるはずもなく、俺は結婚相手と出会うことになった。
「どうも始めまして。綿月豊姫と申します」
そこにいたのは、絶世の美女だった。こんな女、今まで見たことがないくらい綺麗だった。絹のように滑らかな金髪、整った顔立ち、そして豊満な胸。
男の理想郷のような女だった。こんな女が、俺の妻に?
―――絶対“モノ”にする。
そう決意して、俺は、
「どうも。綿月臘月です。よろしくお願いします」
これが、俺の本当の第二の人生の始まりだ。
―――。
――――。
―――――。
「私はあなたのこと、決して認めせんからね」
邂逅一番、俺はポニーテールの女にそう言われ、女は立ち去って行った。
なんだあいつ、姫騎士状態にして、“くっ殺”状態にした後にブチ犯してやろうか?そんな本心を隠して、俺は隣にいる
「――彼女は?」
「私の実の妹です。依姫って言うんですけど…。すみませんね、あの子、初対面の人にはきつく当たるんです」
「いえいえ。あの様子から察するに、とても仲の良い姉妹なのでしょう?依姫さんもあなたのことをとても大切に思っているはず。そんな姉がぽっと出の男に取られたら、いい思いをしないのは当然でしょう」
「ありがとうございます。そう言ってくれると、気が楽になります」
「どういたしまして」
今思うが、猫を被るって滅茶苦茶しんどいなッ!!これほどストレスが溜まるなんて…あー早く結婚してこの女とセッ○スしてー。この顔をグチャグチャになるまで堕としたい。
そんな本心を心の奥底に閉じ込めて、新たな話題に突入する。
「そういえば、あなたのことを私はまだ詳しく知りません。良ければあなたの口から教えてくれませんか?」
「もちろんいいですよ。どんなことが知りたいんですか?」
「そうですね…。あなたの能力は?」
「私の能力は【海と山を繋ぐ】ことです。わかりづらいですが、言い換えれば瞬間移動のようなものです」
それ結構すごいんじゃないのか?瞬間移動ってなんだ。俺の『保存』なんてよくわからない能力よりすごいじゃないか。このあとにカミングアウトしづらくなってきたな…。バカにされるのは癪に障る。
しかし、相手側も結婚を了承している以上、俺の能力について知っていてもおかしくはない。俺は意を決して言葉にした。
「ご存知かと思いますが俺の能力は『保存』です。その名の通り、物体が錆びるのを遅らせたり、食材が腐るのを遅らせたりする程度…。自慢できるほどのものではありません」
俺は今“謙虚な私”を演じなければならない。自分の評価を下げるのはクソほど癪だが必要経費だ。将来コイツの体で清算してやる。
「―――いいえ。その能力はとてもすごいものですッ!!」
「え?」
しかし、女から出た言葉は俺の予想をいい意味で裏切った。
「その能力は今穢れで悩み、苦しむ人々を救うでしょう。時間稼ぎにしかならないのは事実ですが…それでも、その能力があれば苦しむ人々のことを救えるでしょう」
―――褒められた。前世ではそんなこと一度もなかった感謝の念。うれしい。嬉しい。
こんな使えないと思っていた能力を、この町は、都は、都市は、肯定してくれる。認めてくれているッ!
ここにあった。俺の楽園は、この場所だったんだッ!!
―――。
――――。
―――――。
それから1年ほど経ち、俺と豊姫はさらに打ち解け合い、結婚した。
依姫の好感度も、この一年でマイナス100から若干プラスにまで上げることができた。
ちなみに結婚した初日でヤった。この日が脱童貞だった。
感想を言うならば、
「――――」
ちなみに今俺は、街中をぶらぶらと歩いている。もちろん変装をして。仕事は『保存』して終わらせてきた。どうやらこの能力、仕事をするのにはかなり役立った。
すべての事柄や単語を頭の中で『保存』することが可能になったため、この書類は何をどうすればいいのかというのが全て分かるのだ。おかげで仕事効率がメッチャいい。
そんなランラン気分で街中を歩いていると、定食屋が目に入った。そういえばこういうのは久々に食べるなと思い、その店に入ることにした。
店に入って、料理を注文する。うん、いい日だ。この日も徳に何もなく終われそうだ――
「そういやあんたら、臘月ってやつ知ってるかい?」
「知ってるわよ。豊姫様と結婚した男でしょ?」
ふと、自分が座っている席の真後ろで、そんな会話が聞こえた。ちらりと見てみると複数人の軽い武装をした女たちが飯を食いながら雑談していた。
あいつらは確か…女しかいない女部隊のやつだったな。どうしたんだ?急に俺の話題なんかだして。
「その人がどうかしたの?」
「いやさ……なーんかプンプンすんだよね。ロクデナシの匂い」
―――は?
「あー…なんか分かるかも。あの人、なんか自分を繕ってるっていうか、腹黒?」
「あのハニーフェイスの裏側で、とんでもないこと考えてそうだよね…」
なんだあのクソアマども。俺のこと勝手に推測してもの言いやがって。
「もしかしたら、あの地位を使って犯罪を犯してたりとか?」
「あーあり得そう。根拠ないけど」
根拠もない話をするな。俺の悪い噂が広まったらどうする?どう責任を取る?勝手なことを本人を前にボロクソ言いやがって…このクソアマども。
「おーい!いつまで休んでるんだッ!とっとと見回りいくぞッ!!」
「ゲッ、アヤネ隊長ッ!!」
「今行きまーすッ!!」
クソアマどもは大急ぎで店を出ていく。店員の「お客さんお勘定ーッ!」なんて声は、聞こえない。俺の感情は、すべてあのクソアマどもを
俺は掴んでいるグラスに注がれている、
じわじわと犯し殺してやる
だがしかしどうやって?仮にもあいつらは妖怪を毎日狩っているプロ。能力もごり押しできるほどのもものじゃないし、第一戦闘向きじゃない。
一体どうすればいい?適当な罪をでっち上げて俺の
だったらどうすればいい?プライドを捨てて楽な道で堕とすか?それとも玉砕覚悟で俺一つでやるべきか?
どっちを、どっちを選べばいい?
「お待たせいたしました。ご注文の品でございます」
そんなとき、注文してた品が届いたので、一旦考えを中断して飯を食べるために背に着けていた背中を話して前のめりにした。
その時、机と
なんだ?懐には財布しか入れていないはず。しかしあの音は財布がぶつかった音では決してない。まるで、金属がぶつかったかのような――。
俺はちらりとそのぶつかったなにかを取り出して見てみる。
それは黄色と黒のなにか鳥が書かれたピンク色の長方形の物体だった。
こんなものは前世でも見たことはない。この訳も分からずいつの間にか俺の懐にあったコレ。普通なら気味が悪くなって捨てるところだが、俺はなぜかコイツに予想外の魅力を感じていた。
俺の心が叫ぶ。俺の本能が咆哮を上げた。おそらくこれだ。あの男の言っていた、『アレ』は。
これを使えば、アイツらを…ッ!
俺は笑みを絶やすことなく、目の前の食事を貪った。ここで理性を失くして突撃すれば、最悪今までのすべてを失いかねない。
これが魅力的なものであることは間違いないが、実証もしていないのに突撃するのはリスクが高すぎる。とりあえず、確認せねばならない。
俺は一心不乱に食事を貪り、その後帰宅した誰にもばれることなく、さも当然かのように廊下を歩き思案する。
(まずはこれの力を試さないとな…)
夜中になるのを待ち、場所は俺の個人部屋。俺の部屋はもしもの時のために耐久性はピカイチだし防音機能もバッチリだ。
ここでなら思う存分が使える。
使い方なんて知らないだけど本能が俺に教えてくれる。こいつの使い道を…俺に力をッ!
「―――変身」
俺は変身した。
前世でチラッと話を聞いていただけの変身ヒーロー――【仮面ライダー】に。迅に。
『すごい…力が、力が漲るッ!これなら、これなら――ッ!』
この都市に、俺を否定するやつはいらない。俺を認めるこの都市に俺を否定するやつは、存在しちゃいけないんだよ
―――。
――――。
―――――。
「やめろ…やめろォオオオオオッ!!」
目の前で叫ぶのは、俺をロクデナシとバカにした女の一人。俺はソイツの服を無理やり引き裂く。そのあとは…単語はなんだったか。【強姦】だったか?それをやった。
俺が初めて変身したあと、女部隊が衛生する機会を狙い、奇襲した。
あいつらを分断するために、空からの奇襲かつ姿を見られないための高速移動。アイツらを分断することに成功した。【アヤネ】とか言うこいつらのリーダーには是非生き残ってもらう。そのあとも永遠に苦しめ。恨むんなら俺をバカにしたてめぇの部下を恨むんだな。
しかし、ヤる前にこの装甲は邪魔だ。だから無防備にして木にしでも縛り付けた後に、俺は正体を現した。
「てめぇ、は…ッ!!」
「よう。初めまして、だな」
「な、なんであんたがッ!こんなことして、いいと思って――」
「ゴチャゴチャうるせぇな。お前、昨日俺のことを“ロクデナシ”っつったろ?その減らず口を、お前の“穴”と“命”で償わせるんだよ。異論は認めねぇ」
そのあとは、冒頭の叫びだったな。
ヤり終わった後は殺して、そこらへんの妖怪に喰わせるだけだ。簡単な作業だった。
俺はそれを何度も繰り返して、アヤネだけを残すことに成功した。
「――――」
空から見た、アイツの絶望に染まりきった顔。今でも忘れられない。
そして俺は気づいた。【愉悦】という概念の真の意味を。他人の不幸――それこそが【愉悦】の真骨頂だったんだッ!!
たまらない。やめられない。止まらない。見たい見たい。愉悦をもっと味わしたいッ!
さて、次は何をしようかねぇ…。
* * * * * * * *
突然だが、俺たちはロケットに乗って月に移住することになった。
なんでも、穢れがもうこれ以上浄化しきることができなくなったから、穢れの存在しない月に移住するという計画が進められていた。
計画は順調に進み、後はロケットに乗って月に移住するだけだった。
どういうわけか妖怪どもが都市に攻め込みやがった。理屈はわからないがどうやら妖怪たちは人間がいないと存在出来ないらしい。だから人間達に月に行かせる訳にはいかないらしい。
だがそんなことは俺の知ったことじゃない。兵たちが足止めをしているらしい。俺たちはこの隙に真っ先に逃げるだけだ。
――と思っていたが。
「うわぁああああああッ!!」
誰かが叫ぶ。まったく予想だにしていなかったところから妖怪どもが攻め込みやがった。当然この場は大パニック。俺も人の波にもみくちゃにされた。
ちくしょうなぜ邪魔をする?なぜ俺の都市にそうやすやすと踏み入れる?なぜ土足で上がれる?
周りが逃げ惑う中俺だけは逃げなかった。なぜなら俺には力があるからだ。俺は仮面ライダー迅に変身して武器を持つ。これは妖怪どもの群れの中に飛び込んでいった。
――。
―――。
――――。
結果は惨敗だった。奴らの中には巨大なやつがいて空を飛んだが脚を捕まれ地面に叩き落とされた。そこからは単純なリンチタイム。変身も解除された。
何とか『保存』の力で人の形が保てたが、もうあとどのくらい生きられるかわからねぇ。
そんな時声が聞こえた。俺は励ます声じゃない。こいつらの薄汚い笑い声だ。なぜ笑うなぜ俺見て笑っている許せない…ッ!!俺の本来の立ち位置はお前らの場所だ。なのになぜ立場が逆なんだ。そこは俺の席だぞ。てめぇらの死体を見て俺が笑う。それが本来の立ち位置だったはずだろ…!
許せねえ都市を襲ったてめぇらを、俺の都市をめちゃくちゃにしたてめぇらを、俺を見て笑う、嘲笑うてめぇらクズども絶対に許さねぇ!!
そうだ。その調子だ。
(この声は…ッ!?)
突如として聞こえた声、それは俺を転生させたあの男の声だった。なぜ?何故今になって急に?そんな俺の疑問を無視して男の声は続く。
貴様は、3つの条件を果たした。今この場をもって更なる力を得る。その力をもってして、そのクズども蹂躙しろ!!
――その時、俺の『保存』の能力は『固定』という新たな力へと開花した。
それからは、こっちのターンだ。笑っていたゴミクズ共を蹂躙、殲滅しつくし、血に濡れた空間が広がる。
俺は血に濡れた部屋を出て行った。
そのあと、下っ端どもが俺を見つけて、けが人として運ばれ、なんとか事なきを得た。何があったかは、ショックで記憶が飛んだってことで納得させた。
これから月へ行く。どんどんと小さくなっていく地上を見て、俺は決意した。
(俺の…俺だけの
―――。
――――。
―――――。
月での生活が始まって、はや数年。俺の不満は爆発寸前だ。なぜかって?性欲が溜まりに溜まってるからに決まっているだろうがッ!!
月には穢れはない。だからこそ上の野郎どもは性行為一つにすら慎重に慎重を重ねている。一年に1回くらいだぞ?ヤるときだって穢れの除去室でやる必要がある。
そんな場所で、満足ができるかってんだ…ッ!!
いや、正直今はそんなことは頭の片隅に置いておくべきだ。俺は今途轍もないほど頭をフル回転している。その原因は“玉兎”だ。
あいつらはこの月の先住民で、今や俺たち『月の民』の奴隷。しかし奴隷と言うのは名ばかりで、従業員兼戦闘兵のような扱いだ。
そんなそいつらの能力は『波長を操る』ことらしい。その能力を使って仲間同士で通信したり、戦闘になれば相手に幻覚を見せるなどお茶の子さいさい。
それが俺にとっては非常にまずい。あの後『固定』の力について研究していたが、どうやら『権能』という代物らしい。
『権能』は『権能』持ち以外の肉体ダメージを完全無効化するものらしく、『権能』持ちでしか俺の体にダメージを与えることはできないらしい。しかし、俺の『固定』の力はその常識すらも打ち破る。『固定』の力で同じ『権能』でもダメージを無効化することができた。
だがしかし、逆を言えば精神面は脆いということだ。そんな俺の弱点の象徴である玉兎を、どう処分するべきか…。アイツらに俺の弱点がバレれば、俺が『無敵』じゃなくなる。そうじゃないと楽しめない。俺の生は、
―――そんなことを考えているうちに、輝夜が月を追放された。直接的な接点はないが、大層な美人だという。というのも箱入り娘だから一度もあったことがないだけだ。永琳も輝夜と同じ罪を犯したようだが、その頭脳を買われて無罪らしい。
俺はこれをチャンスだと思った。
月を追放されたのなら、いなくなっても不自然ではない。俺の溜まりに溜まったこの性欲。てめぇで発散させてもらうぜ…ッ!!
それから俺の部屋に隠し階段を創り、地下に空間を作った。もう一つの入り口は都の外にある大岩につないだ。
真っ暗闇な空間。そこに月の技術をかけ合わせれば、最強の隠し空間の完成だ。
あとは、地上に行く手段。これもすでに持っている。【月の羽衣】という満月と地上の間を繋ぐ一種の乗り物だ。時間はかかるが確実に行ける代物。
これで、あとは輝夜を捕まえるだけ、のはずだった。
聞こえるか
「この声は…ッ!?」
また、あの声が聞こえた。突如として聞こえた声に、俺は驚く。
これは啓示だ。お前には戦争の準備をしてもらう
「はぁ!?なんだよ突然!?」
今から3年以内に、この月を襲撃し、陥落させようとする輩が来る。整えるのだ。その者たちを撃退する、準備を
「そりゃ、どういうことだ!?」
以上だ。せいぜい、励んでくれ
「おい、待てッ!!」
姿の見えない相手を止められるわけもなく、俺はただ部屋の中で呆然と立ち尽くした。なんなんだよ、いったい?3年以内に月が襲撃される?意味がわからねぇ。
だが、それが本当だとするならば、俺が止めない理由はない。ここは俺の
それから俺はまず『固定』の力で様々なヤツに【精神生命体】を創って寄生させた。一気にやると不自然だか、3年もあれば余裕だ。空真とかの隊長格は一番初めにやった。その方がやりやすいからな。
しかし面倒くさいことには変わりなかった。どうやら【精神生命体】を寄生させるためには対象から50%以上の信頼を得なければならないということだ。
これが割ときつかった。寄生させるために何か月もかけたやつもいた。なんでこんな面倒な設定なんだよ。
これくらいあれば、侵略者なんか恐れることはない。結局1年も経たずして終わった計画。あと2年。暇すぎる。
俺は豊かの海へ移動して、一人で桃を食う。ここの桃はうまいが、何度も食ってると飽きてくる。
(輝夜、搔っ攫ってくるか…)
そう決意して、俺は立ち上がった。
そんなときだった。どうやらあの男は、俺が地上に行くことをまだ許さないらしい。突如として空間に穴が開き、そこから白髪のボロボロの服を着た一人の男が転がってきた。
「なんだッ!?」
俺は即座にその男に駆け寄った。その間に空間は閉じて、残ったのはこの男だけ。
うつ伏せになっていた男を足で蹴り上げ、仰向けにする。虚ろな目をしていた。廃人だった。
しかし、そんな男から、とあるオーラが発せられていた。
「これは…『権能』の気配?」
『権能』について調べて分かったことのうちの一つ。どうやら同じ『権能』持ちは互いに『権能』持ちだということが分かるようだ。
それを知ったとき、俺は舌なめずりをしていたのだろう。歓喜した。喜んだ。
(よかった。まだやれることがあったじゃねぇかッ!!)
俺はさっそく秘密通路にそいつを連れてって監禁して、調教した。俺の言うことだけを聞くように。廃人だったから調教に苦労したが、『固定』の力だけでなんとかなった。
こいつの『自由意志』を固定して、それ以外の『判断能力』などはそのままにしておいた。おかげでヤツは俺に対して従順に動く駒。
さぁこいよゴキブリども。ゴキブリホイホイをおいて、待ってるぜ。
「俺の
* * * * * * * *
審判の場。この場にいるのは支配者と罪人のみ。
そしてどちらが強者なのかは、一目瞭然であった。
「この空間は罪人の力を縛るだけではなく、その魂に直結してその者の罪を見ることも可能だ。ゆえに、貴様がこの場でできる隠し事など、ない」
「この――ッ、プライバシーもクソもねぇクソ神がァああああああッ!!」
再び臘月が懲りることもなく攻撃した。今度は自分の服の小さな一部をちぎって、それを『固定』してナイフのように飛ばした。今この場に投擲できるものはなにもないため、苦渋の決断だったはずだ。
しかし、そのナイフと化した布切れでも、龍神の鎧に傷をつけることはできず、刀で弾き飛ばされる。
「罪、その1。我が盟友の空真とその仲間、部下たちの権利を踏みにじった」
龍神がそう告げた瞬間、一気に力が低下する。
脱力して、膝から崩れ落ちる。
権利?権利だと?そんなものあってないようなものだろ。もし確実にあったとしたら俺はこの場にいないかもしれなかっただろ。
「罪、その2。地上にいた際に数えきれないほどの女子を犯し、殺した」
さらに脱力し、立つことすら精いっぱいになる。
それの何がいけない?所詮他人なんて利用するものだ。ただの消耗品でしかない。心なんて、痛むものか。
「罪、その3。地上の幼い子供に、無理やり【不老不死】を与えた。」
臘月は膝を地面に伏せた。もう、立ち上がる努力すらできない。
これに関しては――なんでだ?なんでそんなことをしたのかすら、覚えていない。なんの目的があって、あんなことしたのか?自分の行動に疑問すら抱き始める。
「以上が貴様の罪だ。悔いて、墜ちろ」
龍神の落ち着いた言葉が、臘月をさらに苛立たせる。
畜生、こんなことになるならドライバーを持ってくるべきだった。『固定』があるから、もうすでに棚の中にしまってある。こんなことになるのなら、持ってこればよかった。
しかし、後悔してももう遅い。
臘月に逃げ場は、ない。
「終わりだ。儚く散れ」
龍神が緑色の光線を描きながら、一瞬にして臘月の背中側へと移動した。
臘月の意識が途絶える。
今ここで、長きに渡った闘いに、終止符が打たれた。
倒れた臘月の体を見て、龍神は呟いた。
「貴様は見事に体現したな。綿月臘月。夜神零夜のありえたかもしれない最悪の未来けつまつを、な」
「くそくそくそッ!!」
ここは臘月の深層意識の世界。
臘月は気絶することによってこの世界で意識を保つことが可能となっている。
「あのクソ神…ぜってぇ許さねぇッ!!まだだッ!!俺はまだ終わらないッ!!終わってたまるかッ!!」
『いいや。お前はここで終わりだ』
「だ、誰だッ!?」
そんな、臘月以外存在しないはずの空間で、別の男の声が聞こえた。
臘月は慌ててその声の方向に振り向く。そこにいたのは、黒いナニカだった。全身が黒い霧のようなもので塗りたくられており、その姿を確認することができない。
「な、なんだお前ッ!?いきなり出てきやがってッ!?何様のつもりだ!!」
『そうだな…。貴様に分かりやすく言えば、私はアレという存在だ』
「はぁ!?何わけのわからないこと言って――」
その時、臘月の脳裏に転生する際にいたあの白い空間でのあの男の最後の言葉がフラッシュバックした。
「にしても、『保存』だけじゃ物足りない。
「確かにそんなこと言ってたな。だがあれは変身アイテムで、意思なんて持ってねぇだろッ!」
『違う。あれは付属品にすぎない。本命は私だ』
「だったらちょうどいいッ!!今すぐあのクソ神を倒せッ!!俺の道具なんだ!俺の命令を聞けッ!」
『言われなくともそのつもりだ。まぁ最も、貴様の意見を尊重してやる義理はないがな』
「な、なにを勝手な――うぐっ!?」
その時、臘月の全身が黒い霧で拘束される。臘月はジタバタともがくが、どうあがいても取れそうにない。
「な、なんだこれ!?外せッ!!」
『外すわけがないだろう。貴様は、ここで大人しくしておけ』
「ふざけるなッ!!外せ、今すぐ外せッ!!」
黒い影は臘月の叫びなど無視し、後ろを振り向く。
それと同時に黒い影の腰辺りに、機械的なベルトが出現する。
『貴様の体は今日を持って私のものだ。貴様はここで観戦していろ。―――永遠にな』
「待てッ!!待てぇえええええええッ!!!」
『変身』
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