戻ってきたスバルがクリプターになる話。 作:アステカのキャスター
どうもアステカのキャスターです。
最近リゼロの第四章のアニメが熱い!と言う事でネタですが書いてみました。続けるかは未定ですが、暖かい目で見てください。
良かったら感想、評価お願いします。では行こう!!
唐突の絶望
終わりが近づいていた。
それは文字通り厄災の終わり。
大罪司教。三大魔獣。
そして……目の前にいる魔女の終わり。
世界を脅かす『嫉妬の魔女』の終わりが近づいていた。
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」
「ああ、そう言ってお前はいつも俺を見てない。こんな状況にも関わらず、お前はただ空っぽの世界しか見てねぇんだ」
スバルは一人、前に出る。
後ろを見れば、隣を見ればスバルは目の前の敵に臆す事は無かった。右後ろには銀髪のハーフエルフであり、最愛のお姫様であるエミリア。左後ろにはスバルの手を取って契約した家族のような精霊ベアトリス、真後ろには俺を英雄と呼んでくれた鬼の少女レム。
それだけじゃない。『剣聖』のラインハルト、『最優』のユリウス、『剣鬼』ヴィルヘルム、宮廷魔導士のロズワールやクルシュさん、アナスタシアさん、フェルト、王選を戦った人達全てがスバルの後ろに立っていた。
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」
「残念だったな。幾らお前が俺を愛そうと、お前はお前を愛さない。お前を赦さない」
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる」
「嫉妬の魔女、愛に苦しんでんなら、もう愛なんて捨てちまえ。本当なら俺は、お前を、
嫉妬の魔女の心臓をスバルの魔手が触れる。
ここまで来るのに何回死んだのか分からない。何回やり直したのか分からない。あの時、必ずお前を救ってやると誓ったスバルが唯一取れる方法は一つだけだった。
嫉妬の魔女の魔女因子をスバルが喰らい潰す事だ。
無論、それがどうなるか分からない。大罪司教の因子を5つ以上取り込んでいるスバルだが、それはあくまで精神的な話だ。嫉妬の魔女があそこまで狂ってる以上、スバルがどうなるか分からない。
けど、迷いはなかった。
ここまで何回死んだから分からない。けど、ラインハルト、ユリウス、ヴィルヘルムさんにガーフィール。
ベアトリス、レム……そしてエミリアがここまで連れてきた。ここまで長い道のりだった。誰か一人でも欠けていたら辿り着く事は出来なかっただろう。
「サテラ、多分俺はお前を
現実は愛の前に歪み
愛は恋の前には勝てず
また恋は現実の前に打ち砕かれる
恋に嫉妬し、独占しようとする。
嫉妬し、誰かを独占したいという想いは間違ってはいない。だが、それは恋を認めないという事に変わりないのだ。故に愛は恋の前に勝てない。
嫉妬の魔女の心臓はスバルの見えざる手に握り潰された。
嫉妬の魔女の最後は『愛する者に殺される狂死』だった。
「嫉妬の魔女が……」
誰かが呟いた。
嫉妬の魔女から力が失われていく。全てを飲み込まんとする影が消えていく。心臓を握り潰しただけじゃ死なない。首を落とそうと死ぬ事はない嫉妬の魔女はただ愛する者の手によって初めて死ぬ事になる。
「……じゃあなサテラ。俺はお前を選べない」
もし、もしも出会いが違ったなら。
けど、自分はあの子を好きになって、好きと言ってくれた子がいるから。スバルは嫉妬の魔女を選べない。選んだのはエミリアだ。自分を愛してくれたサテラの願いを叶え終え、自分の胸に手を当てる。
魔女はもう居ない。
世界を脅かす災厄の魔女は、もう居ない。
「––––スバル!」
「……エミリア、終わっ––––」
エミリアがスバルに駆け寄る。
繰り返す地獄もこれで終わり、もう苦しまなくていい。もう傷付かなくていい。傷だらけの騎士であり続ける事を選ばなかったスバルでも傷だらけの現実から終わりを告げたのだ。
そして、誰もが予想出来なかった。
いや、それに気付けたのはスバルだけだった。
「––––愛シテル」
その嫌に馴染む愛の囁きが
次の瞬間、嫉妬の魔女の死体から瘴気の渦が生み出され、スバルを呑み込む。
「––––えっ?」
「スバルっ!?」
エミリアが手を伸ばそうとした瞬間、スバルはソレを理解した。コレは瘴気じゃない。
器が無い以上、新しい器に乗り移る。
魔女因子はその依代を選ぶ。エミリアは恐らく馴染んでしまうだろう。
「エミリア! コレに触れるな!」
「スバル君!!」
レムが瘴気の外から鎖をスバルの胴体に巻き付ける。
その鎖を鬼化した怪力で引っ張りあげようとするが……
「ぐっ……!」
「みんな! この鎖を!!」
瘴気の渦からスバルが抜け出せない。
それどころか、引っ張り出そうとするレムも引きずり込まれてしまう。踏ん張る地面が抉れ、スバルの半身は呑み込まれてしまっている。
「スバル! 耐えてくれ!」
「一気に引っ張りあげる!」
エミリアやベアトリス、ラインハルトやユリウス達も鎖を掴んで引っ張り上げる。だが、どんどんスバルの半身は呑み込まれる。寧ろこれ以上はスバルの身体が千切れかねない。
このままじゃ……全員瘴気に引き摺り込まれて死ぬ。唯一耐性があるスバルだけが、この瘴気に触れて平気なのだ。
「エミリア……レム……ベアトリス……!」
「スバルっ! あと少し頑張って!!」
駄目だ。これ以上は……
瘴気に引き摺り込まれたら、『剣聖』だろうと無意味だ。この瘴気は執着の具現、それがスバルには嫌という程わかってしまう。影に呑み込まれたあの時と同じ感覚だ。このままじゃ、この瘴気の渦は広がってしまうだろう。
スバルは悟った。
これを止める方法は一つ。
「エミリア」
「スバル……!」
「ありがとな。エミリア」
エミリアは目を見開いた。
何故、諦めたような顔をするのか。
何故、こんなにも悲しい顔で笑っているのか。
この鎖を離してしまえば、スバルと永遠に会う事が出来ないようなそんな感覚にエミリアは血が滲む程、鎖を握りしめた。
「ダメ……! スバル!」
「スバル君!?」
「スバル!?」
スバルは弱い。
弱くて誰かを頼らなければ生きていけないくらい弱い。
けど、それでも、この時だけは、今だけはスバルにしか出来ないことなのだ。内臓が千切れるような痛みの中、スバルは伸ばされた鎖を見えざる手で握り潰した。
「エミリア! 必ず帰ってくる! だから––––」
そう言うとスバルは瘴気の渦に完全に呑まれていった。鎖から手を離し、瘴気の方に向かおうとするエミリアをラインハルト達が止める。ラインハルト達も飛び出したい気持ちがある。けど、アレはスバルにしか突破出来ない事を直感で理解してエミリアを止めていた。
「スバル!! スバルゥゥゥゥ!!!」
ただそこに響いたのは消えていくような喪失感に胸が痛くなり、涙を流すエミリアの悲痛な叫びだけだった。
最後に、待っていろと言う
★★★
瘴気の中を突き進むスバル。
まるで荒野の中を彷徨うような、そんな感覚に精神が削られていくようだ。
「サテラは……どこにいるんだ」
瘴気の中をひたすら歩いた。
歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて歩いて–––––––––精神がすり減っていく。
砂の地面を歩いているようだった。
水の中にいるような身体の重さだった。
宇宙にいるような呼吸のし辛さだった。
こんなものに何百、何千とサテラは苦しめられていたのかを理解する。こんなものを放てば、世界が壊れてしまうような強大さがあった。
けど、スバルはそう感じなかった。
これはまるで、泣き叫んでいるようだった。
「……サテラ」
目の前には泣いている女の子がいた。
膝を突いて、蹲るように泣いて、ただ謝るように抑えられなかった自分を責めて、泣き続けていた。
「……サテラ」
スバルはサテラを後ろから抱き締めた。
そこに居るのは嫉妬の魔女なんかじゃない。
「愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ愛シテ」
囁きが聞こえた。
サテラの口からではなく、サテラの中からそう聞こえる。それはサテラの意思なんかじゃない。
「嫌だよ……もう……壊したくない」
魔女因子が意志を持っているようで、サテラと嫉妬の魔女は別の存在だ。抑えつけて耐えて、苦しんでいるサテラと愛に飢え、愛を欲する嫉妬の魔女。
いつもこうやって泣いていたのか……
「サテラ!」
ただの1人の女の子だったのだ。
魔女になりたくてなった訳じゃない。ただ好きだった男の子を喪って、縋るものが無くて絶望している寂しがりの女の子だったのだ。
「──泣かないで。傷付かないで。苦しまないで。悲しい顔を、しないで」
もう、いいんだ。苦しまなくていい。
あの時にサテラが言ってくれた言葉をスバルが口にする。
「……傷付こうとするなよ。もっと自分を大切にして」
「──俺はお前にも救われた。だから、お前も自分を愛して、守ってあげて」
「悲しまないで」
「苦しまないで」
「泣かないで」
「__もっと自分を愛して」
サテラはその言葉に涙が流れた。
サテラもスバルも似たもの同士だった。傷付いて、悲しんで、自分を愛せない。
だけど、それが誰かと一緒なら……
誰かと一緒に傷付いて、悲しんで、泣いてくれて、愛してくれるなら……
ナツキスバルはサテラの知る『スバル』ではない。
だが、それでも……それでも好きな人と同じだった。好きな人と重ねてしまうくらい優しくて、独りぼっちだった自分を連れ出して、愛してくれた『スバル』と重なっていた。
「スバル……」
サテラは最後に笑った。
迎えに来てくれたのは『スバル』ではない。
けれど、どんなスバルでもサテラを見つけて連れ出してくれる。そんな星のように自分を照らす存在に、また出会えたのだから。
「––––ありがとう」
その言葉を告げた次の瞬間
サテラも嫉妬の魔女も完全に消え去っていた。スバルの中にサテラの繋がりはありながら、サテラはその場から溶けるように消えていった。
瘴気が晴れる。
終わりが近づく。それは死と言う終わりではない。
文字通り全てだ。
もうナツキスバルは英雄になれない。元々、英雄幻想だったナツキスバルは『死に戻り』を得て、誰かを巻き込んで乗り越えただけのちっぽけな存在なのだ。
それを取ったらただちょっと珍しい力を使うだけの少年。剣聖どころか、友達にさえ劣ってしまう人間だろう。
けれど、ナツキスバルはそれでいい。
力が無くなるなんて対した事じゃない。
元々『死に戻り』なんて死ぬ事が怖いナツキスバルには使いたいと思わない力だったから。
「ーーーーー」
瘴気が晴れる。
砂のような地面の軟らかさは無くなった。
水の中のような身体の重さは無くなった。
宇宙のような呼吸のし辛さは無くなった。
晴れた世界にナツキスバルは眼を開ける。
待ってくれていた人達に謝って、俺は無事だと伝えたかった。
「………………はっ?」
スバルは眼を見開いて硬直した。
自分は先程まで魔女の封印の地に居た。エミリア、レム、ベアトリス、ラインハルトやユリウス、クルシュにアナスタシア、フェルト、プリシラの陣営の戦力を全員引き連れてあの場所に居たのだ。
「…………嘘……だろ……」
それは余りにも突然だった。
余りにも残酷で無情な絶望だった。
「なんで……」
右を左を見渡しても、スバルが仲間と呼んだ存在は誰一人としていなかった。
「なんで…………!」
膝を突いて、呆然として叫び出す。
スバルが立つその場所は、
そう––––––
「なんでだよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
喉が裂けるくらい叫んだ。
目が枯れてしまうくらい泣き叫んだ。
それは余りにも唐突で、余りにも残酷な終わり。
ゼロから始めた異世界生活、ナツキスバルが英雄になれたあの場所から、スバルは異世界から元の世界に戻ってしまっていた。