戻ってきたスバルがクリプターになる話。   作:アステカのキャスター

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 唐突に幕間編突入!
 クリプターの幕間は全部書いていきます!とりあえず気分転換に幕間を書きました!良かったら感想、評価お願いします。では行こう!     


幕間 クリプター達との半年間
幕間 カルデアの半年間(カドック編)


「──初めまして! 俺の名前はナツキ・スバル! 無知蒙昧な上に図太さ超一流の不束者ですが、どうぞよろしく!」

 

 

 最初見たアイツの感想は変人の一言に尽きた。

 Aチームはカルデアに呼ばれた魔術師の中で化け物揃いの連中ばかりだ。サーヴァントにすら干渉出来る魔眼を持つ天才も居れば、本気を出せば魔術界そのものに革命を齎せる天才、実戦的で殺すのを厭わない天才、未知を解明する驚愕的な頭脳を持つ天才などが集まっている。

 

 言っちゃ悪いが、ナツキスバルは余りにも()()()()()()

 

 それこそ、一般人と何ら変わりはない。

 ジャージ姿で目付きは悪いが、魔術師としての面影は無い。魔術師にしてはあまりにも()()()()()()()()()()

 

 

 僕は彼が自分に似たタイプなのだろう。

 そう勝手に結論付けた。だが、そんな結論は大いに覆った。

 

 

「レイシフト適性率……100%……!?」

 

 

 自分がAチームの中で誰よりも高かった才能を容易く飛び越えた。

 架空元素・虚数と言う未知の属性。魔術回路が規格外の本数存在し、質もキリシュタリアと並ぶ程の良さ。サーヴァントを恐らく同時に三体以上を維持しながら戦えるだろうと聞いた規格外の存在。

 

 

「……は、ははは」

 

 

 その時自分の足元がガラガラと崩れ去る気がした。

 今まで天才達に並び立つ為に必死に努力した。寝る間も惜しんで魔導書に向き合い、出来ないことを出来るまで努力する。

 

 そんな自分の今までが全て消え去るような気がした。

 

 

 ★★★

 

 

「カドックー?生きてるかー?」

 

 

 Aチームでは偶に模擬戦がある。

 単純に魔術師同士の闘い。死なせないように仮想空間での相手との実戦。僕とアイツで互いに勝負をした。結果は惨敗に終わった。

 

 ガンドを撃って牽制しようとするが、アイツはパルクールのような動きで躱しながら魔術を使わずに鞭で闘う。鞭を魔術で切り離したと思った瞬間、自分の額に硬い何かが投げつけられていた。ただの十円が額に当たり、その瞬間アイツが接近する。

 

 近づけば他の魔術で対応可能。罠の魔術も張ってある。

 迂闊に接近したアイツへの勝利は可能。そう思った矢先に……

 

 

「シャマク!」

 

 

 意識がプツリと途切れたような感覚に襲われた。

 闇に覆われた。瞬きの直後、目を開いても視界が瞼を閉じたままのように暗いままだ。途切れる前の最後の記憶はアイツから黒煙のようなものが出ていた所だ。動けない。動こうとしても身体が言う事を聞かない。

 

 

「ぐあっ……!?」

 

 

 かなりの重さの拳が腹に突き刺さる。

 衝撃で呼吸は出来ず、胃がひっくり返るような嘔吐感と意識が飛びそうな痛みに自分は気付けば崩れ落ちていた。

 

 

「8戦中8勝0負け。今回も俺のビクトリー!」

「が…ハァ、…うぉえ……」

「吐きそうか?……大丈夫か?もう少し手加減するべきだったか?」

「必要…ない……!」

 

 

 戦っている僕なら分かる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()!舐められているとかそんな次元じゃない。まるで、()()()()()()()()()()()()()()ような、時間の無駄みたいに……

 

 

「何で……本気出さない」

「はっ?」

「何で手加減してるって…聞いてるんだ!」

 

 

 その言葉にアイツはキョトンとした顔で呆ける。

 頭を掻きながらため息をついて、僕に手を差し伸べる。

 

 

「手加減って……確かに俺は奥の手みたいなもんはある」

「だったら……!」

「けど、それは自分の力じゃない」

 

 

 アイツはハッキリと言った。 

 それは自分が持つ力の筈なのに、自分の力ではないと断言した。

 

 

「俺はさ。どこまでいってもクズみたいな奴なんだよ。みんなを騙す事も出来て、我が身可愛さで誰かを見捨てちまって、手にした力だってロクなものじゃない」

 

 

 やや自虐気味に笑っている。

 手を振り払う僕にアイツは嫌な顔をせずに崩れ落ちた自分の隣に座る。

 

 

「努力はしても辛い事も痛い事も嫌いで、頑張ってると思ってるのに()()()()()()って投げ遣りになって、他人の気持ちを平気で踏みにじる。そんな奴が使う力なんて、自分勝手な力なんだ」

 

 

 どこまでも自分勝手な力。

 コイツはそう言った。魔術師同士の闘いで全霊を出すのは当たり前だと思っていた僕に対して優しく告げた。

 

 

「だから俺はこの力をお前には向けない。向けるのは俺と同じくらいクズな奴にしか向けたくないんだ。やむ得ない時と、そうしなければいけない時だけだ。だから俺は()()()()()()()()()()

 

 

 努力が出来ない。

 そして、一つの事を極めることすら出来ない。頭も、力も、魔術も足りてない。足りないものを埋めようとするだけ?出来るまで努力する自分とは違う?

 

 

「だったら……!何で僕は本気すら出さないお前に勝てない!」

 

「アホか。本来なら使えない奥の手は抜きにしろ、俺は別に本気で戦ってる」

 

「なら何で……!」

 

「お前が俺に勝てないのは、俺が歩いてきた人生を総動員させてっからだ。自慢じゃないが、図太さと人生の濃さだけなら俺はお前に負けねぇよ」

 

 

 コイツが使ったのはシャマクと言う意味不明な魔術のみ。理由理屈も分からない。使える魔術がミーニャとシャマクのみ。パルクールも鞭も努力すれば誰だって出来る。けど勝てない。

 

 コイツは前に言っていた。必死こいて学んで、命をかけて戦うために身につけたものだ。それも自分を変えてくれる人間が居なければ身につける事に努力すらしなかった、と。

 

 コイツは魔術回路は優れていても、魔術は殆ど使えない。

 魔術師としては三流、だけど手札の切り方だけならAチームの中では上位に入るし、一度見せてもらった力もリーダーのキリシュタリアすら凌駕する。

 

 

「俺はお前を尊敬する。出来ない事を出来るまで努力する事ができるお前を、俺は凄い奴だって思うよ。アイツみたいで羨ましい」

 

 

 スバルの頭に過ぎったのは紫の髪をした騎士。

 剣聖に敵わないから自分なりの在り方で生きてきた自分を見つめ直し、次は必ず勝つと折れた感情を再び燃やし、剣聖に一太刀入れたアイツを鮮明に覚えている。

 

 憎たらしいし、妬みもあるが、アイツは凄い奴だとスバルは心の奥でそう思っていた。

 

 

「僕は……」

 

「焦んなよカドック。お前も、Aチームの全員だって凄え奴らばっかだろ?出来ない事を無理して追いついけねぇなら、自分が得意だと思った事で一番になったっていい。助けてもらうのだって恥じゃねえよ」

 

「だったら……お前は助けてもらうのか?そんな力があるのに」

 

「俺?チョー助けてもらってばっかだよ?無力無鉄砲な俺を助けてくれた奴等が居たから俺は今ここにいる」

 

 

 スバルは懐かしむように物思いにふける。

 むしろあの世界に帰ったら、スバルが力を持ってる事に驚愕される気がする。と言うか姉様に鼻で笑われて、相棒に鼻で笑われ、挙げ句の果てには親友にまで鼻で笑われる気がする。全部鼻で笑われてるけど。

 

 

「……僕は、お前が羨ましいよ」

「奇遇だな。俺もお前が努力出来る秀才で嫉妬溢れるくらい羨ましい所だよ」

 

 

 スバルが立ち上がり、カドックに手を伸ばす。

 フン、と憎たらしい笑みを浮かべながらもスバルに引き上げられる。カドックもスバルも似ているのだ。努力しても、頑張っても届かない所に必死になって踠いている。

 

 そして、カドックとスバルは逆なのだ。

 努力して出来る秀才と、出来ないを他人で補う凡人である二人は似ていて真逆、なんとも矛盾する話だ。

 

 

「んじゃ、飯行こーぜカドック。今日俺はカレーの気分なんだわ」

「……奇遇だな。今回は僕も同じ気分だ」

 

 

 だが、仲が悪い訳じゃない。

 ちょっとしたライバルで、本当にちょっとした友達で、もし自分に足りない部分があるなら、スバルのような他人を頼る事だと少しだけ学ぶ事が出来た。

 

 必ず、追い付く。

 カドックはスバルの背中を見てそう心に決めた。

 

 

 ★★★

 

 

「……ん」

 

 

 やけに懐かしい夢を見た。

 身体が重い。若干の寒さがある中で、ロシアの異聞帯の維持の為に出来るだけの事を無理して詰め込み過ぎたようだ。頭の方が妙に柔らかく温か……

 

 

「って、キャスター!?」

「あら、お目覚めかしらマスター」

「何で僕は膝枕されてるんだ!」

「マスターの寝顔が可愛いものだったからつい」

 

 

 ふふふと微笑むキャスターに頰が赤くなる。

 キャスターには毎回揶揄われるから苦手な意識があるし、絶対おちょくって楽しむような事をして笑っている。

 

 頭はもう痛くない。

 寝落ちしてゆっくり休んだのもあるからか、もう大丈夫だ。膝枕から起き上がり、ソファーから立ち上がる。

 

 

「……なあ、キャスター……いや、()()()()()()

「何かしら」

「僕は君を皇帝にする。あの時からそこは変わらない」

「ええ、確かに言ったわね」

「少しだけ、訂正させてくれ」

 

 

 アナスタシアの周りから冷気が漏れ出ていた。

 それは自分を謀った怒りか、マスターに対する失望感か。下手な言い訳をすれば凍らされて砕かれるだろう。

 

 

「訂正と言っても皇帝にする事は変わらない。だけど、それは()()()で君を皇帝にするのは難しい」

 

 

 もう本当は分かっていた。

 自分一人ではアナスタシアを皇帝に出来ない。単純にそうさせるまでの頭が足りてない。

 

 

「今の僕には他のクリプターより力も頭も何もかもが足りてない。僕一人で出来ない事だってある。無理なものは出来ないし、非現実な事はもっと無理だ」

 

 

 自分にはオフェリアのような魔眼もなければ、キリシュタリアのような天才的な力も、ペペやベリルのような戦闘経験も、デイビッドのような頭脳もない。

 

 ただ一つだけ、アイツと被るのは癪だけど。

 諦めない事だけは、Aチームの中で負けていない。自分の弱さを呪っても出来ない事は出来ない。諦めないとはそう言う事じゃない、弱さは弱さだ。だけど、弱さを言い訳に無理をするのは違う。弱くても、目的の為に自分の出来ることを信じて諦めない。

 

 アイツから学んだ。唯一の強さだ。

 

 

「だから、訂正させてくれ。僕は()()()()()()()()()()、君が持つ力も全て借りて、君を皇帝にする。だから、マスターだからとかサーヴァントだからとか無しに、協力してくれるか?」

 

 

 僕は彼女に手を伸ばした。

 アイツが僕だったら同じ事をしていたのかもしれない。サーヴァントとかマスターとかそんな区切りで見ないで、ただこれからよろしくと頼んで親しげにしているのが目に浮かぶ。

 

 僕はマスターだし、サーヴァントはサーヴァント。

 そう考えている事実は変わらない。けど、そうしない事に意味があるのなら、キャスターとしてではなくアナスタシアとして見る事が出来たなら、と後悔することだけはしたくない。

 

 カドックの手を取って立ち上がり、アナスタシアは微笑んだ。

 

 

「ええ勿論。貴方のサーヴァントで、貴方の願いを叶える為に私はいるもの」

「……そうか。ありがとう」

「どういたしましてかしら?……ふふ、なんだ。無愛想に見えて可愛い所もあるのね」

「なんでこの空気で揶揄うんだよ!?もういい、僕は別の仕事を見てくる!」

 

 

 若干拗ねたように退室するカドック。

 カドックが居なくなった後、アナスタシアは再びソファーに座り、倒れ込む。顔をクッションに埋めて皇女らしからぬ体勢のまま、目を瞑る。

 

 

「……ちょっとだけ、卑怯だわ。()()()()

 

 

 カドックが差し出した手の暖かさをまだ感じる。

 その手を胸にギュッと握り締める。無愛想で、平気で無理をするカドックがキャスターとしてではなく初めて自分を見て頼った事にアナスタシアは驚きと少しの嬉しさがあった。

 

 耳まで赤くなっている顔をカドックに見せないよう、帰ってくるまでに直そうと目を瞑って、落ち着かせようとする皇女様らしからぬ皇女様が居た事を窓からニヤニヤと見ていたラスプーチン(愉悦神父)がいたと言う。

 

 





神父(愉悦)「はっ、愉悦の気配!?」

 
 神のお告げのようにピンとひらめいたかのようにラスプーチン(愉悦神父)は愉悦の気配に向かって走り出した。そして城をよじ登って窓からひょっこりとカドックとアナスタシアを覗いていた。


 因みに四階から……
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