戻ってきたスバルがクリプターになる話。 作:アステカのキャスター
……ゴシゴシ……ゴシゴシ……( ゚д゚)
何と赤バーがついていた!?だと!?ありがとうございます!!思わず二度見して目を擦った後また二度見しました。
良かったら感想評価お願いします。いつもありがとうございます。では行こう!!
ナツキスバルは普通に飛行機に乗ってロンドンの時計塔まで足を運んだ。わざわざライネスから連絡があり、ある人間と話がしたいと言うらしい。
「っはー、疲れた身体に鞭打ってロンドンに帰ってきたと思ったら、案内役がロードとはねぇ」
「久しぶりだな『傲慢』」
「お久しぶりっす。ロード・エルメロイ」
「II世をつけて頂きたい」
欠伸をしながら久しぶりの再会に握手する。
手袋越しではあるが互いに敵意はない。スバルは魔術使いでフリーランスだ。しかもかなり名の知れた執行官のような存在であり、正体不明の魔術師殺し。
実はライネスと契約を結んだ後にある程度お金を回しているのもあるので、時計塔の中では1番面識がある。元々時計塔で世話になっているのはライネスだ。ライネスは利用価値が高そうだから結んだ契約かもしれないが、魔術に関する事はライネスから教わって、ある程度の放浪従者になっている。まあ形だけで、利用し利用されるだけの契約相手、簡単に言うならエキドナと同じだ。
「それで……?わざわざアンタのコネまで借りて俺を呼んだのは誰なんだ?正確にはライネスだけど」
「ああ、アニムスフィア家の次期当主だ」
「アニムスフィア……って言うと確か星に関する?」
「天体科のロード。マリスビリー・アニムスフィアの娘らしい」
「へー、そのお偉いさんが俺に?」
車に乗り、ロードの話を聞くとある機関へのスカウトらしい。
人理継続保障機関フィニス・カルデア。アニムスフィア家が莫大な資産によって生み出した人理の守護代行。それがカルデアと言う場所だ。
「何で俺?」
「さてな、そこまでは分かりかねない。貴様は適性検査は受けていないのだろう?」
「ああ、多分。健康診断や血液検査とかは全部断ってるし」
「カルデアでは適性検査で素質を測る。魔術師としての才能ではなく、別の根幹における才能を測るらしい」
別の根幹?とスバルは首を傾げる。
ロードの話だと言わば、
「面談の場は設けてある。仮にも天体科のロードの娘だ。時計塔や上の連中に喧嘩を売るような事をしない事だ」
「まあ、理由が分からない以上考えても仕方ないって事か」
ため息をつきながら、スマホを弄る。
スバルも中々お金持ちになって、現代に馴染んだようだ。
★★★
いつものジャージ姿でドアを開くスバルに対して、座って紅茶を飲んでいる女がいた。長い銀髪で一瞬だけスバルが固まりながらも、扉を閉めると紅茶を置き、立ち上がる。
「初めまして『傲慢』。私は天体科のロードの代理であり、次期後継者。オルガマリー・アニムスフィアよ」
「初めまして、本名は明かせないんで『傲慢』で」
「……とりあえず、座りましょう」
スバルとオルガマリーは椅子に座る。
意外とふかふかというどうでもいい事を考えながら、警戒を怠らないスバルに対してオルガマリーはやや顔を顰めていた。服装はジャージ、顔立ちは子供っぽさがあり、魔術による警戒はしていても触媒や道具を持っている感じはない。ハッキリ言って二流の振る舞い。
こんな男が本当に『傲慢』と呼ばれた最強の魔術師殺しなのか些か判断しかねる所があるのだ。
「それで?ロードとライネスのコネ借りてまで俺を呼び出した理由は?」
「そうね。単刀直入にいいましょう。人理継続保障機関フィニス・カルデアに貴方をスカウトしに来ました」
「……その人理なんたらは知らねえけど、スカウトの理由くらい聞かせてくれ」
「ええ、とりあえずスカウトに至った原因から話しましょう」
2016年に何者かのよる歴史介入で人類史が焼却される。
カルデアスは本来は存在しないはずの過去の特異点事象を発見し、これに介入して破壊する事により、未来を修正するための作戦「グランドオーダー」を始動する。
だがその為に必要な人材が居る。レイシフト、過去の特異点を変える為に時間を移動するレイシフト適性、召喚システムに必要なマスター適性。その二つと同時に過去改変に必要な魔術や戦闘技能。英霊を呼んだ所でマスターが死ねば意味がない為、それらを持ち合わせた人材を探していた。
「……成る程ねぇ、つまりは2016年に訪れる滅びをカルデアを通じて除去する為に、過去を変えられる人材を探していたと」
「ええ、そしてアニムスフィア家は貴方に目をつけた。お父様の資料によれば、貴方は
「……それを言い切る根拠は?」
「資料に書かれていただけ、私もその根拠についてはハッキリしていないわ」
「………」
どうやらオルガマリーは何も知らない。
だが、マリスビリー・アニムスフィアはスバルについて
「……それを俺がやるメリットは?」
「これよ」
オルガマリーがメリットが書かれていた資料を差し出すと、スバルはそれを見る。かなりの金と時計塔の権力、封印指定の解除など書かれていた。カルデアで働く分には世界を救うと言うものだ。それなりの報酬は用意されている。
「どうかしら、受けてくれ–––––」
「断る」
スバルはその資料を見た後、ため息をついてテーブルに投げた。オルガマリーはその事に驚愕しながら、冷静な魔術師の顔が崩れていた。
「なっ……!?」
「俺にとって大したメリットじゃない。興味ない」
「メリットどうこうの話じゃなくて、これは世界を救う為の……!」
「だから、協力しろ……か?俺には俺の目的があるのに、それを中断してまで協力するつもりはねぇよ。それにその話は本当かもしれないが、まずお前を信用出来ない。話がこれだけなら俺は帰るぞ」
椅子から立ち上がり、扉に手を掛けようとした瞬間、スバルの横の壁に弾丸が突き刺さったような跡がついていた。オルガマリーがスバルを止める為にガンドを撃っていた。それにため息をつきながらスバルは振り返ると、焦ったようなオルガマリーの表情が見えた。
「待ちなさい!何が不満なの!?」
「俺にメリットが無い。それだけの話だってーの」
「世界が滅びるかもしれないのよ!?私達だって必死なの、歴史が滅びれば人類は消える!貴方だってそうよ!」
「……だから、協力は義務だと?」
「がっ…!?」
次の瞬間、オルガマリーの首が締められる。
首を掴まれて、宙に浮いている。オルガマリーには一体何が起きているのか分からない。ただ、分かるのは真剣な顔で睨みつけるスバルの姿だった。
「お前さぁ、これだけの報酬さえ有ればカルデアに引き込めると思ったんだろ?まあ俺はジャージ姿だし、魔術師としては二流、簡単に言えば猟犬にでも見えたんだろうけど。まあ分かるよ?俺もお前の立場ならそうしてる。けどな––––」
「かはっ……!?」
「––––俺を甘く見るな。オルガマリー・アニムスフィア」
オルガマリーは初めて目の前にいる人間に恐怖した。
自分は心の何処かで見下していた。ジャージ、人相、振る舞い、ハッキリ言って噂の『傲慢』とはイメージがかけ離れていた。だからこそ、目の前にいる人間が猟犬的な存在に見えたのだろう。骨を投げれば拾ってくる猟犬ならまだ可愛かっただろうが、目の前にいるのは紛れもなく『傲慢』なのだ。
未知の属性、未知の術式であらゆる魔術師を返り討ちにした存在。故に『傲慢』と名付けられ、罪の名にまで至った男が目の前に居るのだ。
このまま死ぬくらいなら一矢報いてと思いながらも右手を『傲慢』に向けようとしたその時……
「そこまでにしてもらえないかい?その子は私の娘なんだ」
スバルはその声に振り向いた。
その言葉と共に扉を開けた人物。