戻ってきたスバルがクリプターになる話。   作:アステカのキャスター

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 ボックスガチャ何回引けましたか?
 素材大量で結構ウハウハでした。投稿が遅れてしまいましたけど。

 スバルとマリスビリー、道化と道化の交渉です。
 次で漸く並みに乗れるリスタートになりそうです。良かったら感想、評価をお願いします。では行こう。




道化達の取引き

 

 

「そこまでにしてもらえないかい?その子は私の娘なんだ」

 

 

 扉を開けて入ってきた男、マリスビリー・アニムスフィアはスバルに制止の声を掛ける。スバルは何処か既視感を覚える。雰囲気や纏う空気のようなものだろうか。

 

 ––––ロズワールやエキドナに似ている。

 

 決して油断は出来ない相手だと瞬時に理解する。

 

 

「……そうだな、悪かった」

「……っ!ゲホッ、ゲホッ!」

 

 

 見えざる手がゆっくり解除され、オルガマリーは苦しさに咳き込みながら、父のマリスビリーの後ろに隠れた。

 

 

「……なんつーか、悪かった。苛立ちで全く感情が制御出来てなくてな」

 

「いや、私の方こそ悪かった。娘に行かせたつもりだが、相性が何かと悪いと思ってね」

 

「お父様…何故ここに……」

 

「見ての通り、『傲慢』をスカウトしにきた。ああ自己紹介がまだだったね。私はマリスビリー・アニムスフィア。オルガマリーの父親さ」

 

 

 スバルはため息をつきながら、部屋を出ようとする。

 歴史が切り離される。それも確かに重要だろうが、今はそれに構っている暇ではない。

 

 

「あの条件で俺はカルデアには入らない。これ以上、何を言っても時間の無駄だろ」

「そうか––––だが、今君が探しているものはこのままでは見つからない」

「……何?」

 

 

 スバルは鋭い目つきでマリスビリーを睨む。

 お前が俺の何を知っている、とスバルは内心苛立ちを隠せない。今のスバルに余裕はない。あの国の未来がどうなったのか、ベアトリス、レム、エミリアはどうしているのか。

 

 こうしている間にも時間が流れている。

 彼方の時間と此方の時間は同じ時間を進んでいる。

 

 今のスバルに残された異世界の手掛かりは魔女因子だけだ。それ以上の手掛かりは見つかっていない中、マリスビリーは語り出した。

 

 

「以前、事象記録電脳魔・ラプラスはある事象を捉えた。それは歴史の歪みには関連しない余りにも小さな特異点」

「?何言って––––」

「だが、調査員を実際に派遣したが原因は不明。ラプラスの不具合と見ていたが、それも違った」

 

 

 事象記録電脳魔・ラプラス

 カルデアスを通して、地球で起こった様々な事象の情報を収集する電脳の使い魔の事で地球を模した擬似天球は様々な異常を感知する。

 

 半年前の事、カルデアスを通して微小な歪みに気付いたマリスビリーは調査員を派遣したが、原因は不明。コンビニ前には魔術的要素も無ければ、霊脈が通っているわけでもない。

 

 

「だが、()()()も同じ事があった。その時も余りにも小さな特異点、いや特異点とも呼べない程の異常をね」

 

 

 ドクン、とスバルの鼓動が速くなる。

 二年半前と半年前、それは共通してスバルが消えた時期と重なっていた。その異常はスバルだからこそ理解出来た。

 

 

「そこで私はその共通性を調査し、答えを得た。特異点と言うより、並行世界の介入。つまり、()()()()()()()()。故に規模は最小限だった」

 

 

 そうだ。確かに招かれた。

 菜月昴はサテラが恋していた()()()()()()()()()だ。酷いくらい似ていたのだ。サテラが愛したスバルの『死者の書』を見たからだ。

 

 嫉妬の魔女の真相を知って、サテラといたスバルを見て、どうして菜月昴は選ばれたのか分かった。

 

 

「調べるのに苦労したよ。名前を隠す以上、手掛かりが少なかった。二年間、この世界から姿を消し、並行世界で放浪者(ストレンジャー)となった人物」

 

 

 心拍数が上がり、動揺が抑えられない。

 それを知られるという事はこの世界で家族を人質にも取られかねない重要な情報だからだ。だが、マリスビリーはその思惑を知った上で断言した。

 

 

「––––––それが君だ、菜月昴くん」

 

 

 目を見開いて、威圧する。

 それは悪魔と相対したかのように重くのしかかる。マリスビリーは平然としているようだが、オルガマリーには目の前にいる人間が怖くて仕方なかった。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に呼吸が荒くなってきた。

 

 

「ひっ……!」

「……おや、名前を公開しただけでここまで反応するとは予想外だ」

 

 

 それはスバルが放った()()だった。

 もしも、スバルの身内に手を出したら跡形も残さないと言う一種の威嚇だ。伊達に『傲慢』と言う肩書きは持っていない。

 

 

「……俺に何をさせたい」

「話を戻そうか。私は君をカルデアにスカウトしに来た」

 

 

 席に座ってくれるかい?と告げるマリスビリーにスバルは警戒を解かずに椅子に座る。冷めた紅茶を飲み干し、冷静になりきれていない自分を落ち着かせる。

 

 死に戻りがあった頃とは状況が違う。

 ()()()()()()()()()()()()()()だってあり得るのだ。スバルは死に戻りを使えたからこそ、失敗出来ない。

 

 現状、頼れる人間すらいない。ぶん殴ってくれる友達も、隣で手を繋いでくれる相棒も、立ち上がってくれと世界一厳しい女も、こんな自分に価値があると信頼してくれる愛しい人も居ない。

 

 今は普通であって普通ではない。

 人生は一度きり、()()()()()と知っている筈なのに。

 

 

「カルデア云々はそっちから聞いた。けど、俺にメリットが無いんじゃ話にならねぇ」

 

 

 紅茶のカップを置き、スバルは改めて警告する。

 一線を越えた場合は容赦をしないと、優位に立っているマリスビリーを睨みながら。

 

 

「もし、脅すのであれば–––––––()()()

 

 

 奪うのであれば躊躇などなく、全てを奪う宣言(きょうはく)を口にした。それに対してマリスビリーは余裕そうな顔をしながら話を続ける。

 

 

「おや、私は君の家族を人質に取っているかもしれないのに随分と強気だね」

 

「俺を舐めるな。俺はお前らの()()()()()()。その気になればお前らの裏を暴く事だって難しくないんだよ。『傲慢』を舐めるなよ。マリスビリー・アニムスフィア」

 

「そうかい、まあ安心したまえ。私は君の本名を暴いたのはちょっとしたパフォーマンスのようなものさ。君の家族に一切手出しはしてないよ」

 

 

 嘘は言っていない。だが、その言葉に首を傾げる。

 今の何処がパフォーマンスだったのか、今のスバルには理解出来なかった。明らかに()()()()と言っても過言ではなかったのに。

 

 

「……パフォーマンスだぁ?今のは明らかに脅迫に聞こえたんだが?」

「勘違いだよ。私は知っている。君が望むのは金でも地位でもない。もっと別のモノだ。故に私が契約するにあたって、これらの報酬の他に私が差し出すのは––––」

 

 

 マリスビリーは告げた。

 今、恐らくスバルが1番欲している報酬を口にした。

 

 

 

 

 

()()使()()、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグを捕捉する。その為に()()()()()()使()()()()()()()を与えよう」

 

 

「なっ…に……!?」

 

 

 思わず驚愕し、動揺の声を上げる。

 それはつまり。ナツキスバルが探していた異世界に戻れる手掛かりをマリスビリーは報酬のテーブルに乗せたのだ。

 

 道化達の取引きはまだ終わらない。

 

 

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