ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

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八代開戦編
プロローグ


 恥ずかしながら舞い戻ってきましたターニャ・フォン・デグレチャフです。

これで二度目の転生、通算三度目の人生となりましょうか。存在Xに禍いあれ!

 

かつてライヒで築いた部下たちとの絆はなく、我が身を守る魔力すら存在しない。

たった一つの繰り越し特典なのか、年のころも軍大学に通った時分くらいなのですが、今回の人生では最初から騎士爵の家系に生まれついております。それに何の意味があるのかというと、ライヒに相当するドイツは既に滅び去っており、意味などないのですが。

 

「しかしこのウォードレスというものはありがたいな。我が身の体力の無さをいい感じで補ってくれる。これがかつてのライヒにあればというのは贅沢な悩みか」

 ドイツから幻獣に追われるように日本に流れ着いた。

両親はその過程で命を落としており、これでは食いっぱぐれると、今世でも幼くして志願せざるを得なかった。つくづく存在Xは私を戦乱の中で生かしたいわけだ。ご丁寧に魔力や朋友まで取り上げて!

 

とはいえ士官学校に合格はした。

亡命外国人からの志願であり、身分ある血筋ではあった為、面接での高評価がもらえたらしい。体力を装備で補えるならば元より学力に不安のあろうはずもなく、ソレもまた家庭教師や親からの教育だと認められたのだ。

 

「しかし有名無実の称号も存外役立ってくれたな。まさか中央のエリート士官殿が目を掛けてくださるとはありがたい。ノーブレス・オブリージュ様々だ」

 だーが、ここでは得難い保護者を得ることができた。

貴族の務めを子供ながらに為すという、お涙ちょうだいのストーリーを信じ込んでくれるのだから実にありがたい。

 

軍閥出身のボンボンで上層部にもコネを持つ佐官将校に参謀枠で拾われた。

外国人の上に今の幼さでは具申してもロクに通るまいが、このボンボンを通せば幾分かやり易いだろう。順風満帆とは言わないが、リカバリーが効いたのではないかと思う。

 

「後は後方待機の間にできるだけ発言力を稼いで、有利に立ち回れるようにしておきたいものだが……」

 問題は外国人に志願を半ば強要させるほどに日本が疲弊している事だ。

得難い才能があるとはいえ、子供を前線に送り込む士官として促成教育するなど理知の外だ。

 

大陸での反攻作戦はとうに失敗しており、貴重な人材を守って撤退するための遅延作戦にも失敗している。それが後々までに響いていると言えるだろう。

 

「何かを忘れているような気がするが、存在Xの事だ。この世界も戦いにあけくれる日々に違いない。何とかせねばな」

 このままでは早晩、九州方面に幻獣が上陸。

日本は自衛軍の総力を挙げて迎撃に当たることになるだろう。……それで勝てるならば問題ないのだが、そんな幻想を信じる気にはなれない。

 

そして嫌な予感というものほど良く当たる物だ。

九州に投入される兵力の中に、私が所属することになる部隊も存在したのだ。

 

「しかし九州で開戦か。何処で戦う羽目になる事やら。島津の真似事など御免だぞ」

 ロクな準備もできない内に戦争とは存在Xも勤勉過ぎる。

同輩の将校たちとも顔を合わせたばかりでコミュニケーションも多少。魔力に変わるものはウォードレス一つ。過去の記憶も曖昧と心もとない限りだ。早く万全の態勢に移行しなければと好待遇である割りに不安でならなかった。

 

 予感とは嫌な物ほど的中する物。

いい加減馴れて来たので、楽観をしていた頃の自分を殴りたいとも思えない。

 

即落ち二コマと言おうか、頼りにしていた自衛軍は八代平原で溶けて消えた。

 

「撤退する味方を支援するのでありますか?」

「そうだ。味方は既に壊乱状態。援護体勢を築かねば組織立った撤退もできん。幻獣も大半が消えたのだ。此処が正念場だろう。幸いにも我が隊の被害は抑えられている」

 八代開戦において日本政府はBC兵器を大量に投入した。

核弾頭の開発されてない時代ゆえに仕方が無いが、それは辛勝のキッカケには成っても勝利の決定打というには程遠かった。

 

そして数に勝る幻獣への辛勝とは、形の上で勝っただけ。

その後は消耗戦で逆転されるというフラグに過ぎない。何しろ相手は1500万の大半が消えても、まだ百万から三百万以上が余裕で残っているのだ。

 

「それは理解しておりますが、流石に……。いえ、承知しました。ならば兵に塹壕なりとも掘らせてはいかがでしょう? 無理ならタコ壺のような穴があるだけでも違います」

「君ならばそう言ってくれると信じていたよ。しかし塹壕戦か。流石に独逸騎士はモノが違う」

 目を見れば上官殿が意思を変えないのは判った。

この状態で反論をするのは無意味だ。せめて常識的な戦術を提案し、その間に自分だけは後方に下がる理屈を探すのが妥当だろう。

 

過去の記憶を段々と思い出してきているが……。

流されるままなのが一番マズイ。状況は自分の手で造る物だ。少しでも生き残る可能性を広げつつ、逃げ出しても咎められない方法を探さねば。できれば評価を下げないように、最後まで奮戦したと言い張れる方法が望ましい。

 

「戦車は臨時工兵としても代用できます。軽く掘り返せば後は兵でもなんとか塹壕を築けるでしょう。この際ですから、遺棄された友軍の砲があれば心強いかと」

「デグレチャフ少尉。貴官を私の権限で中尉に野戦任官させる。かくの如く取り計らい給え」

 ありがたいことに上官殿は塹壕戦の事を知っていても、方法までは熟知していなかった。

同輩の将校たちの幾人かは戦死していたので、私が差配することができた。持つべきモノは物分かりの良い上官と、積み上げた知識である。やはり記憶は少しでも取り戻さねばならんな。

 

「それではデグレチャフ中尉、任務を遂行します。二重塹壕で時間を稼ぎますので、隊は後方にお願いします」

「口は挟まん。行け」

 よし! と思わず叫び出しそうになる声を潜めて敬礼で身を固める。

これで時間を稼ぎつつ、方々を飛び回る理屈ができた。あとは適当に奮戦して見せつつ、近くの連中を率いて突破するだけだ。

 

戦車長と歩兵のリーダー的立ち位置の者(一番上は戦死していた)に声をかけ、塹壕の準備とそれを深く掘らせる指示を出した。そして幾人かに遺棄された装備を採りに行かせ、我が隊の砲込みで砲兵陣地も作っておく。

 

「塹壕は直線では掘るな! 生体ミサイルが突っ込んだら逃げ道がないぞ! 緩やかなカーブを付けながら、V字状に構築!」

「了解」

 前世の魔道砲撃を思い出しながら、その戦訓を活かした塹壕を構築。

一番深く後方に位置する場所へ上官殿の席を。私は前線の一つである右翼と見せかけ、直線的に突破すれば友軍の撤退ルートに当たる方向へ陣を構える。臨時砲台はV字の左後方から援護、戦車隊は当然ながら右翼後方。

 

この配置ならばイザとなれば血路を切り開くという理屈で逃げられる!

無線は故障したという理屈は生体結晶がある以上難しいので、こんな危険と隣り合わせの方法しか選べないのだ。

 

 さて諸君、答え合わせといこう。

私が前世や最初の生涯を思い出しながら必死で練り上げた作戦だ。どうなったと思う?

 

結果を先に言うならば、またしても即オチニコマだ!

せっかく構築したした陣地は容易く踏み破られこそしなかったが、ライン戦線ほど強固なはずもない。過去の成功体験にすがって敗残の身に陥るという奴だな。まあ敗残兵なのは決まっていたので、選択ミスが自ら窮地を招いたというところか。

 

「しまったな。最初から機動防御を提案すべきだった。あまりにも数が違い過ぎる。アカ共を思い出す……アカ? 赤……」

 朦朧とする意識を保とうと、必死で言葉を操りながら気合を入れる。

数にまかせて攻め来る小型幻獣を幾度となく殲滅し、あるいは押し返した。だが敵は命知らずの使い捨て、果てなどあるわけがない。

 

殲滅したゴブリンの攻撃から直撃を避けたものの強打されてこのザマだ。

掠っただけでこの有様とは我ながら不甲斐ないが、生き残っただけ奇跡だろう。

 

「まあ良い。遅くともやらないよりはマシだ。我々で血路を切り開く! 隊長には本土に戻っていただかねばならんとお伝えしろ。まだ間に合う! 私の頭上に落ちても良いから、生き残りの砲と戦車に撤退を支援させろ!」

 超硬度カトラスを掲げ、生き残りの歩兵をかき集める。

誰もがこの戦場で生き延びるのは諦めており、僅かなりとも可能性にすがって集まって来たのだ。

 

普通に考えたら年端もいかぬ少女の言葉など戯言だ。

しかし私が提案した塹壕が彼らの生を長らえさせ、そしていままた希望を見せているのも事実。

 

カリスマ性など自らに期待する因子ではない。

ならばせめて、判り易い未来を持って彼らを操ってみせねばならないのだ。

 

「総員抜刀! 刃を振りかざし銃を構えて敵を押し返せ! 総員、突撃!」

「「おおお!」」

「「わああ!」」

 指揮官率先で敵中に飛び込み、一番安全そうな道ではなく一番可能性の高い場所へと飛び込む。

どれだけ生き残っているのか分からないが、戦車の榴弾砲が降り注げば、一時的に風穴ができるはずだ。ならば敵の少なそうに見える道よりも、敵がごった返す場所に砲弾と共に飛び込む方が確実だ。

 

「隊長たちは続いているか!?」

「いえ、もはやこれまで。貴官らの撤退を支援する。とのことです」

 意外に援護射撃が多い。

おかしいと思った私は咄嗟に確認すると、よせば良いのに上官殿は塹壕に踏み留まって小隊火器で周辺を蹴散らしていた。

 

その事実に思わず舌打ちしそうになる。

あれでは無駄死にだし、コネのある上官が生き残って援助してくれるという可能性ごと消滅してしまう。第一……背中を小型幻獣から守らせる算段だったのだ。計算違いも甚だしい。

 

「散開! 相棒とバディを組んで二人一組で相互に脱出を援護せよ。密集するな、だが一人で死ぬな。男と女が一人づつ生き残れば我らの勝利だ! 絶対に生きて帰るぞ!」

「ここに居るのは大抵、男ばかりですがね」

「違いねえ。だが故郷に戻れば未亡人の一人も待っててくれるさ」

 今思えば最初からこうやって機動戦術で抜けて行けばよかったのだ。

味方の撤退を支援するならば、島津の様に敵中突破とは言わずとも、孤立した味方の中で着いて来れる者だけを拾って脱出という方法でも良かったのだ。それで時々、敵中に向けて砲撃でもして見せれば上官殿への面目も立ったに違いない。

 

ともあれ、それも全て終わったことだ。

そして一度のミスは更なるミスにつながる。今ここに隊長殿の部隊が後方に居ない事で、戦力不足により手痛い攻撃をこうむってしまった。何が痛いかって、生体ミサイルを撃ち込むより規模の多い集団が存在せず、直に手元まで飛んで来てしまっている事だろう。

 

「中尉殿、失礼を!」

「っ!?」

 気が付けばツーマンセルを組んでいたバディに突き飛ばされた。

遅れてやってくる衝撃波。肺の中の息を根こそぎ放り出すほどで、苦痛どころか意識が飛びかけた。ミサイルの中の酸を殆ど浴びなかった幸運など、感じている余裕などあるはずもない。

 

どうしてそのまま追撃が来なかったのか。

どうして他の連中の様に玩具の様に切り殺されていないのか。

 

その答えは同じ考えを持って撤退する友軍の存在だったのだが、この時の私に理解できるはずがない。

 

ただ判るのは私を見下ろす虎の目が、妙に理知的であったことだ。

 

「なんで……こんなところに虎が……。広島の山岳師団? 竜騎へ……い」

 息を吐きながら絞り出す言葉と共に虎を見つめた。

すると賢そうというか、明らかに知性のあるような仕草で天に向かって吠え声をあげていた。

 

「まさか……存在X!? 貴様かあ!!! こ、ころ……」

 反転する意識。

混濁の淵にあった意識が、シナプスを繋げて理性を取り戻させた。

 

だが、それまでだ。

衝撃のみならず、打撃でどこかに挫傷を負ってしまったのだろう。せっかく意趣返しのチャンスだというのに、銃を向けることもましてやカトラスを振るう事も出来なかった。

 

『あら。アラダなの? 何色のオーマかしら?』

「色……だと? ふん。知っているはずだ。白銀……錆銀と呼ぶ者も……居るがな」

 それで意識は限界だった。

哀れな三度目の生涯を閉じ、また第四の生で弄ばれるというのだろうか?

 

判らない。

 

目の前が……暗く……なる。

 

(リン)? 珍しいわね。……こうしても居られないわ。直ちゃんを呼ばないと』




 という訳で書きたくなったので幼女xGPMを書いてみました。
今回はプロローグなので走りみたいなもの。
ガンパレっぽくなるのは、次回からになると思います。

今回の登場人物
『ターニャ・デグレチャフ』
 今作の主人公。幼女戦記後にこの世界に転生。
さらなる転生人生と、絶望的な戦いを強いられている。
今世においては当然の事ながら、かつての部下も魔力もない。
二度目の転生とあって、色々な知識が抜け落ち始めている。

『上官殿?』
 ターニャの事を騎士道精神にあふれた素晴らしい上官。
引き立ててくれたとも言えるが、そんなおめでたい性格だからこそ、撤退支援に奮戦する。
当然ながら八代開戦で死亡。

『ねこ?』
 広島の山岳師団には竜騎兵という生体兵器が居るらしいが……。
もちろん竜騎兵が改造されても喋ることなんかない。

クロスキャラに関しては、欲望へ忠実に入れたいキャラだけを入れて行く予定。
数話の短編で、気分が乗ったらそこそこの連載にする予定です。
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