ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

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塹壕線の構築:後編

 塹壕戦に関する勉強会そのものは順調に進んだ。

何しろ雛型も候補地も私が想定した物。学んでいる彼らのスポンサーである、『背州公』にとって都合が良いような配置だったのだ。否という者もなく積極的な姿勢で学んでくれたのが大きい。

 

私は教授する立場だったが年下という事もあり下手に出た。

折に触れて彼らの経験談を尋ねることでそれなりに親密に成れたのではないかと思う。何かの拍子に背州公の逆鱗に触れでもない限りは、ちょっとした頼みくらいは聞いてくれそうな勢いである。

 

「名物教官ですか?」

「そうだ。佐賀の最先任というべき爺様でな。士官教育にも手を抜かなかったから我々も頭が上がらなかった」

 誰の話をしているかというと、例の不良共を鍛えた先任士官の話だ。

仲良くなるのと背州公の逆鱗に触れないために、連中に関する話を予め聞いておいたという訳である。

 

なんというか不良共を鍛えることを最後のご奉公というところでお亡くなりになったらしい。

地元の学徒兵であり優先して良い先任を付けられたことで、兵卒として最低限教育は終わっていた事からそのまま次の編成待ちだったらしい。

 

「それにしては礼儀がなってないような気がするのですが」

「一束使い捨ての一兵卒としては問題ないと判断されたんだろうなあ。まあ連中全員が二輪や四輪の操縦を叩きこまれ、何人かは戦車やボートも扱えるそうだ。下手な士官じゃ尊敬の真似もできんのだと。あの爺様を基準にされても困るんだがね」

 爺様が暇潰しと馬鹿の調教を兼ねて自分ができる技術を叩き込んだとか。

要するに操縦技能持ちの兵士を捨てるには惜しいと判断されたのだ。斥候とか伝令として熊本方面に使いを出すか……という所で棚上げだったのだろうか?

 

とはいえそれで前線送りになっては意味がない。

私としては馬鹿に礼法とは言わないが、社会人として最低限の動き方を教えて欲しかった。まあ実在的な新城少佐なら、役にも立たぬ礼儀よりも操縦技術の方がありがたいと思うのだろうが。

 

「ありがたくあります。道々予定地を見て回りながら帰還しようと思いますので、縁があれば御心遣いを伝えておきます」

「それは助かる。これで私も爺様に恩の一つも返せるというものだ」

 チラチラと期待したような目で見るのは止めて欲しい。

私は言質を取られないように切り上げると、敬礼をして出発の準備に取り掛かった。

 

射撃やパルクールの練習をしていた兵どもには、二人一組での教練を徹底させてある。

これは一人の攻撃や偵察では心もとないので、バディ一組ごとに攻撃力や索敵性能を向上させたのだ。そして以前から居る威力索敵分隊に、新しく吸収した分隊を教導させ、今後も同じような鍛え方をさせる予定だった。

 

「他所の奢りで遊び倒す時間は終わった。戦場に復帰するぞ」

「そいつは残念です。もう少し人様の懐で贅肉を筋肉に変えたかったところですが」

「お前の腹じゃ体重が増えるだけだろ」

 そんな馬鹿話をやっているのは新旧のメンバーだ。

錬成が上手く行っているかは別にして、連携が採れ始めているようなので一安心。これで部下が鍛えられてないとなったら、何をやっているのかと新城少佐に馬鹿にされそうだ。

 

 佐賀市を出て暫くは順調に進んだ。

塹壕予定地には穴を掘れる重機の他、危険地帯では戦車がその代わりを兼ねる。後は派遣されてくる学徒兵が掘り返し、余裕があればコンクリで補強するだろう。

 

ここでも背州公の希望に沿うという、政治的な歪さを利用したゲリマンダー効果が役に立ってくれた。どいつもこいつも人の顔色を窺って、土産と称したちょっとした装備と引き替えに意見を求めてくれるのだから笑いが止まらない。

 

問題は熊本に程近い場所で発見された。ちょっとおかしな表現だが、ここまで来ると見送りの兵が居ないので、珍事はこう表現するべきだろう。

 

「で……だ。貴様らここでも同じことをやっているのか?」

「なんやわい? 邪魔だけんどいてれ」

 実際にはもう少し違うニュアンスだったが、私にはこんな感じに聞こえた。

これは佐賀の方言なのだろうか? それとも単に喧嘩を売られているのだろうか? 区別がつかないので状況の方を眺める。

 

塹壕を掘ったと思わしき戦車は既になく、二列の筋が延々と続いているだけだ。

送り込まれた不良共は監視の目が無いのを良いことに、土を掘り返したらその辺に放っている。これでは土の再利用ができないし、崩れて来たら穴をもっと掘るのに邪魔である。第一、監視の兵が来たらどう弁解する気なのだろうか?

 

「別に態度に文句を付けたいわけじゃない。ただ、穴はもっと深めに掘った方が良いぞと忠告しているだけだ」

「はん? ちゃんと穴掘っとろーが!?」

 言いたいことは山ほどあるが、喧嘩腰なのは文明人としてどうかと思う。

それに管轄違いだし、指導する事はあっても命令する権利はないのだ。かといって下手に出て懇切丁寧に説明するのも馬鹿らしいので、忠告を掛ける程度に留めておく。

 

というか、塹壕の敷設にデグレチャフが関わったと見に来た連中が、コレを私の仕業だと思われたくないので声を掛けたのだ。できれば背州公の逆鱗に触れたこいつらには関わりたくなかった。ていうか、ちゃんと説明くらいしろよ官僚共。

 

「こいつらを仕切ってる霧島十翼長だ。何が言いたいんだ?」

「塹壕はみなの命を守るための物だ。手は抜かない方が良いし、ちゃんとしていればいる程に安心できる。作り方を知らないならば教えるつもりくらいはあるが」

 私は思い直すことにした。

塹壕の掘り方を知らない物をただ罵倒するのは意味がない。無知は時として罪に成るが、それを押し付けては巡り巡って私の評価を落とすだろう。知らない者は知っている者に聞くべきなのだが、こいつらに同情する兵が多いとも思えないのだから。

 

こんな奴らが部下だったら懇切丁寧に叩きのめし、分別を身に着けさせるところだが生憎と所属が違う上に時間が無い。ここは霧島とやらの向上心と自制心に期待をしよう。

 

「穴掘ればよかじゃろうが。言いがかりばつけりんしゃんな!」

「なら、うちらん地元はなんで守られんのや!」

「止さないか! こんなチビでも仮にも上官だぞ」

 トップ同士の会話に部下がしゃしゃり出て来る。

それだけでも統制できているか疑わしい物だが、私がチビだと? まあそれは年齢相応の事実なので認めよう。私は平静を保っている。そうだ、まだ冷静だ。

 

幾分か冷静に成れたことでこいつらの不満も理解はした。

塹壕を熊本側一面に掘るのではなく、確実に佐賀の大半と福岡を守れるようにしたのが気に喰わないらしい。守られるエリアの外にいる者の不満が伝染したのだろう。だからと言って許せるわけでもないが、理解はできる。

 

(私の意図したゲリマンダーの犠牲者とも言えるしな。素直に謝れば協力してやるのも吝かではないが……。いや、むしろこいつらの不満を逆用する方が利益になるか)

 こいつらに悪いことをしたなどとは微塵も思ってはいない。

どうせ九州を放棄するならば佐賀も一蓮托生だ。熊本だって何時まで保つかは分からなかった。それを塹壕戦に持ち込んだことで、安全圏が確保できたのだから誉めて欲しいくらいだ。

 

それにこいつら、ちっとも謝りもしないし教えを請わないしな。どうせ放っておけば幻獣に踏み潰されて死ぬのだから、私が利用して何が悪かろう。そうだ、そうしよう。これは決して馬鹿を押し付けられた八つ当たりではない。

 

「現状の位置は幻獣の侵攻に間に合わせるための最低限だ。自然休戦期になれば熊本側にも築く。家族を守る疎開先だとでも思え。話を聞く気があるなら、避難用のアシにも口をきいてやるが?」

「そがん事信じらるっか!」

 こいつ馬鹿なんじゃないか?

まあ私が話しているのは十翼長のつもりなので、こいつには興味はない。部下たちの士気を保ち、統制を取る為のツールを与えてやろうというだけだ。

 

話に乗って来ないならば慈悲を与える必要は無いし、乗って来るならば都合の良い伝令としてこき使ってやろう。これぞ人的資源の有効利用というものだ。

 

「お前にそんな権限があるのか? だいたい熊本モンだろう」

「管轄を理解しているなら地位にも理解して欲しい物だな。それと今回の件を立案したのは私だぞ? 私が必要だと言えばそのくらいは何とかなるさ」

 真面目な話、交渉というのは誰が、どう切り出すかで変わるものである。

こいつらが幾ら祈っても駄目なことを、他の人間が簡単に実行できたりする。もちろん話の持って行き方にもよるのだが。

 

(つまり私は背州公にとって、都合の良い情報をもたらした存在だ。今後も私から背州公に対し、都合の良い情報を提供できると思わせれば良いだけだ)

 ではどんな情報があれば背州公は喜ぶのか?

まずは熊本から佐賀に向かう幻獣の第一報だ。それがあれば息の掛かった部隊を動かせるので、確実に街を守れる。逆に熊本が危ない時に『援軍を出さない』というのも普通にあり得るが、平均すれば後ろの守りが厚くなるだろう。

 

他にも熊本との取引に際して、好き勝手に情報を持っていければありがたいだろう。

つまり県境沿いに足の速い部隊があった方が良いのだが、できれば自分の勢力を減らしたくない。その点、こいつらは既に切り捨てた相手だ。バイクを中心に何台かの車で済むならば、戦車を使い潰すよりは余程安価である。

 

(こいつらに同情したといえば叶えられる望みも叶わなくなる。伝令として使い潰すように進言しつつ、同情したいと思っている連中にその機会を与えてやればいい)

 この話で重要なのは、その展開にならなくとも良い事だ。

塹壕線に関して関心のある今ならば背州公に口を聞ける。その事を臭わせて、こいつらを本気にさせてしまえば良い。それで私の評価は落ちないで済むし、本当に実現してしまえば役に立ってくれるだろう。

 

「そがん奴、ほっとけや! ほんとかどうか……」

「失礼。デグレチャフ万翼長。幻獣が出た。準備し給え」

「本当ですかドク?」

 さきほど食って掛かった馬鹿が声を上げる中、ドクがニヤニヤしながら声をかけて来る。

そんな顔をするから信用されないんです。そう言いたいところだが、余裕が無い。さっさと話を切り上げて仕事に戻ることにした。

 

 部下に指示を出して情報を集めさせつつ、臨戦態勢を取る。

同時に騎魂号の準備を整えさせ、何時でも出撃できるようにした。

 

「三十以下ですが、その内の四つは高速です。きたかぜゾンビないし、ケンタウルスと思われます!」

「ちっ。それでは援軍が間に合わんな。私が潰す。それまでお前たちはそこの塹壕にでも籠って居ろ。追って指示を出す」

「はっ!」

 こうなったら不良共と口を利く時間すら惜しい。

現に連中はオロオロとして何をやったら良いか悩んでいる。そんな暇はないと思うのだが、こちらの兵が動けば勝手に追随するか。静かにせねばらない時、勝手に発砲せねば良いのだが。

 

「ど、どうしたら良いんだ?」

「そんなことは自分で考えろさっきまでそうしようと言っていたではないか。……ただ、二輪乗りは身内思いだと聞いた。失望させるなよ」

 十翼長が不安そうに聞いてきたが、それでは答えるわけにはいかない。

連中は別系統であり、指揮権を委譲されたわけでもないのだ。これが同じ部隊の枠であれば、小隊の所属が違っても命令できるのだが。

 

とはいえ戦場が初めて、地位が上なのも委員長だからという奴に気づけというのも過酷だろう。

勝手に発砲されるのも困るし、適当な理由を付けて誘導しておいた。

 

「ばっ。万翼長殿。ご、ご指示をいただければ……」

「ならば私の兵と一緒に二列目の塹壕に籠っておけ。撃てと言ったら一列目を目標に撃て。あれはその為の目印でもある。だが……撃つなと言われたら絶対に撃つな! 隠れる場合には発砲音は厳禁だからな!」

 理解できるところを示してやると、途端にこちらに縋り付いてきた。

それができるならば最初からそうしておけと言いたいところだが、まあ今ならばまだ及第点だろう。向こうから指示を求めて来たのであれば、建前上は命令を出しても問題ないのだから。

 

……もしこの後で従順になるならば、背州公の逆鱗に触れない程度に使い倒してやろう。

あのご老公もどうせ今だけしか覚えていないだろう。今後にセレモニーに不良共が出席できるほど生き残れるとも思えないし、その時は理屈を付けて警備にでも回させればよいのだ。

 

「少尉! 聞いての通りだ、適当に指示してやれ。十翼長、こいつは歩兵に関しては私よりも信頼できる」

「はっ!」

「りょっ、了解しました。少尉殿にもお願い、します」

 とりあえずこれ以上は時間の無駄なので預けて忘れることにした。

新しい連絡がなければもう直ぐこちらに辿り着くだろう。騎魂号に乗り込んで片つけるとしよう。

 

「ビクトリア。準備はいいか?」

「大丈夫」

 起動すると真っ先にジャイアントアサルトを取り上げた。

以前に使用したガトリング砲を正式採用したものだ。幾つかの点で能力は下がっている部分もあるが、総合的には良い物に仕上がっているらしい。コレと超硬度大太刀を予備武装として懸架。両腕には新造のスナイパーライフルを用意して、テストをやっておく。

 

MAP上に映し出される地形を確認しつつ、ライフルを敵の方に向けて構える。

塹壕から離れながら距離を調整し、一番近い敵を狙った。

 

「重量が増えると動き難いな。とはいえ射程と火力は正義だ。二射ほどしてから放棄する」

「ん」

 敵がレーダーだけではなく、こちらの識別圏内に入る。

すると既に得ている情報で、一番近い相手は小型幻獣のヒトウバンだと判った。なので一回目はあくまで命中精度の確認。二射でライフルの火力をきたかぜゾンビに試すことにした。後はジャアイントアサルトとの具合を確かめれば問題ないだろう。

 

しかしこうしてみると動きがスムーズだ。操縦法を覚えた甲斐がある。

やはり生体結晶越しの操縦ではなく、直接操縦はやり易い。車の操縦などオートマでもマニュアルでも変わらないだろうと思った事もあるが、こと人型戦車でいえばマニュアルこそが至高だろう。

 

「第一射、的中。第二射までの間に位置調整を行う」

「ん」

 一番大きな差は動きの幅だ。

生体結晶よりも素早く動かせるという事は、相手のレンジに入る前に逃げ出すことすら可能だということだ。素晴らしい!

 

ただ第二射を撃つだけよりも、余裕を持って三体目に挑める場所を選択。

そのために動き出すのも、やはりシャープで最低限の動きで可能だ。その間に塹壕の方を確認する余裕すらある。

 

「第二射、的中。きたかぜゾンビはガトリングでも問題なかったが、この様子ならばキメラくらいはいけるかもしれんな」

 余裕を持ってきたかぜゾンビを撃破。

即座にスナイパーライフルを捨て、ジャイアントアサルトに持ち替えながら移動し始める。

 

やや距離を空け、レンジに空いての方から接近するのを待つ。

そのタイミングに合わせて斜めに移動し、こちらから先にぶっ放してやった。

 

「よし! 上手く行ったな。しかし……最後の奴は何処に行く気なんだ?」

「判らない」

 四体ほど先行していたはずだが、最後の一体は識別圏外のまま別方向に向かっている。

このまま行くとレーダーの圏内からも漏れてしまいそうだ。かといって迂闊に追いかけるわけにもいかんが。

 

そう思っていると、突如して通信が入ってきた。

しかも、普通ならば連絡が来るはずの相手からだ。

 

「助けて! うちん母ちゃんが!」

「……ビクトリア、切れ。代わりに霧島十翼長に繋げ」

「ん」

 どうやら不良の中で、通信要員として訓練を受けたらしき者が勝手に連絡を寄こしたようだ。

仕方ないので個別の対応に当たるしかない。何というか避難勧告が出ても、ギリギリまで家財を持ちだそうと往復する者は少なからずいるのだ。今回はどうやら、その一例らしい。

 

ただでさえ不意の戦闘で頭が痛いのに、避難を無視して居残ってる民間人の救助だと? オーバーワークにもほどがある。

 

「霧島です。あいつはこちらで押さえました。ど、どうしましょう」

「度胸があって周囲の町に詳しい者を選別しろ。私が救助に行くとしても、他にも居る可能性がある。一分で決めろ、時間が無い」

 放っておきたいがそうもいかない。

無理なら無理で仕方が無いが、まだ余裕があるので『助けに行くポーズ』くらいは必要だ。それだけでも兵の私に対する評価は変わるし上からの……。

 

そこまで思考を巡らせて、おかしなことに気が付いた。

どうしてこちらの不意を突いて、幻獣がこちらまで辿り着いたのだ? 幻獣は南に主力が行っており、残りも熊本市周辺で大半を喰い止めている。抜けたならば少なくとも一報くらいはあるはずだ。

 

こんなに偶然が重なるだろうか?

どうして、これほどまでに幻獣側に都合が良い事態が続いているのか?

どうして、あれほどドクがニヤニヤと笑っていたのだろうか?

 

(……っ~! あいつ、実戦テストの為に泳がせたな!? 報告をもみ消しやがった!)

 そう考えれば全て辻褄があう。

連絡があっても届かなければ意味がない。もしかしたら、幻獣を食い止める部隊にすら指示が行っている可能性があるくらいだ。何しろここで人命救助を行う意味は大きいのだから!

 

英雄を作り出して、全軍の士気を向上させるのは負けている軍隊の常套手段だ。

新しい英雄は学徒兵であり、同期の誇りであり、人命を救助するために大活躍! しかも技術試験も行えるとあって、非の打ちどころがない。

 

「ビクトリア。ドクに伝えてくれ。借りは対レーザー装備の件で返していただくと」

「ん。あと、キリシマから連絡」

 利用されるのは別に構わない。

私も他人を利用するし、一方的に自分だけが例外だと思うのは愚かしい。死守命令以外ならば妥当な内容の交渉は受けても良い。自分の宣伝でもあるし、今は生き永らえる為の装備の方がくだらないプライドよりも重要だ。

 

「サキ、頼んだぞ!」

「任せれ!」

「しっかり、捉まって居ろよ!」

 通信を入れた後、ライフルを拾うとトレーラーに戻しつつ十翼長が連れてきた兵を拾う。

人間を抱えるのは任務外だが、人型の利点は活かすべきだろう。道案内にそいつを抱えると、脚部を痛めない程度にすっ飛ばした。

 

暫く進むと敵の種別を識別できるようになった。

移動速度的にゾンビヘリ系ではないと思ったが、やはりケンタウルスだ。奴は速度を落としていたが、おそらくは誘導していた兵が姿を隠したのだろう。

 

「自分で降りられるか? 怖くなければ掴まっていても良いが」

「馬鹿にすんな! みんなに自慢してやるけん!」

 不良で兵士、どこかのスケバンを思い起こさせる女はきっと笑っているだろう。

私はそいつを抱え上げたまま、超硬度大太刀に持ち替えた。銃の試験は終わっているし、ケンタウルスのレーザーを回避しながら戦うにはこっちの方が楽だ。

 

相手のレンジに入った後、右に左にジャンプしながら敵後方へ。

ギリギリ大太刀の射程内に入れて、腹を切り割きながら態勢を入れ替え、もう一度ジャンプした。敵はこちらを向こうと振り返っており、ジャンプによって背後を取ることに成功する。

 

「これで終わりだ! この周囲に居る民間人の誘導を……」

「~♪」

 声を掛けようとしたら、愉快に鼻歌を唄っていた。

『それは』で始まるお伽話の歌。勇者だとか勇気だとか絶望に対して唄っていたが……。

 

(確か、本質は婚礼の歌だったかな。誰に聞いたのか忘れたが……まあ良い)

 任務は判っているのだし、ゴキケンに唄うのを邪魔する気はない。

そいつを置いて軽く幻獣の方を指さすと、返礼に不格好な敬礼が返って来た。礼なら唄うのを止めて言葉で返せと言いたいが、上手く行っている作戦だ。野暮なことは言いっこなしにしておこう。

 

そうして現れた幻獣を蹴散らしたわけだが……。

人型とはいえ戦車を使ったのに、小型幻獣が不思議とキルスコアにカウントされていた。

 

塹壕戦の指導だけではなく、人命救助を行ったことで功績が格上げされたらしい。

まったく情けは人の為ならずという奴だな。

 

そして後日、銀剣突撃章というどこか前世の銀翼突撃章にも似た勲章をもらった時。

 

造られた英雄は最前線に送られ続けるという運命を、ようやく思い出したのである。




 という訳で佐賀に関する話は終わりです。

佐賀でサーガ的な活躍して来たぜ! と宣伝されて造られた英雄コースに。
この世界でも銀な人になってしまいました。
まあGPM原作と、幼女原作を両方やっただけなんですけどね。

●人物紹介
『霧島十翼長』
 佐賀の不良部隊のリーダー。
なんか全員が二輪や四輪の免許もっとるばい。
死にそうな思いをしながら、熊本から佐賀間を往復する予定。

『サキ』
 佐賀の不良娘。GPM原作の田代相当。
スケバン刑事みたいな名前だが別にヨーヨーでは攻撃しない。
歌が上手いので、もしかしたら光るパンチが使えるようになるかもしれない。

●オマケ
ガンパレードマーチは戦場で誰かが唄い始めてそう認識されただけで
本来の世界では、新しい家族を迎え入れる歌である。
婚礼用とも子供が生まれる時とも言われる。まあ要するに、嬉しい時に歌う歌である。
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