ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

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ゴッドスピード

 見知った顔が担ぎ込まれたと聞いて、急いで表口に向かった。

既に抗酸化材とゴムを溶かす薬剤が交互に撒かれ、ウォードレスの剥ぎ取りが始まっているらしいが助かるような傷ではないだろう。

 

その話を聞いた時に急ぐよりも先に思わず考えてしまったのは、とても浅ましい思いだ。

せっかく築いた伝令兵との縁が途切れて惜しいという思いと、また芝村の策略ではあるまいかという疑いだった。

 

「単刀直入に言おう。まず君は助からない。何か願いはあるかね?」

「皆を助けっ……。万翼ちょ……に伝え……てくれ。あん人なら……」

 だから間に合わなかった。新城少佐に先を越されてしまった。

何かを都合よく進ませるにしろ、恩を着せるにしろ私の方が先に到着すべきだったのに。

 

酸で焼けた肌を躊躇なく握りしめ、その酸が自分を傷つけることも気にせず少女『だった』体を抱き留める不景気な男。誰よりも率先して動くその行動に私も代行殿も出遅れてしまった。

 

「ゴッドスピード。二階堂戦士。君の願いはこの僕が聞き届けた。君の友人も君の故郷も僕と僕の部隊が全部助けて見せる」

「アタシも……いく……ばい。みんな……を……」

 その時の笑顔を私は忘れる事ができまい。

新城少佐の苦い笑顔と、満足げに笑って立ち上がろうとしたサキの苦しそうな笑顔を。とても素晴らしい物を見たと言わんばかりのデブの表情だが、私はどうだろうか?

 

サキはきっと満足して逝ったのだろうと、もう喋らなくなった戦友に出遅れた私は何も言えなかった。いつから私はこんなに浅ましくなってしまったのだろうか

 

「少佐、そこからは私が引き継ごう。今は眠ると良いフロイライン。君はきっと今が一番美しい。異論はあると思うがね。……ドク、使用可能な限りの施術を。諦めが人間を殺す。最後まであがき、戦い続ける人間は美しい。聞いただろう? あんなにもなってまだ仲間の為に立つという」

「はっ! 持ち得る技術の粋を尽くします」

 それはお涙頂戴のヒューマンドラマだったはずだ。

しかし、どうしてだろう。とてもそうは思えなかったのだ。そもそもこの事態を芝村が引き起こしたのではないか? ただのマッチポンプではないかという自分が居る。

 

そして満足げに興奮する小太りの男を見て、助ける為などではなく……。

面白い出し物を、特等席で見物しに来ただけなのだろうな。と理解してしまう自分が居た。

 

「一兵士の為に無茶が過ぎます。少佐」

「そうかな? 茶番で兵が僕の為に死んでくれるのならば安い物さ。ところで代行殿。方針は発令されたという事でよろしいですか?」

 不景気な顔をそのままに、新城少佐は計算づくの偽善だと自己嫌悪を吐き捨てた。

しかし実在的な彼はそこで立ち止まらない。止せばよいのに援軍の約束を兵の前でしてしまったのだ。それが何であれ実行に移すと心に決めているような気がした。

 

まったく冗談ではないぞと思う私が居る反面、そのくらいはしてやって罰は当たるまいという自分も居る。所詮は十把一絡げの兵が死んだだけだというのに、流されそうになっている私はいつからこんなにセンチメンタルになったのか。

 

「その通りだ。私は私の権限に置いて佐賀救援の兵を出すと決定する。そこに何を見出すかは任せる。どう思うかね新城少佐?」

「佐賀を獲りましょう。兵を出せば二度も熊本に救われたと言う実績が付きます」

 二人を見ると悪魔同士の悪巧みを聞いているようだ。

この様子だと兵を出すのは決定事項。その尖兵は私に違いない。

 

ならばその方法を考えておいて損はないだろう。

どうして佐賀が攻められているのか、そこから逆算して現在の状況を割り出し、最も効率的で最も確実性の高い方法を採るべきだ。今更悩んでも上が決定してしまったらしょうがない。

 

「獲るか! それは良いな。諸将時代を思わせる。いいぞいいぞ!」

「はい。威風堂々と討って出て撃滅します。そうすれば佐賀兵は我々に借りを返そうと心に火を点けるでしょう」

(……なるほど。以前にあった援軍の話にここで道を付けるのか)

 簡単に言ってくれる。

苦労するのは私なんだぞと思いつつ、ここで何とかすれば敵の大将を撃つために援軍を呼ぶ道筋が付けられる。あの時はあくまで可能ならばという程度だったが、今ならば計算を付けられるだろう。

 

そして幻獣の知性体を考えれば、その作戦は有効であると思われた。

奴らに智謀があるならば、こちらを出し抜いてくるだろう。それにやり返し、逆撃を加えるには思い切った手の方が良いはずだ。その為には球磨川水溪を回り込んで、こちらを包囲しようとする敵の大将を逆包囲するのは非常に効果的なのだ。

 

(しかし勝ち方にまでこだわるとかまったく面倒事を押し付けてくれる。ただ勝つだけでは駄目だ。既に消耗から始まっている戦い、これをひっくり返すほどのインパクトが無いと)

 サキが死を覚悟してやって来た状況。

それは熊本市だけではなく、熊本全域に幻獣が溢れかえったのだ。

 

そして此処に敵が来ていないのは、単純に前線の塹壕で止まっているだけ。予定通りだからこそ急報ではない。佐賀方面に流れた敵が不良共の居る場所を襲い、慌ててやって来たというだけだ。早晩、向こうで堰き止められた敵は、再びターンして裏口から熊本市に至るだろう。

 

(選択肢は二つ。一つ目は今直ぐにでも出撃して速攻で仕留めてUターンする。だが、この方法では十分なインパクトが得られない)

 馬鹿正直に移動したのでは、当たり前の様に苦戦して当たり前のように消耗を繰り返す。

それでは劇的な勝利というイメージを与えられない。直ぐに辿り着いたとしてもサキが戦死したことで、陰鬱なイメージが覆い尽くすだろう。それでは彼女も無駄死にだ。ただの人的資源の無駄使いになってしまう。

 

(ではどうすべきか? 他の人間が容易に為すべきことでは駄目だ)

 サキが状況をひっくり返した。尊い犠牲で通常ではありえない勝利をもたらした。

あれは仕方が無かったとは言わない。だが、その死は犠牲ではなく、奇跡の代償だったのだと思わせねばならないのだ。いっそ馬鹿馬鹿しい程のインパクトを。

 

それは私が得意としており、失敗どころか流れを作り出せるほどのモノであれば言う事はないだろう。

 

(例えばそう。妹尾が五稜郭で言っていたように、地対空・空対地の知識は私の経験が幻獣すら上回るこそだ。そんな方法……)

 私以外にはできないか、できたとしても非常に苦労する方法。

同時にソレは、私の安全を保障せねばならない。その方法は用意するだけでも難しいだろうが、今ならば可能かもしれない。何しろほかならぬ総司令官代行殿が放言した後なのだ。

 

「デグレチャフ万翼長。何か思いついたのか?」

「何を使用しても良いというのでしたら」

「構わん。あのフロラインに約束したのだ。望みを叶えるとな。今から君たちの造る戦闘団は私の隷下、第一大隊だ。誰よりも先に戦場を駆け抜け、誰よりも最後に戦場を去るラストバタリオン! 必要な装備は何であれ用意しようじゃないか」

 その為になら何でも用意しようという彼の言葉に偽りはあるまい。

それほどまでに楽しみたいのであれば、特等席を進呈しようではないか!

 

戦いを愉しむのであれば、自分だけが戦いから逃れられると思うなよ?

 

「私は士官学校の実技で唯一、とある訓練だけは教官すら叶わないと保証されたことがあります」

「ほう……それは面白そうだ。 さあ、戦友よ。君は何を望む?」

 言質は得たぞ?

ならば私も戦場を厭うまい。少々の危険は、より多くの危険を避ける為ならば目を瞑ってしかるべきだろう。

 

帰るとしよう、懐かしのあの空へ。

 

「空挺降下作戦を提案します。つきましては、あのツェッペリンをお貸しいただきたい!」

 

 提案は採用され、さっそく準備を開始した。

状況的にあまり重量は載せられないのに重装甲型を使わざるを得ないので、連れて行ける兵は僅かだ。

 

というかぶっちゃけ、龍騎兵と大尉と私だけで降下する。

後は足手まといなので、もしもに備えて数名の鋭兵を飛行船に残すのみだ。

 

「空を行くとは考えたな。これならノンストップで行ける」

「万が一に備えて迂回しますから多少のロスは出ますが……」

 まあ臆病ではあっても必要とあれば戦場に赴く少佐が来ない筈はないと思っていた。

まさか代行殿まで見学に訪れるとは思っても見なかったが。

 

「代行殿まで参られずとも」

「言うな万翼長。みんなロボットの空挺降下を見てみたいのさ。それが男の子という物だし、何しろ世界初だ。命を懸ける意味はある」

「僕の方は責任みたいなもんですけどね。兵の回収もありますから」

 飛行船で先行する傍ら、挟撃役として抽出した部隊を出すことになっている。

降下して壊乱させた後の追撃役でもあるが、そのまとめ役を途中から新城少佐が引き継ぐのだ。流石に少佐は代行殿のように物見遊山ではないらしい。

 

殆ど流れで決まったような作戦だが、一応の採算は取ってある。

何と言っても特攻するのは私だし、美学の為に死ぬなんて真っ平だ。私が死と引き替えにするとしたら存在Xか。この世からアカを殲滅する為だけだろう。

 

「しかしあのフロイラインが到着するだけで重傷だったのだ。もはや間に合わないのでは?」

「はい、いいえ。連中が愚かな玉砕主義でない限り手近な塹壕群に合流しているはずです。あくまで前線にある偵察詰め所と建設地への配備であり、死守命令は出ていませんから」

 というか、そう解釈できるように配慮したのだがな。

佐賀県の地図をテーブルの上に広げ、私が提出しておいた案を書き込んでいく。

 

「宮野木のご老公も随分と用意の良い事だ。備えあればというやつかな」

 まずは背州公の勢力地を守る様に露骨なゲリマンダー。

これとは別に後から提出した、点と点を結ぶ線。この点である詰め所を塹壕で延々と穴掘りさせるブラック極まりない重労働だが、あの不良共からすれば故郷を守る盾なのだ。

 

「詰め所にあるバイクを使って各地に伝令。その間に残土輸送用のトラックに搭乗して下がっているでしょう。ですので此処を目指します」

 迂闊に指示を仰ぐなとレクチャーしてあるので、一応は大丈夫だろう。

しかし芝村もその辺りの経緯は知っているだろうに、それこそ随分と厭らしい。だがそれを指摘すれば何が起きるか分からないので黙っておく。

 

代わりに口を出すのは作戦だ。

 

「先行して私が重装甲で降ります。囮を務めて誘導しますので、大尉には予備の展開式装甲や大太刀を切り捨てた後、敵の後方に降下してください」

「……」

 相変わらず寡黙な男だがその戦闘力と忠実さには信頼が持てる。

本当の意味での部下になってくれれば心強いが、芝村の護衛というのが惜しい。

 

とはいえそれは無い物ねだりだ。理由さえあれば最精鋭を借りれるのであればこれ以上望むべきモノでもないだろう。

 

「そのまま我々で引き剥がしますので、新城少佐は塹壕の面倒を見てくださると助かります。万が一の場合、代行殿のお名前で突破戦を」

「その辺りは任せておけ。僕よりはよほど千早が上手くやる」

 名目上は背州公の権力は御意見番に過ぎない。

オブザーバーでありながら自儘に振舞えるのは、この辺りのお殿様の血筋というだけなのだ。同じ名目だけなら、代行殿は九州総軍の総司令官代行だ。仮に死守命令が出ていてもなんとかなる。

 

もちろん背州公との仲は最悪になるので、死守命令が無いほうがありがたいのだが。

 

 保身のために作戦要綱には人型戦車の被弾試験と脱出も想定してある。

状況が状況だけに仕方が無いが、できればそんな目には会いたくなものだ。何しろ今着ているウォードレスには人工筋肉の反応を強化するゴムの肉が付いてないからな。

 

「それでは私は降下準備に入ります」

「健闘を祈る」

 カウントダウンを省略して一気に降下。

片手にガトリングアサルト、片手に展開式装甲をシールドのように構えて着地。これでも気を付けて足を付けているのだが、足の人工筋肉にダメージが行っているのが恐ろしい。

 

つくづくガンダムという奴はアニメというのを抜いても別格なのだなと思わなくもない。

 

「ヒトウバン三、ゾンビヘリ二。ミノタウルス三、その他三十以上! 上昇して退避を!」

 母船にとって危険な相手を計上するとさっさと高度を上げたようだ。

 

改めて戦場を見渡すと敵は塹壕陣地に取りつき一進一退の攻防を繰り広げていた。

奇襲されたようにはみえないので上手くやったようだが、それでもこのペースで消耗したら早晩敗北は確定していただろう。現時点で四十以上という事は、少なくとも百から三百近い数が居た計算なのだから。

 

「次の塹壕への経路か。連中も人の話を聞いていたのかな? まあ良い。利用させてもらおう」

 シールドを構えながら移動を続け、時々ジャイアントアサルトで空中騎兵群を叩き落とす。

重装甲と展開式装甲の組み合わせならばヒトウバンくらいならば大丈夫だと言われているが、反応性能まで保証されているわけではないので攻撃されたくはない。早めに叩きとしておくべきだろう。

 

累積した重量ゆえに足と反応が遅いのが難点だが、囲まれないようにジャンプで塹壕の向こうに跳んだ。建設中ゆえに二列以上ではなく、まだ一列。だが中型幻獣の足を止めるならばこれでも役に立つだろう。

 

「しかし此処に百。多くとも三百しかいなかったとは。悪い方向にカンが当たったな。これでは自然休戦期を越えたとしてもマズイぞ」

 幻獣は百万単位で生き残っていたはずだ。

好き勝手に暴れまわるにしても、五千から一万程度の数が流れていても不思議ではない。

 

つまり、連中は目的を持って鹿児島を制圧したという事なのだ。

どうしてか? そんなことは決まっている。拠点というか国盗りの為に端から確実に落としていくつもりなのだ。

 

「これで空は終わり。大尉が降下してこれるはずだが……。来たな新種!」

 たしかゴルゴーンが直立したので、牛という連想からミノタウルスと名前が付いたはずだ。

それにしても新種を既に三匹もロールアウトとは、羨ましい限りの生産能力である。いや、この場合は進化というべきか。

 

生産? 進化?

どちらなのだろう。ふと気になり始めた。どちらでも変わらない筈なのだが……鹿児島を真っ先に落として安全地帯に変えたのが気に成る。ストラテジーゲーマーならば確実にそうするが、幻獣が?

 

「まさか……こいつら無補給の完全兵器なだけではなく、血の畑を耕す機能まであるというんじゃなかろうな」

 連中はエネルギーが尽きたら死ぬ代わりに、食事も補給も要らないバケモノだ。

その分だけ欠点もあるので許容していたが、気になるのは幻獣の占領地帯の中に自然が豊かになったという話だ。

 

もし連中が死んだらエネルギーになって大地に帰り、そこから何らかの方法で再吸収できるとしたらどうだろう? 仮にクローン施設で人間型を生産し、時間を掛けて再幻獣化だとしても恐ろしい勢いで再生産されてしまう。

 

「ダメだ。悪い方向にばかり考えてしまう。終わってから考えよう。とりあえず……死ね!」

 ジャアントアサルトで何とかミノ一匹を潰し、逃げ回りながら弾薬交換するかを考えた。

結果としてはもっとシンプルに予定通りいくことにした。一度投げ捨てて、投下予定の超硬度大太刀を拾う事にしたのだ。

 

先ほど空中騎兵を潰したことで、飛行船は再び降下高度まで降りてきている。

 

先に展開式シールドが落下して三面鏡の様な形状に変形。即席の障害物になった。

 

「よし、あの位置か。なら……大太刀はそこだな!」

 やはりこういう時は飛行経験がものをいう。

母船がどういう動きをするかを計算に入れ、不要なモノを捨てて身を軽くすることにした。

 

だが捨てるモノを多少変更。

ジャイアントアサルトではなく、代わりに手持ちにしていた展開式装甲を地面に突き立てたのだ! 予備のシールドも落ちているのだ、即席地形として利用しない手はない!

 

二枚の展開式装甲の位置を、掘りかけの塹壕と共に頭に入れる。そのまま超硬度大太刀を拾いに移動し、その機動そのものを敵を引きずり回す経路に変えた。

 

「よし! ここだ!」

 ナーガを射撃しながら歩いていたが、落下してきたところで再度ジャンプ。

片手に銃、片手に太刀のガンカタ・スタイル。先に弾薬交換を挟んでおけばよかったなという余裕も、この時まではあったくらいだ。

 

そして大尉が降下してきた時、正直、私は勝ったな……とすら思っていた。

馬鹿げた敗北主義者が、自らの失態を押し付けようとしていたことに気が付かずに!

 

『今だ! 押し出して挟撃しろ! 仲間たちの仇を取るのだ!』

(っ!? 馬鹿な! なぜ出て来る? このタイミングで出るとしたら友軍の方向だろう!? こちらに来るとしたら早過ぎる!!)

 見れば塹壕陣地を指揮していたらしき将校が、不良共ほか手持ちの兵を前面に押し立てている。

 

その後方から軍刀である超硬度カトラスを振るっているわけだが……馬鹿じゃないのか?

戦いにはタイミングという物がある。この状況で出れば確かに敵の動きは分断されるが、それだって塹壕を利用してこそ価値のある物だ。出撃したと見せるにしても、どうして引き返さない? これでは大尉が後方からかき回すという流れが台無しではないか。

 

(せめて私が引っ張り直すまでどうして待てなかった!?)

 その答えは実のところ考えるまでもない。

塹壕陣地を任されていた将校は、おそらく良い所なしで功績を稼ごうとしたのだ。あるいは伝令と住民誘導でポイントを稼いだ不良共を始末しようとしたのかもしれない。

 

(あのゴミが! 後で覚えていろよ!)

 こうなったら作戦を変更するしかない。

優雅に走り幅跳びなんぞやってる暇はない。一刻も早く中型幻獣を根絶やしにしないと、せっかく助けに来た意味がなくなってしまうではないか!

 

「大尉、申し訳ありません! こうなったら突入の他なく!」

「……」

 いつものように頷く大尉が妙に心強い。

今なら尻の穴でも貸すぜという戦場ジョークが飛び出る気持ちが判らなくもない。もっとも私にそのケはないので、あくまでネタでしかないのだが。

 

「どうして出てきた! サキの苦労を無駄にする気か!」

「そのサキの仇ば取らんと!」

 もし人型戦車が撃破され、こいつらが飛び出て来たら感謝しただろうか?

そんな未来はないだろうなと思いつつ、そうなる可能性を思い浮かべて内心の怒りをなんとか鎮めた。

 

妄想で怒りを鎮めるとは私らしくもない。

だが、それほどにこの事態は逼迫している。何とかミノタウルスをもう一体斬り捨てたものの、既に戦死者が出始めていたのだ。

 

「もう良い! 私に続け! オール・ハンデット・ガンパレード!! 私が斬り込み、私がねじ伏せる! お前たちは私に続いて動けない敵のトドメを刺していけ!」

「「おお!!」」

 こうなっては仕方がない。強引に対中型幻獣戦術を敢行。

被弾を覚悟して最後のミノタウルスに突進。鉄拳を喰らいながらも、強引に切り捨てた。

 

運が無いのはそこからだ。

不自然な軌道を掛けたことで敵の射界に入ってしまった。ナーガやゴブリンの攻撃を次々と喰らい、何処にいたのかキメラの攻撃が直撃してしまう。

 

マズイ。このままでは撃破されてしまう。

それよりも先になんとかしようと、近くに居たナーガだけでも始末する。

 

そしてキメラには到底届かない。最悪でも二射されてしまう。

 

両方喰らえば私が撃破されるか、分散して不良共の誰かが死ぬ。それも、馬鹿が突撃命令を出した為に。大尉は倒れた誰かを助けているようだ。今回ばかりは間に合うまい。

 

「誠に済まない。少々出遅れた。スケジュールの調整は大丈夫そうか?」

「はは……なんとか無事であります。願わくば馬鹿者を銃殺する時は私にやらせてください」

 その時になってようやく新城少佐も降下してくれるように頼んでいたのを思い出した。

私は何とか漏れ出る殺意を押し留め、馬鹿の官姓名を記憶しようと通信に耳を傾けるので精一杯だ。




 という訳で何かが台無しに成ってしまいました。
戦場に居るのは賢い人とか、頭の良い馬鹿ばかりじゃないから仕方ないね。
ちなみに知らない人向けに言うと、ゴッドスピードというのはガンパレでの葬式での言葉。
死ぬには早い良い奴だった。早過ぎるぜ馬鹿野郎くらいの意味合い。

それぞれの立ち位置。
「こういう人間も居るのだと君は指導しておくべきだった。つまり君が殺した」
とかデブは言いそう?

新城少佐はそもそも望まないのに戦場へ連れてこられた人を利用すること自体に嫌悪感。
望んで戦場に出ておいて、責任を持たなかった能無しには殺意を覚えますが。

ターニャは人的資源の無駄使いに殺意を覚えるタイプ。
とはいえ数字として見るばかりではないので、そういう面がある事を戸惑うのかな?

●空挺降下作戦
ガンパレでもやってる空挺降下作戦。
おそろしいことに、無断で両肩に展開式装甲が積んである。
非常に重いので行動力が半減し、気が付かないとバンバン当たって死ぬ。

その話と比べてターニャは空挺経験が多いので楽勝。
途中で馬鹿が馬鹿なことしいなければ、この戦場でも勝っていたはずです。
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