ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

25 / 56
外伝:振り上げるは逆転の拳

 刻一刻と過ぎる時間というヤスリ。

一分一秒ごとに人間の命が消費されていくのではないかという戦場があった。

 

建設当初は無敵を誇ったのではないかという九州山脈を利用した陣地。塹壕だけではなくベトン製の壁を備え、山地の至る所に火砲が隠してあった。それが今まさに、燃え尽きようとしている。

 

「中佐。……もはや後数日も保ちません」

「そうか。存外に早かったな。今少し塹壕が活躍してくれると思ったのだが。後数日も……?」

 夜の間は控えていた煙草も既に解禁している。

その程度で死んでしまうならとっくに死んでしまうし、紫煙の一服で摺り減った精神が永らえるなら、まあ安い買い物であろう。

 

一服点けて頭をすっきりさせながら自衛軍中佐たる新城直衛は、思い出したように噴出した。

 

「いや、いかん。いかんな。僕としたことが目先の勝ちにこだわってしまった。今は何日だ?」

「四月三十日でありますが? そろそろ二十二時に差し掛かる頃かと」

 新城の問いに猪口は即座に答えた。

彼は頭の中にコンパスと地図が入っているのではないかと思った事があるが、どうやら時計もあるらしい。

 

何がおかしいのか、くつくつと笑いながらもう一服煙草を吹かす。

 

「デグレチャフの奴に約束したのは五月までだ。日を越えたら総撤退しよう。だが……もう三時間くらいは粘らにゃならん。判るな?」

「はっ! 我々が何時までも此処に籠ると思わせねばなりません!」

 いまこの瞬間にもスキュラのレーザーが貫くかもしれない。戦線に復帰したタランチュラが来れば死ぬ気で撃退せねばならない。そんな状況で笑う男に猪口は心から戦慄した。

 

そうこうする内に新城はカトラスで宮崎の地図を切り裂き、そのまま大分まで刃を滑らせた。

 

「宮崎はとうに陥落した。今まさに大分の過半も燃え尽きようとしている。だが本土に持って帰るべきモノもある。幻獣の首、そして……兵の命だ。漆原中尉と芝村百翼長を呼べ」

「はっ!」

 新城は幻獣王の話はしなかったが、あえて『首』という貴人を倒す時の表現を使った。それがせめてもの開示であるし、敵は討ち取るという意味ではさほど変わりなどしない。

 

やがて新兵気分のようやく抜けた若い士官と、ふてぶてしい微笑みを浮かべた学兵が現れる。

 

「漆原中尉出頭しました!」

「芝村百翼長。右に同じであります」

 漆原と呼ばれた新品少尉は九州山地を巡る戦いで人型戦車を操り功績をあげた。すっかり歴戦の男になったが、そうなる事の出来なかった後輩を思って新城は苦笑の一つも浮かべたくなる。

 

そして微笑むデブ……というにはすっかり痩せてしまったポッチャリ系の芝村百翼長は、いつでも突撃できるとばかりに不敵な笑顔を浮かべていた。

 

「ここでの戦いも残すところ三時間ほどで完了する。そうしたら君らが先頭に立って血路を開け。誠に申し訳ないが司令部は殿軍を務めるので、君らを支援できない」

「陣地を放棄されるのですか?」

「まあ妥当ではありますね。此処を放棄すれば取り返すのは難儀ですが」

 反応は両極端であった。

漆原は死んだ戦友たちの為にも戦い続けるべきだと思い、芝村はどの様な意図と作戦があるか面白がった。

 

塹壕が無駄になった時点でこの戦いはとっくに意義をなくしており、こだわるか、さっさと捨てるかの二択しかない。

 

「納得できません! ここで引いては九州全体が幻獣の手に落ちてしまいます! それでは何の為にみんな死んだのか……」

「もちろん此処で戦い、五月まで保たせて苦戦を演じる必要があったからだ」

 激高して詰め寄っていた漆原は顔色をなくした。

それではまるで、幻獣に感情があるようではないか。それどころか、まるで知性まで備えて居るような。芝村の方は黙って様子を見守り、『ああ、やはりそうだったか』と自らの推論を補強した。

 

「簡単に逃げたら奴らはこちらの策に乗って来ないからな。これから言う事は両名とも決して口にはするな。お互いに監視して喋ったら殺す覚悟でも良い。……連中には王が居る」

「なっ!?」

「まさか……」

 これには漆原どころか芝村まで驚いた。

正確にはそうじゃないかなと芝村の方は思ったが、この場で口にするとは思いもよらなかったのだ。所詮、彼らは一兵卒よりマシな、替えの効く将校に過ぎない。

 

「ここでギリギリまで粘って撤退し、後は熊本を落とせば終わりとなれば油断する。必ずそうさせる。そこを突く為の作戦を予定中だ。お前たちは背後から迫る為の兵となれ」

「はっ! 芝村百翼長、拝命いたしました!」

「はい、いいえ! 新城中佐がそれを担うべきです! ここは自分らが……」

 ここでも芝村と漆原は逆の態度を取った。

芝村は運命を変え得る一撃、最終作戦に参加できることを男子の本懐と思った。逆に漆原は、その作戦を確実に成功させる為には新城こそが必要と思ったのだ。

 

「ダメだ。この撤退戦も連中に信じさせる材料になる。それに、なんだ。楽しい楽しい逃げ支度をしなきゃならんからな。そこまでやって、無事に逃げ切れる可能性があるのは僕らだけだ」

「ははは。漆原中尉。あなたの負けです。中佐、あなたは誰よりも立派な芝村に成れますな」

 この期に及んで戦場をひっかきまわし、生きて逃げるつもりの新城。

その姿に漆原は黙るしかなく、芝村は大笑いして受け入れた。もちろん猪口などは、この地獄の極卒のような狂相の司令官に最後までくっ付いて生き延びらせる所存であった。

 

 九州山地が燃え落ちる中、双方を弾丸が飛び交う奇妙な戦場があった。

いや、本来であればこれが普通なのだ。幻獣という災害が無ければこれが普通であったのだろう。

 

つまるところはコレが人類同士の戦いを意味しているに過ぎない。

もっとも……そうでないモノも居るには居るが。

 

「他の連中ば殆どやられてしもうたと。どがんすっと……」

 防戦していた兵士たちは一人、また一人と打ち倒された。

攻め寄せるは幻獣共生派。ゴブリンの如き不死身さで立ち向かってくるのだ。ウォードレスも着て居ない一般の兵士では荷が重かろう。ここに残るのはとある(・・・)機関から派遣されていた少女と老人の二人しかいない。

 

「この程度、何のことはありません。私たちで何とかして見せれば良い事です。いえいえ、二人も居れば分担できますので容易過ぎます」

「爺さん、なに言いよるか! 前から思うとったが頭おかしゅうなかか?」

 老人の放言に少女は抗議した。

普通の暴徒ならいざ知らず、小型幻獣並みの力を持った『集団』にどうすれば対抗できるというのか。一人一人ならば少女も老人も勝てると断言しても良い。だが敵は無数に存在するのである。

 

「いけません。そのようにおっしゃっては。何時いかなる時も優雅であれ。優雅に万難を排して見せるのが万能執事であり、万能ねえやの仕事なのですから」

 この爺さんは優雅に大風呂敷を広げる物だ。

この窮地にまるで動じた様子が無い。少女が頭おかしいと思うのも仕方がないだろう。大ほら吹きの英雄思考。その症状が出ているのではないか? いいや、彼こそがその元祖か、始祖の類であろう。

 

「ついて行けん。あたしは準竜師の力ば成りたかったとよ……」

「成ればよろしいではないですか。良くお考え下さい。この程度の窮地を乗り超えられぬ者が、貴女の求める方のお役に立ちますかな? いいえ。それ以前に……」

 絶望を浮かべそうになる少女を老人は優しく窘めた。

正確に言えば、千尋の谷へ突き落そうとしているのだ。

 

「貴方が主人と定めたお方ならば、この程度はなんとでも為されるのでは? ゆえに貴女もまた、この程度は切り抜けて当然なのです。でなければお役になど立てますまい」

「っ!? あたしが役立たずちゅうんか!」

 ダウナー思考に陥りそうになった少女の心に火が灯る。

ハートに火が点き、燃え上がる時。絶望を踏破した人類は、いかなる艱難辛苦も乗り越え、明日を掴み取ることができるのだ。

 

「それで良いのです。諦めが人を殺します。最後まであきらめない限り運命は微笑みますとも。私がディフェンス、貴女がオフェンスと行きましょう。ああ、そうそう……」

 老人は最後まで大風呂敷を広げた。

最後の最後まで大胆不敵な大嘘つきだ。ドイツの方ではプロパガンダの一種に『百回嘘を吐けば真実に成る』と言ったやつがいる。きっとソレは、彼の後輩なのかもしれない。

 

「貴女の主人であれば世界の一つも救って見せるでしょう。戦争が終わったら貴女は何をしますか? その時こそ、貴女は万能ねえやになるのです」

「……ハハ。そういう未来もあっかな。じゃあ行くぜミュンヒハウゼンさんよ」

 ドイツの国にて魔女と契約した大嘘吐きの大英雄。

本人だかその名前を受け継ぐ別人だか知らないが、老人は最後まで嘘を吐き続けた。花も実もある嘘ならば、いつか真実になった時に格好良いではないか。

 

貧すれば鈍する。つまらない人生など知ったことかと嘯いて、魔物の如き爺さんは『この程度!』と何度目かの窮地に立ち向かう事にした。

 

 銃弾が飛び交う奇妙な戦場で、その時、彼は電話を掛けていた。

楽しそうに命を喰らい、運命を喰らい、世界を嘲笑いながら電話を掛ける。

 

「アローアロー。こちら芝村ぶっ殺し隊の隊長ことヤンでーす! ちょっといいかな~」

『……何用かしら』

 依頼を請け負った傭兵は、不躾に依頼主へ連絡を寄こした。

今ごろ町に潜伏中の依頼主は、迷惑そうに拠点を移す算段をしている頃だろう。

 

名うてのテロリストであるヤン・バレンタインは、これから起きる騒動を期待して最高に勃起していた。過去最大にエレクトしていると言い換えても良い。

 

「いやね。芝村機関に喧嘩売ったのは良いんだけどさ、とあるブツを手に入れたらこれがもう追いかけてくること。それで手足になってる詰め所を襲ってるんだけど、ブツを捨てるか売るか何とかしたいんだよねー」

『好きにすれば良いというか、今まで好きにしていなかったかしら?』

 迷惑を掛けておいて楽しげな声に、依頼主の少女は怒りを抑えるのに必死になった。

札付きのテロリストから電話を掛けられて、優雅に暮らしていた潜伏先を捨てる羽目になって腹を立てていたのだ。

 

そしてどうでも良い事ならば、この迷惑魔人が電話をしてくるはずもない。どうせ必ず大迷惑になるのである。

 

「笑えるんだけどさ。このサンプルに『オリジナル』とか書いてあるんだよね。何のサンプルか知らないけど、おたく興味ある?」

『っ!? 詳しく聞かせなさい。場合によってはハンスに取りに行かせるわ』

 あまりにも衝撃的な情報に、少女は演技を忘れそうになった。

この迷惑魔人相手には、取り繕った表情であしらってきたのに。

 

「そんじゃあさあ、適当に事件起こしてよ。それに紛れてボクちゃんたち撤収するから。兄ちゃんが慰問コンサートかどこかでお会いいたしましょうって! そうそう。学兵に配られる慰問用のなら、どれでもいいってさ」

『……闇に呑まれよ(ごきげんよう)!』

 ヒヒヒと笑う下卑た声に、少女は近くに貼ってあった慰問コンサートのポスターにある台詞をぶつけた。

 

「兄ちゃん。これでいいの? 何入ってるかしらないけどさ」

「これは大尉の細胞だよ。士魂号の為に居るあの偽者とは違う。本物の幻獣、そのオリジナルだ。ククク……これを調べたらビックリするぞ。連中はさぞかし大尉を欲しがるだろうなあ」

 それは完全なるシェイプシフター。

人から幻獣に変身し、幻獣から人間に変身を遂げる完全なる生物。日を背負いて月を従者にやって来る万民の恐怖。やがて歌を教えられるまで牙を研ぐ存在。

 

すなわち病から逃れるために幻獣と化し、人に戻れなくなってしまった哀れな漂流者への最後の福音なのだ。そしてサンプルとしては本物だけに調べれば調べるほどに追い求めてしまう。

 

「さて、私は姫君とのデートに行ってくる。後は任せたぞ」

「おうよ。あの無い胸の御姫様からせいぜいふんだくってきてくれ給え兄ちゃんよ」

 どこか遠い場所でドーン! と弾ける音がする。

爆弾魔の御姫様がかんしゃくを起こして今までアジトにしていた場所を吹き飛ばしたのだろう。今頃はこちらに向かうはずの兵士も、そちらに向かっているに違いない。

 

「俺はちょっくら残りの芝村共をやってから行きますわ」

「そがん事はさせられん。あたしらが世界征服する(世界を救う)のに邪魔ばさせられん」

 ヤンは誰かが来る気配を感じてアサルトライフルを持ち上げる。

外には何人か居たはずなのに、この部屋までやってくるとわ! これは楽しい戦いになりそうだと牙をむいた。

 

「はっ! 今時、世界征服する(世界を救う)だと? ガキでも判るお伽話だ。寝言は寝てから言えよ! それともボクちんがファ●クして(寝かせて)あげようかい!」

 片手で連射しても少しもぶれやしない。

強化改造された肉体はその程度の反動で揺るぎはしない。なのに現れた少女は次々に弾丸を躱す。とても人間業には見えなかった。

 

九州制覇(九州救済)から全国制覇(世界救済)。笑うような奴は……ぶっ飛ばすぞ!」

「ヒュウ♪」

 少女はただ、光る拳を掲げた。

武器無し、素手、我が身一つがあるのみだ。これにはヤンも笑うしかない。たったそれだけの武装で、フル武装した幻獣共生派を叩きのめしてきたというのか? それほどまでに、あの拳の強化が凄いのか?

 

だが、少女は語る。少女に語った老人が告げる。

 

我ら(ガンプ)が強いのは、たかが拳が光る程度の曲芸などではない。

 

何処までも的確で、どこまでも細心で、その心は高機動。何処かの誰かのために、自らが仕える白き心(リン)の為に、青は最強(アルカナソード)に成れるのだ。

 

その強さは何処から来る? 強化された肉体か?

 

いいや、心に(ここに)

 

 とある世界ではサラマンダーは我儘な子供の象徴だという。

だが、この世界のサラマンダーは世界の守り手になるだろう。

 

サラマンダーと呼ばれた毛の無いイタチは、その痛んで赤くなった体を誇らしく思う。

 

かつての生で浅ましい行いをして、恐れられた赤き自分が、世界を守る存在などと呼ばれている。これが誇りに思えなくて何と言おうか。

 

ただ、それだけで誇りを胸に死んで行ける。

 

死をも超える運命を乗り越えていける。

 

かつてベルトルトと呼ばれた永遠の罪人は、自らの運命を思い出して啼いていた。しかし、もはやそんな事は関係ない。誇りを胸に死すら超えるマーチとなろう。

 

愛に生きる(ビアナ)の中で、彼はとても微弱な神だった。しょせんは新しい客神でしかない。

 

知っている絶技はたった一つ。しかし男は自らの色の絶技を使えない。

 

かつて巨大な体を持っていた時に、巨大でありながらも体は機能していた。人間大の虫は、ただそれだけで死んでしまう。構造上、耐えられないのだ。もし人間大のカマキリと戦う者が居たら、それは空想の中で訓練しているのだろう。

 

しかるにかつての彼は、超巨大な巨人であった。それなのに走っても飛んでもどこにも異常が無い。ただそれだけの力。

 

知っている絶技は、そこに由来するただそれだけの力。

しかし絶技を使えない彼は、祈るしかない。

 

加護を分け与えた存在が、体を壊さず、ボディを損傷させないというだけのおまじない。そんな気がするだけのおまじない。

 

だが、彼が来たことで人型戦車の故障は劇的に減ったと人は言う。本当は原さん達が必死で頑張っただけなのにね。ベルトルトはその努力が実る様に祈っただけだ。

 

ただそれだけなのに、整備の人々は、パイロットは彼をありがたがる。彼が居るからこそ頑張れると言ってくれるのだ。これを誇りと思わずに居られようか。

 

ただ、それだけで彼は誇りを胸に死んで行けると思った。

 

『よいかい、胴の長い兄弟。魔術(オーマ)使いが他のオーマに祈る時。代償が必要になるんだ。後悔しないようによく考えてから祈れよ』

 

彼はそれを覚えていた。だから立派だった彼の毛皮はもはや存在しない。ミサイルが当たらないような気がするおまじない。その為に毛皮は綺麗さっぱり無くなった。

 

そして新しい加護を祈る時。彼に使えない加護を祈る時。彼は躊躇なく自分を捧げる事にした。

 

だって、彼は思い出したのだ。

 

「知恵もの、知恵もの。偉大なる黒の御方に希う。赤にして巨赤たる我は、黒の黒。貫く棒の如き御方に希う」

 

光の群れに襲われても、人々が恐れないで居られるように。

 

昼間の光を、夜の光を恐れないで居られるように。

 

レーザーなんて怖くない。そう思えるようにベルトルトは祈った。

 

気が付けば血を吐いて倒れていた。

 

 士魂号を整備するハンガーの中で、小さな少女が悲しそうにしていた。

赤い何かを抱えて蹲る。そこへ一人の乙女が通りかかった。

 

「どうしたの?」

「みお……ちゃん? ベルトちゃんが……倒れちゃったの。死んじゃったの?」

 壬生屋未央はビクトリアと呼ばれた少女がイタチを抱えているのを見つけた。

以前に保護されたイタチは、幸運を呼ぶサラマンダーとして重宝されていた。それは他愛ない噂話。しょせんは御まじないの類であろう。

 

だが彼女は笑わない。少女の横顔を見ているから。修理を頻繁に頼む壬生屋には、そんな御まじないが救いでもあったから。壊れたら出撃できないかもしれない、もう乗せてもらえないかもしれない。そんな時に、この赤いイタチが居たのである。パイロットというのはゲンを担ぐものだ。

 

……不思議と、ありがたい気がした。

 

「大丈夫。まだ医務室に連れて行けば何とかなるかもしれません。もし、倒れたとしても大丈夫。ずっと見守ってくれますよ。そして、我々は万全の努力をして助けましょう」

「ばんぜん?」

 壬生屋は戦闘団のフラッグを見上げた。

そこに赤いイタチが描かれている。サラマンダーと呼ばれて直立するイタチが居る。

 

まるでその姿は、この国で最も偉大とされる火の国の赤い宝剣の様ではないか。

 

「芝村さんを呼びましょう。私はあの方がまだ苦手ですが。あの人ならば何かできるような気がします。助けるために、あの人に頼る弱い自分を忘れる事にします。それが私たちの万全です」

「……ん。おねがいしてくる」

 勇気とは相手を見て出したり引っ込めたりするモノではない。

誇りとは頭を下げて減るモノではない。だから何とかできる人にお願いして、倒れたイタチを助けてもらおう。

 

今は戦時中だから諦めよう。死んでも思い出は胸に残るから諦めよう。

 

そんな事を言い出す前に、壬生屋は頭を下げる事にした。小さな子の涙を止めて、小さな生き物の命を救うためなら安いモノだろう。

 

プライドというのは傲慢という七つの悪徳の一つだが、誇りと言えばきっと善徳であろうと思うのだ。きっと誰かの為に下げる頭で自分の誇りは減らないと思う。

 

そんな壬生屋を見て、ビクトリアは不思議とありがたい気がした。

 

 ドーンと熊本の何処かで大爆発が起きた時……。

大分の何処かで大爆発が起きていた。溜め込んだ火薬に火を点けたら、その一部が誘爆して大爆発を起こしたのだ。

 

「随分と盛大に燃え上がったな」

「籠城の為に無理をしてかき集めましたからなあ」

 盛大な焚火を前に笑う新城を見て、猪口は心の奥底で震えあがった。

どうしてこの地獄の様な光景で笑えるのか不思議だが、それができるから彼らは付き従っていられるのだろう。

 

「この機に脱出する。せっかくゾンビヘリもスキュラも吹っ飛んだからね。千早ならなんとか案内してくれるだろう」

「お供いたします!」

 殿軍を務めていた新城達は、弾薬を誘爆させて逃げ出した。

どこまで上手く行くかは丁半博打。一歩間違えれば自分たちも吹き飛ぶし、空飛ぶ幻獣を巻き込めなければやはり危険だったからだ。

 

「中佐殿あれを」

「……漆原の馬鹿め。逃げろと言ったのに、命令違反じゃないか。しかも芝村まで居やがる」

 脱出口の方で大尉にした漆原が援護射撃をしている。

生き残っている幻獣を芝村が連れた龍騎兵小隊が蹴散らしていた。

 

「僕は逃げろと言わなかったか? デグレチャフが居れば何とかなる」

「生き残るだけならば。しかし勝ちきるには二人は必要でしょう。九州奪還にもう数人必要なら……せっかくです十人は集めましょうか」

「ははは。それは盛況でしょうな。漢祭りの塾でも開けそうです」

 新城やターニャが一人では希望に過ぎない。

だが二人居れば勝てる気がする。十人居れば確実に勝てるだろう。江田島の海軍士官学校にでも居ない者か?

 

そこまで思ったのだが、みな連想して気色悪い思いをした。新城とターニャ級の人間が十人集まる? どんな地獄だと言って、みんなで苦い笑いを浮かべたのである。




 戦闘団の話は終わって、次回から熊本決戦に向けた話になります。

以下、解説というかネタ。
本編で語っていますし、いずれ設定集にすると思うので、無理に読まなくてもOkです。

●新城さん
彼は宮崎から撤退戦を繰り広げて時間稼ぎをして、更に大分では塹壕戦。
可哀そうに付き従った自衛軍は、塹壕を無力化する連中のおかげで戦死。
五月まで九州の半分以上が無事、人類側の版図として残る偉業を達成しました。

新城さん一人でも、ターニャ一人でもなし得なかった遅延と攻勢のコンボ。
幼女戦記でゼー閣下一人じゃだめだけど二人居れば……。の流れですね。
最期に十人居ればというのは、そのくらい居ればという冗談ですが、棒ジャンプ漫画のパロです。

●万能執事と万能ねえや
 誰もが世界は駄目だと捨てるなら、それを彼らの主人が救って自分のモノにする。
だから万能執事と万能ねえやは、悪を倒してコレを助けるのである。
彼らにとって世界征服=世界救済の旅である。
ヘルシングと式神の城とガンパレのパロですね。

●闇に呑まれよ
九州出身だけど出る予定の無いネタなので、セリフだけ
というか表現しきれないので出しません。
ゲームの陳情でもらえるコンサートチケットのネタを絡めただけ

シェイプシフター、姿を変えるモノ。幻獣のオリジナルの一つ。
大尉は狼男であり、V号はそこから作られたオーガレディ=山姥。
だから大尉は登場時に囮になれたし、あの子はあらゆる人物に適正を与えられた。
でも少女たちに歌を教えられて弱者を守る万民の剣になるのはこちら。
ちなみに大尉が居る以上は、進撃勢のユ何とかさんは出ません。

●魔術
可能性を上げる御まじない。努力する人が居なければ、そもそも発動しない。
ジャミングで生体ミサイルが誘導しなくなるのも、レーザーが防げるのも
そんなミノフスキーみたいなオカルトは、魔術なのです。
ですが赤の男は絶技としては発動できません。しょせんはそんな気がするおまじない。
なのに、その代償にベルトルトは大切なモノを失ってしまいました。

式神の城とかと混ぜたらネタは色々できますが、本編とは関係ないので割愛。
あくまでガンパレとかで使われるネタの枠内です。

●代行殿
壬生屋xターニャを見て激おこ(人ではなくメカっぽいから)
その後に壬生屋とタンデムしなくなったのでニコニコ(いまここ)
今東京でターニャの為に白いドレスを用意してるとこ(そのうち出てきます)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。