ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

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伏兵vs伏兵

 目標となる場所での戦闘演算は昔ながらに地図とメジャーで行われる。

コンピューターで処理できないのではなく、便利遣いできるコンピューターそのものに余裕が無いのだ。もちろん3Dマッピングなど存在しない。

 

これは技術が未成熟なのもあるがコンピューターの絶対数が少なく、従事する技術者も足りていないというのが正しい。

 

「風が吹けば桶屋が儲かるとは言うが、まさかデミング一人のせいでこうなるとはな」

「何かおっしゃられました?」

「何でもない」

 大量生産の概念自体は存在するが、そこにクオリティを求めるという概念の発達が遅れた。

上澄みとも言うべき良品で造られたコンピューターそのものはあるものだから、最先端科学の研究には問題ないのが拍車をかけた。おかげで世界に冠たるトヨタ式もカイゼンも存在してない。普及する前に特許を取ったら儲かるだろうか?

 

それというのも日本の生産性を劇的に向上させたデミング博士が来日していないからだ。

彼は日本の復興を助ける一助として来日した知識人・技術者の中に居て、数だけにこだわらずクオリティも同時に向上させる事が重要だと説いていた。残念な事にこの世界では日の目を見なかったようだが。

 

「やはり戦車は無理か?」

「改造でもすれば一台くらいは。ポルシェティーガーでも参考にしてみますか?」

「西住万翼長はドイツ派ですか。そういえばツエッペリンを御家の紹介で拝見した覚えが」

 戦車隊を率いるまほ(・・)に尋ねたがやはり奇襲には向かないらしい。

珍しく戦車の話題で盛り上がる善行だが……原の目が怖いからその辺で止めておけ。

 

ちなみにポルシェティーガーを参考にというのは、アレそのものを参考にするのではない。その失敗事例である技術の追いついていない部分を総とっかえして、クオリティの高いエンジンその他を積めば良いという例えになる。紫電改にハイオク燃料の例えでも良いはずだが。

 

「仕方ないな。今まで奇襲作戦で戦車を伴う事は少なかったし今回も諦めよう。となると『お客人』をどう扱うか……だが」

「うちの指揮車両にでも乗っていただきますか? 今回は機銃も使いませんし」

「機銃担当は医療スタッフが兼ねているのでは? それならオペレーター……駄目か」

 非常に面倒くさいことに知性派幻獣であるお姫様が同行を求めていらっしゃる。

妹姫が本物であるかを確かめつつ、『今回は伏兵排除なので、動けるとしても回収できない』というような意味合いの符丁を送るために付いてきたいとの事だ。できれば無視して置いておきたいところである。

 

とはいえ一兵卒のフリをして付いてきた新城大佐曰く、『肉親の情にはいたく感心させられた(利用できると判った)ので協力するように』とくれぐれも言われている。無視するのも問題だろう。

 

大佐が変装までして案内したという事は、影武者を立てているから外見に魅了されてはいない事。そして心の機微を一兵卒として観察したという事だろう。そのセンを踏まえれば、いつか非情な決断をするにしろ、こちらから地雷を踏むのはいかにもマズイ。

 

「できれば機密の塊である騎魂号は避けたい。適当な車両を見繕ってくれ」

「他所から持って来ても良いのでしたら何とでもなると思いますが」

「……ちょっと安請け合いしてもらっちゃ困るんだけど? それで整備するのは私たちなのよ? そりゃ中村君なら喜んで整備するだろうけど」

 どんな影響があるかもわからないので人型戦車には乗せたくはない。

戦車隊は無理でも装甲車の類はあるだろうと声を掛けたら、すっかりふてくされた原がお冠だった。そんなに善行が好きなら、自分から告白するなり愛人を許容するなりすれば良い物を、下手に頭の回る女はプライドが高くて扱い難いな。

 

「そういえば中村君を見ませんねぇ。彼の事だから指揮車両は万全なのでしょうが」

「さっきの話に出たお姫様と一緒にお菓子を作ってるわよ。何でも感性が同じならば、考えている事が信じられるでしょうって。知性体が気になるからって岩田君も付いていったけど」

「……ビクトリアは連れてないだろうな? 後で問題になると面倒だぞ」

 指揮車両の整備担当である中村は料理が得意だ。

よくコーヒーのお供に色々作ってくれるので良く知っている。それにしても中村と岩田か……料理だの研究だのがなければ妙な組み合わせだと思った事だろう。

 

「そろそろ機嫌を宥めろ、原。代わりに善行にブランド物でも買ってもらえ。お姫様用に色々とカタログが政府筋から送られてきたからな」

「そういう事でしたら……」

「ちょっと竜師。……洒落にならない値段になりそう……いえ、何でもありません」

 消え入りそうな善行の抗議はスルーしてしまおう。

話を伝えたことで政府は乗り気の様で問題の無い程度に……内々に一部の大臣・官僚のみに伝えたらしい。そこで諸外国の要人の接待と、工作員への機密費扱いで色々と準備がされているそうだ。

 

「それにしてもカタログ一式とは破格ですね」

「お姫様に既製品というのも憚られたのだろう。かといって一点物を作るために長期間一般人と会わせる訳にはいかん。色々な意味でな」

 交渉で国家の安全やら領土問題が左右されるなら、その印象はプラスの方が良い。

そこで最悪でも上から下までブランド物を何種類か揃え、お姫様の感性に合わせて好きにコーディネイトさせるそうだ。まあその程度で済むなら兵器よりよほど安い物だしな。

 

 結局、歩兵輸送車両を改造して望遠カメラでも付けるかという事になった。

偵察車両でも良いはずだが、5121の戦車随伴歩兵(スカウト)を乗せて移動できるという面からこちらが選択された。

 

やはり機動力は正義であり、戦車隊が来れなかったのも今から行く場所で機敏に動けない問題があったからだ。その点、車両に乗せておけば総員が機動力を確保できるという点で優れている。

 

「万が一の場合は手荒く運びますんでその点はご了承ください」

「任せた以上は口を挟む気はありません」

 さすがにこの期に及んでグダグダ言う気はないらしい。

ウォードレスを着込んでいるのはこちらの文化に合わせるという意味と、最低限のプロテクターという事なのだろう。万が一の場合はいつかのサキの様に、人型戦車の腕に乗せて運ぶ事になる。

 

サキか……。

 

「という訳だ。お前の順位は二番、それこそ万一の場合はお前が連れ出してこちらに預けろ。それが任務であり優先順位になる。……すまんな」

「はい、いいえ! 信じておりますから!」

 場合によっては見捨てるかもしれない。

そう告げたが、運転手を務めるエリカは真っ直ぐ答礼で返した。

 

私もお姫様もそれには苦笑で返すしかない。

 

「随分と凛々しい『いいえ』を聞いたな。これほどの兵が従うとは正直、羨ましい」

「なんの。無様はしないとデータが示しているだけです」

 正直ありがたくはあるので、万が一の場合は優先させてもらおう。

本人の承諾もある事だし、何よりも隣の『ユーリア姫』が感銘を受けたようだ。もし自分の我儘の結果エリカが死ぬようなことに成れば、その血の代償を別の形で払ってくれるに違いない。

 

血イコール地であり、血の畑を私は贖う訳だ。

他人の命など迂闊に背負いたくもないので、精々、誰も殺さぬように努めるとしよう。そういう意味でエリカは私もユーリア姫も二重に『信じている』と言うべきか。

 

「総員搭乗。これより廃墟に向かう」

「「はっ!!」」

 これから向かう候補地は廃墟になった町の一つだ。

大通りに面したビルがまだ残っており、熊本へ向けて抜ける道筋である事から自然とビル影に待ち伏せが可能だ。もちろん馬鹿正直に直ぐ裏に隠れたりはしない。せっかく瓦礫になった裏通りなども利用し、ある程度の時間以内に襲撃できる場所を選ぶ。

 

そして大通りの周囲に裏通りが存在し、繁華街を構成していたという事は……。

人型戦車のみならず幻獣も潜み易いという事だ。歩兵サイズの小型はともかく、ケンタウルスのような移動力の高い中型幻獣ならば事前に到着して潜めるだろう。

 

「カメラと通信手段が量産されていればな……まあ言っても仕方のない事か」

 ルート沿いにカメラを仕掛け反応があるか無いかだけでも定期的に通信を送れたのに。

そう思いながらも降車した戦車随伴歩兵(スカウト)が先行するのを見守る。彼らが大方の確認をした後で、こちらも裏通りや残骸の影に隠れる予定だった。

 

この世界は人工筋肉の発展ゆえにウォードレスも人型戦車も存在する。

だが生前の世界の様に物資が満ち溢れた世界ではない。運命が異なればそれでも大量生産社会は訪れたかもしれないが、日米の交流が冷めていただけでコレとは……。いや、それも幻獣の影響なのかもしれないが。

 

『竜師。迷い込んだゴブリンが若干。敵はまだ到着していないようです』

「排除せよ。その上で我々が分散して潜む」

 幸いなことに敵は忍者じみた小型幻獣の集団など有していないようだった。

先行部隊との戦闘に成れば面倒であったが、これならば問題なく途中までは潜めるだろう。

 

相手の索敵ではなく徹底した捜索によって見つかるならば計画の範疇だ。

その時点で潰し始めても良いし、こちらに気が付かなければ敵本隊が差し掛かっても良いだろう。もちろん簡単かつ安全であれば何の問題も無いのだが。

 

『目標クリア』

「よし。廃墟へ侵入する。ただし一本入った程度の場所は避けろ。相手にも知能はある。少々集結に遠くても、攻撃されなさそうな場所を選べ」

 状況の進行を命じると通信ではなくハンドサインが帰って来る。

それは人型戦車ならではの挙動であり普通の戦車には不可能な行動だ。これから各自が行うであろう隠蔽行動もまた、戦車には無理な事といえるだろうか。

 

「ターニャ、はい」

「マフィン? ……ありがとう。だが戦闘前にはいささか多いな。半分はお前にやろう」

 ビクトリアがくれたマフィンを分割。先に食べさせて毒見をさせる。

何しろあのお姫様が用意したものだ。注意しておくに越したことはない。

 

……まあ本当のことを言えば一切口にしない方が安心できる。

杞憂だと判っているからこそお茶を濁しているとも言えるが。

 

「甘いな。代用砂糖を奮発したのか?」

「ううん。お姫様が持って来た。カゴシマ? で採れるようになったんだって」

 そういえば幻獣が死ぬと自然が復活するという話があった。

最初は眉唾物だと考えていたが、感応能力で同調する生物兵器の類だと思えば、そのエネルギーが還元されるのも判らなくはない。

 

そこまで考えたところで、お姫様がこちらに付くことにした決定的な理由に思い至る。

 

(ミノタウルスが抱えているあの大木……どこから用意したのかと思えば。役立たずになった旧型を軒並み処分したな)

 中型幻獣が抱えなければならないほどの大木。

そのサイズならば確かに戦車砲や92mmライフルを防げるが、そんな樹が都合よく密集しているはずがない。

 

だが、役に立たない幻獣を処分して促成栽培させれば一応は何とかなるはずだ。

赤い雲を使って戦力を送れる数は限られているし、手元で処分すれば、そのエネルギーを新型幻獣に使えるとしたらどうだろう? 大木はそのリサイクル中に発生したから持って来たと考えればおかしくはない。

 

(役立たずと見れば味方を処分して兵器に変える王様か。見限りたくなるのも判る。ましてや人形を保って居られるのは極一部とあってはな)

 ユーリア姫に聞いた話だが、完全な人形は姫と従兄弟の皇帝くらいらしい。

公爵などの準王族にまだ居るかもしれないが、帝弟マランツォフとやらはあの御立派さまだという話だ。菌糸類が絡みついたナニカは御執心のお稚児さんだそうで、人間形ではあるが帝弟と共棲する哀れな従僕らしい。

 

『閣下。先遣隊がやってきます』

「どうした? 所定の行動では通信は避けるはずだったが?」

 偽装を施しながら作業していると、5121から通信が入った。

善行の声には緊張が入っており、当初の予定にはない危険さを感じさせる。

 

「その、チャリオットとでも言うべき物体を引きずっておりまして……」

戦車跨乗歩兵(タンクデサント)だと? まったくやってくれる……。いや、今の間に排除できることを喜ぶとしよう。射程に入ってしばらくしたら攻撃を掛けるぞ」

 どうもソリか何かをでっちあげて、それにゴブリンを乗せているらしい。

加えて移動を邪魔する物をケンタウルスがレーザーで薙ぎ払う為、浅く隠れた者は運が悪いと攻撃される可能性が出て来るらしい。離れさせたから一応は大丈夫だと思うが万が一、遠くまで移動しながら乱射されてはたまらない。

 

しかし……幻獣が短期間にここまでやってくるだと?

 

(……ナニカ、光っているのが見えるな。まさかアレか?)

 気になった私は騎魂号に付属している望遠カメラを起動させた。

初期機体は全機がレーダーを使ってるので本来は不要だが、この機体は電子戦用なので備えているのだ。

 

するとケンタウルスの中に、煌くナニカを画像として捉えることに成功した。

 

「お姫様に繋いでくれ。あの光の正体は感応型幻獣か?」

「少し待ってください。加藤さん……」

 善行に通話を繋ぐと即座に通信が通達される。

やはり指揮車両の機能は色々備えていて羨ましい。私も後方から指揮だけする身分になりたいものだ。

 

「こちらでも確認したわ。できれば同胞を殺してほしくないけれど、無理であることは承知しています」

「皆まで言わずとも結構。これが後の生存につながるとお考えいただきたい」

 同胞を売るようで心苦しいのだろうが、教えてもらわないと連れて来た意味がない。

そして奴らを始末すればするほど、指揮権を回復して彼女自身の兵を取り戻し、同胞を生かし易くなるはずだ。だからこそ彼女も躊躇わなかったに違いない。

 

「……エリカ。何か褒美を考えておけ。すまんがお前たちを危険に晒す。何でもは無理だができるだけ期待には答えよう」

「はっ! 期待しております」

 少し思いついたことがあるので、先にエリカに謝っておいた。

地形と相手の集団を確認しながら、安全地帯であるはずの兵員輸送車両を置いた地点を計算に入れる。

 

「ユーリア姫、私が考えていることが判りますか?」

「判ります。……しかしこの土壇場で試そうなどとは信じられない胆力ですね。ですが私にとっても好都合! おやりなさい!」

 さすがは一軍の将帥。

私が考えていることをお見通しとは怖い限りだ。しかし、これが可能であれば、本命での確実性が大きく変動する。その為にならば多少の無茶は笑って渡るべきだろう。

 

「全機、撤退戦を敢行する! 所定の行動に移れ!」

「「はっ!」」

 

 チェスと違って将棋だけが行えるルールというのを知っているだろうか?

そして日本発祥のオセロというゲームの大きな特徴はどうだろうか? どちらにも共通する事はただ一つ。

 

ソレを成し遂げれば戦闘はとても楽になる。

だがソレを敵のボスに気が付かれてはならない。だからこそ、危険を覚悟でギリギリまで相手を削っていく必要があるのだ。

 

「殿軍には私が立ってレーザーを極力無力化する! お前たちはチャリオットを優先して潰しながら撤退しておけ!」

 通信を送りながら対レーザー装備を起動。

本命ではジャミングに切り替えるつもりだが、現時点ではこちらなので何とかなるだろう。

 

そして相手が用意した対策は、ゴブリンを連れて偵察を兼ねて攻撃させるというモノ。だからこそ他の機体には牽引しているソリを優先させた。

 

「滝川! お前は一足先に下がって狙撃用意。感応型幻獣だけを狙い撃て!」

「はっはい! みんなすまねえ!」

「良い! そなたが潰せば我らも楽になる」

 ジャイアントアサルトでチャリオットを潰しつつ画像を転送しておいた。

今頃は簡易的な物に置き換わりつつも、レーダーとリンクし始めている頃だろう。やはり浮かんでいる光源を潰すのと、データで敵と認識した画像を潰すのでは難易度が異なる物だ。

 

「芝村。敵は明らかにミサイルによる一斉攻撃を避けている。無理に数を潰そうとせずに、目標を絞れ!」

「任せよ。良い感じに削っておく」

 今後を考えるならば、むしろ全滅はマズイ。

お姫様が隠れた位置まで漸減させながら誘導し、残り数匹……いや数騎と言うべき数に削っておきたい。

 

「竜師! その……私はどうしましょうか? 何を倒したら良いのでしょう?」

「それが言えるだけ成長したな。壬生屋、お前は撤退する味方機を捕捉したケンタウルスを潰せ! ただし両刀は避け、片方はスモーク弾を用意。味方のエスコートに専念せよ!」

「はい!」

 あの壬生屋が指示を尋ねて来るとは感無量だ。

もし先月この事を聞いたら首を傾げるか偽物かを疑っていただろう。そのくらいには成長している。

 

ジグザグで回避している分だけこちらの撤退速度は遅い。

敵は直線で飛び込んで来るのでペースは向こうが上なので、壬生屋が斬り込み、あるいはスモーク弾で守ってくれれば安全に下がれるはずだ。

 

『……』

『っ!』

 このまま行けば無事に敵だけを潰して下がれる……それは甘い考えだったかもしれない。

相手は相手で色々と考えていたようだ。本当にお前らは幻獣なのかと言いたくなるが、元は人間だと知って居ればこんなものなのだろうと思うしかない。

 

「数騎が一塊に? しまった。いかん!」

『ウーラン! ツァール!!』

 敵はただのケンタウルスではなく精鋭部隊である。

親衛部隊なのか精鋭である尖兵なのかは知らないが、統率の取れた行動を示している。

 

数騎がまとまることで後ろの仲間を射撃から守りつつ、レーザーの集中攻撃でスモーク弾程度では止められなくなって来た。こちらも撤退戦を敢行しているため、スモークの中に留まれないのも大きい。

 

「くそっ。レーザーの統制射撃にバースト射撃だと?まったく洒落にならんぞ!」

 ケンタウルスは体の各部にレーザーを持っているが、それは散発的な物だった。

だが数騎単位でそれを一点に絞って連続で放ってくる。私の機体は対レーザー装備が手元で発生するタイプだから良いが、これがスモークに頼っている他の機体だったら危なかった。命令一つで誰か死んでいた可能性はあるし、運が悪ければ全滅もあり得たかもしれない。

 

最初から撤退を選んでおり、対レーザーが至近こそ強い仕様であるからこそ助かった。

以前はちょっと不便だなとか思った事もあったが、ごめんなさい。ドク、貴方はやはり偉大な博士です。

 

(密集はさせず、バラバラにはせず。これほどの命令だと相当疲労して居そうなものだが。やはり感応型は全て倒さないと駄目か)

 しかし……この先、クソ袋級の幻獣が居たらこの位は無いと不安ではあるな。

それほどの攻撃を叩き込めるだけの最低数だけを集め、ミサイルの標的になるような数にはしない。かなり面倒な命令の筈だが、敵はそれをやり遂げている。親衛なり精鋭部隊だからこそだろう。

 

「ラチがあかん! 芝村、適当な数を吹っ飛ばして追撃を一時中断させろ。その間に他の機体を逃がす。壬生屋は芝村機がリロードするまでの時間を稼げ!」

「了解しました!」

「行動に移る」

 こちらは回避行動しながらなので、追撃部隊を倒せないし振り切れない。

徐々に減ってはいるが、距離も詰められているのでかなり危険だ。ここは効率が悪いことを承知で、仕切り直すしかないだろう。

 

「滝川。今は敵を捨てて回り込め。ミサイルの爆風で見え難くなるし、おそらく突っ込んで来るぞ」

「ひっひえ……了解です」

 私はあえて前に出て、突っ込んで来るだろうケンタウルスとすれ違う事にした。

ミサイルを撃ったら弾薬を補充するまで撃てないから、三十秒くらいは集団突撃を受けるだろう。そのままの移動経路で下がるのは危険過ぎる。

 

「舞、到着したよ!」

「見えている。……発射、次の行動に……移っているな」

 舞はあえて前列ではなく中列を狙ったようだ。

数を狙っていないという事は……おそらく感応型幻獣が数体居たのだろう。これでかなり目的を達したと信じたい。

 

『ウーラン!』

「くそっ! こいつ……隊長騎か!」

 すれ違いざまに漆黒のケンタウルスが飛び込んで来る!

斧槍を咄嗟にジャイアントアサルトで受け止めると、放り出しながら超硬度大太刀を引き抜いた。

 

もつれ込みながら必死で足を動かし、射線から逃れながら移動経路を確認する。ここまで来てお姫様を巻き込んで居たり、逆に離れ過ぎていては意味がない。

 

果たして、場所は所定の位置からさほど離れていなかった。

 

「よし! 貴様にだけは付いてきてもらうぞ! 援護は要らんから残りの感応型に専念しろ!」

 再び飛び込んで来る漆黒のケンタウルス。

私は防御行動を取らせながら所定位置に距離を狭めていく。壬生屋は接近しようとする他のケンタウルスを倒し、滝川と舞は感応型を潰している頃だろう。

 

『こちらユーリア。制御権奪取に成功したというべきかしら?』

「目的は達した! 芝村、リロードが済み次第に後続を潰せ! 壬生屋も合わせてスモークを撃ち込め! 合わせて完全撤退する!」

 至近距離に居た漆黒のケンタウルスは、気が付けば斧槍を手放していた。

レーザーを放つ眼の幾つかは閉じ、戦闘する意思はないと言わんばかりの仕草で、物陰に移動し始めたのだ。そこはユーリア姫たちが脱出しているはずの方向だった。

 

敵の駒を味方として奪う作戦は、ここに成功したのだった。

そして伏兵として備えていた直衛部隊を潰した事で、本命の襲撃は劇的にやり易くなったはずである。




 という訳で迎撃部隊を潰す為だけに偽装襲撃しました。
本丸強襲としては明らかに失敗なのですが、予定した陽動作戦なので問題ない感じ。

●機材の問題
 前回、降伏がうやむやになってなし崩し的に同盟関係になった。
伊401系が回収されてなかったり、SLBMがないとか色々良い事もあると書きました。
ですが悪いこともあるので、この世界では戦後の合衆国からの支援がありません。
他の国へ援助という名目で大量生産を進めはしたし、高度成長期はあったでしょう。
しかし、クオリティを伴った生産体制は存在してません。
士魂号のレーダーも後期型には足りなくて、カメラを搭載して何とかする始末。

スーファミとかプレステって演算コンピューターの代わりになるじゃん!
というのはありえない話で、PC88も98もあるかどうか怪しいレベル。

●お姫様とお菓子
 皇国の守護者を読むとユーリア姫は作れるそうです。
榊ガンパレで見た覚えがないので、カーミラ姫は無理かな?
中村君が料理上手なのは勿論公式。
岩田君と睨み合ってナニカを奪い合って居そうなのは(そんなにソックスが好きか?!)勘違いではないです。

●チャリオットとか統制射撃とか
 全部セプテントリオンとかいう連中が悪いんです。
幻獣を何処まで制御できるかという実験をやってる感じ。
そんなことをやったら人類が予想以上に壊滅して問題が出るので今まではしなかった。
でも新城大佐とターニャが活躍して均衡保ってるから、やったね実験できるよ!
という感じでしょうかね。
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