ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

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幻獣王暗殺戦:後編

 アンドレイという男の名前はピンと来なかったが、帝弟は傀儡と聞いて妙に納得できた。

重大な決断を行ったり重要な部隊を姫や部下に任せるといった王侯らしい判断力と戦場で見る奇妙な怯懦。貪欲に知識を吸収し無数の方策を打って来る。

 

それら個々の能力はともかく、バランスに欠いているな……とは思っていたのだ。何の事はない主人を傀儡化した側用人の仕業だと思えばその奇妙なバランスも自然と腑に落ちた。

 

(しかし……危い所だったな。あっちを本体と見て全力を使い果たしていたら危なかったぞ)

 確かに帝弟の本体なのだろうが、意識主体はお稚児さんの方だという。

傀儡に攻撃を仕掛けてもパニックにならないだろうし、並列思考をさせて負担を掛けようとしても二人居るのでは意味がない。帝弟が耐久力と回復力がある外身であるならば、列車砲で削り続けても意味がない。

 

ましてや片方はようやく外に出れて学習意欲満載なのである。

こちらは司令塔が複数あるのだ、人間の強みだと驕って居たら……。次があるさと引いていたら何が起きていたか考えたくもない。恥ずかしさに身が悶えるだけで済めば良いだろう。帝弟の体を犠牲に大掛かりなフェイントを覚えていたかもしれないのだ。

 

『何が寵愛だ! 家を再興する為に売りながら、偶に実家に戻れば男妾よと蔑まれる。命賭けであっても自由に成れると思ったのに、こいつの付属物でしかない! 男として……』

(……何か馬鹿な事を言ってるな)

 気が付けばアンドレイとやらは妹姫に何やら言葉を並べていた。

まったく馬鹿馬鹿しい。要するにコイツはせっかく帝弟を誑かして安全な後方ととてつもない権力、そして無敵の軍団を手に入れたというのに不満らしい。何が嬉しくてその状態で前線に出てくるのやら。

 

「だからどうした」

『何?』

「だからどうしたと言っているんだ!!」

『何だとおォォ!!』

 自分の才能を試す? 自分の価値を世に知らしめる?

まったく馬鹿馬鹿しくて嫌に成って来る。そんな事は性別を変更され、今までと違う常識の世界に放り込まれ、試練だとか言われて死にそうな目にあわされ……。たびたび洗脳されながら戦い抜いて往生したと思ったら、また一から戦場でやり直させられてから言って欲しいものだ。

 

しかも魔法がある世界の次はロボットにモンスターだと!? ふざけるのもいい加減にしろと言ってやりたい。

 

「囀るな。戦場においてお前に言えることは、これ以上生かしておくことは出来んと言う厄介な信頼だけだ。面倒事を増やす気はない。敵としてここで死ね」

『……フフフ。ハハハハ!! 敵か!』

 情緒不安定な事にアンドレイとやらは突如笑い出した。

狂ったように笑い転げ、男にしては美しい裸身で笑い転げる。その時、胸元の一部に帝弟らしき顔が人面疽の様に張り付いているのが見えた。

 

そして髪の毛を振り乱し、人面疽を押さえつけながらこちらに振り向いた。

それは帝弟の意識を押さえつける為か、単に思いの丈を現した仕草なのか。

 

『良いだろう!  みなまとめて殺し尽くしてやる!!』

「能書きは良い。掛かって来い!」

 ここまで無慈悲に挑発したのには訳がある。

もちろん恵まれた状態に背を向けて前線に出てきたことにムカ付いたからだが(掘られたことにだけは同情しよう)、奴が巨体を使いこなすのであれば非常に危険だからだ。

 

それは攻撃力もさることながら、地下に潜って逃走されてはかなわない。

 

「ごめんなさい……。本当は……私たちがやらなければ……いけないのに」

「戦うのが軍人の役目、お気になさるな。そして今の貴女の役目は、無事に帰還してユーリア姫に平和条約の調印をしていただくことです」

 どうやら姫の方はアンドレイとかいう奴に後ろめたさを感じているらしい。

この様子だと帝弟の関心をお稚児さん一人に押し付けて、自分たちは好き勝手やってたようなので仕方あるまい。しかし私には関係ないので政府からお願いされていることを告げておく。

 

「総員傾注! 所詮はこの方面の幻獣を束ねるだけだろうが、奴こそが戦いの元凶だと思え!」

「「はっ!」」

 改めて言うまでもないことだが、全員に喝を入れる意味でも目的の再確認だ。

既に最低の目標を達してはいるが腑抜けられては困る。先ほどの会話を聞いていた者も居るかもしれんしな。

 

敵に事情があろうとも眉一つ動かさずに戦うのが兵士というモノだ。しかし学兵であるならば大半の者は覚悟が出来ていないと見るべきだろう。奴と戦いながらなのが面倒だが、妹姫とジャイアントアサルトを交換しながら指示を追加していく。

 

「カーミラ姫の避難が最優先! その上で感応型が残っているならば対処しておけ!」

「はい! 二機……いえ三機ほど残していきます!」

 みほ(・・)は即座に滝川を含むライフル持ちを残した。

あちこちの敵を潰して回る時はライフルの一斉射撃で一体ずつ仕留めて行くことが多いが、今回は連戦前提なので流石にライフル持ちはあまり多くない。まあこの程度でも奴を狙って行けるだけマシだろう。

 

●黒き式神の城

 今もまたレーザーの弾幕を対レーザー装備でしのいでいるのだが、衝撃の全てを消し去れないのか、それとも装備の限界が近づいているのかギシギシ言っている。援護が無ければ倒しきれないかもしれない。

 

「壬生屋さん! 芝村さん!」

「私達のコレ使ってください」

「ありがとうございます! 装甲パージ、交換します!」

 その際に展開式装甲を壬生屋に譲り渡していく者も居る。

一枚ずつしか持たせていなかったが、突っ込んでない分だけ綺麗だ。大して壬生屋の方は既にボロボロで、こうやって装備を融通し合えるところは人型戦車の良い部分だろう。

 

そして重要なのは壬生屋に渡すシールドの裏側で……ジャベリン・ミサイルの弾倉を渡していく行為だ。既に二発以上使っているので今更な気がするが、相手を出し抜くにも、倒すにもミサイルは幾らあっても足りない。

 

「お前たちはあくまで狙撃に徹して居ろ。当たらずとも良い、奴の集中力を削るだけで意味がある。それにまだ何か送り込まれて来るかもしれんからな」

「了解っす!」

「……了解しました!」

 弾倉の受け渡しをやってる中、サインを出しつつ通信を入れた。

滝川ともう一機の最初からライフル主体の機体にはそのままの意味だが、火力小隊の突撃仕様には意味が異なって聞こえるはずだ。こいつにはまだミサイルを撃たせてないので、ライフルによる狙撃することで『ミサイルは温存して居ろ』という意味に聞こえると思う。

 

「竜師。残りの一発は使わぬのか?」

「ダメだ。おそらくは対処される」

 奴の攻撃パターンはあまり変わっていない。

レーザーや伸ばしてくる触手などより積極的になり、偶にゴルゴーンを拾い上げて体に乗せていたりする。だがワンパターン過ぎるのだ。

 

戦いはゲームの様に固定された能力や戦術のみではない。奴とて焦るだろうし対処もしよう。なのに動きが変わらないのはおかしい。まるで奴こそ時間切れを待ち、あるいは策を講じるために時間を欲しているかのように。

 

(何を狙っている? 装備や機体の消耗狙い? そんなつまらないことなど狙いはすまい)

 こちらの攻撃への防御とおそらくは通信傍受。

少なくとものこの程度の事はしているだろう。だから既に察知されているだろう感応型や奴自身への狙撃は口にしたが、突撃仕様に関しては一言もしゃべって居ない。

 

壬生屋の斬撃に使っている槍衾の防御も、ミサイルを叩き落とせる物だと想定していた方が良い。それでこちらの攻めは大半が潰せる。

 

(だが……それで稼げるのは時間だけだ。何だ? 何を奴は並行して作業して……待てよ。どうして奴は動いていない?)

 奴は巨体なのでこちらを射程に入れるのは簡単だ。

だが中心部は殆ど動いていないので、援護に徹している滝川達はあまり動いていない。もしあいつらを先に攻撃しようと……できれば舞の突撃仕様も同時に潰そうとしていたらどうだろう?

 

感応型を介さずに幻獣へ直接指示を出しているとか、防ぎきれないほどの強力なレーザーを放つべきチャージ中なのか? その事に気が付いた瞬間、咄嗟に電子戦仕様の機能の内エネルギー反応を見る計器を動かした。

 

「……っこの反応は!? 地下? 地下茎か! レーザーが足元から来るぞ! 避けろ!」

『フハハハ! 良くご存じだ!』

 反応は僅かに下から出ている。

しかしこれが攻撃ならばもっと大きな反応があっても良いはずだ。ゆえに地を這うどころではなく、地下から漏れ出ていたと考えれば辻褄が合う。

 

私が警告を発し足を止めていた狙撃組も散開を始めた時……大地が鳴動を始めた。明らかに端末が出てくるというレベルではない。

 

『我は偉大なる黒の黒に誓う。それは未来を売買する契約の始まり。世界の侵略者たる、黒き雪泥の我は新しき律令を此処に敷く。完成せよ、第一段階絶技!』

 奴は片手で己の胸元を抑えつけて天に握り拳を掲げる。

その仕草と共に帝弟の本体は半分が地下に埋没し、残り半分を宙を持ち上げた。その姿はやはり御立派様にしか見えない。先ほどまでが魔王マーラだとしたら、諏訪のミシャクジ様あたりになるのだろうか?

 

あるいは菌糸類が根に張り、砦の様に同根を増やし傘を開き始めるかの如くだ。

 

『さあ! 行くぞデグレチャフ! どちらが世界を担うに相応しいか戦いを始めよう!』

「私の名前を!? やはり……。だが要らぬおせっかいだ! 私は世界など担わずとも満足しているさ!」

 通信傍受かそれともスパイから聞いた情報か。

どちらであれ私の名前なんか出さないで欲しい。それよりも先ほどまでより危険な状態だ。宙を浮いてプランプランしている状態なので、容易く矛先が変化している。

 

「ライフル持ちは奴ではなく結束部を狙え! 上を狙うだけ無駄だ!」

「は、はい!」

 ジャイアントアサルトで狙うが半分も当たって居ない。

移動攻撃だから仕方が無いとは言え、この程度では心もとない。やはり回復力を持っているらしく瞬時に回復されてしまった。

 

問題なのは狙撃組に撃たせた結束部だ。根から持ち上げるために動かないのだが、三人分まとめて撃ってようやく傷が残る程度だ。ライフルであれならジャイアントアサルトなど無駄弾までしかない。

 

『ええい! うっとおしい! 我は先槍、新たなる世界の先槍。ただの人より現れて世界の尊厳を踏みにじる者なり。それが王者であれ民であるに関わらず、我は全てを過去にする! 完成せよ、第二段階絶技!』

「分裂した? いかん! お前ら、もっと下がれ!」

 回復するとはいえ激痛が走るのか、歯噛みしそうなほどの怒りに満ちた声で吠える。

奴が帝弟の顔……人面疽に爪を立てて引き裂くと、本体が枝分かれして……さながらヒドラか何かの様に鎌首をもたげ始めた。しかもその先には怪しき光が灯っているじゃないか。

 

慌てて遮蔽しに行くが、それで全てを止められたりはしない。膨大な熱量の一部を減らしただけで無数のレーザーが後方を貫く。

 

「うわっ!? 竜師! 少し喰らいました!」

「申し訳ありません! こちら中破!」

「……た、助け。助けてください竜師! 扉が、扉が開かないんです!」

 咄嗟に反応した滝川だけが何とか無事だった。

残り二機は掠っただけでダメージを喰らい、あるいは機体を貫通されて大破している。生きているのは単に体が割けてサイズが小さくなっていたのと、後方に居た分だけ間合いが遠かっただけだ。というか後方に居てあれなのだから私達が直撃したら一発で危険水域だろう。

 

「ヒッ!? 何かが地下から……助けて! 私、こんな所で死にたくない! こんなのに殺されるなんて……」

「もういい! お前はそいつを連れて下がれ! 扉が開かなければライフルで固定している部分を吹っ飛ばせ!」

「は、はい!」

 地下から回り込んだ触手の一部が絡みついたのだろう。

半狂乱で通信し始めたので、上位権限でシャットアウト。伸びている触手部分に太刀を入れ、後は中破している機体に任せた。

 

せっかく奴の近くまで辿りついたのに、役立たずのせいで後戻りだ。以前ならば見捨てていただろうになんたる体たらく!

 

 鎌首はヒドラの様に枝分かれし、地下は地下で根を這って悪さしている。

あの状態だとかなり素早く、しかも距離も伸びるようだ。もはや奴の全身が槍であり、ちょっとした砲弾と言えなくもない。

 

だが砦の様だと言った印象と、現在の印象はまるで違う。

むしろ最初よりも倒し易いような気もするが……それは枝分かれした部分が細いからだ。だが直接攻撃力はあがり、レーザーを吐く部分も増えてきている。流石にゼロ距離射撃をされたら対レーザー装備でもダメだろう。

 

「なるほど。防御力よりも攻撃力にシフトした分けか。しかも危険に成るのは帝弟だけ、自分は高速移動と回復力で前よりも生存性が上がっているとは。……随分と狡賢いじゃないか」

『っ! 君たちに合わせてあげたとでも言ってもらおうか!』

 数本の鎌首の中で、アンドレイが居るのは一本きり。

しかも奴が再生力を使って他の部位に移動できないとは限らない。もし地下茎にも移動できるなら面倒なことになるだろう。やはり奴を白兵戦で倒した後に、ミサイルで焼き払うくらいの方が良いだろう。

 

「仕方ない。斬り込むぞ! 壬生屋、途中でシールドは棄てろ! 邪魔にしかならん! 我ら三人の誰かが奴の本体を突く!」

「はい!」

「判った」

 ここから先は壬生屋もまた本命だ。私が先頭に立ってレーザーに対処しつつ白兵戦を挑む。

ならば白兵戦能力の差は歴然としているし、バランス型の私よりも壬生屋の方が戦闘力が期待できるだろう。それにここからは電子戦仕様には何の意味もない。太刀を本命にジャイアントアサルトは牽制にしか使えないしな。

 

途中までは舞の方も同じだが、やはり考えることは同じなので考察を始めているのだろう。どうやったら奴を仕留められるか、どうミサイルを使えば焼き払えるかだ。

 

「……だそうだ。奴の根元まで接近できるか? 先ほどのライフルは回復されはしたが有効であった。太刀ならば切り裂けるやもしれん」

「ボクらは根元を『斬り』に行くってことだよね? 何とかしてみるよ」

 通信傍受を考慮して舞の方はあくまで斬撃主体と偽っている。

どうやら根本の穴から地下を伝って焼き払うつもりらしい。ならば実際に胴を薙ぐのは我々がやった方がいいだろう。その時にアンドレイの仮初の本体を狙うつもりで行こう。もし移動しないならばそれで倒せるしな。

 

私はここでランダム機動を止めて、あえて直進コースを取る。レーザーに関しては装備に頼り切り、直撃だけを避けるつもりだ。もちろんそれだけで済ませるつもりはない。

 

「壬生屋! シールドを切り離したらありったけスモークを撒け! ここが正念場だ! 下がっている暇などないぞ!」

「判りました。残り全部行きます!」

 対レーザー装備に加えてスモーク弾の重ね掛け……。

ではなく、これはすり足や歩行に寄る僅かな移動を覆い隠す為だ。直撃を避けるためには本当の意味で真っ直ぐなど進めはしない。そして助走段階からランダム機動を止めたのは、後ろの二人にもそれを知らせるためだ。

 

僅かに位置をずらしながら移動し、私・壬生屋・舞の順で少しずつダメージを軽減する。この際、無傷で帰還するのは諦めよう。命だけあれば良いというか、最悪でも舞の機体が奴の根元にまで行けばよい。

 

『策なし! ここが正念場とは……良いな! 決戦とはこうではないと』

 奴は更なる力を溜める為、鎌首に蠕動運動をさせ始めた。

蛇の様にうねり、地下茎に上体を支えさせて力を一点に絞っているのだろう。

 

……しまったやつも白兵戦を選んだか。盾を捨てさせるんじゃなかった……とか思いつつ、誘導に乗ったことにほくそ笑む。

 

(馬鹿め。人生経験が無い分だけ挑発に乗り易いな。これなら奴の動きを特定できる。最悪の場合、機体で拘束させて斬撃を浴びせれば良い)

 脱出装置のボタンを確認しつつ、プログラム作成を起動した。

しがみついて斬撃。あるいは銃口を押し付けて誘爆。そんな命令をインストールさせておいて、最終判断だけは私が握る。後は脱出装置のスイッチと一緒に押せばいい。

 

『大地を埋めるのは我なり! 我は黒き雪泥、世界に刻み付ける軍靴の響き! 完成せよ、最終段階絶技!』

「何!? まさかこれは!」

 奴の気配が急激に変わった。

完全なる勝利を諦め、勝利と後の生存のために今を捨てる最後の覚悟を決めた気配。

 

私もやったことがある。私もやられたことがある。

 

「いかん! 奴め自爆突撃を……」

『ハーハッハ! もう遅い! 私は……私は、アンドレイ・カミンスキィ。全てを蹂躙するただ一人の男!』

 膨れ上がった気配は訥々に身近に感じた。

対レーザー装備など意味もない。ただの突撃であり、エネルギーをまとった自爆特攻。当たれば粉砕、掠っても周囲ごと爆砕するつもりなのだ。

 

『逝くぞ今こそが戦果の収穫祭(MATURIモード)だ!』

「っ! 竜師! 下がってください!」

「馬鹿者! お前の方が攻撃力が高いのに……」

 ここで壬生屋が勝手に割り込んで来る。

最低限の回避で留めようとする私の機体に、壬生屋の重装甲が割り込んで盾になった。

 

いや、正確に言えば斬撃も掛けているのか?

だが、それは相打ちにしかならない。アンドレイの本体が飛んでくるのは最後の最後だろう。あるいは最後まで飛ばさずに本体の力を吸い上げて別の攻撃を仕掛けるかもしれないのに……。

 

「ちっ! ……このままでは火力が足りんか。仕方ない……ビクトリア! 少し我慢しろ!」

「ん? ほえ?」

 生体コンピューターに再計算させるがアンドレイを倒しきれないと出た。

このままでは攻撃力が足りないので、仮にアンドレイが博打に出るとしても中断する可能性が高いという。何しろ奴は本来、巨体の中に隠れているはずの存在なのだ。我々を全滅させる必要が無くなれば、回復するまで逃げ込んで籠城するだけの話。

 

素早くビクトリアのシートを解除しながら、太刀で重装甲のハッチに対して斬撃を浴びせる。次の攻撃が来ない内に壬生屋を強引に引っぺがした。

 

「りゅ、竜師!? 私の事は後回しに……」

「それでは勝てん! ……もう一度だけ、悪夢を見るとしよう」

「ターニャ! せーまーいー!」

 今までビクトリアが居た位置に壬生屋を据える。

本来ならばキャパシティオーバーだが、私もビクトリアも小さいので何とか入った。そして強引に壬生屋の意識を繋いで操縦権を押し付ける事にした。

 

真っ白になる意識。

だが以前と違って激情に流されたりはしない。倒すべき相手を必要だから倒すだけだ。

 

「……この一撃は。”編め”、”培”、”穂”を封ず」

 混濁した意識のまま、飛んでくる鎌首を斜めに切り上げる。

受け流しと攻撃を兼ねた一撃により、斜め後ろが吹っ飛んだ。続けざまに重装甲の太刀を拾い上げ……。

 

「この一撃は”射”、”炉”、”波”を封ず!」

 超硬度大太刀を本体に投げつけ、飛んで来ようとするのとは別の鎌首に守らせた。

その間に造った隙で強引に接近し、わざとらしい移動で次弾を誘引。舞をフリーにしながら飛び込んでいく。もちろん狙うのはアンドレイの本体だ。

 

『来るか! 我は問う、黒に並び立つのは誰か? 黒と肩を並べるのは誰か? それは青! それは青! なれば我は黒の兄弟たる青に要請する。我は北辰の偽勅よりて天に弓を引く! 完成せよ……』

「……我は守る人の夢」

 アンドレイは鎌首一本を捨ててレーザーを誘爆させた。

強烈なレーザーは自らの体を焼きながら剣の様に伸びる。私は対レーザーではなく、攻撃予測でそれを躱した。当たる位置に当たるタイミングで居なければそれで無効化できる。

 

「我は惜しむその心」

 太刀で鎌首を切り裂き、あるいはジャイアントガトリングをねじ込んだ。

敵本体へと飛び込む舞の機体を庇うべく、ダイナミックなスイングで鎌首の特攻を受けて、そのまま手を離した。無手になるが機体ごと爆発するよりはマシだ。

 

そして腕がボロボロになったと理解したからではなく、起き得るべき事態が訪れたことでその場を飛び込んだ。

 

「総員! 奴に向けて攻撃を放て! 動けるなら何でも使え! オール・ウエポンズ・フリー! オールハンデット・ガンパレード!」

 飛びのくと同時に奴の根元が大爆発を起こした。

舞がミサイルを使ったからだが、突撃仕様が少し遅れて出て来る。流石に敵味方識別が機能するという状態ではなく、巻き込まれてボロボロになっているが仕方あるまい。

 

「何とかなったのかな?」

「少なくとも帝弟とやらは倒したのであろう? 問題あるまい」

「そうだな。アンドレイが生きていても……もう優先命令権はないだろう。後は他の連中に任せるとするさ」

 目先の勝負にこだわる様に挑発はした。

人生経験の少ないアンドレイであれば、真っ向勝負に出たはずだ。少なくとも対レーザーやら煙幕弾の中で、お互いに消耗するような事態は奴ととしても避けたいはずだ。なにしろ列車砲が弾薬を入れ替えているかもしれないのだから。

 

(問題は……最初から逃げるためのフリだった場合なのだが……。まあいい。それは姫君たちのするべき権力闘争だ)

 こうして我々はアンドレイと帝弟を倒した。

戻る途中、幻獣が鹿児島まで引いていくという良いニュースを聞きながら熊本市に帰還する。

 

同時に発表された『フランソワーズ・茜博士の再現実験に成功した』という訳の判らないニュースが、今後に影響を与えるなどと知るよしもなかった




 という訳で幻獣との戦いはおおむね終わりです。
途中から本来の外伝タイトルである『黒き式神の城』が入ってますがお気になさらず。
普通にガンパレとして倒すつもりだったのですが、少し寂しいので別のネタメモから混ぜて拡大。
気が付いたら5000字が8000字オーバーに。

●アンドレイ
 暗殺編の序盤からちょこっと匂った程度の人物。
皇国の守護者においては、重要人物ではないが目立つ存在。
かなり悲惨な身の上だが……ターニャの中の人の方がTS・転生してる分酷い。
この話においては、『黒の雪泥』というオーマネームで自身の尊厳の為に戦う。
黒のオーマは他者に影響する強烈なアクであり、並び立つ男たち。武楽器は鍵矛

帝弟さま:基本形態は直立する御立派様
第一絶技:波状槌であり砦。攻撃する砦マーラー城塞。
第二絶技:防御を捨て、ヒドラのような俊敏な攻撃形態。なお先は鍵である
最終絶技:自爆特攻気味に突撃する最終形態。人呼んでMATURIモード

●茜博士
 真d寝たんですが、完全コピーで再生とその技術証明されたそうです。
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