ターニャのガンパレード【完】   作:ノイラーテム

45 / 56
外伝:裏街道と裏事情

 ターニャ・フォン・デグレチャフが姿を消した。

それは歴史の一ページに過ぎないが、周囲の反応は様々だった。驚く者に慌てる者を始めとして呆れる者も居れば笑う者も居る。

 

中にはみっともないと冷笑していたはずなのに、その後の動きに肝を冷やした者も居た。

 

「見失っただと? 私を此処まで呼びつけておいてか?」

「はっ。はい。福岡県に入った所までは掴まえていると芝村機関からの協力者も申しております。しかしそこでプッツリと消息が途切れてしまい追えなくなったと」

 ターニャを追う部隊を率いる守原定康は珍しく声を荒げた。

普段は貴公子らしく冷笑を浮かべて何もかもを侮蔑したような顔をしているのに、今日に限っては怒りに震えている。

 

報告した兵士は驚くどころか怯えそうになった。何しろこの男の言葉一つで最前線に飛ばされかねないのだ。似たような例で佐賀で学兵の一部が死んだ背州公に睨まれて、最前線に飛ばされた記憶は新しい。

 

「逃げ惑っているのではないのか? だとしたら狙いは何だ? 報告書を持ってこい! 地図もだ!」

「はっ!」

 定康は懐から洒落た万年筆を取り出すと乱暴に地図を奪った。

そして報告書に記載された目撃例の日時を記載していく。そしてその間隔に驚愕するほかなかった。

 

「動きに一切の無駄がない。足手まといを連れているんだぞ? くそっ、本土に渡る気か。ならば狙いは……」

 行方を晦ましたその日に熊本県から抜け出している。

それどころか佐賀県を最速で潜り抜け、気が付いたら福岡県の県境で行方不明だ。その行軍速度はあまりにも早い。

 

まるで躊躇というモノが感じられず、明らかに目標を持った動きであった。

 

「叔父上か! 最初からこの機会を狙っていたな!」

 定康から見たターニャ逆転の方法とは、今回の事件を引き越した守原英康の命に他ならない。

彼は病弱な守原の当主に変わって軍閥を率いる身分であり、あくまで代理人に過ぎないのだ。しかも今回の件は拘束を実行しながら並行して強引に廟堂で罪をでっち上げ、逃げ出させることでソレを追認させるという手段を取っている。もし英康が暗殺でもされれば政治バランスが崩れて逆転されかねないのだ。

 

「焦る必要はないのではないですか? 所詮は逃亡犯が数名。新城大佐や5121の動向さえ押さえて居れば何とでもなるかと」

「狩谷! お前は陰謀の当事者ではないからそう言えるのだ!」

 不意に声をかけた狩谷夏樹に定康は激高しそうになった。

しかし正しい指摘であり、『代行殿』から借りている大事な重要な戦力でもある。罵倒し殴り倒すという訳にもいかない。ターニャが竜師時代に肝入りで造った整備センターの所長でありながら、いつのまにか代行がダブルスパイに仕立て上げたというから猶更だ。定康をして代行へ不義理を働くわけにはいかない。

 

「それは失礼しました。しかし陰謀ですか? 聞かない方が良いのでしたら何も聞かなかった事にしますが」

「戻れない所まで首を踏み込む気なら聞かせてやるぞ。まあお前はそこで止めておけ」

 意外にも定康は狩谷に配慮してやった。

普段の酔狂じみた彼ならば、一蓮托生にして人生を台無しにしてやるのも一興だと考えただろう。だが狩谷は車椅子ゆえにこれまで戦えなかった。可哀そう……ではなく戦う機会すら奪われた同胞という意味で、定康は奇妙な友誼を狩谷に感じていたのだ。

 

「だが今のタイミングで叔父上を殺されるのは困るな。お国が再編できるならば別に守原家がどうなろうと知ったことではないが、せっかく手に入れた『私の戦い』がこんな所で終わってしまう」

 若いころの定康は武門の長子として立派に生きて死ぬつもりだった。

叔父が軍閥を動かしているのだから自分など必要ない。お国の為に生き、兵たちと戦場で笑って泣いて共に死ぬつもりだったのだ。もっとも仮にも神君家康公から代々に『康』の字を許された三河閥の惣領息子が、そんな事を許されるはずもない。死ぬ機会を奪われて、訓練を共にした兵士は大陸であえなく死んだという。きっと自分の事を恨んでいるとすら思った。

 

だからこそ定康は、今回の事件を自分の戦だと思っている。

軍閥の惣領息子として陰謀に生き、芝村を始めとして外つ国の勢力に影響され過ぎた軍部を改革する為だ。もっとも守原家もまた外つ国の力を借りてしまったので粛清対処にするつもりだった。

 

(まだだ。いずれ切るにしても叔父上はまだ必要だ。特に合衆国の連中を必要なだけ動かす為には)

 今回の件は幻獣に近づき過ぎた事と、赤字国債の件で合衆国の横槍を使った。

この件をゴリ押しするにあたって、合衆国からの大使を引き入れ幻獣と組む気なのかと言わせた訳だ。より正しくは大使には大統領以外に仕える『本当の主人(幻獣王の一柱)』がおり、その依頼を利用してターニャとユーリア姫たちのパイプを遮断したかったのも大きな理由だった。

 

おかげで話を持って来た駒城閥の佐脇少佐は狂人扱いで幽閉、駒城家の発言権は著しく低下。その件に関しては非常に上手くいったといえるだろう。

 

(こうなっては叔父上に力を集め過ぎたな。合議制では時間を浪費する。トップ・ダウンで動くためとはいえ名目上の指導者を欠くわけにはいかん)

 陰謀には実績からくる名声が必要だ。そして指導者は一人の方が力強く見える。

周囲から力を集めるという意味でも、糾弾して一気に処罰するという意味でも対象は集中している方が良い。だが、それがここに来てターニャが逆転する為の目標になってしまっているのだ。

 

大使との密約は英康が個人的な付き合いの中に隠れて結んでおり、その死が何もかも御和算にしかねなかったのだ。

 

最終的には叔父の英康ですら、外国の力を借りた事で処断するつもりだったのだ。ゆえに、こんな所で死なれては困るが……、かといって守るために三河以東に戻って家に連れ戻されるのも御免だった。

 

「そうだな。新城たちを抑えておく事に意味はあるか。空々しくとも構わん。デグレチャフを捉えるために協力を要請しろ。その間に我々は門司を固める。関門トンネルの候補地を忘れるなよ」

「はっ!」

 定康は監視の為だけに新城や二つの戦闘団に人員を派遣。

その動きを拘束しつつ山口に向かったのである。

 

その話を含む一連の事情を聴いたとある男は暫し考えた後、不景気な顔で一言呟いた。

 

「気に入らないな」

「何が不満なの? 事態を打開するという意味でも権力を手にする意味でもここは即座に動くべきでしょうに」

 新城直衛は最高級の細巻きを安物の紙煙草の様に握り潰した。

その浪費だけが彼の感情を立場関係なく示してくれる。付き合っていられないと癇癪を起したいのだが、生憎と情人関係に引きずり込まれた女の前だ。素直に表したくないくらいのプライドは一人前に備えていた。

 

もっとも女の方はそんな小物じみた所も含めて気に入ってる。

何をするか良く判らない新城という男が、唯一そんな見栄を張るのは彼女の前だけだ。危険な戦場では容赦なく小便を漏らすし、追い込まれれば慌てたりもする。それでいて見事な策と大胆な運用という意味では、これほど外見が内心と一致していない男も珍しかった。要するに小心者が甘えるのは彼女の前だけなのだ。

 

「何もかもが。あらゆる流れが酷く気に入らない。決戦場に辿り着くのを邪魔してくれた部隊が共闘を申し出て来るのも、それがデグレチャフを捕まえようというのも、そもそもあいつを始末して世界が平和に成るとか胡散臭過ぎる。……いやそれらの情報が個別に耳に入るからというのもあるけれどね」

 紫煙を吐いて心情を吐露しながら新しい細巻きを取り出そうと箱に手を伸ばした。

まだ吸いたいなら先ほどのを潰さねば良いのにと思いつつ、女はそれを止めようとしない。彼女のような身分の者からみれば、その程度の品は路傍に積み上げられた物資と変わらない。将官に配る恩賞としてなら無駄にはしないが、自分や情人が思考をまとめるのであれば、その浪費を止めるような吝嗇を持たなかった。

 

代わりにこちらの世界で覚えた新しい遊びに手を染める。

新城が古い煙草から火を灯そうとするのを止めさせ、自分が咥えている細巻きを近づけてやる。仲の良い将兵が『火を貸せ』といって融通し合うのを、面白そうに見ていたのだ。話の通じる相棒との無駄話には、丁度良い潤滑油らしい。

 

「最後の話に関しては眉唾だけど、良くある話ではあるわね。ロッシナ家の始祖を知っていて? ただの盗賊上がりだったのよ。その辺りで最も強かった山賊海賊の成れの果てが、あちらで世界の一部を切り取った。王者を殺した者が王者になるの」

「だから帝弟マランツォを殺したデグレチャフが新しい王だと? 馬鹿馬鹿しい」

 話の筋はともかく、キーコードの条件としては判り易い話だ。

この情報を仕組んだ者が裏切者であるというならば、それだけ隠すことに慎重にもなるだろう。幻獣王を殺せる状況やそれを為し得る勇者が居ないならば、そもそも情報を開示する意味がない。次に大きな戦いが控えているなら猶更だ。

 

条件を託す相手が強者であり、その結果デグレチャフというのはまだ理解ができる内容だ。

しかし呪術めいて怪しげな方法を使って、あの『黒い月』が本当に閉じるかどうかは疑うべき余地が沢山あった。特に今の状況を造り出した英雄を殺すことになるのだ。陰謀であると疑うべきだろう。

 

「検証に関しては世の学者たちが幾らでも判断してくれるでしょう。でもね。今の状況の方が不自然なのは確かなのよ。疫病が流行った時に飛びついた怪しげな方法だったけれど、幻獣化そのものはある程度の時間が経過すれば解除できると国元で何度も確かめたもの」

「その理屈は判る。まあ理解はできるんです。僕も望んでああ成りたいとは思わない」

 そも幻獣化とは同調能力による一時的な変身あるいは同化なのだという。

生体結晶によってウォードレスや人型戦車を動かすのとは別種・別形態の技術であり、その根幹が違うだけで、発想や用法などは技術的なものなのだとか。だからこそ塹壕戦に人型戦車、果ては戦闘何に至るまで『一度見た戦術は、別の戦術で打倒可能』であると彼女は、ユーリア姫はやって見せたのだ。技術であるならば何とでもできよう。

 

そして技術であるからこそ解除できる。出来なければ誰が意図して化け物になりたいだろうか? それしか生き延びる方法が無いのだとしても、嫌がる人間はずっと多かったはずだ。病で死ぬ寸前まで他の方法を探る者の数に至っては数えきれまい。

 

「それが判るならば、その先も判るでしょう? 私は帝室に生まれた者として付き従う臣民を導く義務があります。例え物言わぬ獣と化していても」

「ずるい人だユーリア。貴女の為に世界を裏切れと?」

「貴方ならば立派な魔王に成れるわ」

「まあ悪女と兵隊の物語よりは、魔王になった男女の方が面白いですけどね……」

 幻獣化が終わり渡って来た人々は、何食わぬ顔でこの世界に蔓延るだろう。

その時に亡命した連中が国元に戻っても遅い。そこには一足先に幻獣から奪還したと言い張って、国家を建設されているのだ。逃げているだけで戦わなかった者に功績などあるはずもない。

 

かくして幻獣に化けてこの世界にやって来た人々、第四世界と呼ばれる双子世界の人類はこの第五世界を謳歌する。指導者であるユーリア達を女王として。新城はその王配として、日本から派遣された同盟者として君臨することになるだろう。

 

「とはいえ僕にも罪を負わせて魔王と呼ぶならば貴女にも遠慮はしない。方針には従ってもらう」

「そのくらいの雄々しさがないと駄目ね。でも、あのデグレチャフを追い切れるの? 他の部隊はとっくに見失ったそうだけど。それとも同情しなければ宛てはあるの?」

 気持ちを切り替えると新城は地図を手に取った。

その上に現時点で判っている部隊の配置を行う。熊本に第一と第二軍団。この二つは謹慎命令が出ていて迂闊には動けない。そして共闘を申し出てきた謎の部隊は福岡との境でウロウロしているらしい。

 

「好き好んで軍人なんぞになったデグレチャフに同情する気はないが……奴の思考は読める。アレはひどく無駄がない、まるで手慣れたものであるかのように勝利を収める。と成れば今ごろはとっくに海を渡っているだろうよ」

「幾らなんでも早過ぎないかしら? 門司にだって警戒線が張られてるでしょうに」

 新城は万年筆を握ると早々と九州にバツの字を入れた。

その大胆さにユーリアは呆れるほどだ。仮にターニャがそれを為したとしたら、あまりにも早過ぎる。そして新城がそれを容易く理解したことに嫉妬すら覚えそうだ。

 

「手段を問わなければ幾らでも方法はある。佐賀でボートを運転できる者を拾っていれば、それこそ特定しようがない。そんな状況ならば西住師範が飛行船でコッソリ運んでいても咎められる事すらない。それに同調能力を使えば飛べるというのは、君らが示した方法でもある」

「と言うと福岡に達した時点で全て終わっているという事?」

 行方を晦ました時点で熊本から抜け出ている。

福岡で補足されたのは、逆に捕捉させて見せたのだろう。門司から渡るばかりが方法ではなく、別に四国を経由しても佐賀に戻った後で長崎経由でも良いのだ。それこそ飛べるならばルートなど作り放題である。なまじに門司が近いからこそ騙されるという訳だ。

 

「よくもまあ思いつく事。まさしく悪魔的な頭脳ね」

「あれは幼女の皮を被った悪魔だと誰かが言っていたな。デグレチャフと会いたいなら広島で待つ方が早いよ。芸州公が学兵に心を砕いている話は有名だし、備州公の話も伝えてある。それに広島は大本営候補の一つだ。守原が逃げ込む候補が一つ削れるから無駄がない」

 冤罪だと誰かに泣きつくにしても、復讐のために守原英康を倒すにしても。

どちらの方法でも広島にターニャはやって来る。そこで待って居れば問題なく会える……という言葉を聞いて、ユーリアは新城にその気が無いことに気が付いた。

 

同情はしないと口にしていた。では、何をする気なのだろうか?

 

「誰もがデグレチャフを追っているなら無理に僕らが追う必要はない。御柱祭りと違って一番柱になったからと言って尊敬もされないからな。ならやるべきはその先だ」

 マンチュリアから戻る部隊に新城が引き取られた先。

信州にはミシャグチ様という神をまつる御柱祭りというモノがある。とても危険な祭りであるがゆえに、最も危険な場所に柱を立てる役目は尊敬されるのだという。しかし今回は幼女一人を追い回す役目。誰がやっても同じだと豪語した。

 

確保すると言い訳でターニャを守るという気持ちもないのだろう。あるいはターニャであれば無事に切り抜けると思っているのかもしれない。

 

「なら何をするつもりなの?」

「リンクさせるという装置を持って居そうなとこからいただいて来るか……それとも展望台を何とかするか。時間が掛かるのは後者だな。場合によっては新規に建てた方が早い」

 そう言って新城は地図に幾つか丸を付けていく。

そこは日本各地にある観測所であり、その中でも高精度な望遠鏡を持っているとされる場所だ。ただし展開観測は戦争の始まった現時点で下火になっており、中には壊れたまま放置されている場所もあるだろう。

 

その選定と調整、もし邪魔をする勢力があるならば防衛部隊も配置しなければならない。もし今後を憂慮し、自らが奪う世界を守るのであれば新城にはターニャを庇っている時間などなかったのである。

 

 世の中が喧騒に包まれる中で、お茶会の行われている崇城大学は別世界の様に優雅であった。

もっとも内情は真逆であり、監視されているからこそバタバタとは動けない。ハタから見て何もしていない様でありながら、裏では忙しく動いているというのが実情である。

 

「ねえ。今頃あの方はどの辺りをご旅行中なのかしら?」

「刑部狸の史跡でも巡られている所でしょう。あそこには備州の魔王山ン本(サンモト)由来の槌があるとか」

 林凛子の質問に対し幾島佳苗は誰の事かを尋ねなかった。

そのまま御伽話の一節を流用し、ターニャ一行の経路を説明する。もし誰かが聞いていても傍目からは伺えないであろう。

 

「まあ。もうそんな所なの? あの方は本当に天使の様な方ね。翼でも生えているのかしら?」

「さて。この世界で力翼は可視化されませんから」

 力翼というのは第六世代クローンが持つエネルギー制御技術の事である。

リテゴルロケットで空を飛ぶ折りに使用しているとされるが、この世界では見えないのであまり信じられてはいない。

 

……そう、この世界で魔法が存在しないというのは嘘なのだ。

単に見えないだけ。同調能力であったり力翼であったりと傾向こそ違うが、様々な形で魔法を利用している。ターニャは第六世代でありながら同調能力を持つとされるので、相当に力を持つ存在と一部では言われていた。

 

「それで二階堂さんは大丈夫なの?」

「行動では今のところ問題はありません。竜師と違ってハッキング耐性を持たないのに制御できませんので、結晶を入れていないのでしょう。その意味で精神面を捜査することはできませんでした」

 この会話には幾つも奇妙な言葉が出て来る。

まず大前提として幾島はオーパーツを用いて生体結晶を入れた他者を操ることができる。今得ている情報も、逸見エリカを介して掠め取った情報であった。そしてハッキングが通じない二名は更に奇妙である。

 

ターニャは洗脳慣れしているのかハッキングに抵抗力がある。

これはまだ理解できる事であるし、洗脳されているわけではないという証明になるので喜ばしい事だ。しかしサキの方はいささか事情が異なる。芝村機関のラボからやって来たとは言え、何の為にやって来たのか分からないのだ。

 

「勝吏くんは何か聞いていないの?」

「ラボは代行殿の肝入りですから。しかしあの御仁の性格から言うと『面白くなるから』でしょうな。今の竜師には戦力が足らなさ過ぎます。それと同時に『人は三人居れば派閥ができる』……とも」

「面白尽くか。私は気に入らないな」

 場を面白くするためにサキをターニャの援軍に送り付けた。

そう聞かされれば何となく判る気はする。確かに代行殿にはそんな所があるし、別に誰が主導権を握っても良いのだから援軍に行く許可くらいは出すだろう。その上でターニャが信用しきれずに殺したり、あるいは意見の対立で空中分解するならば話も変わって来るだろう。

 

「あの方がご無事ならばそれで構わないとしましょうか。でも護州公の部隊に勝てるのかしら?」

「勝ってもらわねば困ります。今年こそサンダースの呪いを……。いえ、国の為です」

 タイガースを蝕むサンダース大佐の呪い。

それに打ち勝ちタイガースを優勝させる。その為にはタイガースに力を貸しても構わないと言ったターニャに肩入れする。幾島のそんなところを、見なかった事にするだけの情けが一同にはあった。野球に興味が無いと言い換えても良いのだが。

 

「あー。竜師は現在何をしているんだ? 観光だけを目的としているわけではあるまい?」

「二階堂の使う精霊手と比較して同調能力を再検討しているみたいだな。追跡が止んだのは最低限の使用法を編み出したからだ。いや、元からそういう使い道であったのかもしれないが」

 この間まで知らなかったのが嘘のようにターニャは魔法に熟達していた。

魔導技術という名前で独逸帝国では伝わっていたらしいと説明し、その能力が絶えて久しかったとも。ラボから説明用に回されてきたターニャのコピーも、短い間に制御技術を確立していたのだ。どうしてコピーが用法を知らないかは別にして、素質そのものは確かに継承されているように思えた。

 

後はそれらを駆使して、特務部隊『カグツチ』に勝てるかどうかだ。

 

「ゆえに何の問題もない。間もなく全てのモノが揃う。強力な同調能力、士翼号の類似品。そして月の情報とリンクを果たす呪具」

「であればカグツチに勝てるよう、こちらでも手を打つとするか」

 そう、もはや守原英康など彼女たちにはどうでも良かったのだ。

カグツチには士翼号に極めて近い性質を持った機体がある。そして呪具として十分なオーパーツを幾島は所持していた。だからこそ彼女は生体結晶を持つ者を操れるのだ。

 

後はどちらかの竜候補が討たれれば儀式は滞りなく行われるだろう。

出来ればターニャに勝って欲しいが、敗北しても構わないという計画であった。




 という訳で解説回です。
主人公たちがイチャイチャして不在の間に、サクっと話は進みます。

●護州陣営
 以前に佐脇少佐が狂人扱いされると書きましたが、秘密に今回の準備が始まって居ました。
佐脇少佐のツテで駒城陣営から幻獣和平派との交渉話が舞い込み……。
それと同時に、合衆国側の介入も始まって、幻獣王(候補)同士の戦いもあった感じ。
この辺は皇国の守護者の守原内通と、榊ガンパレの最終章を混ぜた感じにしています。

後はついでに、守原定康と代行殿と狩谷君は『戦いたいけど戦えなかった同盟』で
その戦闘役として狩谷君が頑張ってる感じですね。
まあ代行殿から見れば面白いから、次の戦いの準備としてやってるだけですが。

●新城さんたち
 佐脇少佐が影武者ってのはアッサリばれてて、その後にユーリア姫とくっ付いてます。
まあ佐脇少佐は悪辣ではないし、新城大佐は小心者なので判り易い所。
とりあえず彼らは平然とターニャを放置して、天文台を抑えに行ってます。
もし破壊されても、勢力圏である種子島あたりに新しく造るんじゃないですかね?
後は幻獣側であるユーリア姫の視点で、アンらかの不具合で幻獣化が続いているけれど
その不具合さえ解除できれば、戦争は終わるという見解を出しています。

●南高陣営
 答え合わせというか、ターニャは福岡モスルーして豊後水道を通って四国へ。
松島から広島へ島伝いに渡るコースを取り、無理だったら小豆島経由で大阪が予備案。

それはそれとして、南高陣営は儀式を成立させることで再起動準備に入っています。
以前に狩谷君が熊本城戦で乗った機体は、士翼号に限りなく近づけたカスタム機と説明しました。
なので新城大佐が天文台を確保して、黒い月である士翼号の場所を確認。
後はリンク装置として幾島さんが持っている『列王のリング』を使えばOK。
コレにそこまでの力があるかではなく、黒い月を構成している士翼号に少しでも近づけるため。
(まあ実際は、存在Xがターニャの為に用意した、95式試作リテゴルロケットがあるのですが)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。