今回は短めです。
次の日になって何事もなく学校に来ている蒼士は達也から昨日の騒動の話を聞いていた。
「そっか、駆けつけられなくてごめんな」
「いや、蒼士の方こそ大変だったみたいだな」
お互いに騒動に巻き込まれる体質のようだと苦笑していた。達也は剣術部と揉め、蒼士はクラブ見学とデモンストレーションの参加をお願いされ、大忙しであった。
「ほら、またクラブの先輩たちが来ているぞ」
達也が指差した方には集団でそれぞれの部活の服装で蒼士を見つけて寄ってきている先輩たちがいた。さっきも先輩たちからデモンストレーションに出てくれとお願いされていたのだ。
「ありゃりゃ、またデモに出て欲しいってお願いかな」
「人気者は辛いな」
笑って困り顔の蒼士に苦笑してみせた達也。
「ちょっと話してくるわ」
「俺のことは気にするな」
席から立って先輩たちの相手をしに行く蒼士の背中を見送り、達也は今日も風紀委員の仕事で剣術部みたいなことが起こらないことを祈り、ため息を吐いていた。
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先輩たちからクラブ見学をして欲しいやらデモンストレーションに出て欲しいのお願いをされ、風紀委員の仕事の妨げにならなければ、という理由で承諾する蒼士。
そして少し寄り道をすることに。
「風紀委員会及び生徒会に数多くの希望願いがきていてな、君にはクラブ連中の手伝いをして貰いたい、昨年よりも初日の逮捕者が圧倒的に少ないから仕事がら––––じゃなくて、減っていい傾向だからお願いな」
風紀委員長として逮捕者が減ればそれだけ楽になるだろうな、と内心で蒼士は思いつつ摩利の言葉にとりあえず納得しておく蒼士。後で彼氏の修次に、後輩に負担を押し付ける女、と話しておこう、と心に誓う蒼士であった。
「蒼士くんが名実ともに有名になるのはお姉さん的には嬉しいし、蒼士くんが二科生であることを馬鹿にする人も減るのは良いことだと思うわ」
笑顔で蒼士に語る真由美は初日から注目されて有名になっていく蒼士を自分のことのように喜んでおり、応援しようとしていた。そんな真由美の期待に応えようとする蒼士。
だが、この話をしてから一時間後に真由美は頭を抱えていた。有名になればなるほど蒼士くんと話す機会も減るし、モテちゃうじゃん!?と生徒会長としての仕事に手付かずになっていた。
「蒼士くんを希望された複数のクラブと一応ですが、私なりにスケジュールを組んでみました。このように動けば一番効率が良いと思いまして、参考程度にはなると思いますよ」
鈴音からは連絡先を交換していたので端末に生徒会に蒼士を来て欲しいという複数のクラブデータと効率の良いクラブ巡りが纏めれており、クラブ巡りに関してはスケジューリングされているデータが送られてきた。
「蒼士くんの負担が大きいと思いますが、あまり無理をなさらないように」
そしてこの言葉を鈴音から掛けられて感動で彼女を抱きしめようとする衝動を我慢する蒼士がいた。いきなり女性に抱きつくなんて失礼なことはできないとグッと我慢する蒼士。
ありがたくデータを受け取り、お礼に何か欲しい物はないか、と聞いてみたが今はないみたいなので欲しい物があれば買ってプレゼントすると約束する蒼士と鈴音であった。
「私のクラスでも蒼士くんの噂が飛び交ってましたよ、一年のそれも二科生にヤバイ奴がいるとかその子がクラブ見学に来ると絶対に入部希望者が出るって、一体どんな魔法をしたんですか?」
二年のあずさの所でも蒼士は噂の人になっているみたいだ。生徒同士の噂話というのはあっという間に拡散するもので上級生などクラスに関係なく広がっているようだ。
可愛らしく問いかけれたので軽く頭をポンポンとすると「子供扱いしないで下さい!」と怒ってしまい、謝る蒼士であった。
「大変素晴らしいご活躍みたいですね、蒼士くん。お兄様も無傷で剣術部を制圧したみたいですし、一年生の風紀委員は実力者であることが証明されて私は嬉しいですよ」
生徒会に入った深雪はあずさから生徒会のことを教わっていたようだ。やはりお兄様大好きな深雪は兄の活躍にうっとりしながら、蒼士の活躍も褒めて、これで二人揃って二科生であることを馬鹿にする輩も減るだろうと思っているようだ。
さりげなく達也のことを褒めるだけで幸せオーラを纏う深雪に思わず笑ってしまう蒼士であった。
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要請に応じるために各クラブを訪れている蒼士は見学と体験をしながらデモンストレーションに何故か先輩たちと一緒に参戦していた。
蒼士がいるクラブを体験しようとする人たちは多く、体験後も入部を決めた者やどのクラブ入部するか迷っている者たちの中でも好印象を残すことに成功していた。
次から次にクラブを訪れている蒼士は移動中に一年生を取り合う勧誘者たちを目撃した。一年生は困っており、やめてくれ、と声を掛けているが先輩たちには聞こえていないようだ。
一応風紀委員でもあるし、知り合いの女子生徒だったので助けるために動くことを決めた蒼士。
未完成ではあるが
「いくぞ、スバル」
「君は蒼士くんかい!? 」
急に現れたと思ったら顔見知りの男子生徒だったので揉みくちゃにされていた女子生徒は非常に驚いていた。お互いに名前呼びをしているので仲は良い方だ。
そのまま人が少ない校舎の裏まで逃げ切る二人。勧誘のために動いていた先輩たちはただ唖然として二人の後ろ姿を見ることしかできなかった。
「ありがとう、助かったよ」
蒼士が助けた女子生徒は
「どういたしまして、それより服を整えた方がいいぞ」
スバルから視線を逸らして述べる蒼士。そのことが気になったが自分の服を見るために視線を下に向けるスバル。
「服を––––」
勧誘の人たちの揉み合いで服が肌蹴ていて、スバルの下着が見えていたのだ。美少年ぽい見た目だが、れっきとした女の子であるスバルは頬を赤く染めて、蒼士から胸元を隠すようにしていた。
「……見たかい?」
服装を整えながら恥ずかしそうに蒼士に聞くスバル。
「見ました、すいません。でもスバルに黒の下着はとっても似合ってたし、素敵だと「それ以上恥ずかしいことを言うな!?」おう」
一言だけ謝れば済むことであったが、蒼士は率直な意見を述べ、純粋に思ったことを口にしていた。そのことに耳まで赤くなって止めに入ったスバル。
「キミはぁっ! 僕の下着の感想を言えって言ったか!?」
「正直な気持ちを言ったまでだ」
「余計に恥ずかしいわっ!?」
蒼士に褒められるのは大変嬉しいが、下着のことを真顔で褒めてくるのはどうなんだろう、と思っているスバル。
「全く! そうやって女の子を
「女性を褒めるのは紳士の嗜みだぞ」
はいはい、と受け流すスバル。蒼士との出会いはなんの変哲も無い学校内の廊下であり、新入生同士仲良くという簡単な自己紹介であった。それから見かけれる度に挨拶をされる、するをしているうちにお互い気軽に話せる仲になっている。
「そういえばクラブの方では大活躍みたいじゃないか」
「当然のことをしたまでだよ、一科生、二科生っていう理由で才能ある者の芽を潰すのは勿体ないからね」
クラブ勧誘の時に先輩からクラスを聞かれて一科生であると積極的に勧誘され、二科生だと明らかに態度が変わるのを真由美や摩利などの先輩たちから聞いていたので、そんな馬鹿馬鹿しい理由で隠れた才能があるかもしれない人が表に出てこないのは損だと蒼士は考えていた。
「そうだね、だけどそうやって行動できる蒼士くんはすごいと思うよ、僕は」
眼鏡を外して蒼士の目を見ながら言ってきたスバルの言葉に蒼士は一人でもこういう蟠りを分かってくれる人がいるのが嬉しく、気持ちが楽になるような気がしていた。
「ありがとうな、スバル」
「君の行動を見ているのは面白いし、何よりも第一高校が良くなるのは良いことだ」
さも当然に言うスバルは実際に一科生、二科生というのが意味が分からず、結局世の中に出たらそれぞれが違う分野の仕事をしたりするんだから関係ないじゃん、と蒼士に語っていた。魔法科高校にいるからといって魔法関連の仕事に着くとは限らないからだ。
「ほら、蒼士くんはクラブの手伝いがあるんだから、行きなよ」
蒼士がクラブの手伝いをするっていうのは一年生の間では話が通っていたのでスバルは知っていた。
「あぁ、スバルもあまりにもしつこい勧誘が来たら風紀委員に言えよ」
「はいはい、分かったよ」
流石に二度も揉みくちゃにされるのはゴメンだ、とため息を吐くスバル。
「それと、紺色の下着も似合うと思うぞ」
「余計なお世話だぁっ!!」
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スバルと別れてクラブ見学という名の手伝いをさせられる蒼士。
一日で広がった噂のせいか、二科生である蒼士を蔑んだ視線を送る人はいなくなっており、お礼や頭を下げてくれる人が多くいてくれて、このまま一科生と二科生の仲が良くなれば良いんだがな、と内心愚痴る蒼士であった。
「先輩、五回目から肘が下がり始めるので注意してください、そのせいで命中率が下がっているんですよ」
「中学校の時に運動部に入っていたでしょう? 動きを見れば分かるよ、それとこのクラブのスポーツと君の魔法適性は相性がいいから入部した方がいいよ」
「ちょっと失礼します、このフォームが先輩には合ってますよ。それと大丈夫ですか? 息が荒いような気がするんですが?」
蒼士の注意を聞くだけで結果が伸びていたり、動きが良くなったりと蒼士の言葉を聞いとけば成長できると知らぬ間に部員同士の会話、先輩同士の会話で蒼士の噂が拡散していく。
そんな蒼士も連続して仕事を引き受けていたので休憩をしていた。ベンチに座って携帯端末を見ていたら、遠くの方で少し離れて逃げる相手を達也が追いかけていた。
「(あの足じゃ、達也から逃げられないな)」
達也から逃げていた男子生徒と達也の距離はみるみる縮まっていたが、突如左の方に飛び退いた達也。
先程まで達也がいた場所には魔法が放たれており、達也は背後からの魔法攻撃を避けていたのだ。そしてまるで何事もなかったように追いかけていた人物を追いかけ始めて逮捕していた。
第三者視点として見ていた蒼士は魔法を放った人物の捕獲に動いていた。背後からの攻撃を避けられたことに驚いて固まっていたので、容易に逮捕することができた。
「先輩、後輩に向かって魔法を使うなんて、どういうつもりなんですかね」
蒼士に逮捕された男子生徒は悔しそうな表情を浮かべており、蒼士のことを睨みつけていた。
「反省の色はないですか」
逮捕者と接触している蒼士は固有魔法を使えるということで遠慮なく使用していた。自分の予想通りだったため思わず笑ってしまう蒼士。
「なんだ、逮捕してくれたのか」
達也が逮捕者と一緒に蒼士に近づいてきていた。達也の逮捕者も悔しそうにしていた。
「達也か、怪我はないか?」
「このぐらいでは怪我もしない」
当然のように応える達也。普通は背後から攻撃を視認せず避けるなんてできないんだがな、と蒼士は思っていた。
「で、何か面白いことでもあったのか?」
「もちろん、口頭では言えないから今データで送る」
蒼士は端末を操作して達也にブランシュ、エガリテのデータを送った。
「……確かに、口頭では無理だな」
データを確認した達也は分かっていたのだ、エガリテの構成員には、青と赤で縁取られたリストバンをしており、それが信奉者の印であるのを。
そして蒼士と達也が逮捕した二人がそのリストバンドしているのだ。
「蒼士、お前はまだ手伝うクラブがあるのだろう? 俺が連れていくからお前は戻れ」
「すまんが頼めるか、次のに遅れてしまう所だった」
蒼士がいなくなって再度逮捕者の二人が襲ってきても達也は余裕で制圧できる実力を持っているので蒼士は任せることにした。
「あとで詳細な情報を送るから」
達也に任せると走っていく蒼士。それを見送る達也であった。
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