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公開討論会の話は学校中の噂になっており、生徒会長の七草真由美と有志同盟の対決は一日もしない内にあっという間に広まっていた。
「ふざけんじゃないわよ、あんな強引な勧誘で同盟なんかに参加するわけないじゃない!」
E組内ではエリカが大声で怒鳴っていた。周りにもクラスメイトがエリカの意見に同意のようで頷いていた。
「ちょっと強引なような気もするね」
「ちょっとじゃないわよ、ミキ。アイツら強引に話を聞かせようとしてんのよ、興味ないのに止めれたのよ」
僕の名前は幹比古だ、とE組ではお馴染みの光景に珍しがる者もいなくなっていた。エリカも幹比古も廊下に出れば有志同盟の面々に絡まれているみたいだ。二人だけでなく二科生と見れば誰彼構わずに声を掛けて勧誘し、一人でも多くの味方を付けようとしているようだ。
「放課後の討論会のためとはいえ、随分と活発化しているな」
「興味ねぇよって言っても話でも聞いてくれって止めてきやがるんだぜ、全くいい迷惑だぜ」
達也とレオも迷惑しているようだ。クラスメイトたちも同じようで話を聞いてみたものの同じ気持ちにはなれなかったというのを数多く聞いていた。そして一年の二科生は教室から出るのが減っている。出れば確実に同盟に絡まられるからだ。
「そういえば蒼士くんと美月は?」
「蒼士は生徒会に行って、美月も外に出ているようだぞ」
エリカの問いに達也が応えていた。真由美に呼ばれたのを近くにいた達也に伝えていたのだ。美月もクラブの用事で出るという事で蒼士と一緒に出て行ったのを見ていた達也。
「美月、一人で大丈夫かな?」
「僕が迎えに行ってこようか」
エリカの心配を幹比古が拾っていた。今の現状で美月を一人にしておくのは危ないだろうし、何よりも同盟が黙っているわけがないので心配であった。
「蒼士がそんな状態で黙っているわけないだろう」
「あっ、それもそうね」
「うん、確かに、絶対ボディガードみたいに付いてそう」
「やべぇ、余裕で想像できるわ」
達也の言葉にエリカ、幹比古、レオが反応して笑っていた。蒼士の性格を把握しているので困っている女子を放っておかないだろう、と全員同じことを思っていたようだ。
そして噂をしてるとなんとやら。
「蒼士さん、わざわざありがとうございました」
「気にしないで、俺も生徒会室に呼ばれていたからさぁ、それに美月のことが心配だったしね」
強引に勧誘されて拒否することが出来なさそうだから、と蒼士が素で思っているのとは別のことを考えてしまった美月は赤面してお礼を述べていた。
「ちょ、ちょっと、なんで美月が顔を赤くしてるのよ」
「エ、エリカちゃん、わ、私は別に赤くなんてなってないよ」
いや無理があるだろう、と達也とレオと幹比古が内心ツッコミを入れていた。誰が見ても美月は顔を赤くさせていたのだから。女子同士仲良く盛り上がっているエリカと美月。
「外はどうだった?」
「さっきよりかは同盟の姿はないけど、まだチラホラいるね」
外の様子が気になっていた達也は蒼士に聞いていた。案の定、まだいるようであった。
「生徒会長の様子はどうだった?」
「問題なしだったね、体調は万全で何を言われようと負ける気がしないって言ってたよ」
レオの問いに蒼士は応える。見惚れてしまいそうな彼女の笑顔を見たので問題なしと判断していた蒼士。
ただ最後の方で美月に同盟が近寄らないように護衛しているのを話し、見られたら機嫌が悪くなっていたのは蒼士の胸の内に秘めることに。
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放課後になり、公開討論会が始まった。
講堂には全校生徒の半分が集まっており、多くの生徒が二科生だけでなく一科生もこの問題に関心を持っているようだ。
服部副会長も壇上に上がっているが真由美の後ろに控えるようにしている。同盟側は四名であった。
「これほど集まるとは予想外でした」
「それほど一科生と二科生の問題を気にしていたということだろう、市原」
鈴音と摩利の会話を傍で聞いていた達也は講堂内を隅々まで見ていて気付く。
「壬生先輩や放送室を占拠した人たちはいないようですね」
ある人物たちを探していた達也は見つけられなかったのだ。放送室の占拠という暴挙に出たメンバーを。
「蒼士くんの言う通りですね、別働隊でいるんでしょうね」
「同盟メンバーを全員把握しているって規格外にも程があるな、蒼士くんは」
予め言われていたことを思い出す鈴音と摩利。ブランシュの行動と共に連動するつもりであること、それぞれ部隊を分けていることも、そしてそれぞれの配置も、全部蒼士から情報提供されていたので講堂内の同盟メンバーに対して的確に風紀委員が各々のマークに付くことが出来ているのだ。
「学校内の配置も蒼士が会頭と一緒に実行部隊の指揮をしているおかげで準備できているみたいです」
達也が携帯端末から蒼士のメッセージを受け取り報告していた。
「達也くん、日本のブランシュは壊滅したんだよね」
「委員長も見たはずです、蒼士の動画を」
摩利は不安に思っていたことを達也に告げていた。鈴音も隣で気になっていたようだ。
「昨夜、一高生徒との作戦会議が終わったブランシュを襲撃し、壊滅させたのは俺も蒼士から報告を受けました。何よりも日本支部のリーダーである
「会長が呼び出した時に蒼士くんから報告は受けましたが」
「真由美や十文字は特に驚いていなかったから真実なんだろうな」
鈴音も摩利も生徒会室に訪れた蒼士からこの話と動画を見せられて驚愕していたのだ。知らぬ間にブランシュという組織が壊滅していたのだから。
「ブランシュが一高に襲撃してきたタイミングで同盟も動くみたいでしたが、それがこちらに筒抜けとは思っていないでしょう」
達也の発言に頷く二人。相手側からしたら作戦内容も配置も全て筒抜けであるとは思わないだろう。
「同盟メンバーが動けば拘束、動かなくても討論会が終われば拘束、こちらは単純な作戦で助かりますが」
「最後は蒼士くんが持っている動画を同盟メンバーに見せて改心すればベストだな」
鈴音と摩利の会話を耳に入れながらも視線を舞台へ向けると討論会が始まった。
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「
「先輩、お困りですか?」
「お、お前は梓條!?」
「ブランシュ日本支部は昨夜壊滅しましたよ」
「なぁ!? う、嘘だぁッ!?」
「では、連絡が取れましたか? 司一や他のメンバーには?」
「ば、馬鹿な、う、嘘だ、義兄さんが……」
「急な質問ですが、頭の中に
「な、なに、を、言うん、だ」
「本当は馴染めなかったのではないですか? 得体の知れない義兄に」
「そ、そんなわけ、ない、俺は……」
「即否定できないということは何かしら思い当たる点があるんでしょう? 答えを知りたければ付いて来て下さい、講堂の方も終わったはずなので」
「まさか、作戦が」
「作戦は失敗です、ですから貴方には真実を教えましょう。そして貴方には義兄の正体を知る権利がある」
「義兄さんの正体?」
「だから行きますよ、もしも腕のCADを操作したらこちらも遠慮しませんので、俺の事を調べていたんですから分かりますよね?」
「……分かった」
剣道部主将の
壬生紗耶香は剣術部の
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公開討論会が始まって同盟側の質問と要求を真由美が生徒会を代表として反論するという流れになっている。
同盟側は、二科生しか所属しないクラブや一科生が所属しているクラブなどの予算配分を平等にするべきなど、二科生はあらゆる面で一科生より劣る差別的な扱いの改善などの具体的な要求がなく、具体的な事例、どのぐらいの予算配分が良いなどの詳細な数字が無い曖昧な要求であった。
真由美は、一つ一つを具体的な事例と曲解の余地がない数字で反論して看破していく。要求などが無くなり、差別意識の討論になっても凛々しい表情と堂々とした態度で熱弁を振るう真由美に対して、同盟側の反論は既に尽きていた。
一科生であること二科生であることを自覚して壁を作ってしまい、勝手に優れている、劣っているなどの意識の壁を築いてしまっている。この環境について熱弁する真由美に講堂にいる生徒達は真剣に聞いていた。同盟側のヤジも無くなり、真由美の声だけが講堂内に響いていた。
真由美が語ることについては講堂の大半がもしかしたら考えたことがあったかもしれない。無意識に一科生よりも、二科生よりも、とかを考えた事がある生徒たちは改めてこの意識を認識でき、意識の壁というのを自覚させることに成功していた。
真由美が言い終わると拍手が湧いていた。一科生と二科生に区別なく手を打ち鳴らしていた。誰もが無意識に受け入れてしまっていた差別意識を認識、自覚させてくれた真由美に感謝していた。
同盟側は反論する気力もなく、悔しそうに睨むだけであった。
最後に真由美は希望を述べていた。生徒会役員は一科生から指名することになっているのを撤廃させると公言、公約し、どよめきが起こるが生徒会長が自ら差別意識への一歩を踏み出してくれたというのを生徒たちは感じ取り、満場の拍手で迎えられる形で公開討論会は終わりを迎えた。
「同盟の動きは?」
「作戦の合図がないので動揺していますね、それと会長の言葉が伝わったのでしょう、明らかに動くのを躊躇っています」
舞台袖にいる摩利と達也は真由美に拍手を送りながら講堂内を確認していた。拍手をしながら周りを確認する者、きょろきょろ顔を動かして同盟メンバーとアイコンタクトをする者、明らかな動揺を見せていた。
「では、動こうか」
「はい、予定通りに」
摩利が無線で風紀委員に指示を飛ばした。統率が取れた動きで各々マークしていた同盟メンバーに近寄り、告げる。「作戦は失敗だ、合図はない」と。
言葉の意味を悟ったのか、抵抗することなく顔を伏せていく同盟メンバー、作戦予定時刻になっても何も起こらない、風紀委員から告げられた言葉は全てこちらのことがバレていると判断したようだ。
「どうやら無抵抗のようですね」
「何人かは武力に訴えてくると思ったんだがな」
鈴音と摩利は講堂内にいる同盟メンバーが力なく項垂れているのに一安心していた。強硬手段で魔法の使用もあるだろう、と考えていたのだが無駄であった。風紀委員にも強硬手段に出た場合は力づくで拘束してよい、と摩利が許可していたのだ。
「蒼士くんの方も無事に終わったみたいですね」
「……おい、蒼士くんはどうして市原の方に報告してんだ? 風紀委員長の私に報告するもんだろう」
「信頼の差では?」
「おい、お前も言うようになったな、市原」
無事に済んだことで気が緩む鈴音と摩利であった。
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討論会も終わり生徒たちが講堂から出ていくのだが、項垂れて風紀委員が近くに控えている生徒は講堂に残っていた。つまり同盟メンバーはいつでも拘束できる状態で講堂に残っていたのだ。
壇上の近くに集められた同盟メンバーは衝撃の光景を見ることになる。講堂の裏口から入ってきたのは同盟の学校内に配置されていた実行部隊であった。各々が沈んだ表情と空気を纏い現れたのだ。同盟側の実質的なリーダーである司甲も観念した面持ちで壇上の近くの席に座っていた。
「一高内の同盟はこれで全員です」
「うん、ありがとうね、蒼士くん」
「感謝する、梓條」
端末を弄っていた手を止めて報告した蒼士。蒼士が知る同盟メンバーの人数、顔、名前を確認して、全員いることを真由美と克人に知らせたのだ。
こうして有志同盟の面々を集めた意味の説明を始める克人。真由美も隣に控えるようにおり、蒼士は舞台袖に控えていた。摩利も舞台袖にいるが同盟側に目を向け警戒していた。
克人の説明は単刀直入であった。ブランシュ日本支部は壊滅したこと、リーダーである司一をした幹部の逮捕について語っていた。
昨夜行われた一高への最終的な作戦確認後、一高生が居なくなった後にブランシュの二箇所の拠点を奇襲し、司一、幹部クラスの捕縛をしていたということを。
そのことを知った同盟側は連絡が取れなかったこと、作戦時間になっても何も起こらなかった、ちゃんとした理由を知ることになり、絶望していた。何よりも作戦がダダ漏れであったことに。
「そしてお前らには見て貰いたいモノがある、梓條」
克人に呼ばれた蒼士は壇上にあるスクリーンにある動画を流した。同盟側が本当の真実を知るために。
動画にはブランシュ日本支部リーダーである司一が映っており、白い服のような拘束具に両手を縛られ、足にも枷を嵌めれている光景が映し出されていた。体が恐怖で震えているのようで動画を撮られている真正面も向けずに地面ばかり見ていた。
震える声で彼は語り始める。第一高校の生徒に催眠効果の魔法を使用し手駒にして、一科生と二科生について煽り、衝突、混乱するように仕向け、工作部隊が混乱に乗じて学校内の特別閲覧室から魔法研究の成果を奪おうとしていたこと、そしてバックにいる存在の大陸の
講堂内にいる真実を知らなかった一同は驚愕していた。ブランシュのバックには大亜細亜連合という国がいることに。そして捨て駒のような扱いで第一高校の生徒を操っていたことに。
同盟側も信じていないという面持ちであったが司一の催眠効果の魔法についての詳細な説明を聞いていく内に納得せざるおえない真実になっていき、泣き出す者も出てきていた。自分たちが信じていたリーダーが自分らのことをなんとも思っておらず利用するだけ利用して切り捨てようとしていたのだから。
泣きながら自分を見つめ直すことができていた同盟メンバーは記憶違い、不自然な行為、思い出せない出来事など、改めて整理すればおかしな部分が多々あることが理解でき、何で気付けなかったんだという後悔の念が押し寄せて涙が止まらずいた。
摩利、鈴音などの風紀委員の面々なども泣き崩れている同じ学校の仲間を見ていて、同情してしまい辛い表情を浮かべてしまっていた。深雪は動画の内容を聞けば聞くほど内から溢れてくる憎悪が爆発しそうになっていくのを感じていたが、そんな深雪を察し、達也が深雪に寄り添うようにしていた。
辛い真実を知った彼らにはもはや抵抗することも討論することも不要であった。
克人は催眠効果の後遺症などあるかもしれないので念のため病院で安静にするように伝え、病院に搬送することに。十文字家次期当主として権力を使用して病院を手配していたのだ。
真由美や克人は口外しないように指示を出し、風紀委員や実行部隊は解散になったが、後味の悪い終わりになってしまった。
だが、物的被害、犠牲者なども出ることなく、生徒同士で一応は決着がついた形となる。
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事後処理などを終えて帰る蒼士と真由美は二人っきりであった。昨日も同じような展開であったが今日は真由美に元気がなかった。
「お疲れ様でした、真由美」
「うん、蒼士くんもお疲れ様」
労うように笑顔で声を掛ける蒼士であるが相手の真由美の反応はイマイチであった。討論会を一人でやり遂げたので精神的疲れもあるようだが、それだけではない。
「同盟の生徒たちが気になりますか?」
「……やっぱり分かっちゃう」
目の前で真実を知ってしまい、信じていた者に裏切られ悲しみに声を上げ、涙を流していた光景を目の当たりにして、真由美も心情的には辛かったようだ。
「他の手段は無かったのかな?」
「その場合は武力でのぶつかり合いになってしまい、第一高校が襲撃され、怪我人やもしくは犠牲者も出てしまっていたかもしれませんよ」
そっか、と悲しい表情で応える真由美。何時も元気で明るくいてくれる真由美に戻したく話し始める蒼士。
「同盟メンバーは真実を知り、改心していくと思います。そのメンタルケアなどもしていこうと十文字先輩とは話していたんですが、真由美も当然協力してくれます?」
「えっ」
伏せ気味の顔が蒼士の顔を見つめるように見上げる真由美、きょとん、とした表情で浮かべていた。美少女ってどんな顔でも似合うな、と内心で蒼士は思っていた。
「もちろん、服部副会長、渡辺先輩、市原先輩、中条先輩、深雪にも協力してもらい、彼らが立ち上がれるサポートをするつもりですよ。真由美自慢の生徒会メンバーに親友の渡辺先輩も協力してくれますよ」
「……」
まだこれからもやることがあるんだと再確認した真由美。気落ちしている場合ではないと気合を入れるのであった。
「うんうん、私も手伝うわよ、生徒会長ですからね」
元気が出てきて明るい綺麗な笑みを浮かべてくれた真由美。いつもの雰囲気が出てきていた真由美に蒼士は述べた。
「今日は頑張ったのでまたウチでご飯でも食べていきませんか?」
「行く行く!」
即答の真由美に笑みを浮かべる蒼士。
「では、また手を繋ぎますか?」
「それもいいけど––––」
蒼士の誘いの返答に最後まで口にすることはなかった真由美。彼女は蒼士の腕に抱きついて絡まっていた。カップルのように密着している。
「やったぁー、蒼士くん一瞬だけど驚いたでしょう? やっとやり返せたわ」
咄嗟のことに蒼士は多少の驚きをしていたのを真由美を見逃していなかったようだ。密着して感じる彼女の体温、とてもいい香りがする髪に役得だと嬉しくなる蒼士。
「このまま家までよろしくね!!」
「お姫様の良きように」
先程までの暗い雰囲気が嘘のように元気な真由美とそれを嬉しそうに見ながら会話する蒼士がいるのであった。
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「ね、ねぇ、今日はメイドさんが料理してくれているのね」
「ウチの家の管理をやってくれているんです、掃除、洗濯、料理や食材の補充とか細かなところとかも、でも今日は真由美を労うために料理を任して、俺が真由美の相手をすることにしたんだ」
「ん、うん、それは嬉しいんだけど……蒼士くん、今日は積極的ね」
「一緒にソファに座りながらテレビ見ているだけですよ」
「そ、そう、そうなんだけど、ひゃ、どこ触ってるの」
「今日は労いですから」
「あ、ん、腰に手を回して、そ、そのまま、どうするの」
「どうして欲しいですか? このまま胸元に抱きしめて欲しいですか、腰にある手を上に進めて真由美の胸を触って欲しいんですか」
「そ、蒼士くんも、男の子ね、こんな子供体型な体に興味があるの?」
「勿論です、真由美は子供体型と言っていますが魅力的な体をしているんですよ」
「あっ、ちょっ、んぁ、腰からだんだん上に、手を進めて、ん、こないで」
「ウエストも細くて、胸も大きいですし」
「んひゃ、ま、待って、タイムタイム」
「青少年をナメていましたね、真由美」
「ナメてました、ごめんなさい」
「ダメです」
「きゃ、ま、まだ、私たち付き合っていないのよ」
「では、抵抗して下さい、随分と軽い力で倒れてくれたような気がしますが」
「そ、それは」
「期待してますね、期待してますよね」
「ッ!?」
この直後に扉からノック音と食事の準備ができたことを告げられた。全然怒っている様子がない真由美は顔を赤くしながら乱れた服を整え、食事の前に洗面所に向かうことに。
だが、彼女の内心が分かってしまい、拒絶どころか求めている感情を感じ取ってしまっていたので、割り込みが無ければあのまま続けていたかもしれない、と少しの反省と残念感を蒼士は胸の内に秘めることにして真由美を待つ。
洗面所から戻ってきた真由美に調子に乗っていたと蒼士は頭を下げて謝り、真由美は顔を赤くさせながらも全然気にしていないと許していた。そのまま食事をしていくと普段の真由美に戻っており、楽しい食事をして過ごすことができたようだ。
「今日も美味しい料理をご馳走さま」
「いえ、本日は俺の自慢のメイドである
蒼士の背後に控えるメイドを紹介するように動いていた。メイドも蒼士の動きに同調するように一歩前に出ると、手を揃え、目を伏せ、礼儀作法の手本のようなお辞儀を見せた。
あまりにも綺麗な動作の一つ一つに真由美もたじろいでしまっていたが、彼女にお礼を述べていた。
「メイドさんも蒼士くんもこんなに美味しい料理なら毎日でも食べたいわね……冗談だけど」
「別に構いませんよ、その場合は真由美がウチで暮らすというのが良いと思いますが?」
真由美のさりげない冗談を乗せた言葉を本気で返答していた蒼士。
「––お父様の許可が出たらね」
多少の間があったものの頬を赤く染めて述べた真由美。
「はい、楽しみにしておきます」
笑顔で真由美に応える蒼士。
「じゃあ、今日は特別にお礼ね」
蒼士の言葉に笑みを浮かべていた真由美は大胆な行動を取る。真由美は蒼士の顔を両手で優しく触りながら自分に引き寄せるようにして、蒼士の頬にキスをしていた。
触れるだけのキスですぐに真由美は蒼士から少しだけ離れ、顔を真っ赤にさせて頬が緩んだのを隠すように手で抑えていた。
「……ほっぺですか、唇じゃなくて良かったんですか?」
「わ、私だって恥ずかしんだからね、それと私の唇は安くありません!」
キスをされた頬を触りながら蒼士は述べた。真由美自身も恥ずかしいと分かっていながら行動した結果であった。
「では、真由美のファーストキスは自分が頂きます」
「ッ!? もう、恥ずかしいこと言わないでよ! じゃあ今日はありがとうね」
逃げるように迎えの車に乗っていく真由美を見送った蒼士は頬に残っている感触を確かめるように手で再び触れていた。美少女から頬にキスをされて上機嫌の蒼士。
そんな蒼士の背後に控えるメイドの東条斬美がいた。
「蒼士様、また女の子を堕としているんですね、これは報告させて頂きますね」
主人である蒼士の悪い癖を指摘する斬美は従順に従うだけのメイドではなく、甘やかしたりせず指摘をするなど意志の強い人物でもある。
「刺されるかも」
「いえ、ぶった斬られるか、ぶん殴られるかのどちらかではないでしょうか?」
蒼士からも高く評価と信用されており、気軽に話せる相手だと蒼士は思っている。斬美の方も仕える主人からの信用と信頼に光栄だと思っている。
「余計にヤバイな」
「その分は夜の相手を増やせば良いと思われます、僭越ながら私の相手も宜しくお願い致します、ご主人様」
メイドは主人のあらゆる要求に応えられるようにあらゆる能力を付けているものだと斬美は考えている。そんな主人のためにも自分が一肌脱ぐことに。
主人をお慕いしており、好意を寄せている一人として二人だけでいる間は自分の時間だと勝手ながらも思い込んでしまっている斬美。
そんな彼女の内心が分かっているかのように蒼士は主従関係のメイドとしての斬美ではなく、一人の自分を慕っている女性の斬美として、エスコートするように彼女の腰に手を回して一緒に家に入っていくのであった。
だが、斬美は真由美との出来事を他のメイドにちゃんと報告していた為に蒼士は夜を眠れない日々を過ごすことになった。
※蒼士と真由美は付き合ってません!!(重要!)
ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期に登場する人物。
・東条斬美
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