渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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今回は魔法科の人物は出ません。

ご感想お待ちしております!

誤字脱字があれば報告お願いします。


第十六話

有志同盟が第一高校への作戦を開始する当日深夜。

 

第一高校から一時間も掛からない距離にある工場跡、此処がブランシュの拠点になっている。完全な夜になっており、街外れの丘陵地帯のため周りに人影など一切なかった。

 

催眠効果のある魔法で操っている第一高校の生徒には既に作戦内容の最終的な確認をして解散させていた。今は工場内には一高生徒は誰もおらず中にはブランシュ工作員の大亜細亜連合の兵隊だけとなっていた。

 

そんなブランシュの拠点ではリーダーである司一が荒れていた。時間とお金を掛けて拠点を増やしてきたのに最近になり、拠点が潰され、怒り心頭であった。そして何よりも潰された拠点から部下は誰も帰って来ず、調べても何も出てこないという事態に焦っているのだ。既に拠点はこの工場跡を含め二箇所しかないという状況であった。

 

そして一高への作戦確認後からもう一つの拠点とも連絡が取れず、部下を送ったにも関わらず何の連絡もないという状況に物や部下に怒りをぶつけていた。

 

 

 

 

ブランシュに気づかれないように工場跡を包囲する集団が居る。四方を囲み、逃げられないように包囲し、人員も配置済みであった。

 

「ハッシュヴァルト様、準備が整いました」

 

白い軍服のような服装の女性が同じく白のマントを羽織り、白軍服の男性に報告していた。

 

「では、始めよう」

 

ハッシュヴァルトと呼ばれた男性は金髪の長髪の整った顔、イケメンの部類に入る容姿をしており、感情を表に出さず何事にも冷静に対処する技量を保有している。そして彼は忠義を誓った蒼士からブランシュ件についての指揮を任されていた。

 

ハッシュヴァルトは後ろに控えていた五人の人物を呼ぶ。全員が白を強調した軍服を改造した服装であった。

 

「久し振りに暴れられるわね!」

 

黒髪ロングの美少女が元気よく飛び出していこうとするのを他の四人に止められる。

 

「おい、待てよ、このクソビッチ」

 

ボブヘアーの小柄なロリっ子が荒っぽい口調で止めに入った。

 

「今のリーダーってリルだからバンビちゃんは黙ってた方が良いと思うの」

 

ピンク色の髪に巨乳でおっとりした口調の女性が二人を止める。

 

「ったくよ、このクソビッチのせいでボスに嫌われたらどうすんだよ」

 

ライム色の長髪が特徴で露出の多い制服を着ている女性が目の前の光景に愚痴をこぼしていた。

 

「えぇー、キャンディちゃん、ソウシちゃんのことなんて気にして、可愛いぃぃー」

 

黒髪アホ毛の華奢な容姿をした女性にも見えるが、彼女は男である。このことを指摘するとかなりキレる。

 

「バンビエッタ、リルトット、ミニーニャ、キャンディス、ジゼル、君たちの能力の使用は蒼士様から許可を頂いている」

 

個性的な五人を前にしても顔色一つ変えずに告げるハッシュヴァルト。

 

バンビエッタ:愛称は「バンビちゃん」

リルトット:愛称は「リル」

ミニーニャ:愛称は「ミニー」

キャンディス:愛称は「キャンディ」

ジゼル:愛称は「ジジ」

 

五人でバンビーズと名乗っているがバンビが全て決めたことであった。バンビエッタがリーダーであったがとある事情によりリルトットがリーダー的な存在になっている。

 

「おい、クソビッチ、お前はバカか、お前が突っ込んだら何も残らないだろうがぁ!」

 

「リルの言う通りだよ、バンビエッタちゃんがバカみたいに突っ込んだら作戦が台無しだと思うの」

 

「けっ、バカに何言ってもしょうがねぇよ」

 

「うんうん、バカはバカだもんねぇ」

 

リルトット、ミニーニャ、キャンディス、ジゼルからお叱りを受け、馬鹿と言われたバンビエッタは体を震わせてキレそうになっていた。

 

「バカバカ言うな! バカって言った方がバカなんだよ!」

 

子供のように地べたを踏んで怒るバンビエッタに呆れる他のメンバー、そしてそれを見ていたハッシュヴェルトも。そして彼は声を掛けていた。

 

「バンビエッタ、君だけが五人の中でまだ功績を残していない」

 

ハッシュヴァルトの言葉に、えっ、と言葉を詰まらせるバンビエッタは四人に振り向き見る。

 

「オレは残党掃除をやったぞ」

 

「私も拠点を潰したの」

 

「あたしも船を沈めたぞ」

 

「ボクもボクも、それと工作員同士を殺し合わせて、傑作だったよぉー」

 

バンビエッタ以外の四人はブランシュの拠点を潰していたようだ。バンビエッタだけハブられていた。

 

「なんだよそれぇ! あたしだってやってやるんだからねぇ!」

 

そう述べるとバンビエッタは工場跡に突撃しようとするが服の襟を掴まれ、リルトットに止められる。勢いがついていたので服から破れたような音がして慌てるバンビエッタを気にせずリルトットは述べる。

 

「だからなぁ、今回は捕縛対象がいるんだからよ、キャンディが先に捕縛しに行くから、テメェは後だ」

 

リルトットの言葉に落ち着きを取り戻したバンビエッタ。

 

「じゃあ、あたしが捕縛対象を連れて来るから、ちょっと待ってな」

 

キャンディスの体が光るのと同時に頭に円盤のようなものと背中から羽のようなものが顕現し、キャンディスの姿が消えた。

 

「で、周りの状況は」

 

リルトットがハッシュヴァルトに話しかけていた。

 

「この工場一帯を隔離結界が張ってある、音も遮断し、姿も認識不可能になっている。どれだけ暴れても誰も気付くことはないだろう、それとこの一帯は既に買収済みだ」

 

バンビーズの実質リーダーのリルトットが確認したのは自分らが暴れても心配ないのかということを聞いていたのだ。

 

お菓子を食べながらハッシュヴァルトの応えに満足しているとキャンディスが帰ってきていた。地面に焼け焦げた跡を残し、体からビリビリと雷のようなものが(ほとばし)っていた。

 

「コイツらで良かったんだよな」

 

キャンディスが気絶させて連れてきたのはブランシュ日本支部のリーダーである司一と幹部らであった。

 

「確認した、全員捕縛対象だ」

 

「うっしゃ、これであたしの仕事は終わりだな」

 

ハッシュヴァルトの報告にキャンディスは体を伸ばしてリラックスしていた。

 

「蒼士様にはちゃんと名を出して報告しておこう」

 

「マジかッ!? これであたしにも声が掛かるか?」

 

蒼士の名前が出ると食い気味にハッシュヴァルトに問い詰めるキャンディス。

 

「あぁ、間違いないだろう」

 

「しゃぁぁー! やっぱりお前っていい上司だわぁ!」

 

ハッシュヴァルトの背中を叩いて褒めるキャンディ。功績にはちゃんと応えることができるハッシュヴァルトは部下に思いの良い上司。

 

「じゃあじゃあ、あたしが行ってもいいんだな」

 

キャンディが目の前で功績を挙げたのを見て、焦るバンビエッタ。

 

「殲滅しても良いぞ」

 

ハッシュヴァルトの言葉を聞いた瞬間、バンビエッタは工場跡に突っ込んで行った。バンビエッタが工場内に消えていくとすぐ爆発音が響いた。銃声も聞こえるが明らかに爆発音の方が多く聞こえてくる。

 

「ホントに殲滅ならバンビちゃんはうってつけだねぇー」

 

既にジゼルはブランシュなどに興味がないようで木に寄りかかりながら述べた。その言葉に頷くリルトットとミニーニャ、キャンディスは早起きして何時間もかけてセットした髪を確認していた。

 

「逃げれねぇように包囲しているが、意味なかったな」

 

リルトットは工場跡から誰も出てくる気配ないのを悟り、新しいお菓子を食べ始めていた。ミニーニャは髪を弄り始めて、一同と同じく興味なしであった。

 

ハッシュヴェルトは側近の女性と一緒に此方の実力を知りたがっていた七草家、十文字家の実働部隊の代表と面会し、司一の尋問を請け負いたいということを提案し、彼から証言、証拠を提示して貰うつもりであった。両家ともに承諾してくれた。

 

それぞれに代表は五分もしない内に敵方のリーダーと幹部クラスを捕縛し、圧倒的火力で敵を屠っていき、蹂躙していく少女とどういう魔法なのか理解できずに恐怖していた。アレが自分らに向いたら考える暇もなく殲滅されるのではというのが頭によぎってしまっていた。

 

一時間もしないうちに殲滅は終わり、ご機嫌のバンビエッタが工場跡地から歩いてきていた。途中からチマチマ撃ってくるのにイラつき辺り一帯を更地にするレベルの爆撃をして一掃していたのだ。深いクレーターが彼方此方に出来ている。

 

「ご苦労、事後処理は此方でしておくので帰って良いぞ」

 

ハッシュヴァルトは既に側近の女性と自身の指示で事後処理に動いていた。部下を的確に動かしていく彼の動きに無駄は無かった。

 

「おう、ハラが減ったからどっか寄ってくぞ」

 

「夜食は太ると思うの」

 

「それもいいが、明日何処か行かないか?」

 

「賛成賛成、ボク的には横浜とか良いと思うかなぁー、ほら、中華街とか美味しいものがあるよん!」

 

リルトット、ミニーニャ、キャンディス、ジゼルの四人は仕事が終わったのでこれから何をするかなどの話をしながら仲良く帰っていく。ジゼルはリーダーの好きな食べ物の話題を敢えて出して、自分が行きたい場所に誘導させていた。

 

「ちょ、ちょっと!? あたしに労いの言葉とかないの、お疲れ、とかでもいいからさぁ」

 

何も言ってくれなかった四人にバンビエッタは怒っていた。自分が殲滅したのだから何か一言あってもいいんじゃないかと。

 

「もう終わったんだからいいじゃん」

 

「な、何か一言欲しいのよ!」

 

キャンディスの言葉にバンビエッタは納得できていなかったようだ。

 

「うるさいなぁー、ソウシちゃんに頼んでゾンビ化させちゃうぞぉ!」

 

「ごめんなさい、ゾンビはやめてぇ!」

 

ジゼルの一言で足に力が入らなくなってしまい、その場に座り込んでしまったバンビエッタ。ジゼルを怯えるように見て、体を震わせていた。

 

過去にジジの能力でゾンビ化しており、バンビエッタの中でトラウマと化している。蒼士にゾンビ化を治されてからは元気がある普段の彼女に戻っているが『ゾンビ』と聞くだけで泣きそうになってしまう。

 

「あぁー、めんどくせぇな、ほら、ファミレス行くぞ」

 

座り込んでしまったバンビエッタを立ち上がらせて、腕を掴み強制的に歩かせていくリルトット。こんな所で時間を取られて食べる時間が減ってしまうと考えていたリルトットである。

 

バンビーズは仕事を終えた打ち上げにファミレス、カラオケなどを楽しんだのであった。

 

バンビエッタは『ゾンビ』と聞いて震えて明らかに沈んでいたが、ハッシュヴァルトの労いの言葉に感激し、いつもの機嫌に戻っていたようだ。

 

出来る上司ハッシュヴァルトは殲滅後の事後処理、司一への尋問、七草家と十文字家への対応など完璧に終わらせて、日の出を眺めながら側近の女性とコーヒーを飲んでいたのだった。




今回は自分が好きなキャラを全面的に登場させて頂きました。また本編で登場させるかは考え中ですが、多分出ます。

生前の『聖文字(シュリフト)』の能力は蒼士の許可なく使用できなくなっていますがバンビーズは納得しています。衣食住の提供などギブアンドテイクで互いに信用している仲。

あと変な妄想をしていました。

横浜の中華街で食事をする。

周公瑾のお店を訪れるバンビーズ。

周公瑾が「女性四人と男性一人ですね」と言ってしまう

「は?」とジジがキレてしまう。

我ながらおかしな妄想でした。

BLEACHに登場する人物。
・ユーグラム・ハッシュヴァルト
・バンビエッタ・バスターバイン
・キャンディス・キャットニップ
・リルトット・ランパード
・ミニーニャ・マカロン
・ジゼル・ジュエル

※蒼士は『聖別(アウスヴェーレン)』はしません。

次の投稿は30日水曜日です。

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