渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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灰茨悠里さん、誤字脱字報告ありがとうございました。

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番外編 司波 深雪 1

深雪は朝から出掛ける準備をしていた。

 

兄以外の男性と出掛けるのが初めてであったのでどういう服がいいのか迷っていたようだが、白と水色が強調されたワンピースを着ている。深雪自身の素材が良いので何を着ても似合うが、今日はさらに深雪の美しさが増しているようにも見えた。

 

携帯端末で時間を確認すると約束の時間だと深雪は部屋から出るとインターホンが鳴り、一緒に出掛ける人が来たと深雪は急いで階段を降りて玄関に行く。

 

「蒼士くん、時間通りですね」

 

深雪は玄関の扉を開けると一緒に出掛ける人物が居た。第一高校への入学前日に知り合い、知り合って日は短いものの友達といえる関係になることができた梓條蒼士だった。

 

「もうちょっと早く着くつもりだったんだけど、今やってる作業に集中しちゃって」

 

自動化された車から降りてきた蒼士は深雪に謝っていた。蒼士の中ではせめて二、三分早く到着している予定だったのが丁度の時間帯になってしまったことに。自分が研究していたモノに集中し過ぎていたせいで時間を忘れてしまっていたのが原因であった。

 

「遅れたわけではないんですから、気にしないで下さい」

 

家の鍵を掛けて出てくる深雪は全然気にしていなかった。寧ろ深雪もギリギリまで鏡で服装や髪などを確認していたので都合が良かったのだ。

 

「ありがとう、達也は予定通りかな?」

 

深雪にお礼を言いつつ兄である達也の動向を知ろうとする蒼士。

 

「お兄様は予定通りFLTに行っています、帰りも遅いので大丈夫ですよ」

 

深雪は予定通りに進行していることを告げた。兄の達也の誕生日プレゼントを秘密裏に買う為に蒼士に選ぶのを協力してもらい、兄のスケジュールも把握しておいたのだ。

 

「それは何よりだ、じゃあ行こうか」

 

蒼士と一緒に深雪も自走車に乗ることに。兄には黙っておりサプライズとして渡したいという深雪の気持ちを尊重して蒼士も達也にバレないように協力していたのだ。

 

共用車両(コミューター)は行き先を設定すれば自動で向かってくれるので蒼士と深雪は気兼ねなく会話をしていた。情報端末を使用して、今日行こうとしているお店の情報を深雪に見せていたりして目的地に着くまで楽しく過ごせた。

 

 

 

 

深雪は改めて蒼士の徹底した紳士っぷりに感心していた。

 

目的地付近に到着し、コミューターを降りる時も蒼士から降りるのだが、深雪が降りる時には手を差し出してくれて降りやすくエスコートしてくれていたのだ。

 

「ありがとうございます、蒼士くん」

 

深雪のお礼にも笑顔で応えて、彼の気遣いに深雪は安心感を覚えるようになっていた。学校でも席を引いてくれたりして何処にいても変わらない蒼士に思わず笑みをこぼしてしまう。

 

「どうかした?」

 

急に笑顔になった深雪に問う蒼士。

 

「いえ、蒼士くんは何処にいても蒼士くんなんだなと思いまして」

 

何だそれ、と理解できなかった蒼士は思わず笑ってしまい、深雪もそれに吊られる形でお互い笑みを浮かべていた。絶世の美少女の笑みというのは美しいものであり、周りにいる人は男女問わず見惚れて深雪を見ており、隣にいる蒼士にも女性たちからの熱い視線が集中して見惚れているようであった。

 

住宅街から街中に来ているので人も多く、はぐれてしまう心配がありそうだと判断した蒼士は深雪に提案した。

 

「深雪、良ければはぐれないように手を繋いでもいいかい?」

 

蒼士の言葉に一瞬だけきょとん、としていたが深雪は手を差し出していた。自然に手が出ており、深雪自身も無意識で彼に手を差し出していたのだ。

 

「勿論です、エスコートお願いします」

 

兄以外に自分のことを自然に触るのは蒼士だけであり、そのことを当たり前のように受け入れている深雪。深雪には全くの自覚がないのでそれほど深雪は蒼士を信頼し、信用しているのである。

 

「光栄です、お姫様」

 

深雪の手を握ると目的のお店へと歩み進める蒼士と深雪。周りにいた一般人は二人を見て、美男子と美少女のお似合いのカップルだと自然に思ってしまっていたのだ。綺麗な女の子だな、凛々しい顔立ちの美男子だな、などの嫉妬心などは芽生えずお似合いのカップルだと心の底から思われているようだ。

 

「深雪も気になった商品があったら言ってくれよ、深雪にもプレゼントするよ」

 

「そんな、私のことよりもお兄様のプレゼントの方が大事です」

 

「せっかく深雪と二人で出掛けられたんだから記念にね」

 

「……蒼士くんがどうしてもというなら何かプレゼントして貰おうかしら」

 

「そうでなくちゃね」

 

蒼士が選んでいたお店を周りながら達也のプレゼントを選んでいく蒼士と深雪。どのお店も二人が入店すると驚愕の表情を浮かべられて、笑顔で接待される。特に気にすることなく、お互いの意見を交換しながら達也のプレゼントを決めていこうとする。

 

「高校生でありながら達也って個人でかなりのお金を持っているからな、大抵のものは買えるもんね」

 

「そういう蒼士くんだって社長をしているんですから、結構持っていますよね」

 

達也自身も身分を隠しているが世界中に知られるトーラス・シルバーとして凄腕のCADエンジニアとして稼いでいるのだ。自身の夢のために向かって技術を身に付けながらの上で稼いでいるのだから達也にとっては最高の環境だろう。

 

蒼士も当初は会社の運営に思いっきり関わりながら足場が固まり始めると部下達から学業に集中しろ、と言われて現在に至る。重要な案件の確認などの連絡は来ているがあまり働いている実感はなく、口座にお金が振り込まれているのに罪悪感を感じていたりするが、部下達から気にしないで下さい、と言われてからは気にしないようにしている。

 

「達也の服のサイズは知っているんだよね?」

 

「はい、完璧に覚えています、お兄様の服は私が選んでいたりするんですよ」

 

日常生活について料理、掃除、洗濯なども自動で行えるような環境が整っている現在において深雪は自身が出来ることは自分でしていた。家での兄の面倒の全てを深雪がみているので達也に関しては深雪はスペシャリストであった。流石はブラコン。

 

「そろそろいい時間だから、予約したお店で食事しようか」

 

「私のために予約までして下さったのですか?」

 

「それはもう、深雪のためにですから」

 

「ありがとうございます、蒼士くん」

 

「実は予約したお店の料理が気になっていたので、丁度良かったんだよね」

 

「……私の感動を返して下さい」

 

お店を回りながら会話をしていくうちに砕けた会話をしたり、冗談を言い合える仲になるぐらい親交を深めている蒼士と深雪。

 

そして何よりも未だに手を繋いでおり、お店の中で商品を触る時には手を離しているが、すぐに手を繋いでいたりする。蒼士は意識して手を握ってあげていたが、深雪は完全に無意識で彼の手を繋いでいる。

 

「美味しいです、流石は蒼士くんが予約して下さったお店ですね」

 

「……」

 

「蒼士くん? どうかしましたか?」

 

「上品で綺麗な食べ方だね、周りの人たちも見惚れてしまっているよ」

 

「そう言われると食べれなくなってしまいます」

 

「食べる姿って意外と見られているものだからね、深雪の食べる姿から育ちの良さ、人柄の良さが垣間見えるよ」

 

「……蒼士くんには私はどう見えているんですか?」

 

「素敵な人だなって思ってるよ」

 

「褒めても何も出ませんよ」

 

ふふふ、と口に手を当てて笑う深雪の姿も美しく綺麗であると蒼士は思っていた。周りで食事をする人達も男女関係なく、深雪の一つ一つの動作に見惚れていた。

 

蒼士自身も周りにいる綺麗で美人の美女、美少女を見慣れていなければ終始照れていただろうと思っていた。

 

「蒼士くん、先ほどのお店にもう一度行ってもらっていいでしょうか?」

 

「気になるのあったかい? 他にも回るお店もあるけど?」

 

「うーん、そうですね、まだ見て回りましょう」

 

食事も済ませてお店を回る蒼士と深雪。人混みとかはないのに二人は手を繋いでいた。蒼士から出された手を深雪は無自覚で握っていた。

 

深雪は達也のプレゼントを決められた。蒼士にも話を聞きながら良いと思ったモノであった。

 

「失くさないようにちゃんと持っていなよ」

 

「子供じゃないんですから大丈夫ですよ」

 

「高校生なんてまだ子供だよ」

 

自然体な深雪はとても可愛くてドギマギする蒼士であった。

 

「あ」

 

「どうした? コレが気になるかい?」

 

「いえ、見事な細工の桜のブローチだと思いまして」

 

「買ってあげるよ、むしろ買わせてよ」

 

「いいんですか?」

 

「うん、深雪にとっても似合うと思うからさ」

 

手に取って確認して深雪に桜のブローチを着けてみるととっても似合っていた。深雪自身の素材がいいからというのもあるが深雪の魅力をさらに際立たせており、店員さんも感激したように深雪を褒めてくる。

 

「ありがとうございます、蒼士くん、大切にしますね」

 

「俺が深雪にプレゼントしたかったから買ってあげたんだ、気にしなくてもいいよ」

 

「いえ、今度ちゃんとしたお礼をします」

 

「そっか、じゃあその時を楽しみにしてるね」

 

はい、と返事をしてくれた深雪は誰もが見惚れてしまうような綺麗な笑みを浮かべてくれている。達也が大事にしている理由が分かってしまう気がした蒼士。血が繋がっているとか兄妹とか肉親だとか関係なく、一人の女の子として惹かれるものを感じられるのだ。

 

神秘的な美貌で、美しすぎる容姿もしているが守ってあげたくなる純粋さと素直な性格が保護欲を刺激して、男性を(とりこ)にするのだと蒼士は理解してしまう。容姿だけでも男性を虜にするのに性格でも虜にするなんて、深雪恐ろしい子、と思っていた蒼士。

 

「蒼士くん、また一緒に出掛けて欲しいって言ったら来てくれますか?」

 

「勿論だよ、今日は十分に楽しませて貰ったからね、深雪も楽しかったかい?」

 

「はい、お兄様以外の人と出掛けるのは初めてでしたが、蒼士くんの優しいエスコートも楽しい会話も出来て、とても良い一日でした」

 

「うんうん、嬉しいことを言ってくれるね」

 

「本当のことを言ったまでですよ」

 

「さてと、夜になってきたから帰りますか、家までのエスコートをしても宜しいですか?」

 

「はい、宜しくお願いします、蒼士くん」

 

蒼士にプレゼントして貰った桜のブローチを身に付けて、蒼士のエスコートで家まで送ってもらう深雪。

 

従者のような演技掛かった動作で蒼士は手を出しており、それに自然な流れで自分の手を差し出す深雪はまるでお姫様であった。

 

 

 

 

「深雪、今日は何か良いことがあったのか?」

 

「ありましたがお兄様には内緒です」

 

「(深雪が幸せそうならいいが、深雪にしては珍しく隠し事か)」

 

「コーヒーを淹れてきますね」

 

「あぁ、深雪のコーヒーは美味しいからね」

 

「ふふふ、お待ち下さい」

 

家の中でも深雪は桜のブローチを身に付けていた。

 

上機嫌な深雪は達也のためにコーヒーを淹れている時に胸元に蒼士からプレゼントされた桜のブローチが目に入り、笑みを浮かべていた。

 

深雪自身もとても気に入っているが、兄以外の男性からの初めてプレゼントということなのか、蒼士からのプレゼントだからなのか、どちらにせよ、深雪の中で蒼士の存在は大きくなりつつあった。




深雪が達也の誕生日プレゼントを蒼士と深雪と秘密で買いに行く話でした。

このような話を原作キャラで書いていこうと思います。
クロスオーバーキャラでは書かないと思いますが原作キャラと絡めるのはやると思います。

次の更新は10日土曜日です。
来週から仕事が忙しくなるので更新が遅れます。
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