渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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九校戦編
第十八話


ブランシュの件が終わり、第一高校の雰囲気は九校戦に向けて着々と動き出していた。

 

毎年全国から魔法科高校生たちが集い、魔法関係者のみならず多くの観客を集める魔法科高校生たちの晴れ舞台、九校戦がもうすぐ始まろうとしていたのだ。

 

「というわけでほのか、雫は九校戦が終わるまでウチで暮らすことになりました。学校だけではなく、家でも九校戦の訓練をしたいという二人の要望により、ちなみにご両親は承諾済み」

 

「意味わかんないだけどッ!?」

 

放課後の喫茶店での蒼士のいきなり発言にエリカが大声を上げて席を立ってしまっていた。周りにいた他の人の視線を一身に受けてしまい、咳払いして座り直すエリカ。そしてエリカ以外の達也、レオ、幹比古、深雪、美月は驚愕の表情を浮かべていた。

 

「いやいやいや蒼士、君たちはまだ未成年なんだよ、そんな「今、卑猥(ひわい)なことを考えただろう?」なぁっ!? ち、違う、そんなこと思うわけないだろう!」

 

幹比古が蒼士に声を掛けていた。若い男女が暮らすのはどうか、と言おうとしていたのを蒼士に阻まれた。幹比古は男女が一つ屋根の下で、というシチュエーションを想像して一瞬でもエロい方面を考えていなかったとは言えなく、自ら頬を赤くさせて認めてしまっていた。

 

エリカや美月も卑猥という単語に反応して頬を赤くさせてしまい反応してしまった。達也は紅茶を飲みながらスルー、レオはよく分かっておらずシーザーサラダを食べていた。

 

「へぇー、蒼士くんはほのかと雫と一つ屋根の下で何をするんですか?」

 

蒼士の隣の席で目を細めて蒼士を見ていた深雪。エリカや美月はひゃ、と悲鳴にも似た声を上げてしまい、幹比古は石のように固まり、レオはフォークを落としてしまっていた。

 

「み、深雪、どうした」

 

紅茶を飲んでいた達也はむせてしまっていた。明らかな深雪の変化に冷静な達也も焦っていた。目を細めてジッと見る深雪は美しく怖いという印象を周りに与えていた。

 

「だから九校戦に向けて訓練だよ、練習、特訓。というか深雪も来てくれよ、深雪にとっても訓練になるし、何よりも競うべきライバルがいるとほのかも雫もモチベーションが上がるから」

 

深雪から自分に向けられた視線を気にもせず話す蒼士。図太い神経しているな、と改めて周りにいる一同は思っていた。

 

「はい、是非とも伺いますね、お兄様もいいですよね?」

 

「勿論、友達だから良いに決まっているだろう」

 

だそうですお兄様、といつもの可愛らしい笑みを浮かべる妹の深雪に戻っており安心する達也だが、さっきの深雪の反応は一体なんだったんだ、と疑問を残してしまう達也。妹のことに関しては感情が働くが今まで感じたことがなかったものであったと達也は感じ取っていた。

 

「まさか本当に二人の両親が許すとは思ってなかった、そこまで信用されていたのか」

 

蒼士は勘違いしていた。ほのかと雫の両親は蒼士のことを異常に信用しているのだ。

 

ほのかの両親には娘が襲われたのを助けられたのもあり、感謝されているのもあり評価は高く、娘から蒼士の話ばかり聞かされて、信用できる人物と思われ、最後の一押しがほのかの家に訪れた時に両親と蒼士が改めてゆっくり会話をして気に入ったのが決定打であった。蒼士がほのかの家に行くと「孫の顔が見たい」など言われ遠回しに娶れと言ってくるのが定番になっていたりする。

 

雫の両親に関しても同様かそれ以上で父の北山(きたやま) (うしお)、母の北山(きたやま) 紅音(べにお)に婚約者候補をすっ飛ばして婚約者にさせようとしている。潮とは会社設立当初からお世話になっており、潮も日も浅いのに結果を出して発展させていく蒼士を気に入っており、雫とも馬が合うようで前より笑顔を見せてくれたことで信用はカンスト気味になっている。

 

母の紅音は最初は警戒しており、優秀すぎる若者の素性が簡単に掴め、普通すぎる蒼士の情報に得体の知れない者を娘の近くに置いておけないと警戒していたのだが、彼がアパレル関係の仕事に幅を広げていき、女性の紅音に意見など商品のモデルなどを頼む内に打ち解けてしまったのだ。最後の一押しになったのは化粧品をプレゼントしたのが良かったらしく、それをとても紅音が気に入った為であった。今ではいつでも家に来ていいわ、と言われるぐらい仲良くなっている。

 

雫の弟である北山(きたやま) (わたる)とも仲良くしているので、雫の家に行くと雫と一緒に蒼士と居ようとして雫を怒らせてしまうのもしばしば。

 

蒼士はほのかと雫の両親が信用度MAXなのを知らないのだ。最初の頃に触れて以来、両親たちには触れておらず固有魔法を使っていないので知らないのであった。

 

二人の両親とは仲良くさせてもらっているので大変感謝していた蒼士の行いが彼等に届いていたようだ。

 

「蒼士さんって誰とでも仲良くなれますから」

 

美月が思ったことを述べてくれた。それに同意する一同。最近では普通に森崎と話していたりするのを一同は知っていたからだ。入学早々に絡んできて揉めたりもした森崎たちと今では普通に話しているのだ。

 

「そっか、ありがとう美月。深雪だけじゃなくみんなも泊まりに来ても良いからね、部屋は余ってるから」

 

蒼士の地下のことを知ってしまったので是非ともまた行きたいと思っていたので喜ぶ一同。

 

「でも俺、深雪、ほのか、雫たちを優先的に使わせてくれよ、九校戦のメンバーとして出場するんだから」

 

分かってますー、とエリカが笑顔で述べた。

 

「でも蒼士も達也も大変だったね、期末試験の結果を疑われて」

 

幹比古の言葉にその場が静まる。

 

「俺は入試で手を抜いていましたって言ったら納得されたけどね」

 

「俺は実技試験は手を抜いたんじゃないかって疑われたがな」

 

期末試験の結果が九校戦のメンバー候補に考慮されるのは全校生徒が知ることであったが、その中で蒼士は一年一科生たちを抜いて総合二位という結果を出しており、実技試験は深雪よりはわずかに下であったが二位、記述試験も二位という二科生ではあり得ないだろうという偉業を成し遂げてしまったのだ。何か不正があったのでは、という疑いも出たようであったが、本人の名前を見たか聞いた瞬間、何故か納得されてしまったのだ。梓條なら出来そうだな、梓條なら普通じゃんなど生徒だけでなく先生たちにも認識されていたのであまり疑っていなかったようだ。

 

記述試験一位にいる達也も先生たちから多少の質問などがあったようだが、インパクトが強すぎた人の影響ですぐに誤解は解けていた。

 

だが、二科生がこんな成績おかしいという輩はいるもので蒼士に突っかかってくる者たちもいたが、人が少ない場所に蒼士が呼び出し、優しく丁寧にお話しすると男性は蒼士を見るだけで体を震わせてビビってしまうようになり、女性は頬を赤くさせて息も荒くなり、股をモジモジさせて蒼士を見つめるようになっていた。

 

「でも誤解は解けて本当に良かったじゃねぇか」

 

レオの言葉に蒼士も達也も安心したように頷いていた。

 

それからは他愛のない話をして過ごした。

 

蒼士とエリカで剣道部に乗り込み気合いを入れさせた話、蒼士と達也と幹比古の古式魔法の話、蒼士の家の訓練室に通いつめようとする深雪とレオの話など学生らしく楽しく過ごせた時間であった。

 

 

 

 

友達との楽しい一時(ひととき)を過ごした蒼士は北山家へ訪れていた。雫が蒼士の家に住む許可が出たので迎えに来ていたのだ。

 

「よく来てくれた、蒼士くん、君なら雫を安心して任せられるよ」

 

蒼士の背中を叩きながら気さくに話しかけて来てくれた人が雫の父親である北山潮であった。大実業家であり蒼士の才能にいち早く気付き、全面的な支援などを行ってくれた人だ。

 

「はい、雫のことはお任せ下さい、この身に掛けてお守りいたします」

 

頭を下げながら蒼士は自分への信頼、信用が尋常ではないことを知った。そのことを知れてとても嬉しく思えた蒼士。お世話になった人からの厚い信頼は何よりも嬉しく、胸が暖かくなっていた。

 

「ははは、紅音聞いたか、相変わらずいい男だな」

 

「ふふふ、私が潮くんと出会っていなかったら蒼士くんに惚れていたわね」

 

潮の隣にいるのは妻の北山紅音であった。頬に手を当てて蒼士を見ながら述べていた。彼女は雫が蒼士の家に住むことに一番に賛同した人でもあり、このまま蒼士と娘の雫がくっ付いて欲しいと願う人でもある。

 

「ちょっと、お母さん何言ってるの!?」

 

荷物を持った雫が両親の後ろから現れた。先ほどの蒼士の言葉が聞こえていたのか頬を赤らめて照れているようであった。その後ろには弟の航が付いて来ている。

 

「でも潮くんがいるから私は幸せなのよ」

 

「紅音ぉぉ!」

 

潮が感動したように紅音の肩を抱き、自身に引き寄せ、優しく抱き合っていた。他人が居てもイチャつくのはこの二人にとっては日常茶飯事。

 

「蒼士さん、姉さんをお願いします」

 

両親の行為を見慣れてる雫の弟である北山航が蒼士に頭を下げてお願いしていた。大切に思っている姉を一時的とはいえ預けるのだから航も精一杯の気持ちを込めて言葉を述べてお辞儀をしていた。

 

「大事なお姉さんは俺が守るよ、航」

 

蒼士は航の頭を撫でながら返事をした。姉のことを大事に思っている気持ちが蒼士には伝わっていた。

 

「もう九校戦の間だけなんだから」

 

「それほど雫のことを大切に思っているって事だろう」

 

大事(おおごと)のような言われように照れたようにそっぽを向く雫に蒼士は北山家族の気持ちを代弁していた。家族のことを大切に思っており、暖かなこの家庭に触れているのは蒼士も心地良く好きであった。

 

「体には気をつけるんだぞ」

 

「蒼士くんと上手く過ごすのよ」

 

「毎日電話します、姉さん」

 

家族に見送られながら蒼士と雫は車に乗り、ほのかの家へと向かう。車に乗ってから五分もしないうちに雫の携帯端末に着信が来たのには思わず蒼士は笑ってしまっていた。

 

雫が通話中なので蒼士は運転席の人物に話し掛けていた。

 

「今日の予定を変えてしまってすまないね、コノヱ」

 

「蒼士様が気にすることはありません、我々は蒼士様の役に立つことが至上の喜びなんですから」

 

車を運転している者も蒼士のメイドの一人であった。

 

彼女は(つるぎ) コノヱ(このゑ)という。黒髪ロングであり、背も高く、スタイルも良く、顔も整っており美女と言える。改造したメイド服を着ており、彼女の他にも同じようなメイド服を着たメイドが何名かいる。武勇に秀で剣の達人でもある。職務に厳格で部下からの絶対の信頼も得ている。反面、可愛いものが好きなど女性らしい一面も併せ持つ。

 

「コノヱをこれからも呼ぶことがあるかもしれないけど宜しくね」

 

「勿論です、蒼士様(やった! 蒼士様の側に居られるなんて幸せだ)」

 

蒼士の言葉に平然と答えるコノヱだが、内心でお慕いしている主人と一緒に居られるとウハウハであった。メイド内でも蒼士を慕う者は数多く二人きりになることなど殆どないのでこうゆう機会は貴重であったのだ。そんな状態でも運転には一切影響がなく、目的地へ向かって行く。

 

 

 

 

北山家と同じ様に両親が見送り来ており、蒼士と話をしていた。ほのかはその間にコノヱに荷物を預けていた。

 

「君にならほのかのことを任せられるから頼んだよ」

 

「ほのかのことを宜しくお願いします」

 

ほのかの父親も母親も全面的に蒼士を信頼、信用しているのを蒼士は把握した。ほのかの両親とはほのかが襲われた時に守ってあげてから付き合いであったが、そこまでの付き合いはなかった。それからほのかに誘われ、家に招待されて食事をしたりする以外に交流はなかったのだが、異常に好感度が高かった。

 

だが、蒼士には思い当たる点があった。

 

『エレメンツ』の血統。

 

現代魔法が確立される前は地水火風雷光などの属性分類が研究され、未知数の要素が多い力に権力者が怖れた結果、遺伝子レベルにおいて主への絶対服従が付与された。そしてエレメンツの末裔は高確率で依存癖が観測されていた。

 

ほのかは光のエレメンツの末裔であった。蒼士と出会い、助けられ、蒼士との時間を過ごしていく内に依存傾向が伺えた。危険な所を助けられた運命的な出会いであったのでほのかにとってはとても心に残る出来事であったのだ。

 

両親は毎日のように蒼士の話をするほのかを見て、自分達も同じ経験があるので察したのだ。娘が依存した相手を確かめるために食事などで交流しながら蒼士の事を探り、問題ないと判断したようである。

 

「はい、ほのかは自分にとっても大切な存在です。若輩の身ですが悲しませないと約束します」

 

ほのかの両親の思いを受け取り、頭を下げて述べた蒼士。そんな彼を見て、笑顔で安心したようであったほのかの両親。

 

「そ、蒼士さん、雫も待っているから早く行きましょう」

 

蒼士の言葉が聞こえていたせいか恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせて蒼士の腕を掴んでいたほのか。その光景にほのかの両親も微笑ましそうにしていた。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「う、うひゃい(蒼士さんが触ってくれてるよー!)」

 

ほのかの両親に挨拶も済み、ほのかの手を握り車の方に歩いていく蒼士。急な展開にほのかは動揺を隠せず舌がもつれていた。

 

ほのかを見送ったほのかの両親は一人娘がいなくなってしまい、寂しい気持ちになっていたが奥さんの方からほのかに妹か弟を作ってあげようと誘い、二人で励むのであった。

 

 

 

 

蒼士の一軒家に着いてから好きな部屋を使っていいということ聞いたほのかと雫は蒼士の部屋の隣と真正面の部屋を選んでいた。部屋などの掃除はメイドの斬美とシャロンがしてくれたおかげで埃一つない部屋になっている。メイドの二人に日用品や必要な物の買い物をお願いしていたのでほのかも雫も困る事はなかった。というかほのかも雫も自分達の好みを把握していることに驚愕していた。

 

これからは蒼士のメイド達の誰かが家にいるようになり、お世話などをしてくれるが出来る事は自分達でするように、と蒼士がほのかと雫に説明していた。二人とも異論はなく了承していた。

 

「じゃあ、さっそく練習して来ていい?」

 

荷物の整理などもある程度終わると雫が興奮気味に蒼士ににじり寄っていた。

 

「いや、今日はもう遅いから明日にね、それよりも他にやることがある」

 

「他ですか?」

 

蒼士の言葉に疑問の声を上げるほのか。雫も同じようで分からないといった表情である。

 

「今から二人が身につけている通常型のCADの調整をする、そのために二人には大事なことをして貰うよ」

 

真剣な表情で述べる蒼士の迫力に並々ならぬ事だ察する二人。

 

「服を脱いで、俺の前に下着姿で立ってくれないか」

 

「「……へっ?」」

 

思わず情けない声を出す二人。理解が追いついていないほのかと雫であるがだんだんと分かってきてしまい、顔を赤くしていく。

 

「ちょ、蒼士さん、それってセクハラだよ!?」

 

「わ、わ、わ、あわわわ」

 

顔を赤くさせて雫は蒼士に強い言葉を述べ、ほのかは大混乱して喋れなかった。

 

「二人の身の安全のためにCADの調整は必要だ。勿論、俺が全力で二人を守るがもしも俺が間に合わなかったことを考えてだ。そして二人の調整は本格的にしようと思うからウチの調整装置は服を着ていてもいいけど、本格的に調整を行う時はなるべく服は脱いでいて欲しい」

 

自分達の身を守るために魔法が必要、そして魔法を使用するためにはCADが必要、そのCADの性能によって実力は変わる。そのことを知っている二人は自分達のことを心配しての行いなんだと理解してはいるものの恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

普通に考えれば異性に身体を見せるなんて恥ずかしいものだ。それが好意を持つ異性なら尚更。

 

「わ、分かりました! 光井ほのか突貫します!」

 

意を決して行動したのはほのかであった。ほのかが服のボタンを外し、脱ぎ始めたのだ。顔を真っ赤にさせて上着を脱いでいく。

 

「わ、分かった、言う通りにする」

 

雫もほのかと同様に顔を真っ赤にさせて服に手を掛けていた。ぎこちない動きで蒼士のことをチラチラ見ながら脱いでいく。

 

その光景をソファに座りながら見ていた蒼士。視線を逸らすことなく二人を見ている蒼士はまるで王様のようであった。

 

「蒼士様、御巫山戯(おふざけ)も大概に」

 

「そういうことは私達の担当ですよ、蒼士様」

 

パチンッ、と素晴らしくいい音が響き、蒼士は頭を抱えて痛そうにしていた。叩いた者はメイドの斬美とシャロンであった。二人は主人の余りにもふざけた行いに制裁を下したのだ。

 

「ほのか様、雫様、とりあえず手を止めて頂いていいですよ」

 

斬美が二人に静止するように忠告していた。二人ともブラジャーが見えており、それだけでも青少年には刺激が強いものであるのに平気な顔をして痛む頭を摩る蒼士。

 

「調整装置は地下一階ですから、下着の姿のまま地下まで行くつもりですか? 露出性癖があるなら御止めはしませんが」

 

シャロンのこの言葉に脱ぎ掛けていた服を着直すと蒼士の視線から逃げるように斬美の後ろに隠れていた。

 

「いや美少女二人の半裸なんて贅沢してみたいじゃん!」

 

痛む頭を摩りながら述べた蒼士のことを睨みつける雫とモゾモゾと恥ずかしく立ち直れないほのか。

 

「全く変態ですか」

 

「ですから、そういう要望は我々メイドの役目ですから言ってくれればよいのです」

 

斬美は呆れていたがシャロンの方は乗り気であった。そのことに同僚を睨む斬美、ニコニコしていつも通りいるシャロン。

 

「俺は先に地下にいるから二人に任せる」

 

それだけ言うと蒼士は地下に降りて行った。蒼士自身は半ば冗談まがいで言っていたが、思いのほか素直に二人が従ってくれたので楽しむつもりであった。

 

「雫様もほのか様も安心してはいけません、調整するときは結局脱ぐのですから」

 

安心したつもりはなかったが斬美の声で再度自覚することに。蒼士の目の前で脱ぐということは未然に終わったがCAD調整のために下着姿にならなければいけなかったのだ。

 

「(恥ずかしい……けど、蒼士さんって私の体に興味あるのかな)」

 

隣のほのかの体つきと比べて貧相だと思ってしまう雫。こんな身体に蒼士は興味を示してくれるのかと内心で思いを巡らせていた。

 

「(ええい、ままよ! それに私は蒼士さんになら見られてもいい、寧ろ見て欲しい、蒼士さんの視線を釘付けにさせたい、蒼士さんになら全てを捧げたい、この機を活かさずしてどうするのよ!)」

 

ほのかは内心で感情が暴走気味であった。というか吹っ切れている。自分が自覚しつつあった蒼士への依存心が高まった影響で彼のものになりたい、彼と過ごしたいとなどの感情が現れてきている。

 

彼の家に住む、彼と衣食住を共にする仲になる、彼に身を預ける、つまりは全てを差し出すという恋するほのかの解釈により蒼士に尽くしたい、蒼士の役に立ちたい、蒼士に全てを捧げたいなどの感情を確立していったのだ。

 

「大丈夫ですわ、御二方とも蒼士様に大切に思われております、きっかけさえあれば蒼士様に抱いて頂けるのは間違いないです」

 

笑顔のシャロンは二人が内心で何を考えているかをまるで分かっているような発言をした。ほのかも雫もドキッと心臓が跳ねるのを感じており、図星に近いことを言われて驚きと恥ずかしさで顔を伏せてしまった。

 

人の感情なども把握するのもメイドの嗜みだと答えるシャロンであった。そんなシャロンは二人にアドバイスをする。

 

「ですから、蒼士様に–––––」

 

シャロンの言葉に顔を見合わせて笑うほのかと雫。ため息をして困ったような表情を浮かべる斬美がその場にいるのであった。

 

 

 

 

ほのかと雫は病院の検査着の様な、簡素ガウンを身に着けていた。傍には斬美とシャロンも控えている。蒼士は二人のCADを預かっており、調整する準備が出来ていた。

 

調整装置の計測用の寝台に横たわる時には二人とも下着姿であり、恥ずかしそうにしている。蒼士の視野の中には横になるほのかと雫の下着姿がどうしても入ってしまうので内心で有り難く思いつつ、ディスプレイにデータが表示されると画面に集中して意識を調整の方へ向けていた。一人一人のデータを取ったので二人には服を着ていいと述べた蒼士だが、二人はガウンを羽織って蒼士に近付いて来ていた。ディスプレイに集中しているが気配で近付くのが分かっていた蒼士。

 

「蒼士さん! 乙女の柔肌を見たんだから責任取って!」

 

「そうです! 私達だけ恥ずかしい思いをしたんですから蒼士さんも何かして下さい!」

 

ガウンを羽織っただけの二人は蒼士の両腕にそれぞれ抱きついて惜しみなく体をくっ付けていた。蒼士は思わず動揺してしまい、キーボードを打ち間違えエラー音を鳴らしていた。

 

二人がこんな大胆なことをするのには誰かの後押しがあったのだろうと予測を立てていた蒼士は確認するために後ろに控えているメイドの二人に視線を向けると斬美がシャロンを指差し、シャロンはうふふ、と微笑んでおり、確信犯がそこにいたのだった。

 

犯人が分かったところで両腕に顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている二人の対応に動く蒼士。

 

「責任って、俺も脱げばいいのか?」

 

「違うって!? どうしてそうなるの!?」

 

蒼士の脱ぐ発言に首を左右に振って否定する雫。

 

「私と雫の二人と一緒に寝て貰っていいですか?」

 

上目遣いで蒼士のことを見つめるほのかに可愛いな、おい、と内心呟く蒼士であった。雫も頷いている。

 

二人の美少女のお願いを蒼士が無視するわけがない。

 

「いいよ、今日だけじゃなくて、毎日でもいいよ」

 

蒼士の発言に喜ぶほのかと雫。ハイタッチして服を着るために地下から上がっていくほのかと雫はシャロンともハイタッチして喜びを共有していた。斬美は蒼士に会釈してからほのかと雫の後ろを付いて行くのであった。

 

「二人のCADの調整を終わらせた後に二人の美少女と一緒に寝るのか……ご褒美じゃん」

 

地下一階の研究室に一人になった蒼士は上機嫌になりながら作業を進めていく。ご褒美が待っているからといって手を抜くことはせず最高の性能に仕上げていく蒼士。

 

 

 

 

蒼士のベットは三人が寝ても余裕の大きさであった。

 

「パジャマ可愛いね、二人とも」

 

「褒めても何も出ないよ」

 

「雫の言う通りです、褒めても私達が密着するだけです!」

 

「女の子特有の柔らかさなのか、安心感で眠くなってきたかもしれない、二人共もっと抱きついていいよ」

 

「そうする、私も眠くなってきたかも」

 

「私も抱き付きますね、雫は寝つきがいいもんね」

 

「二人の温もりのおかげかな、なんだか心地いいよ」

 

「私も蒼士さん抱き枕、好きかも」

 

「うん、わ、私もかな(このまま身を委ねていたい)」

 

「普通なら美少女二人にこうして両サイドから抱きつかれているのに興奮した方がいいのかもしれないけど、安心しちゃってね」

 

「そのまま撫でていてね、蒼士さん」

 

「私はどんな蒼士さんでも受け入れます、そ、それと、わ、私も雫と同じように撫でて下さい」

 

「これから宜しくね、雫、ほのか」

 

「宜しく……zzzz」

 

「はい、宜しくお願いします、蒼士さん」

 

「雫は寝てしまったようだ、ほのかも眠いなら寝ていいからね」

 

「目が覚めちゃって眠れそうにないです」

 

「そっか、じゃあ雫が起きないように喋ってようか」

 

「蒼士さんも眠かったら寝て下さいね、私のために起きてなくていいですよ」

 

「好きで起きてるから平気だよ、それとも寝て欲しいかな? もしかしたら俺が眠っている時にほのかが俺に悪戯するのかい」

 

「し、し、しまんせんよ!(ななな、なんかバレてる!)」

 

「ほのかの思っていることは二人の時にしようか、二人きりでゆっくりじっくりとね、今はゆったりと喋っていようか」

 

「はい(今私が思っていることって、蒼士さんに抱かれたいとかキスしてみたいとかだったけど……まさかバレてるの!? でも、しようってもしかして本当に抱いてくれたり、キスしてくれたりしてくれるのかな?)」

 

蒼士とほのかは眠気が来るまで会話をしていた。ほのかがA組になれて深雪と出会えたことに熱弁し、蒼士とほのかと雫と一緒に出掛けた話などお互いに笑顔になるような会話を楽しんだ。

 

 

 

 

「蒼士さん、寝ちゃいましたか?」

 

ほのかは声を掛けて、蒼士の顔を覗くと目を閉じて穏やかに呼吸音が聞こえ眠っているのが分かった。

 

「……ごめんなさい、蒼士さん」

 

普段の凛々しい蒼士も好きであるが無垢な寝顔の蒼士を見て心臓が速くなっていた。寝顔に見惚れてしまっていたほのかは彼の顔に近付き唇を見つめてしまっていた。頬が徐々に熱を持ち始めるのを感じるほのかは自分の欲望が高まっていた。

 

「好きです、蒼士さん」

 

我慢できずに蒼士の唇に自身の唇を重ねてしまっていたほのか。触れるだけのキスであったがほのかは自身の唇を触って惚けていた。相手の眠っている隙にキスをしたという罪悪感もあるのだが、それ以上に幸福感が上回ってしまっていた。欲望に負けてしまったほのかはもう一回と呟くと二度目のキスをした。そして三度目のキスも。

 

「(蒼士さんは誰にでも優しいし、私以外にも好意を持っている女の子も多い、けど今だけは自分のもの)」

 

蒼士の横顔を見ながら彼の腕に抱き付きその手を自分の下半身に持っていき、触って欲しいところを触って貰うほのか。腕を触られながらも眠っている蒼士を確認すると彼の手を胸元に誘導し、触らせる。蒼士が眠っていることをいいことに欲望を叶えていくほのかであった。

 

己の身体が満足感で満ちると自分の胸の谷間に蒼士の腕を挟んで密着して眠りつくほのかである。幸福感と満足感に身体を支配されたほのかはすんなりと眠れることができた。




花右京メイド隊を知っている人がいれば嬉しいです(^_^)

花右京メイド隊に登場する人物。
・剣 コノヱ

次の投稿は明日4日です。
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