渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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第十九話

魔法科高校にも魔法以外の一般科目の授業はある。その中には体育の授業もあり、フットサルから派生した競技でレッグボールというものがある。透明の箱の中で軽量のボールを使用して相手のゴールに蹴り込むというシンプルなスポーツだ。箱の中ということもあり跳ね返ったボールなども駆使してゴールを決めるのもありであった。

 

「幹比古もかなり身体が動くんだな」

 

「達也と蒼士とレオに比べたら僕なんて全然だよ」

 

達也は幹比古の予想以上の身体能力に意外感を覚えていた。パスの処理も的確で冷静な判断が下せていたと達也には判断できた。

 

幹比古が述べた三人よりかは動けていなかったことを述べているがこの三人は特殊であるから仕方がなかった。蒼士も達也も身体を鍛えて実戦経験を積んでいるので運動神経は高く、レオも山岳部所属のため人並み以上には鍛えているが、レオは生まれながら高い身体能力を持つのが保証されていた。ドイツで開発された遺伝子調整体魔法師であったからだ。

 

達也と幹比古はパスをした蒼士を見ていた。蒼士に追いつき隣に並ぶレオ。

 

「レオ合わせろよ」

 

「おうよ! 任せろや!」

 

蒼士が左足で、レオが右足で同時にボールを蹴ろうとしていたのだ。タイミングを間違えれば大怪我をしてしまいそうだが、二人は息ぴったりであった。普通ならどちらかの足を蹴ってしまったり、空振りで終わってしまうが二人は完璧なタイミングでシュートしていた。

 

『ツインシュートだぁっ!』

 

同じチームメイトだけでなく、相手チームのメンバーは興奮した面持ちで二人の同時のシュートに歓声を上げていたのだ。

 

『ボールが揺れたァ!』

 

タイミングとパワーが完璧にあったシュートはボールが揺れて分裂したように見え、ゴールキーパーには捕球不可能な必殺シュートになっていた。

 

キーパーは必殺シュートに反応することが出来ず、得点を許してしまった。ゴールを決めた二人はハイタッチして喜び、観戦していた女子生徒たちからは黄色い声が上がっていた。蒼士とレオはそんな彼女らに手を振りながら声援に応えて、達也と幹比古に合流することに。

 

「身体を動かすのはいいもんだな」

 

「全くだぜ」

 

肩を組み喜び合う蒼士とレオに思わず笑みを浮かべてしまう達也と幹比古。

 

その後は勢いのまま圧倒的点数でE組の勝利に終わった。試合終了後に対戦相手のF組の男子生徒が蒼士とレオに握手を求めていたりする。

 

試合も終わったので見学ゾーンから少し離れた位置に腰を下ろして休んでいた達也、レオ、幹比古の三人。

 

「蒼士のやつ、試合後なのに疲れてないのかよ、フルで動いてたのに」

 

レオの吐き捨てた言葉に達也も幹比古も同じ気持ちであったので頷いていた。

 

話題の蒼士は女子生徒たちからタオルや飲み物を貰ったりしながら会話をしているのだ。蒼士を囲むように女子生徒たちがいるので、簡単には抜けられなさそうであった。

 

「ほんとー、蒼士くんって人気よね」

 

「本当ですね、私もエリカちゃんも近付けませんでした」

 

達也たち三名のところにエリカと美月が近寄って来ていた。そしてエリカの格好を見てしまい、幹比古とレオは目を見開いて驚き、達也も視線が鋭くなっており、多少ではあるが驚いていた。

 

「エリカ、何て格好をしているんだ!」

 

幹比古が少し裏返った声を上げ、顔を赤くさせて、その原因を作ったエリカを視線に入れることが出来ず顔を逸らしていた。レオはギョッと驚いており、達也はもう驚いておらず特に反応なしであった。

 

「何って、伝統的な女子用体操服だけど? ブルマーって言うの」

 

キョトンとした表情で小首を傾けて答えるエリカ。三人に見せつけるようにするエリカに一人はおどおど恥ずかしがり、一人は照れたようにしながらも観察しており、一人は特に反応なしであった。エリカは美少女でスタイルも良く、鍛えているので引き締まっていながら少しも筋張ったところのない太腿(ふともも)、綺麗な素肌が健全な青少年には刺激が強かったようだ。

 

からかうつもりはなかったエリカであったが予想以上の反応に驚いていた。達也の無反応にはなんだか負けた気がしたので声を掛けようとするエリカであったが。

 

「ひゃわぁっ! そ、蒼士くん!? ちょ、なに触ってるのよっ!?」

 

「ブルマだね、おお、言われた通り鍛えているね、エリカ」

 

音も無く現れた蒼士はエリカの太腿や脹脛(ふくらはぎ)を触りながら揉んでいた。蒼士自身は特に表情を変えることなく、筋肉を確認していたのだ。

 

だが、エリカの方は急に触られ、悲鳴に似た声を上げてしまった。頬を赤くさせて身体を震わせて怒ろうとするエリカであったのだが。

 

「ちょ、あ、ん、く、(くすぐ)ったいって、っていうか、んぁ、はぁはぁ、や、辞めて、くれない」

 

「次は右足ね」

 

怒ろうとするタイミングに限って背中からビリっとした味わったことのない感覚が身体中に広がって、強く言い出せずにいた。片足を見終わったらもう片方に移ってしまって、さらに足全体にもエリカが体験したことのない刺激を受けてしまい、呼吸が乱れてしまっていた。

 

足に触れて観察している蒼士は平常通り、達也も特に無反応、レオは興味深そうに蒼士とエリカのやりとりを見ており、幹比古と美月は手で顔を抑えて二人のことを見ないようにしていたが、美月は指の隙間から覗き見ていた。

 

「うん、次のステップに進もう、次は、って大丈夫かい?」

 

エリカの足を観察、堪能した蒼士は立ち上がってエリカに言おうとしたが、顔を真っ赤にさせて息を整えるエリカを心配になったので声を掛けていた。

 

「はぁはぁ、なに、いきなり触ってくれてるのよっ!!」

 

伏せていた顔を急に上げて蒼士を睨みつけた勢いそのままに蹴りをおみまいするエリカ。鋭い蹴りが蒼士を襲うはずであったが当たらなかった。

 

「エリカの足はメリハリがあって、綺麗な肌で、まさに美脚だね」

 

「は、恥ずかしいこと言わないでよっ!?」

 

エリカの足蹴りを全て躱していく蒼士。一発も当たらないエリカはジャンプして回し蹴りを当てようとするがそれも回避されてしまった。着地の瞬間に足がもつれてしまい、前のめりに倒れそうになるが蒼士が受け止める。彼の胸元に収まってしまったエリカ。

 

「おちつい「隙アリ!」っ!?」

 

蒼士の胸元にいるエリカであったがゼロ距離の腹パンをおみまいしていた。拳を腹部に叩き込んだエリカであったが違和感を感じている。

 

「あんたの腹部硬すぎよっ! 私の手が痛いんだけど」

 

「ふっふっふっ、鍛えているんでね」

 

手を痛そうに痛みを取ろうと手を振っているエリカは腹パンされてピンピンしている蒼士に愚痴っていた。女性の力でも殴られれば痛いものだが、蒼士には一切効いていなかったようだ。

 

「エリカちゃん、大丈夫? 蒼士さん、いくらなんでもからかい過ぎですよ」

 

エリカを心配して美月が近付いてきてくれた。

 

「美月も足を揉んでやろうか、ほらほら」

 

手をワキワキさせながら美月に近付く蒼士に思わず動きが止まる美月。からかい半分で冗談を言う蒼士。そんな彼の行動は裏目にでる。

 

「……そ、そ、蒼士さんが、したいな、い、い、いいですよ」

 

顔を真っ赤にさせて声が途切れ途切れだったが、蒼士とエリカの耳に入っていた。真に受ける美月。

 

周りの女子と比べて圧倒的に胸が大きく巨乳といえる彼女は全体的にムチムチな体つきをしており、美月が差し出すように片足をゆっくり蒼士の方に動かしている太腿、脹脛はムッチリしている。

 

「な、なに言ってるのよ、美月! こんな変態馬鹿エロエロ魔人なんてほっといて行こう!」

 

「あ、エリカちゃん、そんな引っ張らないで」

 

エリカが美月を引っ張って女子グループの方に逃げていく。その後ろ姿を眺めながら一息する蒼士。

 

「お前も大胆だな、蒼士」

 

呆れながら達也が蒼士に近付いてきた。現在は肌の露出が控える世の中になっており、エリカのブルマはかなりの露出になるが、それ以上に乙女の柔肌を触って平気な顔をしている蒼士の度胸の凄さに感服していた達也であった。

 

「俺にはできないな」

 

レオも蒼士の肩を叩いて近くにいた。親しい仲の女子でも普通に喋ることなど、少しのボディタッチはあるかもしれないが、堂々と肌に触るのは自分にはできないとレオは思っていた。レオの考えは普通であり、普通ならセクハラになるからだ。

 

「そうだよ、僕が触ったら間違いなく血祭りだったよ」

 

まだ顔の熱が取れていないようで頬が赤い幹比古も蒼士に近付いていた。女性の柔肌を触って平気な顔をしている蒼士の凄さを改めて知り、幼馴染のエリカが恥ずかしそうにしているのも珍しくて驚いていた幹比古。それよりも自分では避けれないエリカの蹴りを軽々避けていた蒼士の身体能力にも驚いていたようだ。

 

「ある程度の好感度が無ければ嫌われてたな」

 

うんうんと自分自身に頷いていた蒼士。

 

普通なら同性であっても肌に触られるのを嫌う者もいるが、ましてや蒼士とエリカは異性同士であるのにエリカは触らせていたのだ。それだけ信用しているか、あるいは好意を持っているかになる。エリカが感じたことがなかった快楽で動けていなかっただけかもしれないが。

 

「いや好感度があっても普通は無理だと思うよ」

 

幹比古の言葉に同意するように頷く達也、レオであった。

 

授業も終わって教室でエリカと美月に会うとエリカは既に切り替えており、蒼士が以前やってみせた歩法を習得する為の話をしていたりして気にしている様子はなかった。

 

美月は蒼士の顔を見ると頬を赤く染めて、先ほどの自分が言ってしまった言葉を思い出してしまっていた。蒼士はその事を勘付いていたので美月に近付いて耳元で何かを呟いてみせた。蒼士の言葉にボンッと顔を真っ赤にさせて顔を伏せてしまった美月。それから放課後までぼーっとしては、顔を赤面させたりの繰り返しをすることに。

 

「(もっとスゴいことをしようねってどういうことなんですか蒼士さん!? エリカちゃんだって気持ち良さそうにしていたようにも見えたし、声も色っぽかったような気もするし、それ以上って……わ、わ、わたしったらなに考えてるのっ!? )」

 

 

 

 

お昼を生徒会室で過ごす蒼士と達也と深雪。いつもの生徒会メンバーに摩利もおり、食事をしている。

 

夏の九校対抗戦に向けての準備で忙しく動いており、いつも活き活きとした笑顔が魅力の真由美も精彩を欠いていた。

 

「ごめんね、蒼士くん。選手なのにエンジニアも手伝わせちゃって」

 

「お気になさらず、自分は副担当でほとんど補助役ですから負担は少ないので大丈夫ですよ」

 

真由美が申し訳なさそうに蒼士に謝っていた。選手として出場する蒼士は副担当の技術者も兼任することになっていた。三年生の技術者が少ないのでその穴を埋めるのと他の担当者の補助も手伝うことになっている。

 

蒼士が自分のCADを製作して調整しているのを知っていたので真由美から技術スタッフになって欲しいとお願いされていたのだ。

 

「三年生のエンジニアは蒼士くんのおかげで負担が減りそうです、本当に助かります」

 

鈴音もホッとしているようで蒼士に感謝していた。

 

「選手の方もだが、技術者の方も一苦労だな」

 

「そう言ってる摩利には自分でCADの調整をやって欲しいものだわ」

 

すまんな、と顔を逸らして真由美に言葉を述べた摩利。

 

「二年生は中条さんをはじめ優秀な人材がいますから安心ですね」

 

鈴音から声を掛けられたあずさは照れたように会釈していた。

 

「一年生は自分も手伝いますが、凄腕の達也が入るので大丈夫ですよ」

 

「何を根拠に言ってるんだ、蒼士」

 

蒼士の隣で呆れ気味にいる達也。達也は自分が九校戦の技術スタッフになることに反論していたが、生徒会メンバーが達也のシルバーホーンのこと、深雪のCADを調整していること、風紀委員会本部の備品のCADのメンテナンスなどを行っているのを知っていたので、真由美、摩利、あずさ、鈴音から半包囲されながらも反論していたが、最後には深雪にお願いされて完全包囲され、降伏して完全に諦めていた。

 

諦めた達也を見て、周りの人たちには見えないところで蒼士は『計画通り』と悪い笑みを浮かべていたりする。

 

「今日の放課後に達也くんも蒼士くんと同じように技術スタッフメンバーの前で実力を見せてね」

 

蒼士は真由美から(あらかじ)め技術スタッフをやって欲しいと言われていたので三年、二年の技術スタッフの先輩たちに紹介されていたのだ。その時には一年の二科生であるのを理由に文句を言われ、実際に実力を示すことになり、自分がお願いしたのだからと真由美が実験台になって実力を示して黙らせること成功していた。

 

納得できないような先輩たちもいたのだが、その場にいた服部の口添えもあり納得してくれたようだ。そして今日は達也がその番になったのだ。

 

「一年やら二科生やらで九校戦を台無しにされてたまるか、能力的に大丈夫なら文句はないだろうに」

 

多少のため息をつく摩利。学校の威信が掛かった大会なのだから実力がある人材を使わないでどうする、と摩利は思っていた。摩利のこの考えには生徒会のメンバーは勿論のこと克人や他の三年、二年の選抜メンバーが思っていることであった。

 

「微力を尽くします」

 

この場にいる人たちには期待されているというのを分かっていた達也。何よりも深雪のためでもある。

 

「九校戦でもお兄様にCADの調整してもらえるなんて、深雪は幸せです」

 

可愛い妹の頼みを達也が無視するわけがない。

 

達也に笑顔を向ける深雪は兄に頭を撫でてもらい幸せそうであった。そんな兄妹に触発された人物がいた。

 

「蒼士くん、私も頑張ってるから撫でてよ」

 

「よく頑張ってますね、七草先輩」

 

真由美が蒼士に甘えるように擦り寄ってきた。達也と深雪の兄妹のじゃれあいに触発されたようにおねだりする真由美。そして真由美の髪を自然な流れで触りながら頭を撫でる蒼士。最近の真由美の行動は露骨に蒼士に絡み、甘えているのが多くなっていた。

 

「お前らいつの間にそんなに仲良くなっているんだ」

 

この場は蒼士と真由美だけの空間ではない。二人以外にもいるというのに甘えだしていた真由美は恥ずかしそうにしているが蒼士が髪を触りながら頭を撫でてくれるのを受け止めて自分を心配してくれている、励ましてくれている、と感じ取れてしまい、安心して彼の優しさに甘えていたのだ。

 

「か、か、会長は恥ずかしくないんですか?」

 

「中条さん、会長は頬を赤くさせて恥ずかしくしていますが、蒼士くんの撫でテクに墜ちてしまってるのです」

 

イチャつく蒼士と真由美にチラチラ二人を見ながらも述べたあずさ、その答えを述べる鈴音。鈴音に関しては表情では特に気にした様子はなかった。

 

「市原先輩、腕を抓るの止めて下さい」

 

「何のことですか?」

 

真由美が笑顔を浮かべて蒼士の労いを受ける一方でもう片方の腕を抓る鈴音がいた。女性の力でも意外に痛いもので苦笑いをする蒼士に、何事もないようにしている鈴音。

 

「市原先輩には人がいないところで労うので許してもらえませんか」

 

「……」

 

蒼士の言葉に抓るのを止める鈴音。

 

「リンちゃんも私みたいに甘えればいいのに」

 

「私は会長みたいに、はしたなくないので」

 

ニヤニヤしながら真由美は鈴音のことを見ていた。真由美のにやけ顔に多少の怒りが込み上げた鈴音は強い言葉を述べた。

 

鈴音の言葉に頬を赤くさせたまま否定する真由美。はしたない、という単語を気にしているのか蒼士のことをチラチラ確認しながら鈴音と言い合う真由美。

 

「(わたしもシュウに会いたいな、はぁー、今日電話しよう)」

 

現実逃避の摩利は彼氏のことを考えていた。自分も甘えてイチャイチャしたいなどの欲望が頭を駆け巡っていた。モゾモゾと身体を動かして頬を赤くさせているので明らかに怪しい人物にしか見えなかった。

 

「(あ、司波くん、今日はシルバーホーンを持ってきているんだ)」

 

真由美と鈴音のやりとりを見ていたあずさであったが達也がシルバーホーンを取り出したので意識がそちらに向いていた。

 

「(会長も幸せそうな表情を浮かべている、蒼士くんに撫でられるのもいいのかな、ちょっとだけでいいから撫でて欲しいかも)」

 

兄に撫でられながら横目で真由美と鈴音に挟まれている蒼士を見ていた深雪。兄以外の異性に撫でられたことが無いので興味が出てきていた深雪であった。

 

言い合っている二人の手を握って落ち着かせることに成功した蒼士は約束があったので生徒会室を出ていく。

 

普通、好ましく思っていない異性などに手を触られるのは嫌なものだが、真由美も鈴音も蒼士に手を触れられ嫌がるどころか握らせていたりする。

 

「(リンちゃんもライバルか、普段はクールなリンちゃんも私が蒼士くんとイチャついてるのを見て嫉妬したのかしら? ふふふ、可愛いわね)」

 

「(私としたことが会長に乗せられてしまいました、反省しないといけませんね。それにしても蒼士くんに手を握られて予想以上にドキドキしてしまって、私も存外ウブなんですかね)」

 

 

 

 

蒼士は約束した人物と会っていた。

 

「いきなり頭を下げてどうしたんだ、森崎?」

 

「一緒に練習してくれないか?」

 

「九校戦の話か、勿論いいけどいきなりどうしたんだ?」

 

「自分の力がちっぽけなものだったって思い知ってしまってな、ただのメイドに俺も手も足も出なかったんだ」

 

「(ウチのメイドが森崎家のボディガードをボコボコにしたって聞いていたが、森崎自身も居たのか)」

 

「風紀委員で動いていた時のお前の動きや行動は見ていたから分かる。お前は只者ではないと、そして試験の結果でも明らかだった」

 

「……」

 

「二科生であっても優秀な人がいるって思い知らされたよ。だから一緒に出場するスピード・シューティングの練習に付き合ってくれ」

 

「あぁ、それは勿論だとも、こちらこそ宜しくな、俺のことは蒼士って呼んでくれ」

 

「ありがとう、俺のことも名前で駿(しゅん)と呼んでくれ」

 

お互いに握手して友情を築く二人。

 

蒼士は後で知った事であったが、HSA社は色々な人材を一人でも多く求めているのでボディガードの仕事をしている森崎家にも興味を持ち、仕事という名目で実力を試す模擬戦をした結果、五人のボディガードを瞬殺してしまったのだ。HSA社が保有するメイドの一人によって瞬殺された中に森崎駿もいたのだった。

 

 

 

 

蒼士と森崎が話している時の生徒会室ではあずさが達也のシルバーホーンに目を輝かせて興味津々であったり、FLT社専属のトーラス・シルバーについて熱く語るあずさにちょっと引き気味の達也。

 

深雪はドギマギしながら聞いていたが、それが行動に出てしまい、キーボードの打ち込みのミスを連発したりして周りの人に心配されるという出来事があったようだ。

 

放課後になると九校戦メンバーの選定会議にて予想通り二科生の達也に対して文句が飛び交ったが、蒼士という前例がいたので達也自身のエンジニアとしての実力を示すことで納得させていた。直接調整を目にしたあずさや一部の技術スタッフは達也の実力を高く評価し、技術スタッフに歓迎していた。納得していない者には三巨頭と服部副会長の言葉により黙らせることができた。

 

 

 

 

蒼士は一軒家の自宅のリビングで個人的な電話をしていた。ほのかも雫も蒼士の近くでソファに座りテレビを見ながらゆっくりとしていた。

 

「マジかよ、商品化したらウチの会社も受注するように指示しとくよ、本当におめでとう、歴史に残る偉業だぞ」

 

電話相手の話す内容に驚いて興奮していた蒼士。近くで聞いていたほのかと雫は相手が誰か分からないが仲が良く、とても良いことがあったのだろうと察する。

 

多少の会話をして電話を切った蒼士は携帯端末を置くとある人物に呼び掛けた。

 

「アルタイル、聞いていたと思うが本社に連絡しといてくれ」

 

「了解した、我が創造主よ、余に全て任せておくがいい」

 

蒼士が置いた携帯端末から粒子のようなモノが集まり構成されていき、精巧に出来たフィギュアのようなサイズの少女が出現した。アルタイルと言われた少女は、騎兵帽に改造した軍服を身に纏っており、足元まである銀髪の少女であった。

 

蒼士とHSA社で働く島崎(しまざき) 刹那(せつな)という女性と作成した人工知能、AIであった。

 

凝りすぎて性能とデザインがヤバいことになっていたのを作成してから気付いた蒼士と刹那であったが遅すぎた。服装に影響を受けたのか自己学習した結果、一人称が「余」になったり、蒼士と刹那といる時には「私」になったりと二人の予想に反して成長していくアルタイル。HSA社のデータ管理、他社へのハッキング、ネット上での性能は優秀といえるレベルを超えており、サイバーテロを起こす事もでき、インフラを破壊して一国を落とせるかもしれないと蒼士と刹那は予想している。

 

「余の妹も元気そうであったな」

 

「達也に預けたシリウスか」

 

達也に誕生日プレゼントとして渡したAIはアルタイルの妹にあたり、シリウスという名前を授けていた。達也もそう呼んでいる。

 

そして蒼士の電話相手は達也であり、飛行術式が完成したという報告を受けたのだ。加重系魔法の三大難問の一つが解決したという歴史的快挙であった。電話越しに深雪も声を上げて、兄の代わりのように喜んでいるのが聞こえていた。

 

「本当に凄いね、アルタイル」

 

「アルタイルさんって本当にAIなんですよね」

 

雫もほのかも蒼士から紹介された時には非常に驚いていた。今のところ第一高校の中では雫とほのかと達也と深雪ぐらいしかアルタイルの存在を知らない。三人に関してはアルタイルの性能などは知らないが達也は妹のシリウスを預かっているのでいつか気付く可能性はあった。

 

HSA社の中でもサイバー関係などの仕事に付いている者は存在を知っているが、それ以外の人たちには知られていない。

 

「お褒めに預かり光栄だ」

 

演技掛かっているが綺麗なお辞儀をして感謝しているアルタイルに改めて感心する雫とほのか。用件も済み手が空いたので二人に声を掛ける蒼士。

 

「じゃあ、九校戦の練習しますか?」

 

「待ってました! 最初は私のスピード・シューティングから手伝って」

 

「ずるいよぉ! 私のバトル・ボードからお願いします!」

 

立ち上がった蒼士の両サイドから抱き付く二人。家の中ということで周りに目が無いことをいいことに積極的になっている雫とほのか。

 

はいはい、と二人に誘導されながら地下に降りていく蒼士。俺も練習したいんですがね、と内心で思いつつも口にはせず二人の練習に付き合う蒼士であった。

 

三人を最後まで眺めていたアルタイルは消えていった。

 

 

 

 

「アルたんアルたん、そうたんのお風呂上がりの生写真をプリーズですー」

 

「ふふふ、松、君はスケベだな」

 

「そうたんには全開オープンですよ」

 

「よいぞ、ほら我が創造主の写真だ、とくと見るがいい」

 

「おぉぉぉぉ、これは売れるアングルですよー、この無垢な寝顔も最高ですぞぉー!「松さーん、なにをしているんですか」ヒィィィ、美哉(みや)たんッ!?」

 

「No.1か、君がどうして此処にいる」

 

「蒼士さんへの不埒な気配を察しまして」

 

「松を気絶させたか、恐ろしく速い手刀、余でなければ見逃していたな」

 

「アルタイル、貴女が生身の身体を持っていたなら松と同じ目にあっていたわよ」

 

「それは恐ろしい、では余は君に媚びを売っておこう、我が創造主の最高の一枚を君に献上しよう」

 

「……今日のところは見逃しましょう」

 

「君も欲には勝てぬか、では余はセツナのもとへ戻るとしよう」

 

アルタイルはそれだけ述べると美哉の前から姿を消した。気絶している松を起こす前にアルタイルから携帯端末に送られてきた写真をもう一度確認してから懐にしまう美哉であった。

 

美哉(みや)という名の彼女は常に和服姿のお淑やかな美人の女性である。普段から笑顔をたやさないのだが、怒ると背後に般若の面が浮かぶ。居合の達人でもあり、蒼士が保有する戦力の中でもトップクラスの実力者であり、実力者の鴉羽も本気の彼女に半殺しにされた経験があるほどであった。自身が慕う蒼士のことを誰よりも大切で愛している。




登場するキャラは多原作と違い、多少変更しています。
・原作でアルタイルの創造主である本名:島崎由那はこの世界では絵師の名前『島崎(シマザキ) 刹那(セツナ)』という名前になっている。
・原作セキレイで浅間美哉であるが、この世界では結婚していないので『美哉』という名前だけになっている。

Re:CREATORSに登場する人物。
・アルタイル
・シリウス
・シマザキ セツナ(本名:島崎 由那)

セキレイに登場する人物。
・浅間 美哉(この小説内では美哉)

次の投稿は明日11日です。
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