渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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第二十一話

九校戦が刻一刻(こくいっこく)と近づくのに合わせて第一高校全体が熱を持ち、盛り上がっていた。

 

選手たちとは関係がない運動部などのクラブも放課後は手伝いなどをして下働きを仰せつかっていたりする。

 

そんな忙しい中でも蒼士たちいつものメンバーはテーブルを同じくして昼食を取っていた。達也、レオ、幹比古、深雪、エリカ、美月のメンバーは興味がないと涼しい顔の者、興味深そうに見ている者、恥ずかしくて顔を逸らしている者、自分も兄にやるべきか考える者、ジト目で呆れている者、オドオドしている者、それぞれが目の前の光景に反応していた。

 

「蒼士さん、これも私たちが作ったんですよ、美味しいですから是非食べて下さいね」

 

「ほのかの言う通り、美哉さんから教わったから自信作だよ、これも美味しいから食べて」

 

蒼士の両サイドからお弁当のおかずを箸で掴んで蒼士の口元へと差し出すほのかと雫がいたのだ。普通に差し出されおかずを食べて感想を言う蒼士は美味しいと二人に返事をして、笑顔を浮かべて嬉しそうにするほのかと雫。

 

両手に花という男なら誰もが羨むに違いない状況を当然のように受け入れている蒼士には微塵の動揺もなかった。この状況に慣れているということなのか。

 

「二人とも随分と上達したね」

 

蒼士は本心を述べていた。

 

家のことなどはメイドがいるので一部は任せっきりになっており、蒼士も料理に関しては手伝っていたのだが、九校戦の練習の息抜きという名目でほのかと雫が料理を始めたのだ。慣れた手つきではなかったが回数をこなしていくうちに手際も良くなってきて、美味しい料理も作れるようになっている。蒼士のメイドの斬美、シャロンなどの教える腕も良かったのもあるが一番は美哉という和服姿の女性使用人の特訓が効いたようだ。

 

今では日ごとに分けて、メイド達の日、ほのかと雫の日、とお弁当を交互に作り分けている日常を送っている。蒼士自身も参加しようとして女性陣から却下されていたりする。

 

「美哉さんの教育のおかげですよ」

 

「うん、背後に般若の面が見えたのは怖かったから、こっちも必死だったよ」

 

ほのかも雫も当時の出来事を思い出したようで体を震わせていた。何があったか想像したくない蒼士は何も聞かなかった、というか自分も経験があったので聞きたくなかったようだ。

 

「一緒に暮らすようになってから随分と仲良くなっているわね、ほのか、雫」

 

この光景を見ていた者たちの代弁を深雪がしてくれた。深雪以外のエリカと美月は少し前までの二人はそんなに積極的ではなかったような気がすると感じ取り、疑問に思っていた。

 

「そ、そうかな、普通だよね雫」

 

「うん、前から変わってないよ」

 

多少の動揺をするほのかに対して雫は平然として返答していた。ほのかも雫も普通に食べているが蒼士に食べさせてあげた箸を使っており、間接キスをしているのに気付いていないのだ。深雪、エリカ、美月は何かあったな、と察していた。

 

「そういえば七草会長も蒼士の家で練習しているんだろう?」

 

レオが突然話題を切り替えた。レオ自身は蒼士がモテているのを知っているので特にほのかと雫の行動に疑問を感じていなかった。

 

「私も練習しに蒼士くんの家に訪れた時に居たのは驚きました」

 

深雪もレオの言葉に頷いて言葉を述べた。ほのかと雫がいるのは知っていたのだが、まさか急に真由美も加わっていたのに深雪も驚いていたようだ。

 

「あぁ、俺が七草先輩に話したら興味を持ってね、雫たちと同じく九校戦の間は家に住むことになったからさ、同じように親の了承済みだから」

 

何事もないように食べながら述べた蒼士の内容に、一部はそうなんだ、と短絡的に納得しており、もう一部の方では驚愕の出来事で驚いている。七草真由美の親というと十師族の人であり、その親が了承したということは何かしらの蒼士と七草家には関係があると伺えたからだ。

 

特に達也と深雪は四葉家の関係者であり、十師族関連には敏感なので気になっており、後で問い質すと達也は決め込んだ。

 

「会長の腕前は凄いよ」

 

「見ていて圧巻だった」

 

ほのかも雫も生で真由美の実力を見たので、流石だなと感服していた。

 

「七草先輩のスピード・シューティングもクラウド・ボールも優勝は確実だと思うけど、油断せずに練習してるから、二人も頑張ろうな」

 

蒼士の言葉に笑顔で頷くほのかと雫。

 

「蒼士はどうなんだい? 聞いた話だと他の人のサポートばかりしているみたいじゃないか?」

 

「幹比古、蒼士のことは気にしなくていい、スピード・シューティングに関しては優勝確率は九割を越しているからな」

 

幹比古の言葉に蒼士ではなく達也が答えていた。達也の口から語られた内容に事情を知っている深雪、ほのか、雫以外の面々は驚いていた。

 

「それって優勝確実じゃない」

 

「達也さんが言うなら本当のことなのでしょうが」

 

エリカも美月も達也の言葉に驚いて、蒼士の方を見ていた。

 

「まぁ、例外は三高の吉祥寺(きちじょうじ) 真紅郎(しんくろう)がどういった戦術でくるかによるな」

 

「吉祥寺真紅郎ってあのカーディナル・ジョージかい!?」

 

あぁ、と返事をする蒼士に幹比古は驚いていた。それだけの知名度のある人物であった。

 

「相手が誰であれ、叩き潰すのは変わらない、それよりも三高にはクリムゾン・プリンスこと一条(いちじょう) 将輝(まさき)がいるしね、十中八九どこかで当たるだろうし、俺の予想ではアイスピラーズ・ブレイクとモノリス・コードに来るだろうと予測してるけど」

 

今年の一高の一年もかなりの実力者揃いであるが、三高の一年にも十師族の一条将輝が出るので油断ができない。

 

「十師族の『一条』の御曹司か」

 

幹比古は小声で呟いていたが全員に聞こえていた。

 

日本で最強の魔法の家系である十師族の一条であり日本の魔法界に君臨する一団である。一高にも七草家の七草真由美、十文字家の十文字克人がいるが二人とも最強の魔法師家系に恥じない実力を持っているのを一高生なら誰でも知っていた。

 

「早く会ってみたいものだ」

 

萎縮するどころか笑顔で待ち遠しそうにしている蒼士に心配する必要がなかったと一同は思ってしまった。

 

「一条に当たった場合の勝てる見込みは?」

 

「十分あるよ、勝つ気しかない」

 

エリカの問いに即答する蒼士。

 

「そうか、お前がそこまで言うなら勝てるんだろうな、期待してるぞ」

 

達也だけは蒼士の使用する魔法のことを知っていた。自身でCADの調整が出来る蒼士であったが、達也にも見てもらった時があり、その時に達也は知ったのだ。

 

「でも蒼士くんが苦戦するところって想像できないわよね」

 

確かに、と全員がエリカの言葉に同じ気持ちになっていた。常に余裕を持っているし、苦戦する姿どころか負ける姿が思い浮かばない一同。

 

「エリカちゃんの言う通りかも、蒼士さんなら一条さんに勝っても不思議じゃないかもしれません」

 

美月も蒼士が勝つと信じているようだ。同じくと全員頷いているのをみるとこの場にいる全員蒼士が勝つと思っている。

 

「これは勝たないとね」

 

みんなからの期待に応えなければと気合を入れ直す蒼士であった。

 

「司波や光井や北山もいるし、一年の新人戦はかなり期待できるな」

 

「達也がエンジニアなんだ、当然だろレオ」

 

レオの言葉に当然のように言う蒼士。深雪もそれに頷いてご満悦であり、本人の達也は呆れ顔であった。

 

「達也さんが調整したCADって一年の女子の間で評判いいんですよ」

 

「エイミィも和美(かずみ)菜々美(ななみ)も絶賛してたよ」

 

「それを聞いたのか、一年男子のCADも調整しているしな、駿が、森崎が褒めてたよ」

 

ほのか、雫、蒼士の順に達也のこと褒めていた。技術者としての達也の腕を疑うものは一年の間にはいなくなっていた。例え一科生でも達也のことを認めているほどだ。

 

滝川(たきがわ) 和美(かずみ)春日(かすが) 菜々美(ななみ)も一年で九校戦の選手メンバーに選ばれた女子生徒たちである。

 

「その分、忙しさが三倍になっているんだがな」

 

「お兄様が疲れた分は深雪が癒して差し上げますから頑張って下さいね」

 

敬愛する兄が大勢の人から認められいる現状を深雪は嬉しく思っており、出来る限り自分の出来る範囲で達也を癒してあげている(深雪が達也に甘えているので癒しているとはいえないかもしれない)

 

「男子も女子も達也のおかげでかなり期待できる環境になっているから優勝者が何人も出るかもしれないね」

 

蒼士も達也に付き合ってCADの調整をしているので一年生の練習も付き合い実力を把握している。

 

「達也の戦略や考えは勝利に欠かせないよ」

 

「そういうお前も選手たちの基準値を上げてくれているからこちらも戦略の幅が広がって助かっている」

 

互いを褒める蒼士と達也。蒼士は運動能力の向上のために身体を使ったトレーニングや本人が使用する魔法の本人視点ではなく、蒼士自身の他人から見た視点のアドバイスなどをしたりしている。自分が使用している魔法の違う使い方や意識してなかった使い方などを知れているようだ。

 

達也は完全なサポートに徹しており、選手たちを万全な状態にして注文も聞き、その状態にしてから本人とのやりとりで修正や効率の良いプログラムを組んでいる。

 

高校生という若いこともあり、尚且つ蒼士と達也という環境的にも人材的にも最高の中でメキメキと実力をつけていく一年の選手たちであった。

 

「じゃあ今日の放課後は私のミラージ・バットの練習に付き合って下さいね、蒼士さん」

 

「蒼士さん、私のアイス・ピラーズ・ブレイクにも付き合ってね」

 

「お兄様は私のミラージ・バットに付き合って下さいね」

 

美少女からのお願いを断れるわけがない蒼士は頷き、達也も最愛の妹からのお願いを断れるわけがなかった。

 

昼食の時間を楽しく過ごして気分を上げていき、放課後の練習に挑む深雪、ほのか、雫。信頼できる人たちと切磋琢磨していく今の環境に大満足している三人であった。

 

達也もあまり好意的でないと思っていた一年男子のメンバーと交流を深めて、技術者としても同級生としても信頼関係を築けたような気がしていた。

 

 

 

 

「ねぇ、雫、今日って誰が蒼士さんと寝るんだっけ?」

 

「今日は真由美さんとほのかと私の三人でだよ」

 

「そっか、真由美さんが来てから、私たちも変わちゃったね」

 

「蒼士さん包囲網のためだから」

 

「う、うん、それは分かっているんだけど」

 

「蒼士さんの相手は一人じゃ無理だもん、三人でもだったけど」

 

「あぁぁー、恥ずかしいし、高校生でこんな関係いいのかな」

 

「好きなら問題ないよ、ほのかだって蒼士さんのこと好きでしょう?」

 

「……好きだよ、蒼士さんとの関係が進んだのも凄い幸せだし、何よりも雫もいるしね」

 

「私もほのかがいるから気にしてないよ」

 

「でもまだ増えるんだよね」

 

「真由美さんはそう予想していたよ」

 

意味ありげな会話をして練習に向かうほのかと雫。真由美が蒼士の家に住むようになってから環境が変わっていたりする。




R-18展開を仄めかし。
創作意欲が湧いてくる!!!(R-18)

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