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第一高校のメンバーが到着したのを迎える蒼士は先輩たちや同級生に自分だけ直接現地に向かったことを謝罪していた。九校戦の本番前に自分だけ単独行動をしたことについて。
克人や鈴音や摩利たちの親しい先輩たちは家の事情というのを聞いていたので気にしておらず、他の先輩たちも気にしていなかった。ただ真由美とほのかと雫は納得していなかったようだ。家に帰ってこなかったので心配もしていたが、三人の女の勘が何かあったなと訴えていたのだ。
そんな三人に何で帰れなかったかの説明をする前に蒼士は達也から話を聞いていた。深雪も達也から話を聞きたそうに近くにいた。
「では、先程のあれは、事故では無かったのですね」
達也が深雪の問いを肯定していた。事故車には魔法の痕跡があり、達也の
さらに犯人の魔法師は運転手であり、自爆攻撃というのも分かったので、深雪は卑劣な行いをする犯罪者に怒りを抱いていた。そんな深雪を落ち着かせる達也。
「分かった、こっちでも調べてみる。何かしら進展があったら報告するよ」
第一高校に妨害行為をして優勝させないつもりなのかと考える蒼士はHSA社の部下たちを本格的に動かすことにした。蒼士が指示するまでもないが部下たちはとっくに行動していると思うが、改めて指示することに。
「あぁ、任せるぞ、俺はエンジニアで忙しくなりそうだからな」
「宜しくお願いしますね、蒼士くん」
達也と深雪にお願いされたので応えるしかなかった。友達二人からの頼みでもあるので。
「あっ、深雪、達也さん、蒼士さんをお借りします!」
「行くよ、蒼士さん」
「深雪さん、達也くん、ちょっと蒼士くんは貰っていくわね」
蒼士の両サイドをほのかと雫に固められて、真由美が蒼士を押してホテルの中に入っていく。それを唖然としながら見送る達也と深雪であった。
連れ去られた蒼士は自分の一人部屋まで連れていかれ三人を部屋に入れることに、そして家に帰れなかった理由を説明していた。名前を言える人物ではなかったので伏せて説明している。心に傷を負って傷ついている女性で自分が頼られているので一晩過ごしたことを。
ほのかも雫も真由美も蒼士の性格は分かっているがやっぱり自分たちの知らないところで知らない人を抱いているのは気にくわないようだ。罰として九校戦中に甘えさせること、九校戦後は一日デートをすることを約束して解決した。
九校戦中は競技に集中したいのもあるので甘えるだけで我慢するということで蒼士の部屋で懇親会まで抱き付いてイチャイチャする四人であった。ほのかや真由美が蒼士の体を触ったり、自分の体も触らせたりしてイケナイ雰囲気になりそうになるが雫が止めに入るのでどうにかなっていたが、蒼士と二人っきりでいる時に暴走してしまうかもと心配するほのかと真由美がいたりする。ひょっこり蒼士の股座に座る雫。
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懇親会がもうすぐ始まろうとしている時に控え室で蒼士と達也は予備の一科生のブレザーに着替えていた。一科生のブレザーの左胸には八枚花弁のエンブレムが刺繍されており、二科生にはそれがないために着せられていた。各校は校章よりも色で見分けがつくのだが、全員揃っていた方がいいという判断で二人は着替えさせられたのだ。
ただ単に刺繍されている服に着替えただけであったが深雪が蒼士と達也の姿を褒めてくれて、この時だけでも同じ一科生になれたと思い、うっとり眺める深雪。ほのかも雫も褒めてくれているが蒼士に関してはそのまま一科になってもいいのではという冗談を摩利から声を掛けられていたりする。何人かは冗談と受け取り、笑って面白がっていたが、もう何人かはそれもいいかもと内心で思っていたようだ。
懇親会が始まり三百人から四百人の大規模なパーティになってホテル側のスタッフも忙しそうに動いており、その中には大人びたメイクをしたエリカがいた。美少女のエリカにさらにメイクが加わってとても可愛く綺麗で大人びたメイクも似合っていた。
距離があるが蒼士が見ていたのに気付いたのか目が合うとエリカはウインクしてくれた。蒼士に向けてやったことだろうがその蒼士とエリカの間に居た男子生徒などは勘違いして、自分に向けられたと思い込んで懇親会中はずっとチラチラとエリカのことを見て気にしているようだった。
そんな蒼士はホテルのロビーで親しくなった他校の人たちと会話をしながら目的の人物に接触できていた。
凛々しい顔立ちに蒼士と同じぐらいの身長、長い脚、美男子と呼ぶに相応わしい人物が蒼士の目の前にいる。
「初めまして第一高校の梓條蒼士と申します」
蒼士は頭を下げて礼儀に沿った挨拶をしていた。目の前の人物の隣にいる人が何かを言おうとしていたがそれを蒼士が声を掛けた人物が止めた。
「そうか、第三高校の
蒼士が挨拶したのは一条将輝と吉祥寺真紅郎である。十師族の一条家の御曹司とカーディナル・ジョージと呼ばれる天才の二人だった。
「こちらを受け取ってくれますか」
蒼士が差し出した名刺を疑うことなく受け取る将輝はそこに書かれていることに驚き、真紅郎も横から見て驚いていた。
「直接の対面はこれが初めてですが、父君の
何事もないように述べる蒼士であったが目の前の二人は驚いて声が出なかった。将輝や真紅郎は一条家の現当主の一条剛毅から話を聞いており、剛毅が高く評価する内政力と同じく魔法師としてもかなりの実力者と評価していたのを聞いていたので、こんなに早く接触してくるとは思っていなかったようだ。
「お前だったのか!? 親父が随分と高く評価していたから気になっていたんだ」
「君がそうだったのか!? HSA社の社長が本当に高校生だったとは」
将輝も真紅郎も動揺を隠せていなかった。只でさえ美男子同士の対面が注目の的になっていたのに二人のざわつきにさらに視線が集まっていた。
蒼士は給仕服のスタッフから飲み物を貰い、二人に渡して落ち着かせていた。驚きで取り乱してみっともないところを見せてしまったことを後悔しつつ蒼士から飲み物を貰って落ち着く将輝と真紅郎。
「二人とはスピード・シューティングとアイス・ピラーズ・ブレイクで戦う事になるから、声を掛けておきたかったんです」
蒼士は仕事の取引で知り合った人が自慢する息子とその親友に会っておきたかったのも理由の一つであった。
「なるほどな、だが、親父が珍しく褒めた奴でも負けるつもりはないぞ」
「あぁ、僕も負ける気はないからね」
二人から油断というのが消え失せていた。最初は出場選手の名前を確認して有名な名前の者がいなく満足いく相手がいないと思っていたが、将輝の父親の剛毅が高く評価する相手が目の前に現れたのだ。そして二人と戦う事になっているからには将輝も真紅郎も慢心な気持ちがあったのを振り払い、全力で挑む気持ちに切り替わっていた。
「そうでなくては面白くない、お互いに全力で頑張ろうな」
蒼士が手を出して握手を求めると将輝も真紅郎も握り返してくれた。固い口調から柔らかな口調に変えた事により、将輝と真紅郎と話しやすくなって親交を深める事に成功した蒼士。
そこに一色愛梨や十七夜栞や四十九院沓子などロビーで親しくなった人たちも参加して蒼士と会話していくことに。
「梓條、あの子の名前は?」
将輝は先程から一人の女の子のこと見つめていた。その子は蒼士と同じ一高の制服だったので蒼士に名前を訪ねている。
「深雪のことかい、彼女は司波深雪、男女ともに魅了する神秘的な美貌を持ち、一年生の中で総合一位の成績であり、才色兼備とは彼女のこと言うのかな」
蒼士の解説に将輝はポツリと深雪の名前を呟き、ただならぬ熱が込められた視線を送っていたのに蒼士は気付く。真紅郎も珍しく将輝が女の子に興味を持っていることを揶揄うがまさかの黙り込む将輝に驚いている。沈黙は肯定とも捉えれる。
「司波深雪……」
蒼士は隣にいた愛梨の言葉が聞こえていた。深刻そうな表情で深雪を見ている愛梨。
「大丈夫かい、一色さん?」
「えぇ、同じ女性として彼女の美しさに驚いていただけよ」
愛梨の言葉にはまだ何かがあるなと感じ取った蒼士。深雪の存在感に自然と負けを認めてしまったことを悔やんでいる裏があった。
「一色さんも深雪に負けないぐらい可愛くて美人さんだから負けてないよ」
一色の内心の動揺にすかさず反応してフォローする蒼士。
「っ!!? 貴方って人は! そんな恥ずかしいことを言わないで下さる! もぉ、彼女に挨拶に行くわよ、栞、沓子」
蒼士の言葉に顔を真っ赤にさせて恥ずかしそうにしている一色。蒼士に背を向けて親友の二人と深雪の元へ向かおうとする。
「愛梨、嬉しそうだったわ」
「お主はプレイボーイじゃな」
栞と沓子にも蒼士は声を掛けられ、二人は愛梨の後ろを付いて行った。
「じゃあ、俺も一高のところに戻るので、今度は会場で」
蒼士は将輝や真紅郎や途中から加わっていた一条親衛隊のみなさんに別れを告げて一高生がいる場所に戻って行く。
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一高生が多くいる場所に戻った蒼士は三高の一条将輝のことを聞かれていた。ただ自分が出場する種目の一番の障害になる人に挨拶しにいっただけだと説明して上手くその場を誤魔化していた。
「蒼士さんはもう動かないで下さい!」
「うん、呼吸をするように女の子を口説かないでね」
蒼士はほのかと雫に捕まっていた。というのも蒼士が各校の生徒と交流していたのを見ており、その中で女の子と接しているのを多く見かけたので、これ以上は蒼士に自分たち以外に女の子に触れて欲しくないという独占欲にも似た嫉妬心であった。
「了解、動かない分は二人が話し相手になってくれよ」
そんな可愛らしい二人の気持ちに気付いていた蒼士は素直にほのかと雫に従っていた。二人も嬉しそうに美味しそうな料理を持ってきてあげたり、飲み物を持ってきてあげたりと至れり尽くせりであった。
「私も混ぜてよね」
三人の光景を見ていた真由美も参戦してきた。真由美も九校戦で知り合った他校の生徒と会話をしていたのを切り上げて、一高生の集まっている場所に戻ってきていた。
「ほんと、何処でもモテるんだから、困ったものだわ、蒼士くんには」
他校の生徒と連絡先を交換していたのも他校の女子生徒が蒼士を見る時に頬を赤くさせていたのを目撃していた真由美は一高だけならまだしも他校にまで手を広げている蒼士に内心怒り気味であった。
「七草先輩だって、他校の男子生徒が見惚れていましたよ、七草先輩の横顔や立ち居振る舞いはそれだけで魅力的なんですから、美少女って自覚してます?」
「ふぇ、あ、ごめんなさい」
自分が怒っていたはずなのに蒼士から説教にも似たようなことを述べられて思わず謝っていた真由美。そんな真由美に近付いて耳元で言葉を掛ける蒼士。
「––––––ないんですから」
「うんうん、反省するわ(貴女は俺のモノなんですから、俺以外の男性と話しているのも視線を向けられているのも実際は耐えられないんですからって蒼士くんも結構独占欲があるのね、なんか嬉しいわ)」
ぷりぷり怒っていたのが一瞬で鎮火して大人しくなった真由美。頬に手を当てて熱を持って赤くなった頬を落ち着かせようとするのだが、頭の中で蒼士の言葉が再生されて嬉しそうにニヤニヤしていた真由美。
そんな風に蒼士、ほのか、雫、真由美は過ごしていると来賓の挨拶が始まって、食事の手を止め、談笑を中断して舞台上の声に耳を傾けることに。
そうして入れ替わり立ち替わりに現れる魔法界の名士を見ていると十師族の長老であり『
二十年ほど前までは世界最強の魔法師の一人と目されていた人物で十師族という序列を確立した魔法師であった。九校戦に毎年を訪れている大物が今年も登場するのを今年が初めての一年生などは落ち着かずざわついていた。
期待していると一人の綺麗なドレス姿の女性が舞台上にいるだけであり、九島烈の姿がないことに会場全体がざわつく事態になる。
「あの女性の後ろにいますね」
「えぇ、私もマルチスコープで確認できたわ、それにしても蒼士くんはよく分かったわね」
「精神干渉魔法は自分も使用するので分かりました、それと知覚系統魔法も使用したので」
蒼士と真由美の会話に周りにいた一高生は驚いていた。二人の言葉を聞いても認識できないのに蒼士と真由美はお互いに分かっていたのが嬉しかったのか笑顔で微笑んでいた。
「会長はまだ分かりますが蒼士くんも底がしれませんね」
「あぁ、十文字でも分かっていなかったようだぞ」
鈴音と摩利は改めて規格外な一年の蒼士に感服していた。克人も前々から実力は認めていたが改めて再認識させられた。
蒼士と真由美は九島烈の存在を認識できており、烈本人にも気がつかれたようでニヤリと笑っているのが確認できた。悪戯を成功させた少年のような笑顔である。
ドレス姿の女性がスッと脇へどいた。ライトが背後にいた老司を照らして大きなどよめきが起こる。九島烈本人が登場したからだ。
烈が声を出して悪ふざけについて謝罪し、自身が魔法を使用していたことを告げて、そのことに気付けた者が六人しかいなかったことを述べた。もしもこれがテロリストだったら六人しか対応ができないこと、多大な犠牲が出ていたことなどを指摘して魔法に関しての話をしていく。使い方を工夫した低ランクの魔法も高ランクの魔法にもまさるようにもなることを指摘して、九校戦で集まった学生に改めて魔法というモノの奥深さを説いたのだ。
そうして烈の演説が終わると全員が手を叩いていた。戸惑いながら拍手する者もいたが魔法界の重鎮の演説は人によっては希望を与える言葉であった。魔法力を向上させるのは魔法師としては当たり前であるが、才能や血筋で差があるのも確かであり、圧倒的な実力を見せつけられで挫折する者もいるのは事実で、それを創意工夫で覆せるのを九島烈自身が示して伝えたのだ。この言葉を理解した者はさらに努力を重ねて成長するだろう。
だが、九島烈が使用した魔法は生まれつき知覚系統の才能を持っている者しか見抜けない魔法だったと理解していた蒼士は少しだけ笑ってしまった。
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懇親会も終わり各々が部屋に戻って休んだり、自由に過ごしている中で蒼士はとある場所を訪れていた。
ほのか、雫、真由美が部屋に遊びに来たがっていたが用事があるのを告げると終わったら連絡をして欲しいとお願いされたので応えるつもりであった蒼士。
「お久し振りです、老師」
「久しぶりだな、梓條くん」
蒼士が対面している人物は懇親会で登場した九島烈と対談していたのだ。この場所以外でも会ったことがあり、会社の事業を拡大させていく上で日本の中でも重鎮と呼べる人たちと対面した中に魔法界の重鎮の九島烈もいたのだ。
「HSA社も随分と成長しているようだね、社長の君の器量が成せる業なのかな」
「部下たちが優秀なんですよ、自分は部下たちの提案を了承するだけですから」
蒼士の言葉に口元を緩めて一言だけ述べる烈であった。
「ところで十師族の当主とは友好的な関係を築けているようだな、立ち回りが上手いものだ」
烈の言葉に無言で蒼士は軽く頭を下げていた。十師族という有名な名家との繋がりを築くことによって経営戦略的にスムーズに事が進み、円滑に十師族管理の勢力圏内での経済活動ができていた。
烈自身、当初はHSA社が世界中に知られる企業になるとは思っていなかったが、社長である蒼士と対談したことによりその思いが過ちであったと気付き、九島家はHSA社と友好的な関係を築くことになる。
「君も九校戦に出場するのだろう、期待して観戦させてもらうよ」
「えぇ、是非とも来て下さい、期待に応えられると思います」
それは楽しみだ、と表情は変わっていなかったが声のトーンが若干変わっていたので楽しみにしているのだなと分かった。毎年九校戦を訪れる烈は若者が何をするのかが楽しみの一つになっていたようだ。
それからはHSA社の製品の性能やCADのことなど魔法関連についての世間話をして過ごしていく蒼士と烈。ぎこちない雰囲気や緊張感という空気もなく、互いに親しさを感じる雰囲気を出しながら会話していく。
「そういえば
烈の口から出た名前の人物は蒼士が親しくしている女性の一人であった。
「九校戦の期間になってから会っていませんね、準備とかが忙しくて、電話は貰っていますが」
蒼士が響子と出会った経緯は九島家のパーティであった。蒼士が響子に話し掛けて、話しが合うようで意気投合して、それから九島家からの依頼などで度々会うようになり、プライベートでも会うようになってから年下の蒼士の面倒をみるお姉さん的な立ち位置になっていたのが、逆転して響子が蒼士に甘えるようになって大人の関係に発展していた。
部下からの報告で気になっていた人物だったので蒼士が直々に接触してみたら響子の方も気になっていたようで、互いに友好的に接していくうちに親しくなったのだ。
「そうか、女性の扱いを心得ているのだから、寂しい想いはさせないで欲しいな」
「やっぱり家族ですね、孫娘の幸せを願っているんですね」
「君なら任せてもいいと思っているんだがな」
蒼士と響子が親しくしているのを知っている烈は蒼士と響子が結ばれれば九島家と蒼士の関係も強くなり、HSA社の恩恵を受けることを期待してもいるが、第一に孫娘の幸せを願う祖父でもあった。
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蒼士は烈と対談を終わらせて自分の部屋に帰ってきていた。
「おっと、どうしたんだい、ほのか」
「ほのかってば、蒼士さんと身も心も繋がってから蒼士さんのことばかり考えてるの」
部屋に帰ってきてからほのか、雫、真由美に連絡して帰ってきたことを告げたらほのかと雫が一番乗りしてきた。ベッドでゆっくりしていた蒼士を見て、すぐに腕に抱きついて甘えているほのか。雫もゆっくりとベッドに座ると重力に任せるように体を蒼士に預けていた。懇親会も終わって夜遅くになっていたのでほのかも雫もパジャマで薄着であった。
「あ、シャワー浴びてないから臭うかも」
「大丈夫です、私はこの匂い好きなので」
「私も大丈夫」
一日を終える前にお風呂に入り、綺麗にしようと思っていたのを忘れて、先にほのかたちを呼んでしまうという失態をしていた蒼士であったが、特に問題になっていなかった。
「一日の疲れを取るためにも、シャワーだけでも浴びることにするよ、二人はゆっくりしていて」
この部屋にはバスルームがあるので二人を部屋に残して蒼士はシャワーだけでも浴びようとバスルームに入ろうとするが雫が声を掛けてきた。
「一緒に入る?」
「魅力的な提案だけど、理性が持たないと思うからまた今度ね」
うん、と返事をして雫は蒼士を見送った。隣であわあわしているほのかを放置して。
「しずくぅぅ! 大胆だよ」
「蒼士さんがお願いしてたら、ほのかも連れて行くつもりだったよ」
雫の発言にボンッと顔を一瞬で真っ赤にさせて悶えるほのか。
しばらくして落ち着いてきたほのかはベッドの上に置いてあった蒼士のブレザーをハンガーで掛けようとしていたが、蒼士の物だと改めて認識したら強く抱きしめてブレザーに顔を埋めていた。そんなほのかを見て、頭を叩いて正気に戻した雫。
雫は蒼士に言われた通りにテレビを見てゆっくりしているのだが、ほのかはそわそわして落ち着きがない。テレビの音に紛れてバスルームのシャワーの音が聞こえてくるのがほのかにとっては落ち着かない要因になっていた。ほのかの頭の中では蒼士が上がってきたらセックスするものだと思い込んでいるようで悶々としていた。最近のほのかは思考がエロい方面に流れる傾向がある。
蒼士がバスルームから出てきて思ったことは、なんだコレ、であった。ベッドに座って顔を真っ赤にさせているほのかに、枕に体を預けてお菓子を食べながらテレビを見ている雫である。あまりにも温度差がある。
「蒼士さん、上半身裸で何やってるの?」
「着替えを持っていくのを忘れていた」
蒼士も蒼士で最近は家のことをメイドに任せていたのでお風呂上がりの服を持っていくのを忘れていたのだ。彼の上半身裸の姿に食べようとしていたお菓子を落としてしまった雫。
「わわ、私が用意します!」
下半身はバスタオルで隠していたのだが、上半身は隠せておらず裸をほのかはガン見していた。慌てて蒼士の荷物から服を取り出そうとして蒼士の下着などを見て、またもやボンッと顔を真っ赤にさせて思考が停止していたほのか。
そして運が悪いことに。
「そ・う・し・くん! お姉さんが来たわ––––よっ!?」
真由美が部屋の扉を開けて参上したのだ。会長権限及び学校の責任者、生徒代表として部屋のマスターキーを持っていた真由美は遠慮なく蒼士の部屋に入ってきたのだ。入り口から入ってすぐの所にバスルームが配置されていたので真由美とその後ろにいた面々は蒼士の上半身裸の姿を目撃してしまったのだ。
眼を瞑る間も無く、顔を逸らすこともできずに服の上からは見えてなかった蒼士のしっかりと鍛え抜かれた身体を目視する。
「おおおぃぃぃ、はは、はやく、ふ、服を着ろぉぉぉ!」
「服の上からでも分かっていましたが、鍛え抜かれたいい筋肉ですね、バランスもとてもいいと思います」
「おお、男の人の、は、ハダカ、あぅぅ!」
「摩利、ちょっと声を抑えて! 人が集まってきちゃうじゃない! リンちゃんは冷静すぎよ、ってペタペタ触らないの! あーちゃんはとりあえずベッドに寝かせましょうか(あ、改めて見るといいカラダ、わ、わたしってあのカラダに抱かれたのよね、今になって恥ずかしくなってきたわね)」
摩利、鈴音、あずさの二年、三年の先輩を真由美は連れてきたようだ。顔を真っ赤にさせて大声を上げる摩利、冷静な鈴音は少しだけ頬を赤く染めて蒼士の上半身を触り、あずさは蒼士を視認して今の状態を理解すると瞳の中をぐるぐる回して混乱して気絶していた。
とりあえず真由美は蒼士をバスルームに入れて、全員部屋の中に入れて騒ぎを治めていた。部屋の中ではほのかが顔を真っ赤にして蒼士の荷物を探っていて、雫はテレビを見ているなど、頭を抱える事態だった。
流石は生徒会長の真由美は瞬時に蒼士に着替えを渡して、顔を真っ赤にさせているほのかと落ち着かない摩利に水を渡して一息させ、あずさを空いているベッドに寝かせていた。鈴音はテーブルに置かれていたCADに興味を示していた。そして落ち着くと蒼士の肉体を思い出して赤面している真由美がいるのであった。
「蒼士くん! 入っちゃいけないなら言ってよね!」
「いや、七草先輩が急に入ってくるのが悪いんですよ、返答する暇もありませんでしたよ」
服を着てきた蒼士にいきなり発言する真由美であったが、あっそういえばそうだった、と真由美は自分の行いを反省する。
明日が九校戦の前日になるので多少の話をしておこうと摩利、鈴音、あずさを呼んでいたのだが、それどころではないハプニングに遭遇してしまった。ほのかも摩利もチラチラと蒼士を見て頬を赤くさせていたりしたが、摩利は比較的早く回復していた。流石は彼氏持ち。
鈴音は蒼士のCADに興味を示して先程のハプニングを全く気にしていなかった様子であった。それからは作戦スタッフとしての九校戦での作戦案などの会話をすることに。
あずさは気絶から復帰して最初は顔を真っ赤にさせてあわあわしていたが、蒼士が競技用に使うCAD以外を持ち込んでいるのに気付いて、CADに興味が向いて、熱く蒼士のCADについて問い詰めていた。見たこともなかったタイプのCADであったからだ。
真由美もそれぞれの話に参加して会話していたが、ベッドに座る蒼士の隣をちゃっかりキープして、徐々に徐々に蒼士に近付いて、最終的はべっとりと蒼士の肩に頭を預けて身を委ねていた。
真由美の反対側にはほのかが真由美と同じようにしており、雫は蒼士に膝枕されて眠りかけていた。
真由美、ほのか、雫の三人が知り合いがいるのに甘えているのを目の前で見る事になった摩利は親友の真由美に問い詰めて、三人とも蒼士と肉体関係になっているのを聞かされて摩利は顔を赤面させることに。鈴音はやっぱり、と察していたのか一言だけ呟き、あずさは最初は分かっていなかったが、真由美が小声で耳元で教えた事によりまたもや顔を真っ赤にさせて気絶した。
摩利は複数と付き合っていることを蒼士に問い詰めており、三人とも納得した上での付き合いをしていると説明していたが、摩利は納得できずにいたが真由美に小声で話された内容に渋々納得することになった。彼氏の修次に一際会いたくなった摩利は携帯端末から修次に電話していた。
鈴音は何か考えている表情であったが特に蒼士に問うこともなく、真由美、ほのか、雫に蒼士との出会いや好きになった出来事などを聞いて、恋愛話をしていた。蒼士に抱きついて話す三人に終わるまで付き合う蒼士。
女性に囲まれてまさにハーレム状態の蒼士は夜遅くまで彼女たちに付き合うことになった。明日は九校戦前日のために気が抜けない日であり、今日ぐらいはゆっくりしようと思いながら彼女たちとの会話を楽しんだ。
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