渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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第二十四話

懇親会が前々日に(もよお)されたのは、前日を休養に当てる為であったが、技術スタッフや作戦スタッフは最後の追い込みに追われていた。選手は英気を養いつつ明日からの戦いに備えている。

 

そんな中で作戦スタッフで指揮をしている市原鈴音は本日最後の打ち合わせを終わらせ会議室で一人でいた。

 

「流石に疲れましたね」

 

複数の人との意見の交換とそれを取り纏めた鈴音は一人になってからどっと疲れが襲ってきていた。自分が思っていた以上に気を張っていたのだと自覚することに。

 

鈴音が一人でいる会議室に新しく訪れる人物がいた。

 

「お疲れ様です、市原先輩」

 

鈴音の元に現れたのは蒼士であった。二つのカップを持っている蒼士は鈴音に一つを渡して彼女の隣に座る。

 

「ありがとうございます、これは?」

 

「はちみつレモンミルクです、厨房を借りて簡単に作ったものですけど、エリカたちには好評でしたので美味しいはずですよ」

 

蒼士からの飲み物を一口飲んで、美味しい、と述べた鈴音に笑顔で良かったと安心する蒼士。エリカ、美月、レオ、幹比古たちにも味見をして貰っていたので味の心配はしていなかったが鈴音の口に合ったようで一安心。

 

「疲労回復と美容にも良いので今度は市原先輩自ら作ってみてくださいね」

 

「蒼士くん、二人っきりなんですから名前で呼んでください」

 

飲み物に口をつけて鈴音は蒼士に指摘した。この場には蒼士と鈴音の二人っきりなのだから、遠慮しなくていいと。

 

「では、お疲れ様でした、鈴音さん」

 

蒼士に名前を呼んでもらい、満足そうに口元が緩んでいた鈴音。クールで常に冷静な彼女にしては随分と緩んで表情が豊かになっている。

 

「はい、少々疲れていますのでちょっとだけ甘えることにします」

 

「遠慮せずにどうぞ」

 

隣の席の蒼士に椅子を寄せて寄りかかる鈴音。まるで分かっていたように蒼士は寄りかかる鈴音を優しく受け入れて、彼女の綺麗な髪に触れていた。指に絡まることなく、なめらかな髪を触る蒼士に対して何も言わずに触ってもらえて嬉しそうにしている鈴音。

 

「甘えるというのはこんな感じでいいんですか?」

 

「いいと思いますよ、鈴音さんも甘えることを覚えてくれたんですね」

 

蒼士くんにだけですよ、と彼に頭を撫でて貰っているのを素直に嬉しく思え、胸が熱くなるのを感じている鈴音。

 

鈴音は疲れを背負って溜め込むタイプと思っていた蒼士は彼女にストレスの溜め込ませないように自分に甘えさせることを実践させていた。二人で出かけた時は遠慮していたのに、学校で過ごしていくうちに心を開いていき、蒼士と二人だけの時にだけ弱さを見せるようになってきた鈴音を蒼士は優しく受け止めて自分の出来る範囲で労い甘えさせている。

 

「すぐにいつもの私に戻るので、今だけはそのまま撫でていてください」

 

「満足するまで付き合いますよ」

 

鈴音も蒼士との学校での付き合いやプライベートでの付き合いで少しずつだが、惹かれていたようであり、真由美と仲良くしている蒼士を見ていて胸に芽生えていた嫉妬心で隠れていた恋心に気付き始めていた。そして九校戦のことで作戦を練っている時に二人で過ごす時間の中で改めて蒼士のことが好きになっていたのを認識した。

 

我ながら単純な女だったんだな、と鈴音は内心で思っていた。蒼士の容姿が良いのは誰もが認めることであったが、会話や生徒会の仕事で接していく内に好きになっていたなんて、こんな少女漫画展開になるとは思っていなかったようだ。

 

「九校戦が終わったら一日デートして下さい、私も会長と同じ立場になりたいので、意味は分かりますよね?」

 

「はい、勿論です。最高のデートにして差し上げましょう」

 

楽しみにしていますね、といつもの冷静な口調と表情に戻った鈴音は飲み物のお礼を述べると甘えさせてくれたお礼に蒼士に近づいて頬にキスをした。触れるだけの優しいキスであった。

 

そのまま蒼士を置いてクールに去っていく鈴音を見送る蒼士。最近になって三年の男子生徒たちが可愛くなったと鈴音のことを言っていたことを思い出して、彼女の去り際の横顔はキスをして恥ずかしかったのか、表情がとても可愛かったと蒼士は思いながら鈴音にキスされた頬に触れていた。

 

 

 

 

九校戦のために宿泊しているホテルの地下には大浴場がある。そして現在は一高一年女子の貸切になっていた。国防軍の施設であるために許可が必要であったが試しに頼んでみたら許可をくれたようで使用している。

 

行動力がある英美が率先して動いたようで一年女子に声を掛けて誘ったのだ。深雪、ほのか、雫も一緒にいたので便乗することに。

 

温泉に浸かる時には湯着着用という仕組みになっているので女性用の『純白のミニ丈甚平、ただし半ズボンなし』を着用して入浴することになっている。

 

「ほのかって胸大きいよね、服の上からでも分かっていたけど」

 

「え、えぇぇ、そんなこと言われても」

 

里見スバルから温泉に浸かっていながらも主張しているほのかの大きな胸をまじまじと見られ、思わず浴槽の縁に逃げて腰を下ろすほのか。

 

「うんうん、ウエストも細くてスタイル良いよねぇ、ずるいよー」

 

「そんなことないよ、エイミィだってスタイル良いよ」

 

「それは逆効果だよ、ほのか」

 

えっ、と隣にいた雫が呟いた言葉を理解できていなかったほのかは目の前でプルプル震えて、顔を伏せている英美を見つけてしまった。

 

「私だってほのかみたいな爆乳になりたいのよぉぉぉ!!」

 

「ひゃ、ちょ、え、エイミィ!? 胸を、ひぃん、鷲掴みにしないでよ」

 

英美はほのかの胸を湯着の上から鷲掴みにしていた。あまりの大きさに揶揄(からか)うつもりの気持ちが怒りになって、両手で鷲掴みして弄り倒している。抵抗するほのかから上手く避けながら胸を揉む英美といった構図が出来ていた。

 

「雫、止めなくて良いのかい?」

 

「うん、ほのか、胸、大きいから」

 

スバルが雫に声を掛けて、二人のじゃれあいについて述べたが、雫は知らんぷりを決め込んだ。親友であるほのかであるが、自分のスタイルの良さを自覚して欲しいのと私もほのかみたいなスタイルが欲しいという気持ちがあったので、少しだけ痛い目に合わせるためのお仕置きであった。一年女子が湯船に浸かっているのだが、ほのかの言葉で大半の女子は視線を下に向けて自分の胸の辺りを触っていたりする。

 

「いったい何を騒いでいるの?」

 

唯一、まだシャワーを浴びていた深雪が現れたことによりほのかと英美のじゃれあいも停止した。長い髪をアップに纏めて、湯船に浸ろうとする深雪に一年女子のチームメイトの視線が一斉に注がれた。

 

「な、なに?」

 

思わずたじろぎ、足を止めて尋ねる深雪の問いに答える声はなかった。

 

「深雪の姿が色っぽいからみんな見惚れてるんだよ」

 

「うん、女同士でも深雪の色気に魅了されちゃうな」

 

雫とほのかがいち早く回復して答えていた。二人も同性である深雪に見惚れていた。だが、二人は今いる一年女子の中でも違った経験を積んだ為に深雪の魅了から早く回復できたのだ。

 

「ちょっと、色気って、女の子同士で何を言うのよ」

 

焦った声を出しながら湯に浸る深雪。それと同じくして雫とほのか以外の女子が再起する。思考が蘇った面々は深雪から視線を逸らして見惚れていたことが恥ずかしくなっていた。

 

非の打ち所がない肉体美、ほんのりと上気した体の全てが鮮烈な色香を醸し出していたので見惚れてしまうのは仕方がない。

 

ここで深雪が咳払いしてこの会話を強制的に終わらせた。これ以上言うと怒ってしまうかもと全員が察して話が終わった。

 

それからは自然と懇親会で見掛けた男性の噂話になっていた。見掛けた中でも三高の一条将輝の話題が出ることに。

 

「一条の御曹司の彼も結構良い男だったよね?」

 

「あっ、見た見た。梓條くんと二人で並んで話しているのも見たけど良い男だったね」

 

「でも梓條くんの方がずっと良いと思う」

 

「だね、一条くんよりも全然良い男だよね」

 

将輝と蒼士が会話していたところを目撃していた女子生徒が美男子二人の話で盛り上がっていたが、蒼士の方がやっぱり良い男という結論になっている。

 

「うんうん、一条と梓條の絡みですか、アリですね」

 

ないわッ!と湯船に沈められる女子がいたりする。

 

ここで不意に英美が湯船の隅でゆっくり湯に浸かっている深雪に話を振った。

 

「そういえば三高の一条くんって、深雪のことを熱い眼差しで見てたね」

 

この言葉に他の女子も騒ぎ始めた。美男子である将輝と絶世の美少女の深雪との恋愛の話になりそうになるが。

 

「一条くんのことは写真でしか見たことないわ。蒼士くんと一緒にいるのは見たけど、蒼士くんしか見ていなかったから印象にないわ」

 

バッサリと切って捨てた深雪の言葉にワクワクしながら耳を傾けていた少女たちは揃ってがっかりしていた。

 

「じゃあ、深雪の好みってどんな人? やっぱりお兄さんみたいな人が好みかい?」

 

スバルのこの質問にがっかりしていた少女たちも耳を傾けて聞いていた。そんな中で深雪は至って平静な様子で呆れた表情を浮かべて答えた。

 

「何を期待しているのか知らないけど、わたしとお兄様は実の兄弟なのだから、恋愛対象として見たことなんてないわよ」

 

「じゃあ、蒼士さんは?」

 

何事もなかったように淡々と答えていた深雪に雫が問う。ただの一言であったが深雪の身体が一瞬硬直したことに雫とほのかだけが気づいた。

 

「蒼士くんね、友達としてとても頼りにさせてもらってるわ、私のことも特別扱いや気負うこともなく接してくれるので凄く助かっているわね、それに人には見えないところでちゃんと努力しているのも知っているから、向上心があって尊敬できる人とも思っているわよ、それに––」

 

「あ、うん、分かった」

 

語り尽くした深雪に全員が思ったことは、蒼士のことが好きなのでは?であった。蒼士のことをよく見ていて、高く評価しているのは伝わったのだが、この場にいるのは思春期真っ最中の少女たちなので恋愛方面にどうしても思考が向いてしまう。

 

「深雪、言わせて欲しいことがあるの」

 

「え、うん、なに、ほのか?」

 

ほのかから名前を呼ばれた深雪はほのかを見て何かを感じ取って少しだけ動揺して焦った。深雪だけでなく、雫以外の全員も何故か彼女からの謎の雰囲気に呑まれていた。

 

「蒼士さんのことを好きになったら逃げられなくなるよ、蒼士さんのこと四六時中考えちゃって、蒼士さんと話すだけで幸せな気持ちになって、もっと話していたい、一緒にいたいって思っちゃうよ」

 

ほのかは語る。自分が蒼士に想う気持ちを述べてしまい、恥ずかしい気持ちもあったがどうしてか声に出して伝えたかった。光のエレメンツの依存心もあるが、ほのかが蒼士を想う気持ちは本物である。

 

「ほのかの言う事は本当だよ、女性をダメにするというか女性を甘えさせる天才、一度でもこの沼に入ったら抜け出せなくなる。私もそう」

 

ほのかの隣にいる雫も静かに述べた。二人の言葉を静かに聞いていた面々は二人が蒼士に好意を抱いていたのは知っていた。最近になって二人が蒼士に積極的にアプローチしているのも目撃している。

 

「それに蒼士さんに頭を撫でてもらったり、身体に触れてもらうだけでね、おへその下の付近がきゅんってして身体中がマッサージされたように気持ちよくなるんだよ、蒼士さんのものになりたい、蒼士さんに全てを捧げたいってなっちゃうんだよ」

 

ほのかが喋り出すと蠱惑的(こわくてき)な甘い雰囲気が彩られ、イケナイこと聞いているような気持ちになっているのを少女たちは感じ取っていたが、どうしても聞いてしまう。蒼士に対して情熱的な囁きをするほのかの表情は愛する人を誘惑するような色っぽい女の表情で思わず目を奪われて唾を呑む一同。

 

「ほのかの言い方はちょっと過激かもしれないど、褒めて欲しい時に褒めてくれるし、声を掛けて欲しい時に居てくれるのが安心するの。それで蒼士さんの胸元に抱きついて労ってもらうのが凄い幸せなんだ」

 

ほのかに続いて雫の述べることにも静かに聞いていた少女たちはほのかと同じく謎の色香に襲われた。絶世の美少女の深雪がいるのに雫から漂う色気に思わず見惚れてしまう。

 

ほのかと雫が漂わせるただならむ雰囲気と色気に唾を呑んで身体の内から何か言いようのない感情が湧いてくるのを感じる一同。容姿が飛び抜けている深雪という最高の女性もいるのだが、ほのかと雫には女としての魅力、色気、言葉にできない何かしらの成長したことを感じ取っていた一年女子。

 

「でも蒼士さんって来るものは拒まないから安心して」

 

「それがさらなる沼にハマる事なっちゃうんだけどね」

 

ほのかと雫は二人で顔を見合わせて微笑んで見せた。官能的な雰囲気が漂っていたのを一瞬で払拭させて穏やかな雰囲気になる。

 

「ほのか、サウナに行こう」

 

雫がほのかを誘って湯船から出て二人でサウナに向かう。二人を見送る一年女子は二人の成長には蒼士が関わっていることをハッキリと認識した。

 

 

 

 

ほのかと雫がサウナに向かって抜けた一年女子たちには変な雰囲気が流れていた。

 

「ほのかと雫、なんか、扇情的というか」

 

「スバルが言いたいこと分かるよ、エロかったね」

 

スバルが口籠るのを英美が直球で代弁した。口にした英美は顔を真っ赤にさせて、その言葉を聞いた一同も顔を真っ赤にさせていた。湯に浸かって温まっているのもあるが、それ以上に変な想像や妄想をしてしまった影響もあるようだ。

 

「(ほのか、雫……二人とも語っている時、とても綺麗だったわね、言葉にできないけど惹かれるものがあったわ。それも全部蒼士くんが関わっているからなのかしら、二人が蒼士くんに好意を抱いているのは知っている、恋をするとあんなにも変わるものなの? それに二人が蒼士くんについて語っているのを聞いていて胸に変な感情が渦巻いている、これは何なの?)」

 

湯に映る自分を見ながら考え込む深雪。周りの声は聞こえているが自分の中で巡る考えに答えを出せずにいた。

 

「蒼士くんって確かに女心を(くす)ぐるよね」

 

「あぁー、だね、容姿も褒めてくれるのも嬉しいし、話しやすくて会話が弾むんだよね」

 

「うん、些細な変化にも気づいてくれるだよね、少しだけ髪切ったのも気づいてくれたし」

 

「自分が欠点だと思っていたところも褒めてくれて、可愛いって言ってくれた」

 

「駄目なところはちゃんと注意もしてくれるから頼れるんだよね」

 

女子同士の雑談が盛り上がっていた。話の中心人物は蒼士であり、それぞれの体験談などを一人一人が興味深そうに聞いて、共感したりしている。

 

「ああ見えて蒼士くんって筋肉質な体つきで、ちゃんと身体も鍛えているしね」

 

「ん? スバル、どうしてそんなこと知ってるの?」

 

スバルが語った言葉に思わず疑問を浮かべる英美。

 

「一度だけ転びそうになった時に助けてもらった時があってね」

 

「あぁぁぁ、分かったー、その時に蒼士くんに抱き止めてもらったんでしょ?」

 

スバルの言葉に合わせてきた英美。

 

「エイミィ、そ、そんな大袈裟に言わなくてもいいだろう、事故だったんだから」

 

ちょっとだけ照れながら述べるスバル。彼女にしては珍しく戸惑いの表情が出ており、英美からの視線から逃れようとしているがそれがかえって裏目に出る。

 

「その時に蒼士くんの胸元に顔を埋めて、ときめいちゃったんだね! スバルも乙女だね」

 

「おおぃぃ!? 何を勝手に妄想して声に出してるんだ! 僕がそんなことを想うわけないだろう!」

 

英美の独自解釈によりあられもない妄想の被害にあってしまったスバル。周りで聞いていた同級生たちは思わず、きゃぁぁ、と声を上げてそのまま蒼士とスバルの妄想恋愛話に発展していた。一度火がついた思春期少女の妄想を止められないスバルは頭を抱えている。

 

そんな騒ぐ中で一人の少女は曇った表情を浮かべていた。

 

「(私が蒼士くんに抱いている気持ちは友達としての好きなのよね、異性ではお兄様と同じぐらい頼りになって、最近ではほのかや雫とは別でちゃんと練習を見てくれて、練習相手にもなってくれている。もしかしたらお兄様より最近は話しているのかも、最初に浮かべる男性になっているのも蒼士くん……お兄様と蒼士くんは同じ? これってお兄様と蒼士くんが同じ位置ってことなの!? わ、私って、もしかして–––––)」

 

「え、ちょっと司波さん!?」

 

「えぇぇー、深雪がのぼせちゃってる!?」

 

深雪以外の女子が騒いでいたが、深雪は一人静かに頭の中で考えを巡らせていたらのぼせてしまっていた。そのことに気づいたスバルと英美が驚いて声を上げて、その声にサウナに入っていたほのかと雫も気づいて、プチパニック状態になりかけるのであった。

 

 

 

 

のぼせてしまった深雪を休ませている時に達也と幹比古は拳銃と爆弾を持った正体不明の賊を遭遇していた。

 

最終的に幹比古が撃退したが魔法の発動が遅く、拳銃で撃たれると思っていたのを達也に助けてもらうことで自分の古式魔法で撃ち倒すことができた。だが、そのことに幹比古は納得できずに達也から術式の無駄があることを指摘されて言い合いになりそうになるが、達也は魔法式が見えていることを告げて、信じられなさそうにして混乱している幹比古に賊を放置しているわけにいかないので警備員を呼びに行かせた。そして達也は近づいてくる知人の気配に自分の魔法の発動を中断して知人と話をすることに。

 

そんな様子を覗き見ていた者がいた。達也からは遥か遠くでライフルのスコープから覗いて見ていたのだ。

 

「あの坊やは只者じゃなさそうだね」

 

スコープ越しから達也のことを強者だと察している。動きに無駄がなく隙がない達也は彼女から見てもヤバイと感じる存在感を放っていた。

 

麻子(あさこ)、そっちは終わったの?』

 

スコープで達也のことを見ていた人物は麻子という女性であった。耳に付けていたインカムから聞こえてきた声も女性の声である。

 

「賊の逃走用の車はパンクさせて、車内にいたサポート役も狙撃して仕留めた、本社に後処理は頼んだよ。そっちはどうだい、怜子(れいこ)ちゃん」

 

インカム相手に報告して問い返す麻子。自身の仕事を終わらせて交代要員と代わるために撤退の準備をしながら会話している。

 

『ちゃんは付けないでって言ってるでしょう、こっちも五人始末した』

 

麻子の通信相手の怜子も仕事を終わらせたようだ。

 

麻子(あさこ)と呼ばれた人物は日下部(くさかべ) 麻子(あさこ)という。身長が女性にしては高く、大柄で肉感的なグラマラスな体躯の持ち主。格闘や戦闘術に優れて、その中でも遠距離精密射撃が得意である。

 

怜子(れいこ)と呼ばれた人物は朽葉(くちば) 怜子(れいこ)という。麻子と同じで凄腕のスナイパー。物静かで声も小さい。外見が男性に見えるためによく男性と間違われるがれっきとした女性であり、男扱いした者は例外なく「男じゃないわ」と言い放って殴り倒している。

 

二人は蒼士の部下であるが今は別の人物の指示で動いていたのだ。

 

『そういえば今回の狙撃距離は?』

 

「千四百メートル、あと二百は余裕でいける。そっちは?」

 

『千メートル、そんな長距離を余裕でできる貴女は化け物ね』

 

「いや、怜子も十分に化け物クラスだろ」

 

怜子の問いに淡々と答えていた麻子。二人とも長距離狙撃を簡単にやってみせていた。軍人や分かる人が聞けばどれだけ凄いかが窺える。

 

「いつもの店に飲みに行くつもりだけど付き合わないか?」

 

『私は帰って寝る、通信終了』

 

インカムが切られて麻子と怜子の交信が終わった。やれやれと思いつつプロとして証拠や痕跡を残さず撤退する麻子。

 

麻子と怜子の上司は蒼士から一高を襲った車両の犯人の背後にいる組織を調べてる指示を受けた人物であった。




温泉シーンの湯着を着ているのは普通に裸で入浴するよりかエロく感じたのは俺だけなのか。

『グリザイアの迷宮』の登場人物
・日下部 麻子

『MURCIELAGO -ムルシエラゴ-』の登場人物
・朽葉 怜子

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