渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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第三話

無事に何事もなく入学式が終わり、これから楽しくなりそうだと思いつつ、連絡先を交換した新入生たちと家で交流を深めていた蒼士。

 

寄り道して一緒にお茶をした達也達とも連絡をしていた。達也に関してはCAD関連。深雪は今度の休みに一緒に出掛ける約束のお願い。エリカは千葉の道場で試合をする約束。美月には目の霊子放射光過敏症(りょうしほうしゃこうかびんしょう)について聞き、ほのかと雫に関しては三人で会話しながら出掛ける約束をすることに。そしてもう一人とも長電話をして過ごした。

 

そんな忙しい一日を終えて、次の日になってからも蒼士は朝早くから動いていた。朝食を取らずに第一高校の通学路の通り道になっている駅前の喫茶店に訪れていた。

 

約束した人物はまだ来ておらず、コーヒーを頼んでゆったりとしていると、入口の扉が開くのと同時に鈴の音が響き、約束の人物が現れた。

 

「ごめんなさい蒼士くん、待った?」

 

「いえ、自分も来たばかりですから、七草(・・)先輩」

 

彼女が座れるように椅子を引いてあげる蒼士。ありがとう、と嬉しそうに席に着く真由美。

 

彼が待っていた人物は第一高校生徒会長の七草真由美であった。昨日の夜に真由美から蒼士に電話を掛けて約束をしたのだ。蒼士は断ることなく、そのまま彼女が一方的に話すことを聞きながら相槌を打ったり、ときには意見を述べたりして長い時間彼女と電話をしていたのだ。

 

お互いに朝食を取りながら話をして、朝の時間を楽しむ二人。喫茶店の中では朝から美男子と美少女がイチャイチャしているのにムカムカしている人、その光景をニコニコして見てる人がおり、何時もよりブラックコーヒーの注文が多かった、と喫茶店のマスターは語っていたとか。

 

真由美から話を振ったり、蒼士から話を振ったりと誰が見ても楽しそうにしている二人はカップルにしか見えなかった。

 

「朝早くから家を出て大丈夫でしたか?」

 

「問題ないわ、妹たちが事情を知りたそうにしていたけどね」

 

「護衛の方もですか?」

 

「あれ、知っていたの?」

 

「七草家のご令嬢に護衛が付いていないのは可笑しいでしょう」

 

「それもそうね、勿論大丈夫よ」

 

お互いに顔を見合わせて笑う、自然の流れが二人の間で出来ており、その後も会話は続く。

 

「蒼士くんの方はご家族は大丈夫なのかしら?」

 

「両親は自分が幼い頃に亡くなってしまい、今は一人で暮らしています」

 

「ご、ごめんなさい、私ったら……」

 

「いえ、お気になさらず。もう昔の話ですから」

 

少し気まずい雰囲気が流れたりもするがそんなものは二人には意味がない。

 

「一人暮らしですので、七草先輩も何時でも来て下さって結構ですよ」

 

「ほんと!? あ……でも、一人暮らしの男の子の家って……」

 

「ちゃんと綺麗にしていますから大丈夫ですよ」

 

「いや、そういうのじゃなくてね……」

 

頬を赤く染めて恥ずかしそうにしている真由美に蒼士は何故だろう、と一瞬考えて答えが出る。

 

「もしかして男の家に入るのが恥ずかしいんですか?」

 

「なっ、そ、そんなことないわよ」

 

おほほ、と笑って誤魔化そうとするが完全に失敗していた。

 

「七草先輩みたいな美少女なら一人や二人ぐらい彼氏がいて、部屋なんて余裕で入っているんだと思っていました」

 

「ちょ、ちょっと! なんて印象を持っているのよ! 酷いわ、蒼士くん!」

 

軽く頭を下げながら謝る蒼士に怒りが収まらない真由美。

 

「じゃあ、我が家で料理をご馳走致しますよ」

 

「えっ、蒼士くんって料理出来るの?」

 

「何かと便利な時代ですが、自分で料理した方が美味しいのでよく作るんですよ」

 

この世界は自動で料理など出来るので、自分で料理する人もいるが自動に頼る人の方が多いのだ。

 

「七草先輩のためだけに特別な料理を作りますよ」

 

「っ! 本当ね?」

 

照れながらも嬉しそうにする真由美に頷く蒼士。

 

「そろそろ出ましょうか」

 

「もうこんな時間なのね」

 

店内の時計を見てみると通学時間になっており、二人は店を出る準備をする。

 

「本当に蒼士くんと話していると時間があっという間に過ぎていくわね」

 

「自分も七草先輩と話していて楽しいですから、時間なんて一切気にしていませんでした」

 

誰もが見惚れてしまう笑顔で言う真由美と彼女に負けないぐらい綺麗な笑顔で応える蒼士。真由美が腕を絡ませてデートの続きでもするのではないかという雰囲気で、お店を後にした二人。

 

通学時間になっていたということで第一高校に着くまでに二人はかなりの生徒に目撃されることになった。

 

 

 

 

* 七草真由美の教室での出来事 *

 

「おい真由美!アレはなんだ!」

 

「ちょっと摩利(まり)!? 一体何のこと?」

 

「新入生と一緒に登校してるのを見たぞ」

 

「えぇ、梓條蒼士くんね」

 

「彼がか……」

 

「そう、お昼に生徒会室にランチに誘ったから摩利も居てね」

 

「それは別にいいが、さっそく噂になってるぞ……」

 

「噂って?」

 

「会長が新入生に一目惚れして付き合いだしたって」

 

「えぇぇぇ!? 誰よ! そんな噂を流しているのは!」

 

「それは知らないが、あんな光景を見てしまうと信じてしまうぞ」

 

「えっ?そんな……?」

 

「あぁ、かなりの人数が見ていたからな」

 

「はぁぁぁー……!どうしよう!!」

 

「そんな顔を真っ赤にするくらいなら、一緒に登校しなければいいだろう……」

 

「だって話したかったんだもん」

 

「だもんって……(もしかして本当に好きなのか?)」

 

顔を真っ赤にしてあわあわしている真由美は授業にも集中できずに過ごすのであった。

 

 

 

 

新入生たちは自分の端末で席を確認し、続々と教室に入っていく。席に着いて隣の人と話す者、周りの人と話す者、それぞれがこれから始まる学校生活に胸を躍らせていた。

 

「おはよう、二人とも」

 

達也の席は美月の隣であった。美月はさっそくエリカと話をしていた。

 

「オハヨ、達也くん」

 

「おはようございます、達也さん」

 

エリカ、美月に挨拶されてから達也は選択科目の履修登録のためさっそく行動していた。今では珍しいキーボードオンリーの入力にエリカや美月も驚いており、それを覗いてしまった男子生徒も驚いていた。

 

「蒼士くんも速かったけど、達也くんも凄いわね」

 

感心するように頷いているエリカ。

 

「本当に速いですね」

 

瞳を輝かせて尊敬の目を向ける美月。

 

達也はそんな二人にそうでもないだろう、と言わんばかりに手を止めることなく入力していく。

 

「すげぇよ! さっきも蒼士のやつがキーボードオンリーでやっていたけどそれより速いんじゃねぇか?」

 

達也は視線を感じていたから分かっていたが、背後から声を掛けられた。

 

「わりぃ、自己紹介がまだだったな、西城(さいじょう) レオンハルトだ。親父がハーフ、お袋がクォータなもんでこんな名前でさ、レオでいいぜ」

 

西城レオンハルト、大柄で骨太な体格で話しやすそうな雰囲気を出している。

 

「司波達也だ。俺のことも達也でいい」

 

OK、達也、と笑顔で応えてくれたレオ。感じのいい印象を相手に与える奴だ、と達也は感じ取っていた。

 

「そういえばレオ、蒼士が何処に行ったか知らないか?」

 

「んぁ?達也の隣の席で履修登録した後クラスの連中と話をしながら廊下に出て行ったが?」

 

そうか、と納得した達也。やっぱり蒼士の奴が隣の席だったことも内心納得する。

 

「お、呼んだか?」

 

そんな質問をしていると携帯端末を操作しながら蒼士がやって来た。忙しそうに端末を弄りながら達也に話しかけている。

 

「また交流でも深めていたか?」

 

「そうだよ、中々面白そうな人材がいたよ」

 

呆れたような表情する達也は手を止めずに入力し続けていた。達也と蒼士が会話をしていると何やらエリカとレオが言い合っていた。お互いの態度が気に入らなかったようだ。声を張り上げているせいか注目されている。

 

「おいレオ、女の子には優しくしろって教わらなかったのか!」

 

達也と話していたはずの蒼士はいつの間にかエリカの横に移動してエリカの腰の辺りに手を当てて、自分の方に引き寄せていた。違和感を感じさせない自然な流れでエリカは蒼士の胸の辺りに収まっていた。

 

「これも紳士の嗜みだぞ」

 

はわぁ、と顔を赤くさせる美月に、エリカは何をさせられたのか分かっておらず理解した瞬間に美月と同様に顔を赤面させていた。

 

「ア、アンタも、何やってくれてるのよっ!?」

 

高速で蒼士から離れるエリカ。恥ずかしそうにしながらこんな事態にした張本人の蒼士に向かって身構える。

 

「女性に優しくするのは当然だろう!」

 

「い、いや、何で私が攻められてるのよ」

 

周りにいた生徒達がそのやりとりを見ていて笑ってしまっていた。まだ関わりがないのに周りを巻き込んで笑顔にさせたのだ。

 

「……分かったぜ、蒼士と千葉がそういう関係だってことが!」

 

「全然分かってないわね、アンタ!」

 

レオも本当に分かっているのかいないのか、天然力を見せてさらにクラスの中が笑いで満ちる。ふっ、と鼻で笑うように達也は口元が緩んでいた。

 

「おや、達也が笑ったぞ」

 

「笑っていない」

 

近くにいた蒼士に勘付かれてしまい、達也は失態だと内心思っていた。

 

「ちょっと美月さん見ましたよね」

 

「は、はい、確かに口元が緩んだような」

 

周りに同調者を増やして逃げられないようにするつもりだ、と瞬時に理解した達也は逃げようとする。

 

「柴田さんもか」

 

「まぁ、今のは分かりにくかったが、このクール野郎を絶対に笑わせてやろうな、美月」

 

はい、と元気よく応える美月。そんな二人を見ながら達也は内心で自分の事情を知っているクセに何言ってんだ、と蒼士に幾分か不満を吐いた。

 

盛り上がるE組内であったが予鈴がなって席に着いて落ち着きを取り戻す。そんな中で達也は隣の席にいる蒼士を見た。明らかに異常な行動をとっていたからだ。

 

本鈴が鳴りオンライン授業のはずが、総合カウンセラーの小野(おの) (はるか)という人物が学校の説明などをしていく中で、一人の生徒を名指しした。

 

「梓條くん、私のお話を聞いていますか?」

 

達也の隣で異常な行動をしていた蒼士であった。蒼士は何時もとは違う端末でキーボードを打ち込みながら画面をスクロールしていた。

 

「はい、聞いています」

 

「貴方は何をやっているんですか?」

 

耳では聞いているとは思うが、先生を意識していないのは明らかであった。片手でかなりの速さで打ち込み、片手でスクロールしていく。

 

「第一高校にハッキングと全校生徒一覧を見ています」

 

何を言い出すんだ、とクラス内の全員が思ったことであった。遥先生も唖然としている。ざわざわとクラス中がしている中でキーボードを弄る手を止めて両手を上げて述べる蒼士。

 

「勿論、冗談です。ちょっと履修登録の修正を、すいません」

 

冗談か、とクラス中が笑ってしまい、遥も思わず笑ってしまっていたが達也は冷や汗を流していた。達也の位置からでも十分に見えていたが蒼士がやっていたことは本当だったのだ。第一高校の警備状況、先生達のスケジュール、監視カメラの配置、そして全校生徒の顔写真、速い動作で見えていなかったのかは知らないが達也にはハッキリと見えていた。

 

達也は思わず蒼士を睨みつけていたが、蒼士は笑って誤魔化していた。

 

履修登録を終わらせていた人は先に退出していいということを遥が言うと一人だけ先に退出していった。切羽詰まった表情の男子生徒を興味深そうに蒼士は見ながら何かしら考えていた。

 

その後も遥の説明を聞きながら進み、第一高校のカリキュラムと施設に関するガイダンスを受け、授業が終わった。

 

午後まで自由な時間が出来たので蒼士、達也、レオ、エリカ、美月の五人で学校内の施設を見ることにした。工房に興味がある者が多かったので工房見学をすることに。エリカとレオが何やら言い合っていたようだが、見学しているうちに何だかんだで仲良くなっていたようだ。

 

入学二日目にして行動を共にするグループは固まりつつあったが、その中でも蒼士は異質であった。達也達と行動を共にしているが、他のグループに呼ばれたり、工房見学中も他クラスの女子に腕を掴まれてひっぱりだこになっていた。近くに先生や上級生がいるのに蒼士に施設内のこと、専用道具のこと等を聞く人が後を絶たなかったのである。そしてそれらの質問にすんなり答え、使い方などの説明もする蒼士は凄い人物だと、周りに居た人たちも思わざるを得なかった。

 

お昼になり食堂で食事をする達也達。

 

「工房見学楽しかったですね」

 

美月は設備が充実していてとても興味を引いたようだ。

 

「なかなか有意義だったな」

 

達也も食べながら感想を述べた。達也自身も元々の目的であり、学べる環境としては良い印象を持てていた。

 

「あんな細かい作業を俺はできるかな……」

 

見学して改めて実感したレオ。工房で見たことに多少の心配があるようだ。

 

「アンタには無理に決まってんでしょ」

 

からかうように言うエリカにレオはむっ、と声を荒げて怒っていた。エリカもレオも冗談半分というのを分かっているので本気ではない。

 

「レオはどうでもいいとして、蒼士くんって生徒会に呼ばれてたんだよね?」

 

「あぁ、そうみたいだ」

 

軽くレオをあしらってエリカは達也に聞いた。この場に蒼士はいない。生徒会に呼ばれ、そっちでお昼を取る、と達也は蒼士から聞いていたのだ。

 

ふーん、とつまらなそうに反応するエリカ、凄いですね、と感心する美月、食事に集中するレオ、となんとも個性的なメンバーだと達也は思った。

 

そして達也は自分の目に映り、こちらに歩み寄ってくる妹の深雪と、その後ろにいる取り巻き達を見て嫌な予感がした。視界の端でほのかと雫が申し訳なさそうに頭を下げていたのがさらにその予感を増幅させた。

 

 

 

 

蒼士は達也たちとは別行動をしていた。朝一緒に登校した真由美からお昼を誘われていたので生徒会室まで訪れていた。

 

インターホンを押して入室を請う蒼士に扉のロックが外れる音が聞こえたので入室する。

 

「いらっしゃい蒼士くん。さぁ、座って」

 

正面の机から真由美に声を掛けられた。そして自分の近くの席に来るように誘導される。蒼士は真由美から見て正面右隣に座ることにした。他にも三名の役員が同席しており、蒼士のことを見ていた。

 

一人目はストレートのショートボブの女性で整った顔立ちを持ち、同性からもモテそうな雰囲気を醸し出している女生徒。蒼士を興味深そうに見ており口元を緩めていた。

 

二人目は背も手足も長く整った顔立ちだが、どこか相手にきつめの印象を与えてしまうような、美少女ではなく美女と表現するのが相応しい女生徒。

 

三人目は中学生にも見えるくらい小柄で童顔の少女。気弱な性格のようで蒼士を見て多少警戒しているが、可愛いらしい小動物のような印象の美少女だ。

 

「お話は、お食事をしながらしましょう」

 

生徒会室には自動配膳機(ダイニングサーバー)があり、肉、魚、精進や複数のメニューがあるらしい。

 

それぞれ頼んだものが配り終わるとホスト席に座る真由美が声を掛けてきた。

 

「蒼士くんの前に座るのが風紀委員長の渡辺(わたなべ) 摩利(まり)よ」

 

蒼士のことを興味深そうに見ていた凛々しい彼女が、とある(・・・)人物から話を聞いていた人だ、と断定できた。蒼士自身は自分の魔法で分かっていたが。

 

「君の事は知っているよ、期待しているぞ」

 

摩利の方も彼女の彼氏から蒼士のことは聞いており、当然知っていたようで、それは蒼士も同じであった。

 

「こちらも修次(なおつぐ)殿からお噂はかねがね。愛すべき女性で何よりも大事だと聞いておりました。若輩者ですがよろしくお願いします」

 

そう述べて頭を下げる蒼士に対し、顔を真っ赤にさせて動揺する摩利。

 

蒼士が摩利のことを知っていたのは彼女の彼氏である千葉(ちば) 修次(なおつぐ)から聞いていたからだ。修次は千葉家の次男でエリカの兄にあたる人物。防衛大学校在籍中で、三メートル以内の間合いなら世界屈指の魔法白兵戦技の英才であり『千葉(ちば)麒麟児(きりんじ)』と呼ばれる人物である。

 

そして何よりも蒼士と一戦交えているのだ。

 

蒼士のさりげない言葉に普段クールな摩利も堪らず反応してしまった。自分の知らないところでも彼氏に大事に思われているのが嬉しくて隠しきれないのであった。

 

「え、えっと、次は会計の市原(いちはら) 鈴音(すずね)、通称リンちゃん」

 

赤面している摩利を見て考えた末にスルーを決め込む真由美は、次に摩利の隣にいる整った容姿で美女の雰囲気を漂わせる人物を紹介した。

 

「この前、国立図書館でお会いしませんでした?」

 

確か何処かで見た記憶があったので蒼士は聞いてみた。その言葉に鈴音は多少驚いたが、すぐに冷静な表情に戻っていた。

 

「会話もしていませんのによく覚えていましたね」

 

鈴音としても偶然通り道に蒼士が座っており、通っただけだったのだから。

 

「勿論、市原先輩みたいな綺麗な女性は一目見たら忘れられませんよ」

 

笑顔を添えて述べる蒼士。

 

「そ、そうですか」

 

頬を薄く赤く染めて視線を下の方に向ける鈴音。真正面から堂々と自然な流れで言われてしまった為に、普段の冷静さを失ってしまった。

 

「蒼士くん! 綺麗な女の子を見たらすぐに口説くの辞めてね」

 

真由美が頬を膨らませ注意してくる。

 

「綺麗な人に綺麗と言うのは良いことだと思いますが」

 

そ、それは、と言い淀む真由美。

 

「七草先輩はどうも虐めたくなっちゃいます、とても可愛いですよ」

 

悪ぶれたつもりは無かったが真由美の反応が蒼士を刺激したようだ。

 

「可愛いって言われても、お姉さん許しません」

 

口では否定しているが頬を赤くさせている真由美。

 

「今度の休みに一緒にお出掛けしませんか? 新しく洋服が欲しいので……いやな「行きましょう!」では一緒に行きましょうね」

 

ニコニコして嬉しそうにしている真由美。蒼士はなんなくデートの約束を取り付けることに成功したのだ。そしてそんなやりとりを見ていた摩利、鈴音、小柄な女子生徒は同じことを思っていた。会長は本当に彼のことが好きなのでは?と。

 

「あ、それからリンちゃんの隣が書記の中条(なかじょう) あずさ、通称あーちゃん」

 

真由美に呼ばれてビクッと反応するあずさ。

 

「会長……お願いですから下級生の前で『あーちゃん』は止めてください。私にも立場というものがあるんです」

 

腕を振りながら真由美に対して苦情を入れるあずさであったが、逆にそれがあーちゃんと呼ばれるのにピッタリだな、と蒼士は内心で思った。

 

「これからよろしくお願いします、CADショップの前でガラス越しにCADを物欲しそうにしていた、中条先輩」

 

はぅぁ!と蒼士の言葉に机に顔を押しつけて突っ伏してしまったあずさ。先輩と呼ばれて嬉しいのであるが、それ以上の大ダメージを受けてしまった。

 

「……見てたんですか?」

 

「はい、とても輝いた瞳で商品を見てたので」

 

はぅぁ!と顔を上げたと思ったら、また机に沈んだあずさ。微笑ましくそれを眺める蒼士であった。

 

「……よろしければあのCAD持ってきてあげましょうか?」

 

へっ、と顔を上げて蒼士のことを見るあずさ。恥ずかしさで赤面させていた先程と違い、目を輝かせている。

 

「持っているので、見たくなけ「見たいです! 是非とも持ってきてください!」分かりました」

 

沈んでいた時とはまるっきり変わって元気百倍で蒼士に応えたあずさ。それほどCADのことが好きなのか、と納得せざるを得なかった蒼士。

 

また蒼士が女子と仲良くしているのを見た真由美が割って入ってきて、蒼士に言い負かされてしまい、摩利も鈴音もあずさもその光景に思わず笑っていた。蒼士はついでに全員に名前で呼んでほしいともお願いしていた。

 

食事も食べ終わり、一息してから真由美が生徒会の説明を始めた。蒼士が入るのは風紀委員であるが一応説明を聞いてほしいということは伺っている。一通りの説明を聞くと摩利が風紀委員の説明をしてくれた。

 

「百山校長や他の先生方からの強い推薦で教職員推薦枠で入ることになっている。それに個人的にも君を風紀委員に入れるのは賛成でね」

 

「修次殿にでも聞きましたか?」

 

うっ、と言葉を詰まらせる摩利。

 

「んんっ、そうだが……蒼士くんがシュウに勝ったというのは本当か?」

 

摩利の言葉に真由美、鈴音、あずさはおどろかずにはいられなかった。世界的にも知られている人物である千葉修次に勝ったということに。

 

「こんな得体の知れない相手に油断していたんですよ」

 

「いや、シュウは本気だったって言っていたぞ」

 

彼女には本当のことを話しているんだな、と蒼士は察した。これは完全に知っているなと思ってしまった蒼士。

 

「えぇ、勝ちましたよ、三戦三勝で」

 

蒼士が本当のことを言うと全員驚いてしまう。彼の口から言ったことと摩利の表情から真実なんだと知ってしまったのだ。

 

「で、でも、なんで蒼士くんは二科生なんですか?」

 

あずさが最もらしい疑問を言ってくれた。彼は一科生ではない、二科生である。実技が優先されている魔法科高校でそれほどの実力があれば魔法技能も平均以上なのでは、と思ってしまう。なら一科生にもなれていたはず。

 

「あ、それは第一高校の試験の前日から勉強を始めたので、単に実力がついていなかったのです」

 

何事もないように応える蒼士であったが、蒼士以外の面々は疑問を感じられずにはいられなかった。

 

「つまり蒼士くんは前日に試験勉強をして知識と魔法技能をつけたということですか?」

 

そうなります、と笑顔で応える蒼士に驚愕する生徒会メンバー。

 

「覚えるのは得意分野なので」

 

それでも限度ってものがあるだろう、と生徒会の面々は同じようなことを思う。

 

「それに……」

 

言葉を濁して何か言おうとする蒼士に耳を傾ける面々。

 

「成り上がりって結構好きなんですよね。実力のある者が実力が無いと思っていた者に負かされるのが」

 

半笑いでこの場にいる面々に言ってみせた蒼士に面々は内心で((((Sだ))))と同意見で一致していた。

 

蒼士は自身の話もしながら真由美、摩利、鈴音、あずさのことを知ろうと時間が許す限り会話をしていくのであった。

 

皆も蒼士と話をしてみたいと思っていたようで、気まずい雰囲気になることもなく自然な流れの会話が出来、それぞれに好印象を残した。

 

お昼休みの終わり間際まで生徒会室でお世話になった蒼士であったが、教室に戻ってみるとレオとエリカからイラついている雰囲気を悟ったので達也に聞いてみると、一科生と揉めた、ということを聞いて不安を感じる蒼士であった。

 

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