渡り歩く者   作:愛すべからざる光

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第四話

放課後になって達也たちと帰るつもりだった蒼士であったが、親しくなった他のクラス女子に連れていかれ、達也たちに先に帰るように言う。

 

女子生徒に連行されると、蒼士と話してみたかったという男子や女子たちと自然な会話をして過ごす。差別意識の無い一科生や、差別など気にしない二科生も混ざっていく内に食堂での事件の話になる。

 

午後の見学の最中、達也から話は聞いていたが、相手の名前までは知らなかったので彼ら、彼女らから聞けて有り難かった。

 

森崎(もりさき)という人物とその取り巻きたちが特に二科生を見下しているという話も聞いた。身勝手で傲慢な振る舞いをする森崎たちに同じ一科生でもいい印象は持たれていないようだ。勿論、二科生からは最悪の印象だが。

 

蒼士はそれらの話を聞いて嫌な予感がしていた。そのときタイミングよく雫とほのかを見つけて、会話を切り上げて彼女らと帰ることにした。ちゃんと連絡先も交換してから別れる。

 

雫とほのかも蒼士に相談したいことがあったらしく探していたらしい。

 

二人と合流し、下校しながら話を聞こうとしていた蒼士であったが、嫌な予感が的中することになる。

 

達也たちが正門付近で口論になっていたのだ。達也たちの声は聞こえない距離だが、どう見ても何かしら起きているのが分かる。

 

達也の前には深雪がいるが、その深雪の背後に一科生が複数人、達也たちを睨みつけて威圧している。明らかに敵意むき出しで、今にも魔法を使いそうな感じが分かる状況だった。

 

「蒼士さん、あの人が森崎だよ」

 

雫が指を差した先にいた人物が森崎だと蒼士は認識するが、何よりもグループの一番前にいるので分かりやすかった。

 

蒼士たちからはまだ距離があるので何を言っているかは分からないが、森崎の言葉に美月が何かしら主張したようだ。そして何故か深雪が慌てていた。

 

「大丈夫なんでしょうか……?」

 

不安な表情でいるほのかの肩に優しく触れて蒼士は二人よりも前に出る。

 

「二人はゆっくり歩いてくるといいよ、俺が解決しとくから」

 

まだ達也たちと距離があるのにどうするのだろう、と思うほのかと雫。そんな二人に蒼士の視線は達也たちの方を向いており、森崎が魔法を使おうとした瞬間、蒼士は動いていた。

 

 

 

 

校内でのCADの携帯が認められている生徒は生徒会の役員と一部の委員のみ。

 

校外における魔法の使用は法令で細かく規制されている。だが、CADの所持に関しては法令で禁じられていない。そして、校内では授業開始前に事務所に預け、下校時に返却を受ける、という規則になっている。

 

そして、今現在は下校時のためCADを持っているのは別におかしなことではない。

 

「だったら教えてやるよ!」

 

森崎が達也たちに向かってCADを向け、魔法を放とうとする。

 

エリカとレオがそれを阻止しようと動こうとする。達也もあまり騒ぎになるのを嫌い、目立つ真似はしたくなかったが、仕方なく自身の魔法を使おうとするが、その前に事が済んだ。

 

「性格改変チョップ!」

 

「あた」

 

「以下略チョップ!」

 

「いたっ」

 

「同じくチョップ!」

 

「いっ」

 

森崎の取り巻きたちにチョップをかました人物がいたのだ。一回ずつ取り巻き全員にチョップをして痛そうに頭を摩る森崎たち。

 

「蒼士くん、何をやったの?」

 

森崎たちの魔法に対応しようとしたエリカが声を掛けた。

 

先程までほのかや雫たちのところにいた蒼士が森崎たちの背後に現れていたのだ。この場にいる全員が思った。いつ現れた、と。

 

達也、深雪、エリカ、美月、レオの五人の視線があったのにも関わらず、それを掻い潜って、森崎たちにチョップしたのだ。

 

「そろそろ分かるよ」

 

深雪たちの方に合流してエリカの言葉に応える蒼士。そんな蒼士に警戒の目を向ける達也がいた。

 

達也は自分が気配でも魔法でも察せられなかった蒼士の実力に驚愕しているが、警戒の方が圧倒的に大きかった。そんな達也の不安をエリカは口にする。

 

「ねぇ、どうやって彼らの背後に現れたの?」

 

そのことについて達也たちは聞いておきたかった。誰も分からなかった答えを。

 

「ただ速く動いただけだよ、こんな感じでね」

 

蒼士は予備動作も無しに、合流しにこちらへ来ていたほのかと雫の背後に現れたのだ。今度は目の前で一瞬で移動してみせた。

 

突然背後に現れて声を上げて驚くほのかに、雫も驚くが声はあげていなかった。

 

「人体って各部がバラバラに動いていて、とても効率が悪いんだよね。最大限の力を出しきれていないから体の動きも生かせていないんだ」

 

言い終わるとまた達也たちの視線から外れて、達也の横に移動していた。

 

「確かに、それは身体技能みたいだな。起動式すら展開していない」

 

「流石に良い目をしているね、達也」

 

達也は自身で確信した。身体技能のみでやっていることなんだと。

 

なんでそんなことが分かるのか、という疑問が達也と深雪以外の面々は思ったようなので、達也は起動式を読み取れることを話す。普通では信じられないことだが、深雪と蒼士が本当のことだというと納得したようだ。

 

「一応、訓練すれば誰でも出来るとは思う。エリカと達也は見たところ素質があるから比較的楽に習得できると思うぞ、この呼吸法と歩法」

 

蒼士のこの言葉にとてつもなく興味を惹かれるエリカと達也、覚えられるなら是非とも覚えたいと思う二人であった。

 

「貴方たち何をやっているの!」

 

かなりの騒ぎになっていたせいか、周りで様子見をしていた生徒が生徒会に連絡したようだ。声が聞こえた方には生徒会長の七草真由美と風紀委員長の渡辺摩利が向かってきていた。

 

「偶然校内を歩いていたら一年生の生徒が揉めていると連絡を貰ったので来たのですが、蒼士くん、これはどういうこと」

 

達也たちのグループで親しい仲である蒼士に真由美が問う。摩利も蒼士の言葉を待っているようだ。

 

「一科生が新入生総代の司波深雪さんともっと仲良くなりたいあまりに一緒に帰ろうとごねていたようですが、深雪さんが兄の司波達也くんと帰る先約をしていたことに嫉妬して、大きな声をあげていたみたいですよ、七草先輩」

 

最初から居なかったのによく分かるな、と達也たちは思っていた。

 

「なんなら森崎くんたちに聞いてみたら良いですよ。今は反省しているみたいですから……だよね?森崎(・・)くん」

 

そういえばさっきから森崎たち一科生たちが何も言ってきていないな、と思っていた達也たち一同は振り返って確認してみる。あれ、何か変なような?と感じさせる雰囲気を漂わせる森崎グループ。

 

「はい、僕たちが全面的に悪いんです!」

 

誰だ?と言っても過言ではないぐらい性格が変わっているのだ。達也たちは唖然として何が起こったか理解できなかった。

 

「僕たちが司波深雪さんと無理矢理帰ろうとしたからなんです。彼らは悪くありません」

 

森崎の発言に取り巻きたちも頷いて申し訳なさそうにしている。見下していた筈の森崎たちが非を認めていた。

 

「そ、そうなんですか? 失礼ですが貴方は深雪さんのお兄さんが二科生でもなんとも思わないのですか?」

 

真由美たちの前に来て事情を説明してくれた森崎に質問してみた真由美。真由美の質問に深雪は少しだけムッとなったが、それよりも森崎の答えが気になるようであった。

 

「思わないと言うなら嘘になりますが、それでも二科生の人たちも自分らと同じで魔法科高校に合格したという実績があるので見下したりなんてしませんよ」

 

マジで誰だよ!?と思う達也たち面々。まるっきり別人になっているとしか思えない。

 

「司波さんに皆さん、本当にすまなかった」

 

まさかの達也たちに頭を下げて謝り始めた森崎たちに吃る達也たち面々。

 

「僕たちが悪いんだから、司波さんたちはどうぞ帰って下さい。僕らが生徒会長と風紀委員長の対応をします」

 

睨みつけていた筈の視線も今では申し訳なさそうな目で達也たちを見ていた。

 

「では、そういうことなので自分らは帰らせていただきますね」

 

何事もなかったように帰ろうとする蒼士に、頷いて応える森崎たち。

 

「ほら、帰るよ」

 

唖然として固まっていた達也たち面々は動き出して正門から学外に出ていく。真由美や摩利も経緯も分かり、悪いと思っている面々が目の前にいるので、巻き込まれた人たちを止めることはせず帰らせた。

 

達也たちのせいではない、ということを必死に説明してくる森崎たちに苦笑いで応えていた真由美は、今夜も電話して問い詰めてやる!と心に誓うのであった。

 

 

 

 

まだ森崎たちに使った魔法の説明をされていなかった達也たちは気になって仕方なかった。歩きながら説明するのも何なので、喫茶店に寄って落ち着くことになった。

 

「で、あの威張っていた森崎たちに何をしたんだ?」

 

達也が問う。その周りにはレオ、深雪、エリカ、美月、ほのか、雫たちがおり、飲み物を飲みながら先程の出来事の説明を要求していた。

 

蒼士が現れるまで二科生を見下し、達也たちを完全に舐めきっていたはずの森崎グループが一変して、素直に謝ってきたのだ。まるで人が変わったように……。

 

「あれは俺のオリジナル魔法だよ。精神干渉系統の魔法で、簡単に言えば今の感情の真逆になるっていう効果かな。効果は一時間ぐらいしかないけど」

 

軽い口調でとんでもないことを言っていることに蒼士は気づいていない。聞いていた面々は口元に手を当てて驚いていたり、目を見開いて驚く者もおり、全員がリアクションをとって驚いていた。

 

「まだ改良の余地があるし、何よりも出力を間違えると大変なことになる。相手の精神をめちゃくちゃにして崩壊させてしまったり、まるっきり別人にしてしまったりと失敗作なんだよね」

 

飲み物を飲んで一息する蒼士に冷や汗を流す面々。さりげなく言ってのけたが、危険なワードがてんこ盛りなのを聞き逃していなかった。

 

「それに相手に触れなければいけない、というのが弱点でね」

 

「いやいや、そんなの弱点じゃないわよ!接近するだけなら蒼士くんがやってみせた歩法でいいんじゃないの?」

 

エリカが最もな意見を述べると全員が頷く。

 

「遠距離、せめて中距離ぐらいで放てる魔法にしたいんだよね」

 

この魔法が放てるようになったら、と思うだけで嫌な予感がする面々。

 

「もしかしてだが、他にもオリジナルを開発していたりするのか?」

 

達也が疑問に感じたことを聞いた。オリジナルの魔法を作れるということはまだあるのでは。

 

「戦闘用が何個かと、精神干渉系統も何個かと、開発の方に時間が割ければ、もう何個か出来ていたかな。今はこれだけしか実用できてないけど」

 

「例えばどんなものを開発しているんだ?」

 

魔法工学のエンジニアとして高い能力を持つ達也は蒼士の魔法に興味津々であった。少しだけ前のめりになっている。

 

「お、お兄様!?」

 

冷静沈着な達也を知っている深雪は兄が多少なりとも興味を示していたこと驚いている。

 

「性別逆転チョップ、髪の毛が伸びろチョップ、低血圧治れチョップ、冷え症治れチョップとか––」

 

「チョップは絶対なのかよ!?」

 

ビシッとツッコミを入れてくるレオ。

 

「とりあえず触れればいいんだけどね」

 

「チョップの意味は!!」

 

的確なツッコミを入れるレオ。

 

性別逆転チョップは、名前の通りに男子なら女性に、女性なら男性に、と性別が反対になる魔法。

 

髪の毛伸びろチョップは。単に髪が伸びていく魔法。

 

低血圧治れチョップは、低血圧が治る魔法。

 

冷え症治れチョップは、冷え症が治る魔法。

 

これらの魔法は精神どころか体の構造を変えてしまうため、非常に危険な魔法ということを一応説明している蒼士であった。

 

「なんというか、凄いくだらないような気がしますよ、蒼士くん」

 

深雪には凄いのか、凄くないのか、分からないがとてもくだらなく感じていたようだ。そんな深雪の心情にお構いなく、深雪に近づいて周りに聞こえないように話す蒼士。

 

「ちょっと待ってもらおうか、深雪。もしも達也が性別逆転チョップに当たったら、達也は女子になるんだぞ?そしたら深雪の『お姉様』になるんだぞ!」

 

ハッと蒼士の言葉を瞬時に理解してしまった深雪。稲妻のような速さで思考が回転した深雪は思った、同性であれば普段の生活も一変するのだと。

 

今は異性だが、同性になったら一緒のベットで寝たり、一緒にお風呂に入ったり出来ることを一秒未満で考えつく。

 

「とても! とっても! 素晴らしい魔法じゃないですか!! 是非とも、是非とも完成させて下さいね!」

 

何時もの落ち着いた態度の深雪ではなく、熱く火がついていた。蒼士の両手を握ると瞳を見ながら言う深雪。その目の中では兄への欲望が、否、姉への欲望が渦巻いている。

 

予想以上の反応に苦笑いする蒼士であったが、まだ深雪以外の面々が困惑顔であったので一人一人の機嫌を上げることに動く蒼士。

 

達也に近づいて達也しか聞こえない声で喋る蒼士。その言葉に耳を傾けた達也であるが蒼士の口から出た言葉に驚いて目を見開いてた。蒼士が言ったことが出来れば自分の可能性が(ひろ)がると確信できるので表情には出ていないが上機嫌になっていた。

 

「期待するぞ、蒼士」

 

達也完了。

 

次にレオに近づいて達也と同様に周りに聞こえないように喋る。その事を聞くと、マジかよ、と驚くレオ。レオも上機嫌になる。

 

「絶対に完成させろよ、蒼士」

 

レオ完了。

 

次にエリカであったが、深雪、達也、レオときていたので明らかに警戒していた。そんな警戒をものともせずエリカに近づくと喋り出す蒼士。周りに聞こえないように喋る蒼士にしょうがなく耳を傾けていたエリカであったが聞き終わると目を輝かせて上機嫌になる。

 

「お願いね、絶対よ、蒼士くん」

 

エリカ完了。

 

次に美月。小声で話すためお互いの距離が近くなってしまうので美月は赤面していたが、そんなことお構い無しに話す蒼士に対して、本当ですか!と驚愕する。まるで神にお願いするように両手を組み、瞳を輝かせて尊敬の目を蒼士に向けている。美月も上機嫌になる。

 

「それが出来れば、わ、わたし、蒼士さんのために何でもします!」

 

ん? 今何でもするって、美月のこの発言に反応してしまう達也、エリカ、雫。深雪、ほのか、レオは大胆な発言だな、と思っていたようだ。当の本人は頭から湯気を出すぐらい顏を真っ赤にさせている。

 

美月完了。

 

次にほのか。蒼士の話を聞いていく内に満面の笑みになっていく。ビクビク、と何を話されるのか不安であったほのかであったが今では満面の笑み。ほのかも上機嫌になる。

 

「よろしくお願いしますね、蒼士さん」

 

ほのか完了。

 

最後に雫であったが明らかに警戒をしていた。今までの面々が全員上機嫌になったのを見て、私はそんなことにはならないぞ、と意気込む雫に話し出す蒼士。

 

「うん、蒼士さんってやっぱり最高だね」

 

即落ちである。

 

見るからに上機嫌になり、蒼士の腕に抱きついて絡まるほどであった。

 

雫完了。

 

「ふっはっはっはっ、期待してくれたまえ」

 

全員を陥落させた蒼士も上機嫌であり、魔法開発の意欲が湧いてきていたのだ。

 

普段ならエリカが調子に乗るな、とツッコミを入れるところだが、今日は上機嫌なので何も起こらなかった。

 

日も沈んできたので帰ろうとする上機嫌な面々の中で、冷静さを取り戻していた達也は思う。

 

もしもその魔法が完成したらヤバイのでは?と。世間的にも国単位で狙われるし、十師族も黙ってはいない筈だろう、と不安を残す達也であった。

 

それも達也や深雪にとって生みの親であった母親の司波(しば) 深夜(みや)の魔法が精神構造干渉系統の魔法の使い手であったのだ。世界で唯一の禁忌の系統外魔法であった。

 

蒼士は精神干渉魔法と言っているが深夜の魔法と酷似しているのでは?と達也は内心で深く考えていた。

 

全員と別れる時に最後に絶対に誰にも喋らないように、と蒼士の口から言われたので黙ろうと誓う面々。

 

 

 

 

「ちょっと蒼士くんたちが帰った後、大変だったんだからね」

 

「具体的には?」

 

「私と摩利が許したのに、迷惑をかけて申し訳ありませんでした、とか、学校の名誉に泥を塗ってしまい、とか規模が大きくなっていったんだからね」

 

「なんか申し訳ありません(魔法は完璧だったはずだが、出力を間違えたか)」

 

「許しません!」

 

「どうしたら許してくれますか?」

 

「また明日も朝食に付き合ってくれたらいいわよ」

 

「そういうことでしたら勿論、付き合いますよ」

 

「よろしい、今日と同じ時間でね」

 

「分かりました、今から楽しみですね」

 

「そ、そうね、それと蒼士くん……一つ聞いてもいいかな?」

 

「はい、何でもどうぞ」

 

「今から会いたいって言ったら迎えに来てくれる?」

 

「えっ」

 

「ごめんなさい、わたし「勿論、行きますよ。なんだったら我が家に泊まってもいいですよ」え、ちょ、ちょっと待って」

 

「会いたいに決まっているじゃないですか」

 

「––––––––」

 

携帯端末越しに嬉し恥ずかしくて悶えている真由美。

 

「七草先輩?」

 

「ご、ごめんなひゃい、ちょっと舌を噛んじゃって」

 

「気をつけて下さいね。で、迎えに行きましょうか?」

 

「ひぇ」

 

「だから迎えに行きましょうか? 部屋は空いていますし、食事も用意しますが?」

 

「–––––ごめんなさい、冗談よ」

 

自身のベットの上で冷静に落ち着こうとしているが体を忙しくゴロゴロさせている真由美。

 

「そうですか、残念です。もしもプライベートや家の事情などで何かあったらいつでも迎えに行きますよ」

 

「–––うん、ありがとう」

 

ベットから立って鏡を見ながら髪を指で忙しく弄る真由美。

 

「七草先輩のためなら「真由美」えっ?」

 

「二人の時は真由美って呼んで、皆の前では呼んじゃいけません」

 

「真由美さん」

 

「さ、さんも要らないわ」

 

「真由美」

 

「–––––––」

 

再びベットに戻ると枕に顔を埋めて悶える真由美。

 

「年上を呼び捨てでもいいんですかね?」

 

「わ、私は気にしないから……それと敬語も無しでお願い」

 

「そっか、ありがとう、真由美」

 

声を出したい思いを枕に顔を埋めて抑えようとしているが足がバタバタ、と忙しく暴れている真由美。

 

そんなこんなでこの後も会話をして過ごした二人であった。

 

真由美はお風呂に入っている時に蒼士とのやりとりを思い出して彼のことを異常に気にしてしまい、嬉し恥ずかしさのあまりのぼせるのであった。

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