クラッシュ・バンディクー&エキドナ・デビル 作:いろはにぼうし
「あらしのこじょう」になっていますが、海外版およびリマスター版では
「ゆうやけの はいきょ」となっています。
これは本来海外版の構成が正しかったそうですが日本版はなんらかのミス、大人の事情でステージが入れ替わったまま発売してしまったそうです。
※リマスター版は海外版のステージ構成になっていますがステージ名は日本版のままなので「あらしのこじょう」というタイトルのステージに入るとおもっくそ夕焼けが美しい廃墟ステージが始まります。やっやこしい!!
今作では初代日本版に合わせコアラコングの手前に「あらしのこじょう」を配置しております。
理由としてはクラッシュくんとエキドナくんの最初のバトルは雨の中でやってほしかったからです。
ご理解いただけましたら幸いです。
コルテックス達が支配する島、通称「てつのしま」から少し離れた先にある、通称「いせきのしま」。
その島を、一人のバンディクートの少年と、木でつくられた仮面が共に歩いていた。
「のうクラッシュ。このままいけば、ワシらはこの先の古城を通ることになるじゃろう。難しい道のりじゃ。心して挑むのじゃぞ?」
「ウェイ!!」
タスマニア島の守り神でもある神秘の仮面、『アクアク』の助言を受けたバンディクート、「クラッシュバンディクー」はぐっ、と親指を立てて笑った。
表情は非常に楽観的で、本当にわかっているのかアクアクはいささか不安になったが、現に彼はこのお調子者、という表現がぴったりのノリでいくども難所や難敵を乗り越えてきた。
最初に彼が流れ着いた「ジャングルの島」では原住民の長、「パプパプ」を。
さらに海を渡りこの島に来て、滝を登った先で出会った改造カンガルー、「リパー・ルー」を見事に退治して見せた。
一体どこからそんな力が湧いてくるのか。
最初はアクアクも不思議に思っていたが、それだけコルテックスに囚われた恋人、タウナの身を案じているのだろう。
おちゃらけているように見えても、彼は彼なりに大切な彼女の為に前に進み続けているのだ。
「そらクラッシュ。古城がみえてきたぞよ」
「オオ~」
クラッシュが大きな古城を見上げるように天を仰いだ。かつてはこの島にいた人間が住んでいたのだろうが、それは何百年も前の話。いまではすっかり荒れ果てており、さらにコルテックスが島を開発するために送り込んだ生物兵器や研究員が古城内をうろついている事だろう。
さらに悪いことに空模様が怪しくなってきた。黒い雲が空を覆っている。
「これは天候が荒れるかもしれんの‥」
先に進むにはこの古城を通るしかない。しかし嵐がくれば古城の道中はさらに困難を極めるだろう。
「クラッシュ、ここは一晩ここに隠れてやり過ごし、天気が回復してから古城に入ると言うのも…」
アクアクがそこまで言ったとき、そこにもうクラッシュの姿は無かった。
見ると、意気揚々といった足取りで古城に向かっていくクラッシュの姿が目にはいる。
「やれやれ・・あやつは今まで何かに悩んだことがあるのかのう?」
アクアクはそんな彼の姿を、呆れながらも、どこか頼もしげに見つめていた。
古城の道のりは、アクアクの思ったとおり困難を極めた。
突然ひっこむ足場。さらにはその真下に設置された鋭利な刃物。
獄中からクラッシュを引きずり込もうと狙う謎の囚人。
化学薬品を投げつける研究員などなど…。
いままでの道とは比べ物にならない程、敵の攻撃が激しくなってきている。
さすがのクラッシュもヘトヘトになってきたようで、額の汗を手でぬぐう回数が増えてきている。
さらに途中から嵐が吹き荒れ始め、それが余計にクラッシュの体力を奪って行く。
それでも彼は歩みを止めはしなかった。底抜けの体力である。
並み居る強敵を得意のジャンプとスピンアタックで蹴散らしながら、クラッシュは突き進む。それを全力でアクアクがサポートする。
そんな2人はようやく、古城の頂上にたどり着いた。
頂上はかつて物見の役割もはたしていたのか、円形のステージ状になっている。
あたりを稲光が包み、剣呑な雰囲気が包んでいるが、ようやく半分やってきたという安心感からか、クラッシュの表情はどこか呑気なものだった。
「さぁクラッシュ。あとは反対側から降って行くのじゃ。気を抜くでないぞ」
「ウェイ!」
アクアクの言葉にクラッシュは元気に返事を返した。
「ここで死ぬ奴が、先の道中の心配か? 間抜けなことだな?」
突然、ステージの中央から声がした。
「!? 何者じゃ!?」
アクアクとクラッシュが驚いて振り返ると、そこには一匹の獣が立っていた。
鋭い牙と爪。黒い体毛に赤い針。銀の首輪に獰猛な目つき。
嵐の中にいるためか、彼が纏う強者の風格がより鮮明にクラッシュとアクアクには伝わった。
「俺様が誰だろうと関係ねぇだろう?それよりも、オレンジの体毛にジーンズ。そんでその間抜け面。お前がクラッシュバンディクーだな?」
「ウォウ!」
馬鹿正直にクラッシュは首を縦に振った。
「そうかいそうかい。わざわざこんな所まで探しに来たかいがあったってもんだ。正直気は進まねぇが、俺様が自由とプライドを取り戻すためだ」
そして獣はにたりと嗤った。
「死んでくれ、バンディクー」
ジャキリ、と獣の爪が音を立てた。
「お主、コルテックスの手下か!」
アクアクが獣に向かって叫ぶ。迂闊だった。こんな所で待ち構えられているとは。
アクアクは警戒を強めた。こんな過酷な古城まで登って来てクラッシュを待ち構えているとは只者ではない。
けれど、アクアクはすでに1つ失策を取っていた。
「…貴様、今なんて言った?」
知らず知らずのうちに彼を怒らせてしまったのだ。
獣の口から咆哮が放たれた。
「この俺様が!」
「このエキドナ・デビル様が!!」
「あんな弱者の手下だと!?」
「ふざけたことを抜かす!! 貴様ら、欠片も残さず喰ってやる!!」
次の瞬間、獣――エキドナの脚が地を蹴った。
一瞬のうちに、呆けていたクラッシュの眼前に牙が肉薄する。
「っ!? クラッシュ、逃げるのじゃ!!」
「っ、アワワワっ!?」
間一髪、クラッシュは慌ててジャンプし、牙の直撃を避ける。
エキドナの牙は空をきり、ガチンッ、と音を立てた。
「チ、避けるか。中々すばしっこいなバンディクー! ならばこれならどうだ?」
今度は両腕の鋭い爪を振り上げて猛然と襲い掛かる。
相も変わらず素早い。一瞬の判断のミスが命取りになる。
「クラッシュ、正面からでは勝ち目などない! すぐに避けるのじゃ!」
「ウェッヒー!」
クラッシュはまたもジャンプで躱しにかかる。今度は判断が早い事もあって比較的楽に避けられた。躱された爪が古城の外壁に直撃した。
ズバンッ! とクラッシュの身体よりずっと固いレンガがいともたやすく両断された。
「な、なんという威力…。クラッシュ、気を付けるのじゃ! 今までの相手とは比較にならんぞよ!」
アクアクの警告にさしものクラッシュも顔を両手ではって気合いを入れる。
「今までの奴ら‥。ああ、コルテックスの手下どもか? たしかリパー・ルーとか言う‥。まぁ、ここに来るまでに散々戦ってきたんだろうがな。あんな奴らと一緒にされては腹が立つことこの上ない。奴らはお前に負けた。つまりは喰われるべき存在だったと言う事だ」
「だが俺様は違う。俺様は強く、いつだって弱者を喰らって生きていく。それがこのタスマニアの、いや、この世界のルールだ。そうは思わないか? バンディクー」
「ウ?」
「ああ、洗脳装置で脳みそが空になっちまったんだったか?俺様の言葉もわからねぇか?」
「クラッシュは確かに問い掛けの意味をいまいちわかっておらんじゃろう」
じゃがな、とアクアクが続けた。
「クラッシュはきっと意味を理解したとしても首を縦には降らんじゃろう。お主の考え方には弱者への慈しみが足りぬ」
「慈しみだと? 喰われるだけの生き物に何の情けをかけると?」
「クラッシュは生きるために進むのではない。助けるために進むのじゃ。大切なものの為、ただそれだけの為に。エキドナと言ったな? お主の考え方も理解できないことはない。じゃがの、それだけでは足りぬのじゃ。強いだけでは足りぬのじゃ。だからお主はクラッシュには勝てぬ」
「・・・ほぉ」
エキドナの雰囲気が一層剣呑なものに変わる。
「そういうセリフは、勝ってから言うもんだ。そうじゃないか?」
「…お主はコルテックスの手下ではないと言ったの。ではなぜクラッシュを狙う?」
アクアクの言葉に、エキドナは牙をギリギリ、とならした。
「言ったとおりだ。俺様は俺様の自由とプライドを取り戻す。コルテックスもいずれは食い殺す。だが、先にお前だ、バンディクー!」
瞬間、エキドナは身体をまげ、両手で前足を掴んだ。
球状になった身体。その背中から無数の赤い針が飛び出した。
そのままその体が、クラッシュに向かって突進していく。
まるでタイヤのように。
飛び出した針に刺さればクラッシュは串刺しにされて絶命するだろう。
「クラッシュ、躱すのじゃ・・クラッシュ!?」
クラッシュに回避を促すアクアク。しかし、クラッシュはアクアクの思惑とは逆に、エキドナに向かって行った。
「バカが。どうやら本当に脳みそがなくなっちまったらしいな!」
回転しながらエキドナが叫ぶ。クラッシュはそれでも止まらない。
「フゥウウ・・・」
そしてクラッシュは体を横にひねり、力をこめた。
そのまま足を軸にして、エキドナの縦回転とは対照的に横回転を始める。
クラッシュの得意技、スピンアタックだ。
けれど狙いはエキドナではない。
狙いは先程彼が両断し一部が崩れた、古城のレンガ。
「フゥウウ~!!」
クラッシュのスピンアタックはその瓦礫となったレンガを、エキドナに向けて弾き飛ばした。
高速で飛んだ瓦礫が、エキドナに直撃する。
「な、なにッ?!」
その衝撃で、エキドナは手を離し、無防備な腹をむき出しにした状態でひっくり返る。
「ッ、クラッシュ! 腹じゃ! 奴の腹には針がないぞよ!!」
「ウェ~イ!!」
クラッシュはそのまま高くジャンプし。
腹に向かって、全霊のジャンプアタックを叩き込んだ。
「ウグアッ!?」
エキドナの口から苦悶の声が響く。
相手が雑魚なら、腹への攻撃といえ大した痛手ではない。
けれど相手はコルテックスに強化改造を施されたスーパーバンディクー、クラッシュ。
その衝撃はエキドナの全身を駆け巡った。
「ぐ、グゥウッ…」
攻撃を受けたエキドナはクラッシュを払いのけ、何とか立ち上がる。
「ゆ、油断した‥。だが同じ手は二度は喰わないぞ、バンディクー‥」
「く‥まだ立つのか!呆れたタフさじゃ・・」
エキドナの頑丈さに、アクアクが思わず歯噛みする。クラッシュの攻撃は確実に入っていたのに。
両者はにらみ合う。
クラッシュとエキドナの二人が、じりじりと距離を測る。
そして、二人の脚が地を蹴った、その瞬間だった。
「ッ、バンディクー、伏せろ!!」
「オウッ!?」
エキドナが突如跳躍し、クラッシュを自分の後ろに引き倒した。
瞬間、背後でガラスが割れる音と、爆発音が響いた。
「ウゥウウ‥」
クラッシュが付き飛ばれた後、背後を慌てて振り返る。
アクアクもおどろいた表情でエキドナの方向を見つめている。
エキドナは、背後からクラッシュに忍び寄っていた研究員を、爪で串刺しにしていた。
爪からはバチバチと電気が漏れ出ており、研究員が完全に機能停止をしているのがわかる。
けれど研究員が最後に放った爆発性の薬液は、エキドナの腹に直撃し、彼を焼いていた。
「アウワッ!?」
「え、エキドナ!? お主…クラッシュを庇ったのか!?」
二人が驚きの声を上げる一方で、エキドナはぐっ、とうめきながらも研究員から爪を抜き、蹴り飛ばして古城から突き落とす。
「ふざけた事を言うな…。バンディクーは俺様が仕留める途中だったんだ…。コルテックスの野郎に横取りされてたまるか…」
「お主…」
よろよろとよろめきながら、エキドナはクラッシュに向き直り、そして。
「さぁ、続きといこうや・・、バンディ、ク・・」
そしてそのまま、エキドナは意識を失った。
日の光の眩しさに、エキドナは目を開ける。
目の前の空には太陽が昇っていた。
草と、地面の香りが鼻腔をくすぐった。
「俺様は‥どうなったんだ?」
誰とも無しに呟くと。
「おお、なんとか生きておるようじゃの」
目の前に、仮面の顔が現れた。
「貴様‥なんでここに」
「あれだけ手間をかけさせておいてなんというセリフじゃ。まぁ、お主はずっと意識が無かったから無理もあるまい」
「クラッシュがお主を担いで古城を降りたのじゃよ。まったく、昇りより数段ひやひやさせられたわ」
「バンディクーが…?何のために」
エキドナの問いにアクアクが呆れたように溜息をついた。
「理由なんぞないじゃろ。ただ助けたくなったから助けた。たぶん、そんなもんじゃ」
アクアクの答えにエキドナは周りを見る。すると、自分の隣に大の字になっていびきをかくクラッシュの姿があった。
しばらくエキドナは信じられないような物を見る目でクラッシュを見ていたが、やがて舌打ちを1つして、立ち上がった。
「およ。もう良いのかの?」
「貴様に心配される筋合いなんてねぇよ」
エキドナはクラッシュに背を向け歩き出す。
その背に、アクアクは声をかけた。
「エキドナ…。お主はなぜクラッシュを狙ったのじゃ?」
「なんども同じことを聞くな。俺様は自由になり、プライドを取り戻す。それだけだ」
振り返る事もなくエキドナは歩き出す。
しかし、数歩歩いたところでエキドナは背後のアクアクに向かって声をかけた。
「おい、仮面!」
「アクアクじゃ。ワシの名は、アクアク」
「そんなことはどうでもいい。そこの頭からっぽのフクロネズミが起きたら伝えろ」
「この借りは必ず返してやる、とな」
そして、エキドナの姿はジャングルの中に消えた。
今作のクラッシュくんはあんまりしゃべりません。
1では勝平さんの声で「ジャカジャーン!」とか「行くぞ!」とか「わぁい!」とか言ってましたが、やっぱりシリーズ通してあんまりしゃべったりするイメージが無いのでこんな感じになってます。