イルヴァの民もわが家ごと転移した 作:ジューア農民
なかよし同居人
小規模ながらも、端整な造りの大広間。そこは貴族の城だと言っても過言ではない場だ。しかし調度品の類はなく、ポツンと一つの掲示板らしきものが設置されている。
そしてテーブルも椅子もない、ただ空洞だけの大広間に六つの人影……と形容するにはいささか歪な者が多いが……六人の人間が直接床に座り込み向き合って居る。
皆真面目その物の顔だ。
「では、第38回同居人会議を行います」
声を発したのは人型…と言えない者も居るが、それでも人間と形容できる六人の誰でもない。それは黒い猫、の頭の上に乗った小さなかたつむりから発せられている。
一体どう喋っているのかは謎だか、可愛らしく優しい女の声で語りかける。
「勿論皆さん分かってますね」
うん! と元気良く長い赤毛の女が頷き、拳を突き上げる。髪よりも少しばかり酸化した血糊色の瞳がきらきらと輝いて居る。
「同居人最強決定せぐはっ」
「だまれよのうきん」「そうだだまれ」「そうぞうしぞおたんこなす」
元気に発言した女に、最も歪な形状の少女らしきものが拳を入れて黙らせる。アンバランスに生えたパーツの不足が目立つ四つの頭部の、三つの口が、口々にたどたどしい言葉で罵倒する。幼い幼女……の様な形なのだが、異形の三つ頭に蹄の足に背には羽がある。
「宗教戦争でも始めるか!? そうでしょう!? それしかないじゃあないか!」
瞳に生物らしき光の無い女が、がしゃりと両脇に抱えた銃器を鳴らしながら嬉しそうに叫ぶ。その声も何処か生気がなく、妙な違和感を与える。
「やめろよ……家の中で宗教と政治の話は厳禁って約束だろう? 簀巻きにしてのノイエルに放り込んでやろうかこの鉄屑信者」
顔色が著しく悪く、どう見ても生者に見えない男が言う。実際、その瞳は死者のそれで白く濁り切っていた。
「鉄屑信者は積極的にミンチにしろって女王さ……我が神言ってた」
元はさぞかし整った顔をしていただろうに、四つの目玉のせいで相好を崩した男も追い打ちを掛ける。柔らかそうな風合いの髪に、線の細い優男といった様子だが、好き勝手に開いた余計な二つの眼窩がすべてをぶち壊す。
「我が家の転移問題でしょう。皆さん人間らしい会話をしてくださいよ」
青い髪をした、儚げで中性的な人物は眉を潜めて呟く。辛うじてその声で男と判断できる。が口を噤めば判断は難しい。
ようやく出たまともな答えに、こくりとかたつむりは頷く。
「そうです。良かった……またいつもみたいにジェノサイドになったら、かたつむり、泣きながら皆さんを滅ぼさなければいけない所でした……ぐすん」
小さく弱々しいかたつむりの、悲しそうな声に人型を取る六人はヒッと声を上げて身を強張らせる。かたつむりを頭に乗せた黒猫がにゃーうと、嘲笑う様に鳴いた。気のせいか腹に亀裂が生じ、ぼろぼろと蛆虫が這いだしてきている。
「我が家ごと転移とか、何事なんだ? やばくない?」
「誰も心当たりないのか? 特に魔術職」
「ないよ」「むしろのうきん何かしくじったか?」「魔法に疎い奴らじゃないか?」
「あ……やばいやばいやいやばばばばっ」
「尻神信者が壊れた!」
「ど、どうしたんですか? 大丈夫ですか……?」
「女王さ、我が神の罵倒が聞こえない!! 死んだ……! ぼくもう死ぬ!! いっそ殺せぇええあぁあああ!! 殺せよこんなクソな世界!!」
「OK!」
「やめなさいって。室内でそんな頭悪い火力の銃を出さないでくださいよ」
「殺せぇええええ!!」
「待て! 待ってくれ!? あと8日で聖夜祭じゃなかったか!? ふざけんな! ジュア教徒として聖夜祭に参加できないとか俺も死ぬ! いやもうアンデットだけど! もう死ぬ! 俺も殺せぇえええ!」
「ああ、ジュア信者まで逝ったか」「あたまがな」「ひかく的まともだとおもってたのに」
「頭が駄目な子と死にたい子は一列に並べ! 頭を柘榴にぶちまけた後にお姉さんが機械化してあげるぞ!」
「話あいだけなら、あたしはもう寝て良いー?」
「……かたつむりは悲しいです。また友人をやっつけなくてはいけないなんて」
+
「なんでこの組み合わせなんだ。非常に解せない」
「いいじゃんよ! 仲良くしよーよー」
辺り一帯、草原が広がるだけでひたすら長閑でなにも無い場所を冒険者……と表現するのがしっくり来る四人組が歩んでいく。
彼らはイルヴァはノースティリス、パルミア、王都付近に小城を立てて面白可笑しく、半シェアハウスしつつ暮らしていた冒険者仲間だった。
それが、朝目が覚めたら全く知らない所にわが家ごとふっとばされていたのだ。
誰もなにもしていないし、妙な夢も見て居ない。
強制的にランダムテレポートしたり、飛ばされたり、ムーンゲートを楽しんだりなどなどの経験は有るが、さすがにわが家ごと吹っ飛ばされた経験はない。
緊急の同居人会議を開催しても、さっぱり原因は分からなかった。
このまま皆で議論した所で、どうせ殴り合いの殺し合いのジェノサイドにしかならないと察した。だって皆、長年ノースティリスで好き勝手生き、蟲毒壺の毒虫よろしく埋まる事を願わず居座り続けた結果、消去法的に友達と成った毒虫害悪冒険者達だ(納税を怠らない善人ではあるが)。
同居人の良心、かたつむり観光客のカーリナにどんな土地なのかを確かめるべく、二人一組とそのペットで送りだされるに至った。
脅されたとも言う。
そんな訳で辺りの探索に出された1チームが、この草原を歩く四人だ。
組み合わせに不満を零したのはリッチのジャスパー。死人の色合いだがその動きに違和感は無く滑らかに進んでいく。ただ、連れの赤毛の女の暑苦しいまでの元気はつらつっぷりが鬱陶しく、げっそりとしている。
長い赤毛に、細身で無駄にひょこひょこ跳ねるのはエウダーナのゲルマ。魔法に適した種族の癖に、重量を増した大地の大槌を振り回す脳筋だ。
肉弾戦苦手なリッチとか以前に、性格的に合わない。
いや……便宜上、友人と呼ぶ連中は大抵皆互いに合わねぇ奴と認識して居る。多少の差異はあれど……。
幸運のエヘカトル信者の、かたつむりのカーリナは同居人の中では穏やかで、皆のまとめ役的な所が有るが、『しくしく』などと悲しそうにしながらもわが家ごと友人たちを消し炭にするし、シュブニグラスに騎乗しながら神を殴り殺す。そしてペットの黒猫は蛆を吐き散らす。
おおらかだが、おおらか過ぎてマイペースが行き過ぎて、時々誰もついて行けなくなる。
まだ人格はまとも枠であるエレアのジェシャンは、信仰する収穫のクミロミの性質が移ったのか、愛情表現が病んでいる。ペドフェリアで、人肉趣向持ち。つまり愛しいロリショタを片っ端から食っていく(食物的に)。それ以外は、まだ、まともなのだ。エレアの割には協調性もあり、穏やかに農業に勤しんでいる(牧場で幼女を養殖しているが)。
元素のイツパロトル信者であるカオスシェイプは、魔法職が半分被り、信仰上もそうそう衝突する事も無いのでジャスパーとは平和的に接して居る。方だ。ただ、そのヌコという名前の幼女の様な形の生命体は極めて歪で、人と友好関係を築くのに時間がかかる。既にノースティリスでは『うわ、またあいつ等か』と顔が知れ渡って居るが、初見の土地で邪険にされ情報が集まらないのではとの懸念がある。
そんな訳で、皆のまとめ役かたつむりカーリナはわが家から動けず、種族的に情報収集に向かないジェシャンとヌコは、それぞれのペットと森林地帯から、情報収集よりもこの地の地質や環境の調査に送り出された。
残りの風のルルウィ信者のくそドM男のアーラはジューアの性分なのか、とことん自分の興味のある事にしか一生懸命に成れない。やりたくない事はしない。ヌコに比べれば、エーテル病で目玉が増えてる程度の外見で、変態的な趣味もない。ドMだが。ただ信仰する女神の罵倒を受信できずに鬱陶しい程沈んでいて、使い物にならない。全てが気分に左右されすぎなのだ。
そしてジャスパーが言えたぎりでは無いが、狂信者度合いのヤバイ女。イェルスは無神論者の集まりでは無かったのかと首を傾げる程だ。そんなアウストリーネは熱心な機械のマニ信者で、自分もペットもあちこち弄りまわし機械化している。善意で周りの奴らも機械化しようとしてくる。機械と銃器への愛の暴走が酷い上に、ジュア信者としては聖夜祭でのアレソレであまり仲良く出来ない(先にサンドバッグに吊るしたのは此方だが、目の前で祭壇を占領さてた恨みは忘れない)。
信仰する神同士の仲が悪い二人だが、やる気のない気分やなドM男を引き摺ってでも同行させる真面目さ、というかある意味での面倒見の良さは彼女だけなので仕方ない。それに、当人たちは信仰する神のためにお互いを殺し合ったりするがそんな物はお遊びの様なモノで、口を効かないという様な本当に険悪なわけではない。
あれはあれで仲が良い二人なのだ。黒天使に足蹴にされつつも『神の電波を受信できない……』とめそめそする男の襟首掴んで、狂信者女とアンドロイドは自分達と別方向へ歩きだして行った。
というか、組み合わせは恐らく消去法だろう。こうして全体で考えてみれば、自分とゲルマをセットにするしか無かった気がする。
「はぁ……」
それでも、活き生き元気はつらつしたツレのテンションについて行けず、溜息をついて横を歩く防衛者の肩にしなだれかかる。
「人前でいちゃつかないでくれますか?」
主人と同様、馬鹿デカイ槌を握った黄金の騎士が真面目腐った顔で苦言を呈するが、無視だ。
伴侶といちゃついて何が悪い。防衛者は癒しなのだ。黄金の騎士は、同居人とペット達が次々と結婚していく中、一人だけ出遅れて焦って居るのだ。ゲルマも早々に娶ってやればいいのに、最初のペットであり嫁である少女が包丁を持って牽制してくるせいでなかなか上手く行かないらしい。
ままならないな。
流石癒しの女神が遣わす神の化身であり、最初の嫁。げんなりした気分で引っ付く頭を優しく撫でてくれる。
「それにしても何も無い。まさか文明の存在しない地なんて事はないだろうな」
「エーテルもなさそーかな? 時期じゃないだけかもだけど」
無駄に長い赤毛を揺らす女は深呼吸をする。
本来、現イルヴァに生きる自分達はすっかりメシェーラ菌に適応した生物なので、世界をキレイキレイにすべく溢れ出すエーテルで、一緒に滅菌される系の生態系になってしまってる。
そんな自分達が体調に異変がないというのが今分かることだ。その辺はエレアとカオスシェイプのエーテルと関係の深い奴らの調査待ちだ。
「ご主人、アレを」
黄金の騎士が立ち止まり、進行方向から僅かに逸れた方角を指す。
「村……かなー? 大分規模が小さいけど、ヨウィン程度ぽい」
「農村か?」
「おそらく。しかし何か騒がしいですね……強力なモンスターでも召喚されたんでしょうか?」
防衛者もそちらの方へ目を凝らす様にする。
街が大騒ぎをしている場合に発生して居そうな現象の一つを口にしてみる。
「増殖系だったら面倒くさいな。おい脳筋核持ってるか?」
ゆんゆんと頭の悪そうな挙動で首を振りながらゲルマは思考する。
「持ってはない。家には八発位有ったと思うー」
「いえ、私が一発持っています」
一発なら起爆させない方がいいだろう。核に耐える奴は割といる。敵対されても面倒くさいし、カルマが勿体ない。
「まあーでも、ほら、お祭りかもしれないじゃん」
お祭り。
ジュア信者であるジャスパーには馴染み深い、聖夜祭の様な催しだろうか。信者たちが酒に酔い、暴れまわり、異教徒を吊るし上げる。そして腹いせで核が起爆され、無邪気な雪玉の返礼に鉛玉が飛び交い、雪原が真っ赤に染まる。
実に地獄めいて愉快な催しだ。
「それでも人が居て良かったねー! どうする? 何か騒がしいけど、皆で突貫する?」
「いや……もう少し見て回ってからにしよう。騒いでる所に入っても、まともに会話に成らなそうだ」
井戸だろうが堕落装備だろうが、その他でも発生源は置いといて村の住人総出で戦って居る様な自体ならよそ者が突然やってきて話を聞ける事態ではないだろう。既に有益な人間は死んでいるかも知れない。それなら暫く置いておいて、這い上がって来るのでも待とう。
辺りを一回りしてきて、まだ騒いで居る様なら全部更地に戻せばいい。
三日もすれば街も人も戻るだろう。
取り敢えず、しょぼい農村と言えど文明は発見できたのだ。近場に他の街や施設を探そう。
+
時刻は夕闇が過ぎ去りすっかり星が瞬く頃。再び冒険者たちのわが家。
皆蟲毒壺の底の方に残された様な、長年ノースティリスに居座る害悪冒険者達だ。足は無駄に早い。『ちょっとそこら辺』を見て回るだけならそれほど時間は掛からない。
しかし、みな自分本位な連中で気が向いたら出て行き消息不明状態なったり、犯罪者になってたり気づけば年単位で顔を見ない同居人が居るなんて事もざらだ。なので予め帰宅時間等は決めて居ない。各自自己判断で気が済む程度見て回ると言ったガバっぷりだった。なのに同居人7人が朝と同じ様に集まって居る。
これは、早々に何か得る物があったということだろう。
かたつむりのカーリナは予想外に早い帰宅をする友人たちへ、いつもの穏やかな微笑みで迎えた。
「おかえりなさい。どうでしたか?」
「この世に神は居ない……っ!」
「取り合えず、異教徒の国を更地にして来ようと思う。そして癒しのジュアを国教にさせる」
「え。異教徒? お姉さんも爆破しにいくぞ! 尻神の信者は置いてくから、私たちが見つけたネフィアについては聞いて」
「ここのどうきょにんみんな異教徒だぞ」「だれもおなじ信仰じゃないぞ」「まともに報告しろ」
「じゃあ今から殺し合いする!?」
「ヌコさん、この痴呆に頭一つ分けられませんか?」
+
誰とは無く、咳ばらいを一つする。心なしかカーリナ以外が少しぼろけてしまっているが、それはきっと気のせいだ。
「えっと……それでは皆さんが見た物の報告をお願いしますね?」
控え目に、申し訳なさそうな声音だが、どことなく拒否を許さない圧が有った。本人は全く意図して居ないのに。勝手に周囲の奴らが圧を感じて居るだけだ。かたつむりに。まあ、カーリナは他の奴らより100年位余計に蟲毒壺的ノースティリスに居座って居たのだから仕方がない。
それじゃあ、簡単にお姉さんから。
そういって硬質な機械仕掛けの腕が挙手される。
「わが家から見てあっちに行った訳だけど、ネフィアが一つあった。それだけ。もっと広範囲を探せば有るのかも知れないけど。取り敢えず一つしか無かったね」
身体の至る所、劣化するだけの腐肉だと言って削ぎ落し機械化した為に機微の少ない顔でアウストリーネが告げる。
時々生えてくるフィアは皆の遊び場だ。もちろん潜る度に構造の変化するすくつでも良いのだが、なんというかアレは『よし!やるぞ!』という気分が必要なのだ。底なしに続くので、よし制圧しよう! というノリで入れない。一度入ったらずぶずぶと嵌り、暫くかえって来なくなる奴が出てくる。
あと単純に、いろいろ落ちて居て楽しい。
「どの程度のものなんですか?」
ジェシャンがあざといとさえ思える様な様子で首を傾げ尋ねる。
「さぁ? それがさっぱり分からないんだ。何なんだろうな、あれ。流石にすくつ数千階とかでは無いとおもう。遺跡っぽくはあった」
だいたいのネフィアは、入り口から様子を伺えばそのダンジョンの難易度を把握できるものだが……全く未知の世界に来てしまった為判断出来なかったのだろうか?
「この世に神は居ない……」
相変わらず駄々っ子の体勢でアーラが呟く。どうやら今日一日あちこちをさまよっても、彼の信仰する女神の罵声を受信出来なかったらしい。
この役立たず、とマニ信者の機械化キチから罵声が飛ぶがそれは別に嬉しくない様だ。
「消える前に制圧行ってみるー? せっかくだし」
ゲルマが楽しそうにかつ、無意味に頭を揺らしながら言う。
「傾向も分からないネフィアに?」「そもそもどんな世界かもわからあないのに?」「まだ確かめなければいけない事があるだろうが」
幼女サイズのヌコが、指が不規則に多分に余分に生えた腕で脳筋女の束ねた髪を引きながら畳み掛ける。
「ああ、そうです。ざっと見た感じこの星……? 地域? にはエーテルが存在しないみたいです。メシェーラ菌の方は……ちょっと分からないですね。私達の体への影響も分かりません」
「だめじゃん。役立たずー」
ふうぅっとゲルマが息を吐く。彼女には滅多にそんな態度を示さないが、エウダーナは選民思想が強い。気負うことなく自然体のまま、蔑んだ表情を作って見せる。
その表情にジェシャンは可愛らしい造詣の顔を歪ませて、盛大に舌打ちをした。
「ほ、ほら、まだ一日ですからね? もうちょっといろいろ調べてみましょうよ、ね? 試しに誰かエーテル病促進武器持って、シェルターで終末起こしてきます?」
あわわわ、と柔らかな声で同居人達のぎすぎすとした空気に慌てるカーリナ。ただその言ってる内容がそれなりに酷い。
確かに抗体はそれなりにストックが有るが、死に至る病を発症してこいと言っている。鬼かな?
「そういう貴女は何か有益な事をみつけたんですか?」
棘の含まれる麗しのエレアが表情を歪めて、同じく美しい者が多いエウダーナを睨みつける。
「説明うまく出来ないから、ジャスパーやって!」
うん! と頷きはするが自分では説明しないのか、同行したリッチへ視線を向ける。明らかに面倒そうにした死体の顔の男がこれ見よがしに肩を竦め、溜息をつく。
「そう言えば、異教徒の国が……っていってましたよね?」
かたつむりの言葉に、同居人達の視線が集まる。
「過程は長くなるから、結論だけを先ず言う」
そこでジャスパーはしばし間を置いた。
「俺たちより数日前に、同じように拠点ごとここに飛ばされて来た奴らに会った。それで、情報交換したいから後日わが家に来るそうだ」
「ん? 後日? じゃあそのサンドバッグの奴誰?」
生物の瞳の輝きと言うよりも、人工的な灯りの信号をその目に宿した狂信者女が新しく増えたオブジェへ視線を向ける。
別段、サンドバッグに誰かぶら下がって居るのなんて珍しい光景ではない。
一度吊るされれば死ぬ程の目に遭っても絶対死なない、とっても素敵な物品だ。マニ信者とか吟遊詩人とかエヘカトル信者とかバブルとかが良く吊るされてるやつだ。
そこにはどこの種族かさっぱり見当が付かない顔つきの、魔法職らしき軽装備にマント装備の男が吊るされてる。
「異教徒」
癒しの女神へ信仰を奉げる、ジャスパーが一単語で答えた。
「そっかぁ!」
機械仕掛けの神へ信仰を奉げる、アウストリーネが違和感しかない笑みを浮かべて立ち上がった。
残りの同居人達は、既に話す事も無いのでそれぞれ自分達の区画へ引きあげて行った。情報を持っているらしいお客さんが来るのは後日なので、暫く用はない。皆、それぞれ自分の気になる事を確認しに行く。
あと純粋に、同居人きっての狂信者コンビに関わりたくない。
「既に自分の信仰を持ってるみたいだが、ジュア様のすばらしさを知ればきっと改宗したくなる」
「神を信じるって基盤があるなら、脳味噌機械化すればマニ様を信仰出来るぞやったね!」
布教(洗脳)楽しいヤッター!
次回、異教徒(ニグンさん)が捕獲された経緯