イルヴァの民もわが家ごと転移した 作:ジューア農民
誤字報告もありがとうございます!ありがたい限りですが、勢いとは言えひと段落描き切ってから修正させて頂こうかと思います。
elonaはいろいろヴァリアントが入り乱れて居たり、現実だったら、になって居たり変にゲームチックだったりします。
ああ、神様……。
誰からともなく、そんな呟きが漏れた。
それも仕方のない事。最高の切り札はたったの一撃で消え去り、目前には魔神を越える力をもった、恐ろしい存在。どう足掻いても活路を見つける事は不可能。絶望の真っただ中の陽光聖典の隊員は呆然とするしか無く、気持ちの悪い、寒々しい沈黙がじわりと広がっていた。
「その神ってだれだ……?」
祈りでも何でもない、ただただ進退窮まった人間が縋る様に絞り出された言葉に、うっそりと問いが投げかけられる。
突然掛けられた声に反射的に振り返った人間のすぐ背後、ぴっとりと背に着くようにして、男が、いや、死体が居た。
土気色の肌にばさばさと色素の抜けて痛んだ不揃いの髪。白濁した眼球がぎろりと睨みつけて来る。
「神がいねぇんだよ! こっちはよぉおおお! 聖夜祭に参加できねぇんだよぉおおお!!」
ゾンビと形容するのがしっくり来そうな男は、その外観とは裏腹に活力ある声で全力で叫んでそのまま頭突きを決める。
あろうことか、脆そうな外観の死体の頭突きに形を崩したのは生者の方だ。パンッと乾いた破裂音と共に、頭蓋骨が爆ぜ、とろりとした脳漿と瑞々しい脳味噌を後方へ吹き飛ばす。
潰れた血管が一拍置いて血のを霧雨を降らせ、脳からの伝達が失せた身体はどしゃりと崩れ落ちる。
「はぁ~~~~……ほんと、捧げものがなぁぁあ、捧げられねぇんだよなぁ~~~~~ジュア様が居られないんだよなぁああああああ? いいよな~~~? お前らの神様はいてさぁあああ」
悪ふざけの如き頭突きで人体を破壊した死人の様な男は、顔を歪め絶望の淵、どころか底に居る人間を羨んで、不貞腐れた様な言葉を吐きながらゆらりとにじり寄って来る。
唐突に乱入して来た、発生源も原因も分からない危機にその場の人間達の精神は限界で、完全な狂気へ陥った。
「癒しのジュアはいいぞっ……!!!!」
理性ある生物としての人間らしさをかなぐり捨てて、完全に意味の無い行動や叫びを発し水攻めにでもあった蟻の様に逃げ惑い出す人間を、死体の男は意味の分からない叫びと共に襲い出した。
+
ジュア信者と言うのは、やばい奴が多いと言うのがノースティリスの定説だ。
12月にノイエルで行われる聖夜祭の様子を見れば、異論も無いだろう。
ジュアと言う女神は(胸も)控え目で、必死にキャラを作り神様らしさを演出しようとしつつも上手く行かず、向いて無いのかも……なだとと落ち込んじゃう様な、可愛らしく、まともな女神なのだが……そんな可愛らしい彼女に信者達は心臓鷲掴みにされ、大暴走を起す。
ジュア様可愛い! うちのジュア様は最高なんだ! まじ癒しの神! ジュア様を讃えないやつは殺す!
愛らしい不憫属性を持った我らが女神様の信者を増やし、彼女への信仰心を増やそうと信者たちが暴走する。
そんなヤバイ信者共のせいで、苦労性女神様がさらに癒しを欲する様に成り、さらに信者達が暴走するという悪循環が有ったりするのだ。
常識的で優しい女神様も、流石に自分の似姿が描かれた抱き枕(裏側は涙目で際どい格好だ)を餌に勧誘が行われているのには顔を引きつらせた。
つまり、何かというと癒しのジュアのヤバイ信徒は彼女が可愛くて愛しくて尊くて仕方が無いのだ。ごり押しで他人に布教する程度に彼女の為に動きたいのだ。
そんなやべぇ信徒が、彼の女神への祈りも届かない地(しかも年に一度の盛大な祭りにも馳せ参じる事も出来ない状態)でどこぞの名も知らなぬ神への呼びかけを聞いてしまい、嫉妬に狂ったのだ。
我が女神への祈りが届かないってのに糞がぁ……!
日が暮れ始めるほどに、いったん引き返してきたジャスパーとゲルマは偶然、宗教国家のさらに信仰篤きエリート特殊部隊の集団にかち合ってしまったのだ。
そしてジャスパーのストレス値が限界を迎え、『神』へ呼びかけた男に頭突きを決めるに至ったのだ。
それはもう、酷い八つ当たりだ。
そして布教だ。この地でもジュアへの信仰心が集まれば、彼女の声も聞こえるかも知れない。そうと成れば布教だ! 異教徒は減らし、我らジュア教徒の声が彼女へ届きやすいよう!
取り敢えず異教徒は死ね! 痛みを繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し知り、彼女の癒しに感涙し噎び泣き、ジュア様に信仰を奉げろ!
あと単純にあの女神様どちゃくそ可愛いから愛でろ!!
狂信者リッチの理不尽な八つ当たりは、『うわ! きもっ』と言って中立っぽく戦に入って来なかったアンデッドと淫魔の人に絡みに行ったゲルマに止めらるまで続いた。
そして運よく(悪く)瀕死で踏みとどまった最も信仰篤き異教徒はサンドバッグ行きと成った。
+
ゲルマはエウダーナという種族の典型の様な容姿をしている。
色白で細身。赤茶、というよりも血の様な赤毛ですらりと背が高い。きりっとして居ながら、なんとも言えない艶のある独特の魅力を持った顔立ち。
ただ残念な事にゲルマは結構なおばかさんだった。
遺伝子的に魔法耐性に優れて居ようが、陰りの見えるとはいえ、魔法技術に力を注ぐ大国という環境で育とうが、それを上回る程のおばかさんだった。
魔力が有っても、魔法を使うには学ばなければいけない事が多すぎる。
それを全力で放棄した結果、現在のガチガチ前衛冒険者への道を走りだした。
自尊心は高く無いにしても、好戦的な気質はそのままに、それらを全て近接でぶん殴る。へ振って今に至る。
因みに、イェルスのアウストリーネとの仲は別段悪くはない。種族とか、あまり気にしていないとも言うし、件の狂信者は宗教が絡まらなければ面倒見がいいのだ。
そんな感じに、ゲルマはおばかさんだった。
そしてノースティリスで好き勝手やってるうちに、いろいろあって痴呆気味だ。
ペットや同居人、しっかり書き記した依頼なんかは忘れた事は無いが、納税とか、自分がやろうと思って居た事とかを、適当に遊んでる内に忘れがちである。
自分とペットだけでの冒険であるなら尚更。目に映るモノに次々と思考が横滑りして、最初の目的なんて遥か彼方に置いてきてしまう事多数。
昨日? 一昨日?(それも既に曖昧だ)に会ったイルヴァとも違う世界から飛ばされて来たらしい人達が遊びに来るまで特にやる事も無く、皆いつも通りに好き勝手にやっている。
カーリナには心配されたが、突発的な事や初見の強敵で死ぬとか良くある事なので気にせず、今日は一人でその辺に遊びに来ていた。
と、いう様な時。特に自分が何をしに来たのか忘れる傾向にある。
ペットも留守番させているので、本当に一人だ。こうなってしまうと、どんどん目的から逸れた事をやり始める。
現在も『そー言えばあっちに大きな街があったなー』位の感覚で生ものの長棒を素振りしながら、モンスターボールをころころと転がしている。
棒(それも生もの)と玉を弄んで居るが、別段変な事ではない。
ジャスパーが異教徒をとっ捕まえてサンドバッグに吊るしていたので、自分も何か捕まえたくなったのだ。だからこうして、いったいぜんたいナニが生なのか良く分からない棒を持って面白い生き物でも居ないかとふら付いてる。気分的には子供の虫取りだ。
件のサンドバッグの何とかさんは、ジュスパーとアウストリーネの神様プレゼン(拷問)で大忙しなので、ゲルマと遊ぶ暇はないから仕方ない。
の、だが…。
残念な事に先程出会ったオークっぽいのは棒で突いたらミンチになってしまった。素手で殴っても当然ミンチなのでどうしようもない。
残念ながら毒とか、上手くちょっぴり弱らせられる様な物は無い。
「……ゲロゲロと媚薬しかない」
ついでにご飯もない。むしろ元気しかない。
これがゲルマがおばかさん呼ばわりされる所以だ。それでもすくつに遊びに行ける程度には戦えるから、質が悪い。ノースティリスでも、まじ害悪との評判だ。
そして完全な余談だが、ゲルマが突いて回ったせいで辺り一面、元が何なのか分からない肉や血や骨、皮膚が撒き散らされてちょっとした地獄絵図である。この街道を通った者は酷く気味の悪い……どころか、とんでもない恐怖に襲われしばらく騒ぎになった。
残念な事に、イルヴァではどんな死因でも爆ぜて挽肉に成るのが常識なのだ。
いまの所お腹は減って無いが、だいぶ陽が落ちてきている。
元気と吐瀉物と媚薬と棒と玉しか、目ぼしい物の無いゲルマは大人しくわが家に帰る事にした。
「なんだあれー!」
何だろう、というか良くある虐殺に近い現場である。盗賊とかモンスターとかに囲まれて、順次ボコって行く現場。実に良くある光景。
制服染みて均一の格好の集団が、一人にぼっこぼこにされているのを見るに犯罪者を追いかけて来たガードか何かだろうか? 街の外までガードが目を光らせているなんて何て窮屈なんだろう。
反撃にガード(仮称)をぼっこぼこにして居るのは、軽装備の……戦士だろうか? まあそこまで妙味はない。
興味は無いが、特別面白い物を見つけられなかったので、賑やかしにゲロゲロでも投擲しておく。
ついでにガードが完全一掃されたら、あの軽装戦士の女の子を殺して遺品漁りしよう。ガードを殺すのは悪い事だけど、友好関係も何もない知らない他人を殺すのに、良心の呵責はないから犯罪じゃないのだ。
だから早くガード片づけてくれないかなぁー、などとゲルマは賑やかしを続行した。
「あっ」
そして手を滑らせて媚薬も投擲してしまった。
+
前後の記憶が曖昧なのだが、法国からの追手を返り討ちにと処理していたクレマンティーヌは何故か若干奥まった林の中で目覚めるに至った。
全裸で。
そして全く覚えのない、馬鹿みたいに長い赤い髪の女が自分に抱き着きつ居ている。
全裸で。
「……はぁあ?」
素っ頓狂な声と疑問が飛び出すのも仕方ない。
「あ。起きた! あたしゲルマ! えっと……なんて言うんだっけ。あー? 気持ちよかったよ!」
事後である。
次回、アインズ様がわが家に遊び()にきた
ニグンさんの楽しい改宗プレゼンとかクレマンティーヌちゃんの初手媚薬とか、詳しいの、要るのかしら…Rが付くから書くならおまけとかかしら
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ゲルマ
『愚者の要塞』
エウダーナ
女性
良く一緒に出掛けるペット
少女(嫁) 黄金の騎士 ティラノサウルス
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