涼花さんに何やら策があるようだったけれど、すでに咲来という妹がいる私は先に薔薇の館に戻ることにした。
蛍さんの相談も妹をつくるためだったから、妹のいない者同士話し合いをしてくれれば解決にも繋がるだろう。私にできることは、同級生の薔薇さまとして少しでも仕事を片付けておくくらいだろうか。
薔薇の館に戻ると、三薔薇さまと咲来がのんびりとお茶していた。私も一応薔薇さまなので絢子様と咲来の間の席に着いた。
「それにしても、咲来ちゃんは凄いわ。一階の物置ってあんなに広かったのね」
どうやら咲来の火が付いたらしく、マリア祭の片付けついでに、物置の整理をものすごいスピードで行ったらしい。しかも三薔薇さまという、山百合会においてある種最高決定権を持つ人を従えて断捨離を敢行したらしい。
「咲来は整理整頓が趣味ですから。私も助かっています」
「お姉さまはもう少し整理整頓してください」
「そこは適材適所で」
咲来の頭を撫でてやると、もうと言ってそっぽ向いてしまった。
「他の二年生はいないみたいね」
「少し三人だけで話し合いをしたいみたいでした。……呼んできましょうか?」
私がそう言うと、咲来は即座に構える。チャキチャキのリリアンっ子にとってはやはりスール制度というものは特別なのか、姉の手を煩わせまいと動く傾向が強い。
「いえ。構わないわ。それよりも丁度いい機会だから話しておきましょう」
「と、言いますと?」
「山百合会の、今まで決められていなかった役職についてよ」
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山百合会の運営については、今まで三人の薔薇さまを中心に、特に定められた役職を持たず運営してきた。特定の役職を持たないことで柔軟に対応することが出来ていたのだが、その分情報共有や打ち合わせの回数が多いことも確かだ。
今までは人手不足のこともあったので、役職を持ったとしても結果的にどの仕事もやらなければならないという一面もあった。
薔薇さまが四人に増えたことで、今まで通りの仕事の進め方では情報共有の時間的なコストが増えるため効率的ではないという判断から、役職を設けることとなった。
もちろん定期的に情報共有は行うし、お互いに助け合っていくことが前提ではある。
「それで、さっき絢子と史乃と話していたのだけど、生徒会長は叶絵ちゃんにお願いしたいの」
――はい?
「ええと、もう一度お聞きしますね。私の役職はなんですか?」
「生徒会長をお願いしたいの」
……そうか。これはアレだな。上級生が下級生に対して行うドッキリみたいなものだ。その証拠に咲来が楽しそうに笑っている。
そんなに笑っていたらバレてしまうよ。ドッキリするならもっとバレないようにしなければ。
となれば、乗ったふりをしてもう少し泳がせてみよう。
「承諾するかはいったん置いておいて、お三方の役職はどのように決まっているのですか?」
今まではなしていない、史乃さまに目を向けた。
「絢子が書記、私が会計で、鈴が広報。つぼみ達は役職としては庶務だけれど、実質的には姉のサポートだったり、不在時の代理として活動してもらうつもりよ」
なかなかボロは出さないか。それに、今の役割分担を聞くと咲来はいわゆる「副会長」というポジションに収まることになる。
というか最上級生を差し置いて生徒会長になるべきではないだろう。
「そろそろ気が済んだのではないですか? ドッキリはおしまいにして正式な役職を教えてください」
「だから、今のが正式な役職」
見れば、史乃さまも鈴さまも絢子さまも、穏やかだけれども真剣な表情だ。
「本当ですか? まだ二年生ですよ?」
「二年生だったとしても、同じ薔薇さまであることには変わりないでしょう?」
確かにそうだけれど。世の中の会社には年下の上司なんてたくさん存在している。
そうだとしても、学生においての一年というのは大きな違いであることは変わりない。
「だって、咲来がこんなに笑って……」
「姉を褒められて喜ばない妹はいないのよ?」
鈴さまの言葉を聞いて咲来を見ると、にっこりと頷いていた。
この三人で話して決めたということは、つまりそういうことなんだろう。
「……どうなっても知りませんが、引き受けます」
福沢先生をはじめ、みんなどうして私を持ち上げようとするのだろう。
「お姉さま、頑張ってください!」
妹に笑顔で言われたら、頑張るしかない。
他のところも同じなのだろうか。お姉さまというのも大変だ。
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「ところで、この案は誰が最初に思いついたのでしょうか?」
「一番最初はそうね……福沢先生だったと思うわ」
「そうでしたか……」
うん。先生と言えど。ちょっとあの狸にはお仕置きが必要だろう。