今日からつぼみの妹候補の一年生が交代で手伝いにやってくる。初日は琴音さんが妹にしたいと言っている成田響さんだ。
何の因果か、彼女もまた外部生である。白薔薇姉妹は外部生姉妹というのは変わらなさそうである。
そう思いながらビスケット扉を開くと、すでに部屋の掃除が終わり、琴音さんと響さんが紅茶を飲んで過ごしていた。
「ごきげんよう。響さん、今日からよろしくお願いします」
「ご、ごきげんよう、
「響、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。叶絵さん、厳しく見えるけどとても優しいから。それに私達と同じ外部生。仲良くしましょうね」
琴音さんは既に呼び捨てにしている。それだけ妹にしたいという気持ちの表れなのだろう。
「琴音さん、白薔薇さまにはもう報告を?」
「ええ。お姉さまには先にご紹介し、承諾もいただいてます。ただ、立て続けに山百合会の幹部が誕生するというニュースが出るのは戦略的に良くないと……」
「そういえば、鈴さまとはそんな話をしていたわね」
円滑に生徒会活動を行っていくためには、生徒に混乱を招くような事態は避けた方がいい。そのために工法を担当する鈴さまと話し合い、嬉しいニュースは小出し、もしくは時期をみて公表するほうがいいという結論になった。
「すでにロザリオは渡してあるわ。見えないようにしているけれど、特別隠したりもしないわ。ちょっとしたゲームみたいなもの」
「それはまた、鈴さまが喜びそうなことを……」
鈴さまはリリアンの中でも群を抜いて美人である一方で、悪戯好きでもある。と言っても誰かに迷惑をかけるようなことはしない。例えば自分でお作りになったクッキーを、誰のか分からない机の中にこっそりと忍ばせては様子を見るといったことをずっと行っている。
気まぐれな天使の可愛い悪戯だとリリアン中で話題となっていたが、その正体が鈴さまだと知ったときは面食らったのを覚えている。
ただ、あんな綺麗な顔で微笑まれたら、誰だって許してしまうだろうけれど。
それにしても……。
白薔薇姉妹は本当に美人だ。琴音さんはもちろん、響さんもかなり美人だ。一年生とは思えないくらい大人っぽい。
「ごきげんよう。お姉さま、先にいらしてたんですね。響さんも、これからよろしくね」
それに比べると咲来は年相応というか子どもっぽいし、背も低い。
「どうかしましたかお姉さま。顔をじっと見て」
「……なんでもないわ」
咲来に言ったら間違いなく怒るだろう。
「それはそうとして、公表していないとはいえ、週に一度しか薔薇の館に来ないことになるけどそれはいいの?」
「お姉さまから、絢子さま、史乃さまにはご説明いただき了承を得てます。他のつぼみにも伝達済みです。叶絵さんには私から説明しろと言われまして」
「なるほど。個人的な意見としては他の妹候補のこともあるから、公表するまでは他の候補者と同じような扱いの方がいいとは思うけれど……それはすなわち一緒にいる時間が少なくなるということよ?」
私自身、私らしくないことを言ったけれど、特別な事情がない限り、妹とは一緒にいたいと思うのが普通だろう。
私だってなるべくなら咲来と一緒にいたいと思う。咲来という存在が私を変えたのは事実だ。
「それなら、大丈夫です。琴音さ……お姉さまと白薔薇さまに許可を頂きましてお手伝い以外の日は別で勉強しておきたいことがありまして……」
響さんが慌てたように口を挟んだ。その姿を見て、この姉妹は大丈夫なんだろうなと思った。
これ以上何か言うのも野暮だ。
「そういうことなら。じゃあ、さっそくだけど仕事をしていきましょうか。響さんの指導は琴音さんにお任せするわ。今は私が抱えている仕事はそんなにないから、咲来は困ってることがあったら助けてあげて」
「分かりました」
響さんは琴音さんに雑用や物の位置などを教えてもらい、一通りの雑務はこなせるようになった。咲来と一緒なら、薔薇さま達は本来の仕事に集中できるだろう。