お手伝いさんも今日で三人目。今日は
「ごきげんよう、紫薔薇さま」
「ごきげんよう。万季子さん、よろしくお願いします」
三日目ともなると慣れてはきたけれど、推薦した涼花さんは黄薔薇さまと一緒に部活動の各部長が集まる会議に出席している。
黄薔薇さまの大岡裁きのための提出書類の締切や、今年の全体的な要望を聞き取るためだ。
今までは、咲来と推薦者にお任せしてきたけれど、今日は難しそうだ。
「咲来、昨日までと同じ通り任せてしまうけど、問題ないわね?」
「はい。お任せください」
「何かあれば、私に言ってくれればいいから」
「失礼します!」
咲来と話していると、万季子さんが突然駆け出し、窓を開け放った。
「どうしたの、急に窓を開けて」
「少しガスの匂いがしました。どこかから漏れているのではないかと……」
私は感じなかったけれど、念に念を入れて確認した方が良いだろう。
「咲来、福沢先生にガス漏れしている可能性があると伝えてもらえる?」
「かしこまりました。お姉さまは?」
「周囲の安全確保よ。薔薇の館には私達しかいないけれど、他の生徒がしばらく近付かないようにするわ」
なにせ、この建物は古い。それだけ歴史があることを物語っているのだけれども、度々耐震工事が行われてきたのも事実だ。
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その後、福沢先生が手配した業者によって調査が行われた。幸いにもゴムパッキンが劣化していただけで、交換するだけで済んだが、ガスが充満している可能性があるため、しばらくは火気厳禁。
私は紅茶よりも珈琲(イメージ上、校内で飲むことはあまりない)のため、大したことではないが、紅茶好きの白薔薇姉妹には我慢してもらうしかなさそうだ。
それにしても……
「よく分かったね、ガス漏れだって」
「あ、はい。昔から鼻だけはよく利くんです」
そう言って万季子さんは、少しだけ恥ずかしそうに微笑んだ。
「私、涼花さまには嫌われたと思っていたので、この場にいるのが不思議なんです」
「嫌われた?」
「はい。温室の花は涼花さまが育てていらっしゃると知らず……」
なんでも、鼻が利く万季子さんは、『見た目は華やかだけれども香りの組み合わせはイマイチ』と呟いたのを丁度居合わせた涼花さんに聞かれてしまったそうだ。
涼花さんは、『アドバイスありがとう』と言ってその場を去ったそうだ。
そんな、何とも言えない空気に、咲来が苦笑いをしていると、ビスケット扉が勢いよく開かれる。
「万季子ちゃん、いらっしゃい! ようやく満足できるものが出来たわ!」
涼花さんが、大きめの花束を抱えて入ってくる。
「あなたにアドバイス貰って私もいろいろ調べてみたの。まだまだ遠く及ばないけれど、見た目も香りも考慮してみたの」
「はい、とっても良い香りだと思います」
あの、万季子さん、嫌われてるどころか思いっきり気に入られているみたい。
「涼花さん、ごきげんよう」
「ごきげんよう、叶絵さん。ごめんなさいね。部活動関連の打ち合わせが長引いてしまって……」
その後は万季子さんは涼花さんに任せた。