親バカの親父、ダンジョンに導かれる   作:衛鈴若葉

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金色の風

ラッキー、と灰の中からドロップアイテムと魔石を拾う。

カエルにしたモンスターからドロップアイテムが取れるのにはいささか疑問はあるけれど都合がいいからどうでもいいということにする。

それにミノタウロスは僕の膝くらいのサイズのカエルになったはずなのだが、それにしては灰の量が多い。

すぐに霧散するので気にすることでもないが。

 

「魔法の調子は良好。あと覚えられるのは召喚‥‥‥いや、僕じゃまだ無理だ」

 

黒魔法は大抵覚えて、ミノタウロスに効いたことからも練度は上がっている。

初級からラ、ガ、ジャと順に上がっていく基本魔法は白魔法ならジャまで、黒魔法ならガまでは習得している。

まだまだ黒魔法は火力不足、足止めの妨害程度に考えた方がいいかもしれないと思い始めた。

上層なら一撃、下層や深層では【ホーリー】でも一撃とはいかなかった。

そもそもの魔力の練度が足りていないとは分かっているが思ったように鍛えられていない。

早くに昇華(ランクアップ)をしなければならないのだろう。

既にステイタスの数値は限界に近い。

中層ならば踏破できる程度の実力、というのがゴルベーザさんの僕への評価だ。

ランクアップならば中層の階層主(モンスターレックス)であるゴライアスとソロで戦い、倒せばできるだろう。

インファントドラゴンだとまだ無理だと思う。

 

ならば召喚獣の試練を超えればいい、そんなことを思うが彼らの試練は想像を絶する。

一番初めに行ったのは幻獣の王の妻、アスラとの戦いであった。

まあ、惨敗である。

いや、ジェクトさんやゴルベーザさんに次ぐ強さだったと思う。

しかもあの上に幻獣の神までいると聞いていつになったら越えられるのだろうを頭を抱えそうになった。

 

「‥‥‥帰ろ」

 

異常事態(イレギュラー)の報告もしなくてはならない。

ランクアップのことを考えたら連想ゲームのように思い出したことによって気分が沈む。

ため息を我慢して、肩を落としてその場を去ろうとする。

 

「‥‥‥あの」

 

後ろから女性の声が聞こえた。

 

「はい?」

 

首を傾げて、後ろを振り返る。

金髪で金眼、軽鎧にレイピアの組み合わせ。

どんな用なのだろうを様子を伺う。

 

「この辺りにミノタウロスが来ませんでしたか?」

 

ああ、と話しかけた意図を理解する。

逃がしたミノタウロスを追いかけてここまで来たのだろう。

 

「一体は僕が倒しましたけど」

 

真実をそのまま話す。

証拠にとバックパックにしまったミノタウロスの魔石とドロップアイテムを見せる。

流石に見せられると信じざるを得なくなったのだろう。

 

「ありがとうございます」

 

感謝の言葉を述べてくれる。

そのすぐ後に謝罪の言葉が飛んできて、返答には特に迷惑に思っていないことを伝えて、名前を聞いた。

アイズ・ヴァレンシュタイン、その名前を聞いてとある二つ名を思い出した。

 

「ベル・クラネルです。では、さようなら」

 

【剣姫】という二つ名である。

【ロキ・ファミリア】の幹部にして第一級冒険者だったはずだ。

【閃光】に次ぐオラリオにおける強者に数えられる剣士だ。

五十階層で会っていたかと言うとあまり覚えはない。

まあ、もう会う機会はないだろう。

そんな感じに【テレポ】を使用してダンジョンの外に転移した。

 

「あらら、もう夕方だ」

 

んー、と大きく伸びをする。

市壁に隠れているが夕日は確実にオラリオを照らしている。

冒険を終えた冒険者達がギルドに行く頃合いの時間だから、往来には武器を携えた、鎧を着込んだ様々な種族の人間が見えた。

お酒を飲みに行く人、真っ直ぐに家に帰る人、仕事を終えた一般人。

昼や朝と比べて人の多いこの時間からがオラリオが騒がしくなる時間帯である。

 

「エイナさんも忙しいかな」

 

エイナさんはまだギルドにいるだろう。

ギルド職員としての仕事は中々にブラックだと聞く。

エイナさんの同僚のミィシャさん、という人が愚痴っていた。

そんな人にまた苦労を運びに行く。

 

異常事態(イレギュラー)は仕方ないよね)

 

そう言い聞かせてギルドに向かう。

特に急ぎの用事もない。

なので歩いて向かうことにする。

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルドに着いて、エイナさんに報告をする。

ゴルベーザさんとジェクトさんは特例らしくてアドバイザーはついていないが、僕には普通についてくれた。

ファミリアの担当でもあるエイナさんが僕の担当になってくれている。

そんな僕の義務は毎日ダンジョン探索を終えたらエイナさんの元に行って報告をすること。

だから、五階層まで降りたその時の異常事態(イレギュラー)について話した。

すると、ギルドで内密な話をする時に使われる個室に連れ込まれてしまった。

 

「で、本当にミノタウロスと交戦したのね?」

 

「はい。何とか勝てました」

 

ミノタウロスとの交戦、勝利したのは魔石とドロップアイテムを見せたら信じてくれた。

そしたらその後のことについてこと細かく聞かれる。

異常事態(イレギュラー)については再発防止のために細かい情報収集を行うのは普通のことらしい。

それについての対策を講じて新たに掲示板に貼り、原因となったファミリアや団体に罰則(ペナルティ)を課すこともあるとのことだ。

ギルドも大変なんだなぁ、と他人事のように思って僕の知っていることを話した。

アイズさんから聞いた話をそのまま話しただけであるが。

 

「よし。協力ありがとう、ベル君」

 

「当然のことですから。それで到達階層についてなんですけど‥‥‥」

 

「そのことなら、ゴルベーザ氏やジェクトさんとも話し合ったんだけど、しばらくは今のままね」

 

「そんなぁ〜」

 

ランクアップがさらに遠くなってしまった。

基礎鍛錬を増やさなければならないかと朝にこなすメニューを頭の中で考え始める。

 

「君のために言ってるんだから、ね?」

 

「はーい。じゃあ換金してきますね」

 

「行ってらっしゃい」

 

エイナさんもゴルベーザさんもジェクトさんも死なないでいて欲しい一心で言ってくれているんだろう。

それにまだ冒険する頃合いではないのだろう。

ならば受け入れて基本を鍛えるしかない。

まあ、落ち込むことには変わりないが。

 

「ベル君なら強くなれるでしょうね」

 

後ろからエイナさんの声で鮮明に聞こえた。

振り返るとなにやら考え込んでいる様子のエイナさんが見える。

 

「どうしたの?」

 

「いや!なんでもないです。では、また明日〜!」

 

換金所にむかって走る。

期待されているならば頑張らなければならないだろう。

とは言っても女性を泣かせる男なんて男の風上にも置けないので死なないように、無理をしないで。

ミノタウロスの角と魔石はなかなかにいい値段になってくれた。

防具を買うか武器を買うか、それとも別の何かに使うか。

いや、神様に献上して残りは貯金しよう。

 




ライトニングさんは有名です。
ロキ・ファミリアにもフレイヤ・ファミリアにもいません。
出すところはもう既に決まっているのでお楽しみにしておいて下さいね。
次は酒場回かゴルベーザさんとジェクトさん側視点か。
がんばるゾー!
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