親バカの親父、ダンジョンに導かれる   作:衛鈴若葉

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少し書き直しました。



酒場

いつもの朝のジェクトさんとの手合わせが終わり、それからダンジョンに向かう。

朝の鍛錬は日常となり、その経験は体に染みついていく。

強くなるための近道である。

まあ、勉強はしなくてはならないが。

だからこそ、ずっとゴルベーザさんからもらった魔法書を持ち歩いているわけだが。

 

しばらくはソロ探索だ。

寂しいなんて言っていられない。

あの二人がいたら、きっと甘えてしまう。

成長なんて夢のまた夢になってしまう。

 

「よしっ」

 

朝のメインストリート。

まだ、人はあまりいない時間帯だ。

気を引き締めて、バベルの方向に向かって歩く。

 

そんな時に、何かが起こるのだ。

魔法を修め、勘が良くなっているベルだからなおさらである。

視線を感じたのだ。

ねっとりとした、不快な視線である。

 

「―――誰?」

 

バベルの方向からだ。

それも天上といってもいいところからである。

誰かは分からないが、気のせいだと思うことにする。

今気にしても意味はないだろう。

 

一応、ゴルベーザさんに報告はするが。

 

「あのぅ」

 

立ち尽くしたのは一瞬。

向いていた方向も変わっていない。

そのまま歩き出そうとしたところに後ろから声がかかった。

女性の声である。

 

「はい?」

 

答えるようにして振り返る。

聞いたことはない声だ、知っている人ではないだろう。

 

「なんですか?」

 

「これ落としましたよ?」

 

「え?換金したはず」

 

給仕服を身に纏う女性が差し出したのは小さな魔石。

落としたという彼女の言葉を信じきれないが、受け取ってしまう。

魔石は女性の掌よりも幾分か小さい。

これだけ小さいのなら見逃していても不思議はない。

と納得する。

 

「朝早いんですね」

 

「ええ、まあ。まだまだ未熟なので」

 

そう言って乾いた笑いを見せる。

魔石を拾ってくれたことに感謝を述べ、去ろうとすると情けない音が聞こえた。

主に僕のお腹から、朝は食べてきたはずなのだが。

 

「お腹、減ってるんですか?」

 

「―――らしいですね」

 

目をそらしてそう答えた。

 

「待っててくださいっ」

 

すると女性が働いていると思われる酒場に入っていき数分。

待っててくださいと言っていたので待っていた。

 

「これ、差し上げます」

 

帰ってきた女性が持っていたのはお弁当箱らしいもの。

 

「いいんですか?」

 

「はいっ。その代わり、今夜は是非私がお世話になっているお店で夕食を召し上がってくださいね」

 

上目遣いで女性は言う。

商売上手な人だと、納得した。

断れるはずもない、不思議と引き込まれる感じがしたのだ。

 

「分かりました。今夜お邪魔します」

 

「お待ちしてますね!」

 

大きい酒場のようだ、たまの贅沢にはちょうどいいだろう。

ゴルベーザさんやジェクトさん、神様も連れていくとしよう。

うん、そう決めた。

【豊饒の女主人】という店名らしい。

名前を流し見し、女性と別れてダンジョンに向かう。

 

もはや、上層で敵などいなかった。

いるとしても十階層くらいにいるモンスターであって三階層程度のモンスター程度なら楽勝である。

ナイフはあくまで解体用。

戦闘は下位魔法で簡単にけりがつく。

割と素手でも戦えはする、補助魔法は必要だが。

 

精神力も育ってきただろうか。

下位魔法ばかり使っているとあまり実感がない。

 

「―――ケアル」

 

完全回復である。

十年近く、白魔法をゴルベーザさんから教わり研鑽してきたとはいえだ。

怪我、疲労含めて完全回復である。

精神力が育った結果だと信じたい。

 

もっと降りたいとそう強く思う。

しかし、それをやれば怒られることは必至。

それに油断している兔ほど殺されやすい得物はいないだろう。

 

「よし、帰ろう!」

 

何より怖いのは説教である。

 

「おー、これは」

 

「どうでした?」

 

「前と比べたらまだマシかな」

 

 

 

ベル・クラネル

 

Lv 1

 

「力」 H 180

 

「耐久」 G 242

 

「器用」 G 294

 

「敏捷」 E 592

 

「魔力」 B 790

 

魔法

 

【白魔法】 自由詠唱。継承可能。

 

【黒魔法】 自由詠唱。継承可能。

 

スキル

 

【まほうぜんたいか】 魔法の対象を範囲か単体か選べるようになる。

 

【魔道憧憬】早熟する。憧れの丈ほど効果上昇。他からの干渉を阻害。

 

 

 

 

確かにゴルベーザさんとジェクトさんとの強行軍の際に上がった能力値よりはマシだ。

上がり幅はいって20程度、それでも上がり幅は大きいものとなっている。

 

「確かに、マシではありますね」

 

「だろ?」

 

「これでも異常なんでしょうけど」

 

「それはそうだね」

 

ゴルベーザさんが師匠である時点で自分が普通なんていうことはない。

ジェクトさんが先輩な時点で普通の冒険者生活が送れるとは思っていない。

 

「そういえばお二人はどこに?」

 

「どうも知り合いから手紙が来たみたいでね、出かけていったよ。早めに帰ってくるとは言ってたけど」

 

「知り合い?」

 

「うん。二人とも知ってるみたいで驚いてたけど、知ってるかい?」

 

そう聞かれてこれまでの記憶を掘り起こす。

村にいた頃、ゴルベーザさんに英雄譚をねだった時の話が該当するか、と思った。

子守歌を母親に歌ってもらうように、祖父から英雄譚を朗読してもらうのが幼い僕の楽しみの一つだった。

祖父がいなかったある日、僕はゴルベーザさんにそれをねだったのだ。

 

一つは月が二つある世界の話、もう一つは神によって異なる世界から召喚された者たちが二つの陣営に分かれて戦争をする話。

 

どちらも実際に経験したことのように話していた。

そのどちらかの知り合い、ジェクトさんも知っているということは後者だと思われる。

事細かに覚えている物語の中でジェクトさんらしい登場人物もいた。

ならば、というわけである。

 

「という感じですかね」

 

僕が覚えている限りではこんな情報しかない。

 

「うーん、まあ本人たちは心配ないって言ってたけど」

 

「心配ですよね」

 

彼らの知り合いにはいい人も多いが同じように悪い人も多い。

それに無理をする方だ。

とんでもなく強いから心配するなんておこがましいなんて思ってしまうけれど仕方ないだろう。

もう、僕は彼らを家族だと思っている。

 

そんな時だ、あることを思いつく。

 

「あ、ゴルベーザさんとジェクトさんと同じレベルの冒険者っているんですか?」

 

「え?ああ!そういうことか」

 

あの二人のレベルは9。

知り合いで、ゴルベーザさんのお話の中に登場するならそれくらいだと思う。

前提があっているなら、であるが。

 

「でもそれなら有名なはずだよね」

 

「まあ、僕でも知っているような名前だとは思いますねぇ」

 

「「いなくね?」」

 

まあ、考えてみれば当たり前である。

レベル9などいれば冒険者の中で一番有名だろう。

それに、あの二人もレベル9であることはギルドが隠しているようなのだ。

隠されていることは想像に易いことであった。

 

「‥‥‥うーん、迷宮入りかな?」

 

「僕達だと答えには辿り着けないみたいですねぇ。帰ってきてから聞いてみます?」

 

「うーん、そうしよっか」

 

結局、この答えに帰結した。

こうして考えてみると僕はゴルベーザさんのことをあまり知らない。

幼い頃から一緒にいたのになぁ、不甲斐なく思う。

 

「あ、神様」

 

「ん、なんだい?」

 

二人がどこに行ったのか、何故聞いたかを思い出す。

 

「外食に行こうと思いまして。朝に酒場の店員さんから誘われてですね‥‥‥」

 

朝のことを話して、ヘスティア様に説明をする。

【豊饒の女主人】という酒場の店員に誘われたこと。

見る限り大きそうなお店だったのでハズレではないだろうとそれを受けてみんなを連れていこうと思ったこと。

 

「いいね!二人が帰ってきたらすぐ行こう!」

 

「ありがとうございます」

 

やったー!と子供のようにはしゃぐヘスティア様。

うん、ものすごく可愛い。

 

「で、その店員君って女の子かい?」

 

「え?そうですけど」

 

「ふーん」

 

少し雰囲気が怖いものへと変わり、ふーんという言葉がとんでもなく怖く感じる。

 

「ど、どうしました?」

 

「いや?何でもないよ。二人が帰ってくるの待とうか」

 

笑顔である。

家計簿を取り出してきて記入しているようであった。

 

 

 

 




最近全然書いてねぇと思って焦りました。
頑張ります。
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