親バカの親父、ダンジョンに導かれる   作:衛鈴若葉

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お酒

ジェクトさんとゴルベーザさん。

二人の帰還を待って少し経ったあと帰ってきた。

何だか時間が過ぎるのが遅く感じていたがとにかく、帰ってきたのだ。

二人の顔は晴れやかで知り合いなる人との話は有意義だったんだと思う。

それに安堵し、疑問をぶつけた。

神様と一緒に考えても考えても答えが出なかった事柄である。

気にしない方が難しいだろう。

ジェクトさんもゴルベーザさんも、この世界に知り合いはいないと半ば諦めていた。

だからジェクトさんに会えたのは奇跡に近い、それにさらにもう一人いると言われたら喜ばしい。

騙されてないかな、なんて思うが二人が騙されるタマではないことは知っている。

 

ということで、知り合いについて聞いてみた。

誰なのだろう、どんな人なんだろう、憧れの人の知り合いなのだ。

ワクワクして二人に聞いた。

 

二人は渋ることもなく知り合いについて話してくれる。

特に隠すことでもない、とゴルベーザさんが言っていた。

 

閃光の名はオラリオに入れば轟いてくる名前だろう。

剣の技と魔法、全てが完璧らしい。

二つ名は【閃光】、レベル5の【アストレア・ファミリア】に所属する冒険者。

名前は二つ名が示す通りの【ライトニング】。

 

━━━まあ、知ってどうするというわけでもないか。

 

ありがとうございますと、礼を言う。

当たり前のことだ。

やってもらったことに礼を言う、それは当たり前のことだ。

 

そして、二人に朝の酒場への勧誘について話した。

【豊饒の女主人】という酒場に誘われ、ヘスティア様に話し、こうして連れていくために2人を待っていた。

そんなに遅い時間でもなし、まだご飯は食べていないだろう。

 

「酒場か。たまには外食もいい」

 

「だな。外食なんて久々だ」

 

「うんうん!よし行こうか!」

 

「ですね!」

 

そういうことになった。

 

のだが。

まあ何もない。

全身を黒い甲冑に包んだ男と、筋骨隆々の半裸の男、あとは僕とヘスティア様。

そんな四人組、大体は前者のゴルベーザさんとジェクトさんだが、まあからんでくるはずがないだろう。

どこかの、反社会勢力ひしめく国みたいに絡んでくることは無いだろう、と思いたい。

何もなかったのは拍子抜け、とは絶対に思っていない。

 

「ここか」

 

「ここですね」

 

【豊饒の女主人】という看板がデカデカと掲げられている。

明るい店内からは両開きの扉が閉められているのにも関わらず、騒ぎ声が聞こえてきている。

いい感じだろう、当たりだろう。

そう思って扉を開けると、店員さんがいた。

 

「いらっしゃいませー!あ、今朝の冒険者さんじゃないですか」

 

「あ、こんばんは。来ましたよ」

 

いきなり、というか急に目の前にいたからというか。

あ、と言葉を漏らしてしまう。

 

「はい。そちらの方々は、ファミリアの方々で?」

 

「はい。四人です」

 

「かしこまりました。ご案内しまーす!」

 

ホッと胸をなでおろし、シルさんについて行くことになる。

その先はお店の端っこ、カウンターの端っこであった。

何だか視線が痛かったがまあ当然だと納得だ。

世界広しのオラリオとはいえ、こんな集団がワラワラいたら怖い。

飲食店といえばだが、ゴルベーザさんが外で兜を取っているところを見た事がない。

そして大体の場面で兜を外さず、ご飯の時にもそれは同じことだ。

どうやって食べているのだろうかと何となく気になっていた。

 

「いらっしゃい!アンタらがシルのお客だね?これまた、個性的だね」

 

「自覚はしている」

 

「だろうね。そんな甲冑着てて飯食えるのかい?」

 

「問題はない」

 

「それならいいけどさ。で、坊主だね?シルから聞いてるよ!大食漢なんだってね?」

 

ゴルベーザさんに話が振られ、その後。

何故か話が僕の方に来た。

しかも、大食漢とかないこと吹き込まれていたことが発覚する。

犯人は、女将さんの言う通りシルさんだろう。

まあ食べる量は普通くらいだ、少ないということはない。

しかし、食べる量が特別多いということもない。

 

「たっぷり食べていっておくれよ!」

 

「‥‥‥あー、はい」

 

まあ、美味しいだろうし食べられるだけ食べて帰るとしよう。

そう思って言葉を否定はしなかった。

 

「しっかり、堪能しますね」

 

「女神様とおっさんもね!シル!サボってんじゃないよ!」

 

ぱらっと、メニューが目の前に落とされた。

 

「大食漢とは、初耳だな」

 

「違いますからね‥‥!」

 

「だよねぇ?ベル君が大食漢とはとても、これ美味しそうだね」

 

「ベルが大食漢かどーか、なんていいじゃねぇか。それよりメニューよメニュー。ヘスティア、見せてくれ」

 

「今はボクが見てますぅ」

 

「だから見せてくれって言ってんだがなぁ」

 

「そっちにもないのかい?」

 

「んあ?お、あった」

 

「あるんじゃないか」

 

「各々、好きなものを頼むとしよう」

 

「ですね。神様、少し見せてくださいな」

 

「いいよー」

 

四人でメニューを見て、好きなものを各々頼むこととなる。

とりあえずということでなにか一品とドリンク、という形になった。

ちなみにお酒を頼んだのはヘスティア様だけである。

ジェクトさんは頼みそうだと思ったのだが。

聞くのも無粋かと思い、近くにいる店員さんを呼ぶ。

薄緑色の髪のエルフさんが来た。

 

「はい。ん?あなた方は」

 

「リュー・リオン。【アストレア・ファミリア】の、昼間に見たな」

 

「そうだった。嬢ちゃんはここで働いてるのか」

 

「ええ、少し前にお世話になって、そのお礼に。それでご注文は?」

 

「おお、すまん」

 

リュー・リオン、と呼ばれた人に注文を通した。

リューといえば、二つ名を持ち、ものっそい有名な人という記憶がある。

【アストレア・ファミリア】の【疾風】。

ライトニングさんと一緒のファミリアだから、少しの顔見知りなのだろうか。

 

それはそうとして、料理が楽しみだ。

 

「たっぷり食べておくれよ!」

 

料理が来たのはすぐだった。

20か15か、すぐに料理は運ばれてきた。

 

「早いね」

 

「それが売りだからね!よし、食べな!」

 

と、目の前に並べられる。

頼んだ覚えがないものも見えたが、まあいいだろう。

サービスってやつだろうか。

 

「‥‥‥」

 

「女将さんよ。酒って、俺頼んだか?」

 

「ん?飲まないのかい?」

 

「俺は、飲まねぇのよ。親友との約束でな、ゴルベーザはどうだ?」

 

「‥‥‥分からん。飲んでみるか」

 

「じゃあボクが貰うね!」

 

「楽しんでってくれよ」

 

女将さんが奥に引っ込んでいき、少し遅めの夕飯と洒落込むことになる。

 

「おぉ、美味しいね」

 

「量も多いですし、いいですねこれ」

 

「‥‥‥」

 

「ゴルベーザさん?」

 

「‥‥‥苦いな」

 

「苦手です?」

 

「ああ」

 

「僕が飲みましょうか?」

 

「‥‥‥頼む」

 

エールを飲めないゴルベーザさん。

何だか、可愛い。

 

「飲めなかったか!」

 

「からかわないでくれ」

 

表情は伺えないが、相当苦しい表情なのだろう。

 

「弱点なんてないと思ってたけど」

 

「‥‥‥頼む」

 

「意外な所もあるものだねぇ!」

 

「‥‥‥」

 

「ちょっ、神様もジェクトさんもやめた方が」

 

ゴルベーザさんをからかう二人、黙り込むゴルベーザさん。

ゴルベーザさんは優しいが、そこまでからかうとメテオが飛んでくるかもしれない。

怒ったところなんて見たことない、だからこそ怒ったらとてつもなく怖いのだ。

 

「とうっ!」

 

「ごぼぼ」

 

ヘスティア様の口にエールを注ぎ込む。

 

「【ブリザド】。ハンマー!」

 

「いてっ」

 

ジェクトさんには氷で小さい槌を作り、頭にぶつける。

 

「ダメですよ」

 

と、こんな感じの食事風景である。

意外に思ったのが、ゴルベーザさんがいじられてたこと。

止めてたけど途中から面倒になってきてしまった。

 

そんな折、不自然に空いているテーブルが目に入る。

あのスペースはなんなのだろうと思ったところ、両開きの扉が空いた。

 

 

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