親バカの親父、ダンジョンに導かれる   作:衛鈴若葉

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なんだか納得いかない。


白兎と魔道士

ヘスティアによれば今まで二ヶ月近く、誰もファミリアに入ってくれなかったらしい。

既に中堅や有力ファミリアがある中で零細に入ってくれなんて余程の特典がなければ拒否するだろうとジェクトはその結果に納得する。

それでもジェクトがヘスティアの派閥を選んだのは神に対する不信感と第一印象のおかげであった。

面倒であった、というところも大きかったがそんなことをヘスティアは気にせずに鼻歌を歌いながらジェクトを自身の本拠(ホーム)に、ではなく自分の最初の眷属に恩恵を与えるのはこの場所だと決めていた場所に案内していた。

好きな本に囲まれた、二階には店主の許可があればそこで読書や勉強もできるそんな場所であった。

ヘスティアは書店に入ると店主に言ってから二階に上がる。

初めての眷属にはここで恩恵を刻もうと思っていたと嬉しそうに話して二階のソファにジェクトを座らせる。

 

「さあて、刻むよ」

 

「おう、手早く頼む」

 

初めてであるからであろう【神の血(イコル)】を垂らすのに四苦八苦しながら何とか【神の恩恵(ファルナ)】を刻むことに成功する。

 

「よーし、これでうん?」

 

目の錯覚かな、と目をぱちくりさせ一旦瞼を閉じてからもう一度見る。

まだ、と用意していた羊皮紙にそのステイタスの写して、普通のステイタスであることの願いを託そうとする。

しかしながら、現実は非情である。

今までどの神も経験してこなかったようなステイタスを目の前にして泣きそうな顔でジェクトに見せることにする。

 

「どうした?ヘスティア」

 

「いやぁ、キミのステイタスがおかしくてね。本当に今まで恩恵受けたことないんだよね?」

 

「存在自体知らなかったからな、それにここはオレからしたら異世界なんだよ」

 

「うん、疑ってる訳じゃないんだ。嘘をついてるかなんてボクたちには丸分かりだからね」

 

道中でジェクトの身の上話を聞いてきて、最初は耳を疑った。

嘘だ、と一笑に伏せたらどんなに楽だっただろうと思うが嘘を言っていないことは分かってしまったのだ。

異世界人、そんなことがバレれば他の神に玩具にされるかもしれない。

それに神と戦った経験すらある、ひたすらにヤバい人物であることはわかっていたがここまでとはとステイタスの写しをジェクトに見せる。

 

ジェクト

 

Lv 9

 

「力」 I 0

 

「耐久」 I 0

 

「器用」 I 0

 

「敏捷」 I 0

 

「魔力」 I 0

 

魔法

 

スキル

 

【『シン』】究極召喚の祈り子となり『シン』となった者。変身魔法中の身体能力強化の効果上昇、消費精神力減少。

 

故郷(息子)を想って】ファミリアを守る時、ステイタス高補正。

 

「これの何が問題なんだ?」

 

至極当然、ジェクトはこれの問題点が分からない。

無論だがジェクトの実力はかなり、というより強すぎるという方が適当であると感じる。

魔導師タイプではないため基本武器による攻撃や素手によるもの、遠距離攻撃の手段は基本的には皆無だ。

まあ、でかい魔法攻撃でも余裕な気がする。

 

「‥‥‥いやぁ、これ以上のレベルは今は存在しないというか、話の限りだとこれで留まってるのが不思議というか」

 

「何言ってんだ?」

 

言葉をまとめられていないヘスティアとそれを呆れた顔で見ているジェクト。

なんとか言葉を捻り出してヘスティアは説明を終わらせたあと、思い出したように話題を逸らすようにヘスティアは口を動かす。

 

「そうだ、ジェクト君って上着持ってないのかい?」

 

「ん?持ってねぇよ」

 

「そっかー、持ってないのかー。えっ?」

 

「どうしたよ」

 

ジェクトは半裸である。

故に背中は常にさらけ出した状態、そしてステイタスを表した恩恵は背中に見えている。

その内容は正しく爆弾、まだ必要ないと思っていたがヘファイストスに色々と教わらなければならないと明日に足が重くなって行かなかった場所に行こうと決断する。

しかしまぁ、問題はそれ以前のものだ。

今をどうするか、爆弾であることを説いて上着でも着せるしかない。

やれるか、やらねばならないとヘスティアは自身を鼓舞する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然のこと、少年の元に魔道師が舞い降りたのは突然の、驚愕の邂逅であった。

黒き甲冑に身を包んだその男を祖父が連れてきたのは夜の帳の下。

暗闇の奥に佇むその姿に当然、恐怖を感じたがそれと同時にその手に頼れる力を持っているようにも感じる。

英雄になりたいと願う少年と闇に身を堕とした魔道士の奇妙な生活はそこから始まることになる。

男が鎧を脱ぐことはなかった、食事の時も農耕の時も、ベルとの鍛錬の時も。

魔法の知識と魔力を扱う技を、近接でも戦える男に少年は何度も打ち倒された。

 

「ベル、入るぞ」

 

ぞ」

 

「ゴルベーザ、さん?」

 

ベルのいる田舎の村には似つかわしくない音、鎧特有の足音がベルの耳に届く。

先日のこと、祖父が死んだらしい。

村人から伝えられたそれによってベルはわんわんと泣いた。

情けない、とは思えない。

まだ十四の子供だ、どんな気持ちかは想像に難い。

 

「泣いていないのか」

 

「流石にいつまでも泣いてる訳にはいきませんから」

 

祖父の死の知らせを聞かされたのは数日前、最初は放心していたのを覚えているがここで話すことではない。

立ち上がり、昨日とは違う服を着ている。

さっきまでいたであろうベッドにはゴルベーザに与えられた本が置かれている。

 

「行くのか?」

 

荷物もまとめられていた、つまりはどこかに旅立とうとしていることがわかる。

どこに行くかは今までのベルとベルの祖父を見ていればわかることであった。

迷宮都市と呼ばれる世界の中心、英雄を生む街、その名はオラリオ。

 

「はい」

 

簡単な肯定の一言。

ベルは本を腕に抱いて再び立ち上がる。

英雄への憧れ、ダンジョンでの運命の相手との出会い、そしてゴルベーザに教えられた魔法の探求。

正史より一つ、やりたいことが増えた少年。

 

「そうか。では往こう」

 

「えっ」

 

予想だにしなかった言葉をゴルベーザが吐き出す。

それ以上にベルが驚いたのは魔力である、これまでが茶番であったかのように膨大な魔力を用いてゴルベーザは転移術を使おうとする。

魔法陣が幾重にも重なり、部屋に光が満ちる。

 

「ゴルベーザさん!?」

 

「黙っていろ、舌を噛むぞ」

 

「噛むんですか!?」

 

噛むかどうかは定かではないがあっという間に視界が黒く染まる。

体感時間としてはそんなに経っていないように思える、気絶もしていなかったようで視界が黒く染まった後、直ぐに目の前の光景が開けた。

草原、遠目に人工物の壁が見える。

 

「ここは‥‥‥」

 

「オラリオの周辺だな。以前に一度だけ来たことがある」

 

昔にここまで来て入れなかったことを思い出してゴルベーザはベルにここはどこか説明する。

 

「ということは、あの見えるのが……!」

 

「オラリオだ。往くか?」

 

「もちろん!」

 

歩き出すゴルベーザにベルがついて行く。

三メートル近い鎧の男と小柄な白兎、なんだか奇妙な組み合わせである。




ジェクトさんのステイタスについて、何となく納得いかないので意見あればよろしくお願いします。
ゴルベーザは、ポジションとしてジェクトさんと似たようなもんなので、登場させてみました。
ゴルベーザもジェクトも身長高いのでベルが余計に小さく思えてしまうなぁ。
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