中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、慢心してふっつーに出ていったら直撃食らって死にそうになったやつがいるってこれマジ??

作者の暴走、止まりません!!(マヤさんボイス)
いいだろうお前、二次SSだぞ。
私は好きにした、後は好きにしたまえという言葉がありますねえ!! ありますあります! だから好きにした。

ゲンドウ批判が大半で草、だけど原作でもやりかねぇなぁと思いながら書いたから後悔は……ありますねぇ!!(大声)

あと予約投稿の時間ガバッてて草


精神世界でナニカと対話して命かける件

 作業現場となった二子山はNERV――――だけがいたのではなかった。

 戦自研の職員たちや、国連軍の軍人たちも顔に汗を滲ませながら、NERV一大作戦に参加していた。

 きっかけはちっぽけなものだった。

 戦自研の担当者、彼が片っ端から自分のツテを頼ったのだ。

 子供が命をかけている、助けてくれ。

 たったその一言、それが響いた者たちがいた、その結果であった。

 

「改造は?」

「なんとか合わせるがむちゃくちゃだな」

「こんなこともあろうかと! とか無いんですか先輩」

「無い、ないからこそ俺たちが頭悩ませるんだよ」

 

 屈託なく笑う担当者に、後輩職員が苦笑する。

 全員処分ですねと心のなかで思うが言わない。子供のためだから、という理由だけではない。

 あの使徒を俺たちの作り上げたもんでぶっ殺す、その意気で参加している者も中にはいた。

 

「ったく、ここまでの人員いるなら俺たち要らなかっただろう」

「命令だ……だが、悪くはないだろう?」

 

 国連軍の軍人たちも苦笑していた。

 彼らは上司から命令として、ここに派遣されていた。

 NERVからもたらされた使徒の戦闘力に、行かなくてよかったと思うものもいたが、エヴァのパイロットが重傷を負ったという情報に心痛めない者がいなかったわけでもない。

 その者が偶然、部下の、戦自研の担当者のツテであった者の話を聞いて、独断でNERVに協力を持ちかけたのであった。

 

「……あの人、どうなるんだろうな」

「命令違反のみだろ。俺たちには害を及ぼさないとかいい年こいて熱血とかさぁ」

 

 冷やかす者もいたが、それでも全力を尽くすNERVを見て、こちらも負けていられないと作業を行う。

 人類の土壇場という雰囲気に当てられて、軍人たちも熱が入る。

 

「だが……監視活動のみだったときよかマシだ」

「だよな、アレのパイロット、聞くところ中学生って聞くぜ?」

 

 アレと言ったのは作業中に見える最終点検を行われていた二機のエヴァだった。

 

「……まるでアニメだな」

「実際アニメみたいなもんですよ。作戦名『ヤシマ作戦』。日本中の電力を一極集中し、戦自研で極秘製作中だった武器で打ち出すとかなんですかこれ」

「知るか」

 

 正直な感想であったが、周りの兵士が噴き出す。

 

「俺たちは命令を聞く兵士だ、言われたことをやりゃいいんだよ」

「でも」

「でももかかしもあるか! 俺たちが作業を早く終わらせばそれだけ調整時間が長く取れる。ガキどもの作戦成功率もちったぁマシになる!!」

 

 その言葉に兵士たちは驚く。

 ブツクサと愚痴ばっか言っていたものだったが、パイロットを思いやっていたとは思っていなかった。

 

「んだよ、驚くことか?」

「だって、あんなに愚痴ばっか言ってたし」

「この状況で、最後はガキに任せますとかふざけんな!! ……銃撃つのは俺達の仕事なんだぞ」

 

 その一言に軍人たちは一様に落ち込む。

 末端の兵士たちにはエヴァの詳細なんて降りてこなかった。

 だがこの作戦に参加するに当たって、黒塗りの資料でパイロットの年齢がわかった瞬間に怒りが迸ったのは言わなくてもわかるだろう。

 

「代わってやりてえよ。こんな状況でアレに命中させられるとか出来るか?」

「軍曹の腕では無理だと思いまーす」

「んだとぉ!?」

 

 はははっと笑う兵士たちは軍曹と呼ばれた軍人の言葉に、ココロの中で全員が首を振る。

 無理だと思う。少しでもズレたら外れる距離で、相手は百発百中の凄腕スナイパー+当たれば消し飛ぶ粒子砲の使い手だ。

 プロの自分たちですら相手したくないものに、素人の中学生をぶつけるのだ。軍人としてのプライドもそうだが、何より子供に任せるという情けなさで心が疼く。

 だがそうするしかないと納得させる他、やりようがなかった。

 

「……作業遅延させたやつは蹴り飛ばしてやる。やるぞぉ!!」

「「「おぉう!!」」」

 

 声を上げて無理やりテンションを上げていく軍人たちを、NERV職員は怪訝そうな目で見ていた。

 所変わって作戦指揮者には、すし詰めのような形でNERV、国連軍、戦自研の面々が集っていた。

 

「時間がないので細かい挨拶は抜きにします、よろしいですね」

 

 うむとヒゲを蓄えた国連軍人とメガネをかけた研究者が頷いたのを見て、ミサトは正面に座っているレイと綾波を見る。

 

「初号機は狙撃、零号機は万が一の際の防御を担当してもらいます」

「……僕が狙撃担当なんですか?」

 

 髪をポニーテールにまとめたレイが質問する。

 ミサトは頷いて、説明を続ける。

 

「初号機は大破してるとはいえ、G型装備……狙撃用の仕様との同期が取れてるの。零号機は未調整だから論外。今回の作戦には精度が求められます。戦自研の蔵前所長、説明よろしいですか?」

「あー、えーっと……まぁ、いいか」

 

 蔵前と呼ばれた男性は歯切れの悪い言葉尻だったが説明を始める。

 

「いいですかな、このぉう我々が極秘製作中だった――――」

「武器の御高説はあとで聞く。かいつまんで話せ」

「つまるところ仕様にないやり方で使徒を狙撃する。パイロットはトリガーを引くだけでよろしい」

 

 軍人に睨まれたのが効いたのか、それとも最後の説明部分が素なのか。

 先程の喋り方がなんだったのかというほど、流暢に喋った所長にずっこけそうになったミサトは咳払いをして言う。

 

「所長が言ったとおり、トリガーを引くだけでいいわ。誤差修正はこちらがするから心配しないで……ただ」

「ただ、電力を一極集中するから初号機は狙撃位置から動けない」

「……撃たれたらオシマイってことですよね」

「そうならんように、こちらの支援をする」

 

 国連軍の軍人が口を開き、表示されていた画面マップに次々と赤い点がついていく。

 

「かき集めるだけかき集めた。人的被害を考慮して無人兵器だけだが、やつの気をそらす程度は出来るだろう」

「……ご協力感謝いたします。しかし返せませんよ?」

「損耗分の予算はあとで請求する、我々も予算不足でね」

 

 ミサトと軍人が不敵に笑い合うがイマイチピンとこない、レイと綾波は眉を揃ってひそめた。

 

「さて、作戦はこうだ。まず我々国連軍の無人攻撃機部隊とNERV迎撃設備が段階的に目標を攻撃し目くらましをする。そして敵のコアを露出させて、エヴァによる狙撃にて敵を撃滅する」

「万が一、はずしたら」

「その時はその時よ。でもレイちゃん外すことを考えないで」

 

 ミサトの言葉に、レイは外したらヤバイやつかと暗い顔になる。

 その雰囲気を察してか、軍人がレイの前に立つ。

 

「君のような子供に任せるのは心苦しいが……頼む、君しかおらんのだ」

「えぇ、シンジは考えなしのせいで倒れてますからね」

 

 その言葉にNERV側の人間は反論が出来ずに俯く。

 軍人は質問した。

 

「シンジ、あぁ、エヴァのメインパイロットのことか……君にとって彼はなんだ?」

「……あなたに言う必要ある?」

 

 冷たく言い放った言葉に、ミサトはこころの中で「なんと勇ましい子!? でも状況考えてー!!!」と絶叫する。

 ただでさえ、国連軍が協力など何考えているのかわからないが、今のNERVは猫の手も借りたいほど忙しいのだ。

 この協力がオジャンになったらただでさえ低い成功率がさらに下がる。

 だが軍人はニヤリと笑いながら言った。

 

「なるほど、大切な存在か」

「笑うこと?」

 

 レイの怒りのボルテージがドンドン上がっていくが、軍人は腹を抱えて笑う。

 

「なるほど!! 好きな男の子のために戦う少女か! なるほどなるほど」

「何がおかしいっ!!」

「おかしくなどない、その頃の子供なら真っ当すぎる気持ちだ」

 

 我慢できなくなって叫んだレイに、笑うのを止めた軍人は無機質な声で返す。

 場の空気が固まる。

 だが、その空気を変えたのは軍人だった。

 

「ここで地球のためなどとか言うのであれば、今後は手伝う気がなかった……気に入った、その青臭い感情で戦うのであれば、俺は力を貸そう」

「……そうですかっ!」

 

 そう言って怒りを隠さず指揮車から出ていくレイに、軍人は笑みを深める。

 ミサトははぁと息を吐いて声をかける。

 

「デリケートなんです、刺激しないでください」

「わかっている……だが、こうでもしないと破廉恥な自分を抑えられんのだよ、葛城くん」

 

 軍人は両手を握りしめて悔しがる。

 現場からの叩き上げ、上層部内でも異端者とは聞いていたがなるほど、とミサトは目の前の軍人の評価を上げる。

 軍人は力を抜いて、ため息をつく。

 

「年端も行かぬ少年少女に託さねば、我々は生き残れんか」

「えぇ、それが我々NERVが選んだ道です」

「地獄行きだぞ?」

「覚悟の上です」

 

 その言葉に、軍人は頷く。

 

「あぁ、我々もだ。上層部は未だに予算という建前で、コレ以上の追加は出来んと言っている……情けない限りだ」

「いえ、ここまでしていただき感謝しております」

「これしか出来んと言えるがな……全く、ままならんよ」

 

 その軍人の言葉にミサトは心の中で同意する。

 

「ワシらに出来るのは、最期まで調整することじゃな」

 

 蔵前が口を開く。

 

「にしても、驚きました。戦自研が全面的に協力してくださるとは」

「なぁに、秘密裏に建設していて使う機会がないなどそれこそ無駄だよ君。赤木クンには感謝しなさい、ワシのところにも頭を下げに来たんだからの」

 

 ミサトは、現場で調整している親友に感謝の念を送る。

 最初は諜報部の情報で無理やり徴発しようとしたのだったが、リツコが大反対をしたのだ。

 

『ここで逆なでしてみなさい! もう二度と私達に協力してくれないわ』

 

 赤木博士の土下座行脚と後世に語り継がれる美談の、その発端であった。

 ミサトにも予想外の行動であったが、結果として国連軍、戦自研が協力してくれるという嬉しい誤算もあった。だがそれだけではないだろう、国連軍も戦自研もエヴァの秘密を知りたいがために送り込まれている側面もあるだろうと、ミサトは踏んでいた。

 だがそれを見透かすように、蔵前はメガネを直す。

 

「別にエヴァの秘密など欲しがりはせん。大体は見えたしの……兵器としてはナンセンスじゃ」

「ナンセンス、ですか?」

 

 何を当たり前のこと聞いてると蔵前はため息を吐きながら、ミサトに言う。

 

「中学生のパイロットを使い、オマケに電力は外部からの供給式……これを兵器として採用したヤツの気がしれんよ」

 

 同時刻、NERV本部でゲンドウポーズを取っていたマダオがくしゃみをする。

 

「見ておれんよ。兵器には普遍的な価値が求められる、量産出来ぬ兵器などただの鉄くずに過ぎんよ」

「……アレは、鉄くずではないと?」

 

 ミサトはあまりにも出鱈目な自走陽電子砲の仕様書を思い浮かぶ。

 どこの国の組織がこんな化け物兵器作ってんだオラァン!! と言いたくなるが、蔵前はしれっとしていた。

 

「試作品なら様々な可能性を模索する、当たり前じゃろ? 浪漫じゃよ」

「国の予算でなにやってんだ……」

「作った結果役立ったのじゃからセーフ」

 

 こ、こんの狸爺とミサトと軍人は呆れる。

 

「だからこそ、アレを正式採用したNERVには呆れとるよ。ワシらは浪漫ですむが、アレは浪漫の塊じゃろ」

 

 真剣な表情で横たわっている二機のエヴァを見る蔵前に、ミサトは何も言えなかった。

 

「だからこそ、ワシ等はお前さんらに協力することにした」

「……まさか浪漫、だからですか?」

「そのとおりじゃよ。いやぁ、こういうのにワシ憧れてての!」

 

 この爺……とミサトと軍人は再度呆れる。

 だがこんなことをしている間に時間は過ぎていく、余りにも無情に。

 作戦開始まであと六時間半。

 

 

 

○○○

 

 

 

 仮設待機場でレイと綾波は無言で着替えていた。

 プラグスーツは自動で操縦者の体とフィットする。ブカブカでも手首につけられたフィット機能を使えば一瞬で着替えは完了する。

 着替え終えた二人は無言でお互いを見て、綾波から言葉を紡いだ。

 

「……あなたを守るわ」

「必要ない、僕を守ってくれるのはシンジだけだ」

 

 綾波を睨みつけ、レイはそう言う。

 だが言葉を言った綾波レイは困惑していた。何故、自分はこんなことを言ったのだろうと。

 全身を釜茹でにされ、意識を失ったシンジが連れて行かれるのを見て、綾波の心がズキッとした。

 なぜかは解らない、だけど確かに痛みを感じたのだ。

 だから――――

 

「あなたを、守る」

「必要ないって言ってるだろうっ!! 大体、打ち返されたらどうしようもないんだ!! 君なんか必要ない! 僕が外したらシンジは死んでしまうんだよ!!」

 

 死ぬ? と綾波の心が締め付けられた。

 死ぬ、死んでしまえばどうなる? ゲンドウにも会えない、シンジにも、あの温かい手にももう二度と会うことはない。

 そんなの、そんなことは――――嫌だ。

 

「……死なないわ」

「なんでそう――――ッ!?」

 

 レイは叫ぶのを止めて息を呑む。

 綾波レイの顔はこんなにも熱があっただろうか?

 そうレイが混乱するほど、綾波の表情は色づいており力強さも感じられた。

 息を呑むレイの手を、綾波はそっと掴み、力強く言った。

 

「絶対に私が守るから」

 

 作戦開始まであと六時間。

 

 

○○○

 

 

 

 職員の大半が居なくなったNERV本部に、ゲンドウと冬月はいた。

 

「あからさますぎるぞ、碇」

 

 冬月は咎めるようにゲンドウに言い放つ。

 だがゲンドウはいつものポーズを崩さずに無言を貫く。

 

「計画にないイレギュラーを消すにしてもやりようがある。偵察を認めず、エヴァが大破、どう委員会に言い訳をする?」

「問題ない、むしろイレギュラーを行動不能に出来たのならエヴァの修理費用程度軽いものだ」

 

 ゲンドウの言葉に、冬月はため息をつく。

 冬月自身もイレギュラー、三上シンジが死のうが生きようがどうでもいいのだ。

 だが、アレの影響力は着実に計画の妨げになっていたのは理解していた。

 

「お前の娘にも悪影響が出るぞ? ……血は争えんな」

 

 嗤う冬月に、ゲンドウは口を開く。

 

「だからこそ分かりやすい。今まではイレギュラーがいたからこそ、レイはエヴァに乗らなかった。やつが眠っている間は、こちらに協力せざるを得ない。……わかっているさ」

 

 言葉の最後に影が落ちる。

 それを指摘すること無く、冬月はモニターに表示されているタイマーを見る。

 

「あと、四時間と少しか……」

「あぁ、レイが使徒を撃滅する……これが本来の形だ」

 

 そう言うと二人の間に沈黙が流れる。

 冬月は考える。本当に、あのイレギュラーを行動不能にしたと言えるのだろうか?

 どうにも不安が拭えない冬月は、ゲンドウを見る。

 その背にはなんの感情も見ることはない。

 だがあのとき、たしかに冬月は見た。イレギュラーが心停止する寸前、ゲンドウが笑っていたのを。

 

(……やはりどんなに捨てようとも、親か)

 

 最低の親の形だなと思うが、それを言う権利は冬月にはない。

 元々最低なことを始めてしまったのは自分たちだ。ここに来るまでどれほどの犠牲を払ったか検討もつかない。

 全ては彼女に会うため。

 そのためならいかなる犠牲も払う覚悟が二人にはあった。

 だが、だからこそあのイレギュラーの存在が引っかかる。

 

(ただの中学生、そのはずだがな)

 

 背後関係も、家族構成も、人生も調べたが普遍的なものしか出てこない。

 唯一の特異性は、碇レイと触れ合っていたことだけ。

 そのはず、だった。

 

(そんな彼に、彼女は……ユイくんは力を貸した)

 

 力を貸し、そして委ねた。

 そのことに怒りを覚えなかったわけでもない。だからこそ冬月は、イレギュラーとの接触を可能な限り避けていた。

 大人げないと言うが、今更だ。

 

「……さすがにあの状態で動けるわけがないだろう」

「あぁ、未だに意識も戻っていないと聞く。それに一度死にかけたという恐怖で動けんよ」

 

 ゲンドウと冬月はそう会話し、頭の片隅にイレギュラーを追いやる。

 二人共、この期に及んでシンジをただの中学生と思い込んでいた。

 だからこそ、ゲンドウと冬月はミスを犯した。

 その結果はすぐにでも見ることとなる。

 ヤシマ作戦開始まであと四時間。

 

 

 

○○○

 

 

 

 俺の目の前には誰かが居た。

 ガタンゴトンとなっている音で、俺は列車に乗っていると理解する。

 辺りは真っ暗で、電車内も暗かった。

 

「……この世界が怖いんだろう?」

「怖いよ」

「なんでエヴァに乗った?」

「嫌だったからだ。レイが乗るの「違うだろう?」

 

 『ソイツ』を口の端を吊り上げながら笑う。

 

「違う、お前はエヴァに乗りたがっていたからだ、モブではなく主人公として、本当は気づいていたんだろう? 碇レイ、この名前で気づけないほどお前は鈍感だったのか?」

「違う」

「違わないさ。本当に乗らせたくないのなら、レイを連れて逃げればよかったんだ。第3新東京市ではなく、他の場所で暮せばよかったんだ。使徒が来れば一年と待たずに死ねたんだ」

「違う」

「違わないさ。お前はな、エヴァに乗りたかったんだよ、心の底から。嫌だと言うなら今からでもレイを連れて逃げればいいじゃないか。お前がここにいる限り、碇レイが初号機に乗る可能性は残り続ける。本当に乗らせたくないのなら来るべきではなかった」

「……」

「最初から仕組んでいたんだろう? 世界に絶望し、見つけた女の子が主人公で、その立場を掠め取って生きようとする……実に人間らしいじゃないか」

「……」

「黙って――――」

 

 俺は『ソイツ』を殴り飛ばしていた。

 あぁ、これよくある幻想イベントじゃなかったんだ。

 

「な、なんで……」

「人が黙ってりゃ好き放題言いやがって、うるせえんだよ。世界に絶望したわ、死にたくなかったわ、こんなに痛い思いしてエヴァに乗りたくねえよ、どいつもこいつも子供に全部投げやがって……おい、逃げるな、聞けや」

 

 逃げる『ソイツ』の服を引っ掴む。

 逃さん、お前だけは。

 

「痛いよ、苦しいよ、辛いよ、助けて欲しいよ、弱音吐きたい気持ちはあるよ」

 

 癪だがこいつに言われたことは心当たりがある。

 本当は気づいていた、碇レイが『主人公』だってことも、第3新東京市に来たのももしかしたらエヴァを見れるかもとか、動いた瞬間に乗れるかもって思ったのも全部全部事実なのかもしれない。

 人の心なんてわからない、どっかにこいつに言われたような気持ちがあっても全然おかしくない。

 本当は、レイと出会ったあのとき死のうとしていた。

 苦しくて苦しくて、親にも打ち明けられなくて自棄だった俺は、死のうと思っていた。

 どうにでもなーれなんてそんなに能天気でいられなかったのだ。

 だから死のうと思って――――レイ(生きる希望)と出会った。

 

「や、やめ――――」

「うるせえ、全部ひっくるめて生きるって決めたんだ」

 

 怯える『ソイツ』を殴る。

 

「俺の人生だ、終わりは自分で決める」

 

 『ソイツ(自分の恐怖心)』を殴る。

 

「それにな、レイ以外にも守るもんがあるんだよ」

 

 『ソイツ』を殴る。

 

「ミサトさんも赤木さんもオペレーターの人やクラスメートやトウジや串カツ屋のご主人やスーパーのおばちゃんや第3新東京市も守るもんなんだよ」

「……」

 

 『ソイツ』を殴る(否定する)

 

「俺がどんなになろうと守る」

「死ぬぞ」

「少なくとも怯えながらは死なない」

 

 『ソイツ(自分)』が笑う(自虐する)

 

どうなるかわかっているのに(原作を知ってるのに)?」

どうなるかわからないだろ(もう原作から外れている)?」

 

 『ソイツ(疑問)』に答える(自問自答する)

 

ただの人間(モブキャラ)が」

「今の俺はエヴァパイロット(主人公)だ」

 

 『ソイツ(不安)』に答える(自信をもたせる)

 

「動けないのに」

「無理にでも動けばいい」

 

 『ソイツ()』に言う(命令する)

 

「間に合わないかもしれない」

「死ぬ気でIKEA」

 

 (ソイツ)に問いかける。

 今することはなんだ??

 

「「じゃあ起きてレイを助けに行くか」」

 

 電車内に光が差し込んだ。

 

 

 

○○○

 

 

 

「……レ、イ……ッ」

 

 とある病室の一角、管に繋がれていたはずのシンジが起き上がった。

 体に着いている管をすべて剥ぎ取り、呼吸器マスクを投げ捨てる。

 様々な警報が鳴るが医者もナースも退避済みで誰も居ない。

 シンジの体は動かせなかった。だから非常用の電源があるここに残さなければならなかった。

 ちなみに、シンジを見ていた医者は「てこでも動かないぞ!」と言って、鎮静剤打たれて強制連行された。

 

「フゥーッ、フゥーッ」

 

 時計を見る、現在23時ジャスト。

 荒い呼吸をしながら胸を抑える……体がふらつき、まともに思考も出来ていない。

 それでもシンジはたった一つの胸に宿っている想いだけで、体を立たせていた。

 

「まも、る……レイ……」

 

 壁に手を付けながら、シンジは歩いていく。

 ヤシマ作戦開始まで、あと一時間しかない。

病室から出たシンジは、歩いていき、エントランスから病院を出る。だがここまでで三十分は使ってしまった。ここからじゃ、間に合わない。

 そう考えていたときだった。

 

「おーい!! 誰かいんの……パイロットの兄ちゃん!?」

「ご主、人……」

 

 本当に偶然だった。

 もしかしたら残ってる人がいるかもしれない、そう考えた串カツ屋の亭主が車を走らせて誰も居なくて、もしかしたらと病院に寄った。

 その結果にシンジは感謝する。

 フラフラの体に力をこめ、ズンズンと慌てる亭主の車に近づき、扉を力強く叩く。

 

「に、兄ちゃん?」

 

 子供とは思えない迫力に亭主は驚く。

 シンジはそんな亭主を無視して、静かに言い放つ。

 

「行ってほしいところがある……多分、死ぬかもしれないけど」

 

 その一言に亭主がたじろぐ。

 ロボットのパイロットが言うなら冗談ではないのだろう。

 脳裏に来月の引っ越しや自分の妻、産まれてくる孫のことが思い浮かび……しかし目の前の子供を見据えた。

 体が震えて、立っているのがやっとと言う風、息は絶え絶えであるし、気絶するのではないかと言うくらいに焦点があっていない。

 病院に担ぎ込むか、止めるのが大人の役目だろう。

 だがそれをすることは亭主には出来なかった。

 

「兄ちゃん、名前は」

「シン、ジ……」

「シンジ、乗れ。行きながら聞いてやる」

 

 その一言でシンジは車のドアを開き、倒れ込む。

 亭主はシンジの体を抱えると、扉を閉めずに急発進させる。

 

「どこに行きゃいい!!」

「二子山……機械がいっぱいあるからわかると思う、よ」

「へへっ、任せとけ!!」

 

 猛スピードで走る車の音が響き渡る。

 ヤシマ作戦開始まであと、三十分。




原作でなーんでラミエル戦後はまーったく国連軍が出張らなかったのか理由考えるとこの強制接収と後の弐号機運搬で、NERVなんか知らない!!(ジブリボイス)と言ったからじゃねえのかなぁと思った。
ただ作者は書きたいもん書いて「あぁ~」となってるだけなのでその後の展開なんて知るか!! (明日の自分に)ぶん投げればいいと思ってるからね、しょうがないね。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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