中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、MKMSNZ(三上シンジ)様、まだ寝てちゃダメですよ。ホラ、起きるんだよ、起きて♡ 起きろ(豹変)

ここで失踪してもいい、ありったけの暴走を……と言うくらいには書ききったぞ、TKGWくん。
もう十分だ(連日投稿)もう十分だろう。
だけど止まったら更新しなくなると思うからもう少しやるね(ぐるぐるおめめ)
ちなみに書きたいもん書きなぐったからものっそい読みにくいゾ。


無理やり作戦に割り込んで命をかけた件

『ただ今より、午前0時、丁度をお知らせします』

『作戦スタートです!』

『レイちゃん、エヴァに乗ってくれて……本当にありがとう』

 

 無線から作戦開始の声とミサトの感謝の気持ちが聞こえるが、レイはそれらを無視して前だけを見る。

 LCLの……いいやエヴァへの気持ち悪さは消えない、だが今はこれにしか頼れない。

 だからこそ、レイはエヴァに少し、ほんの少しだが心を開いた。

 シンクロ率30%、それが今のレイとエヴァ(母親)の信頼度、だがそれでもエヴァには十分であった。

 

『ヤシマ作戦開始! 第一次接続!』

 

 ミサトの号令でオペレーターたちが矢継ぎ早に状況報告を行い始める。

 日本中の電力を一点に集中させる。言うだけなら簡単であるが、いくつもの問題をクリアしなければならなかった。

 まず1つは、送電設備の増築。コレ自体はエヴァを動かす際の電源機器を転用すればよいので特に問題はなかった。

 しかし、大問題だったのが東日本と西日本の周波数の違いであった。万が一の際に周波数変換所も作られてはいたが、西日本全ての電力を変換できるほどの設備はない。だからこそ電力会社等が突貫工事で調整を行った。テストなしだったため、現場には緊急時対応ができる者たちが固唾を呑んで見守っていた。

 

『電圧安定、系統周波数は50Hzを維持』

 

 電力会社の面々が息を吐いたのは仕方がないだろうが、それも一瞬であった。

 続いては第二次接続、集めた電力を三つの変電所へ集結させていく。

 変電所内は修羅場であった。

 

「来たぞぉ!!」

「冷却システムが悲鳴あげてます!!」

「壊れてもいい、予備も含めて全部回せ!! 俺たちの頑張りが日本救うってこと忘れんな!!」

 

 レッドアラートが常時鳴りっぱなしの状態ですら、逃げるものは居なかった。

 仕事の義務ではない。日本を救うというある意味の浪漫に魅入られた者たちが全力を尽くしていた。

 問題がないわけではないが、許容範囲内で変電所に電力が回る。

 

『第三次接続!』

 

 集められた電力が二子山に急造された変電所へと集められる。

 

『電力送電電圧は最高電圧を維持、冷却システムも最高出力で稼働中』

 

 変電所にいた戦自研の担当者は、最終チェックを行うためにその場にとどまり、タブレットに示される数値が予定通り、もしくは許容範囲内であることを確認する。

 

「超伝導電力貯蔵システム群、充填率78.6%。インジケータを確認……異常見られず、送れ!」

 

 傍に待機していた通信兵が、NERV指揮車両に通信を送り、そちらでもデータを確認する。

 全てオールグリーンを確認すると、日向はミサトに伝える。

 

『第三次接続に問題なし!』

『ならばよし! 第4、第5要塞及び無人攻撃機群行動を開始ッ!』

『了解、聞こえたな。ありったけを叩き込め!!』

 

 攻撃ポッド、及びドローン編隊によるミサイル攻撃が360度全方位から使徒に襲いかかる。

 だが使徒は形状を変え、時計のような形状になるとぐるりと粒子砲を一回転させて全弾迎撃する。

 そして間髪を容れずに形態をもとに戻し、攻撃ポッドとドローン編隊を消し飛ばす。

 

『怯むな!! 第二、第三群攻撃開始!』

『こちらの迎撃装置も全て開放! 目標に攻撃を続けて!!』

 

 国連軍の軍人とミサトの声に続き、ミサイル、砲弾、ドローンによる直接特攻などありとあらゆる攻撃が加えられる。

 だが敵ATフィールドと粒子砲で尽くが迎撃され、破壊されていく。

 ミサトは乾く舌を舐めつつ、戦略マップに表示された迎撃システムにばつ印がついていくのを見ていた。

 予定通りとは言え、まだこちらの陽電子砲は電力を貯めている状態である。

 万が一でも使徒がそれを脅威だと認識したら、全てが水泡に帰す。

 だからこそ、初号機を守るはずの零号機も近くではなく、少し距離のある場所で待機させていた。

 

(防御役はあくまでも最終手段、やつにとってエヴァこそが自分を貫く矛だと認識してるんだわ)

 

 だからこそ、初戦であそこまでエヴァを執拗に攻撃したのだ。

 ……そして、ミサトは危うく、家族(・・)をまた失うところだった。

 その怒りが一瞬頭を支配するが、ミサトは目を閉じて激情を抑える……ここにいる全員が抑えているのに、指揮官である自分が飲まれてどうする。

 作戦通りやれば、あのクソ野郎をぶち殺せるのだ……と落ち着かせる。

 迎撃装置、無人攻撃機群の数が加速的に減っていくがその間にも送電作業は続いていく。

 

『電力低下は、許容数値内……第四次接続も問題無し!』

『最終安全装置、解除! レイちゃん、日本中のエネルギー、あなたに託すわ』

 

 陽電子砲の銃身に薄く煙が立ち込める。

 あまりの電圧に、外部冷却システムと銃本体の冷却システムがフル稼働している状態である証拠だ。

 レイはブルリと震える、もう後戻りはできない……シンジはこんな戦いをいつもしてたんだと、ある意味の現実逃避気味な考え方をしていたレイだったが、日向の声で現実に引き戻される。

 

『撃鉄を起こせッ!』

「ッ」

 

 初号機を操作し、コッキングを行う。

 すると銃身に弾丸代わりのヒューズが装填され、狙撃用ゴーグルが初号機の顔に装着される。

 エントリープラグ内でもレイの頭部に射撃用スコープが装着され、エヴァの照準とリンクする。

 

『射撃用所元、最終入力開始!』

 

 その言葉を言っている時点で、レイの精神が極限まで研ぎ澄まされる。

 オペレーターの声も、自分の心音もどこか遠くに聞こえる。

 

(シンジのため、シンジのため、シンジのためシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジシンジ…………)

 

 全身に管を繋がれ、呼吸器をつけられて寝ていたシンジの姿が頭に思い浮かび、怒りがレイを支配する。

 アイツガヤッタ。

 アイツガシンジヲコロソウトシタ。

 ボクノシンジヲキズツケタ。

 ボクノモノヲキズツケタ!!!!!

 

『っ!? 車両が封鎖線を突破!! 待機していた国連軍が対応し、運転手は確保しましたが同乗者は確保できず! 指示を乞う! だそうです!』

『無視しなさい、助ける義理も、助けてる余裕はない! 国連軍に通達、全人員は速やかにシェルターに避難されたし、送って!』

『了解した、全人員に次ぐ、至急退避せよ、繰り返す至急退避せよ!』

 

 そんな会話があったが、レイはまたもや無視していた。

 極度の緊張と初戦という慣れ無さ、そしてエヴァの気持ち悪さ(心地よさ)に限界が来ていた。

 

(シンジ、シンジは褒めてくれるよね? 僕いっぱい頑張ったんだよ、だから――――僕を認めて、愛して)

 

『敵に高エネルギー反応ッ!! 目標は――――初号機ッ!!』

「えっ?」

 

 オペレーターの一言に、レイの煩悩にも似た考えが吹き飛んだ。

 指揮車両の無線が慌ただしくなる。

 

『零号機は!?』

『間に合いませんッ!!』

『いかん!!』

 

 エネルギーの高まりを感知されたのか、ラミエルは無人攻撃機や迎撃システムの攻撃を無視して真っ直ぐに初号機の方向を向いていた。

 ヒトデのような形に変形し、甲高い音を上げていた。

 

『エネルギーは!!』

『後五秒ッ!!』

『パイロットのお嬢ちゃん構わん!! そのままトリガーを引きなさいッ!!!!』

 

 蔵前の言葉に困惑したレイだったが、敵も撃つと判断してトリガーを引く。

 ちょうどエネルギーが充填し終わったタイミングだったため、緑色の光が銃身から放出される。

 それと同時に使徒の粒子砲が放たれる。

 だがわずかにズレた2つの光は、使徒はコアのすぐ隣に着弾、初号機は至近距離で粒子砲の余波を食らって狙撃位置から吹き飛ばされていた。

 百発百中の使徒が外した、初号機の攻撃を恐れたのかわからないが、幸運であった。万が一でも初号機に直撃していたら陽電子砲は蒸発していたのだから。

 そして近くに居た指揮車両も衝撃波で転がっていく。

 指揮車両内にアラームが鳴り響くが、指揮能力は健在であり……作業員たちは我先にと指示を待たずにケーブルや電源ユニットへ走っていく。

 ズレたとは言え、余波を食らって生き埋めや蒸発した作業員もいた。

 だが誰もが逃げずに走る。

 

「ケーブルの確認をしろ!! 断線してたらなんでもいい!! 巻きつけろ!!」

「電源に不具合なし!! 誰か無線もってこい!!」

「畜生、あの野郎素直にくたばってろ!!」

「口より手を動かせッ!!」

 

 怒号が飛び交うが、誰もが必死だった。

 電力会社も一射目の失敗の方を聞いて、絶望をせず、第二射に向けて発電機をフル活動させる。

 

「ほらなぁ! 言ったとおりだろ!! 弐撃決殺だってさ!」

「言ってる場合か、冷却システムに不具合が……動け、動けって言ってんだよ!」

「お、おいばか!? ぶっ壊れたら……動いたぁ!?」

 

 そんな会話が日本全国で繰り広げられていた。

 

『エネルギーシステムは』

『無事じゃよ……この程度で壊れるほど軟な作りはしておらん』

 

 頭をぶつけたのだろうか、メガネがひび割れ額から血を流している蔵前は笑いながら答える。

 強がりであった。あと数センチ、いや数ミリでもラミエルの射撃がズレていたのであれば被害はもっと甚大であっただろう。

 国連軍の軍人は無線に怒号を上げる。

 

『全機突っ込ませろ!! 構わん!! 遠距離から攻撃しても無駄だ、一秒でもヤツの気を逸らせればいい!!』

 

 その指示の下、全無人攻撃機がラミエルに向かって突撃を敢行する。

 ラミエルはコアを外れたとは言え、自身のATフィールドを貫通した攻撃にダメージを隠しきれないのか、迎撃の粒子砲を撃たずに全てATフィールドで無人攻撃機の特攻を受け止める。

 しかし無人攻撃機だけではなく、複数の有人のVTOLまでもが攻撃に参加していた。

 

『何をしているッ!! 許可は出してないぞ!!』

『無人攻撃機だけじゃ足りないでしょう!! ……後は頼みますっ!!』

 

 ダァン!!と机を叩きつけた軍人は、絞り込むように馬鹿野郎とつぶやく。

 直後、有人のVTOLからの無線が次々と途絶える。突っ込んだのではない、活動を再開したラミエルが粒子砲で片っ端から撃墜していたのだ。

 だが時間は稼げていた。

 ミサトは一瞬だけ目を閉じ、彼らの献身を讃え、無線を使ってレイに呼びかけた。

 

『レイちゃん、聞こえる。狙撃位置に初号機を――――』

「うっ、うぅうぅ、うぅうううううううう」

 

 恐怖に怯えた子供の声が指揮車両に聞こえた。

 誰もが、咎める気持ちを持てなかった。

 初陣でコレなのだ。

 確かにシンジの初戦もひどかったが、コレはソレ以上に責任がレイにかかっていた。

 それに死ぬかもしれなかったという恐怖心は消えるものではない。

 まだ十四歳の子供なのだ、怖くて当たり前、動けなくて当たり前なのだ……例外を除いて。

 

『レイちゃん……動いて、あなたが動かないとみんな死ぬのよ』

「知らない、知らないよッ!! もう終わりなんだろ!! 僕が外しちゃったから!! 僕のせいで、シンジが死んじゃうんだ!!」

『……碇司令、零号機に狙撃を担当させてください』

『リツコ!?』

 

 怯えて錯乱しているレイの様子を冷たく見るリツコに、ミサトは食って掛かる。

 

『あんたねえ!! あの子がどんな思いで――――』

『この瞬間にもエヴァを信じて死んでいく人たちがいるのよっ!!!』

 

 リツコの声には罪悪感が感じられた。

 今もなお、VTOLや車両でラミエルの気を引こうと突っ込んでいる国連軍がいた。

 子供だからと甘やかす状況ではないのだ。

 

『それに、泣き言を言うのなら言わせておけばいい。あの子は最後まで言わなかったわ』

「……」

 

 リツコの言葉に、レイは反応する。

 あの子とはシンジのことだろう。

 受けてみてわかったのだ、ほんの少し隠れて吹き飛ばされただけでも、恐怖でレイは動けなかった。

 ソレを二度も体で受け止めて逃げなかったシンジの心強さに、レイはどれだけ凄かったのかと思う。

 動くべきだろうとレイは思うが、動けない。

 体が震え、恐怖心がレイを支配していた。

 だからこそ、レイは肩を抱き寄せ、外部スピーカーをオンにする。

 もしかしたら、シンジに届くんじゃないかと――――そう思って、叫んだ。

 

「助けて、助けてぇよぉ!! シンジっ!!」

 

 辺り一面に轟いた少女の声に反応する者はいなかった。

 シィンと静まり返る場に、少女は絶望する。

 あぁ、僕を助けてくれる人なんていなかったんだ……そう、絶望しかけた瞬間であった。

 

『レイイイイイイイイイイイイツッ!!!』

「シン、ジ?」

 

 冗談だとレイは思ったが聞き間違えるはずがない。

 レイの体が起き上がるとそこには病院着のまま、初号機に向かってまっすぐに走るシンジの姿が映し出されていた。

 全身血だらけで、必死の形相でエヴァに、いいやレイに向かって走っていた。

 

『そんな、まさか病院からここまで来たの!?』

『でもどうしてここが……』

 

 作戦指揮車からの困惑の声が上がるが、レイはそれを無視して手をのばす。

 来て、くれた、来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた来てくれた。

 キテクレタ。

 

『エヴァアアアアアアアアアアアアアアアア!!! 乗せろぉおおおおっ!!』

 

 シンジの叫び声が聞こえた。

 急にエントリープラグ内の明かりが消えて、動く音がレイの耳に聞こえた。

 歓喜の気持ちが消え去り、困惑するがエントリープラグが開き何かが飛び込む音が聞こえ、再度照明が点くとそこにはシンジが操縦桿を握っていた。

 LCLとは違う血の匂いと味をレイは感じるが、不快感はなかった。

 

「し、シンジ!?」

「ミサトさん!!! 再充填は!?」

『え、エントリープラグが勝手に作動!?』

『何してるのシンジくん!! 二人が乗ったんじゃエヴァが……』

『待ってくださいっ!』

 

 咎めるミサトの声に、マヤが割り込む。

 その声は驚愕に満ちていた。

 

『し、シンクロ率が上がって行きます、20、30、40、ご、50、60……シンクロ率66.6%!!! 状態全てオールグリーンです』

『そんな、あり得ないわ! 二人が乗って何も異常がないなんて……それにシンジくんはプラグスーツもインターフェイスも使ってないのよ!? 何故シンクロできてるの!?』

 

 マヤとリツコは混乱する。

 ありえないと断言できるほど、今の状態に説明がつかない。

 説明がつかないが、今のエヴァの状態は過去最高にいいと言うのだけはわかっていた。

 

「シン、ジ……僕」

「レイ、大丈夫だ……あとは俺がやる」

 

 レイが頷いて、操縦席から離れる。

 そこにシンジが座り、息を吐いてからミサトに問いかける。

 

「再充填は?」

『すぐにでも……でも、あなた、何をするのかわかってるの!?』

「狙って、トリガーを引く、これだけだろう?」

 

 シンジは笑って、狙撃用バイザーを被る。

 視界がぼやける、胸も全身が痛い、先程の粒子砲の一撃の余波を食らって木に体をぶつけたのだ。

 ゴフッと咳き込むと赤い血が周囲に漂う。

 すぐにでも病院へ行かないと危ない、そう感じた蔵前と軍人は揃って声を上げる。

 

『そんな体で何が出来るというのだね!』

『パイロット代わるんだ。蔵前所長の言う――――』

「う る さ い」

 

 シンジは胸を叩いて、喉に突っかかっていた血反吐を外に吐き出して前を向く。

 ぼやけていた視界が一気にクリアになり、シンジは叫ぶ。

 

「うるさい、俺がエヴァのパイロットだ……レイじゃない、俺が、三上シンジが初号機のパイロットなんだッ!!!」

 

 その様子に、指揮車両にいた軍人や蔵前は慄く。

 わずか十四歳、子供のはずだ。知り得る情報では彼はただの市民だったはず、何故、何故ここまで命をかける。何故そこまで捨て身になれる!?

 

『シンジくん、あなた……ッ……もう、何も言わないわ。パイロットを三上シンジに変更、再充填はまだなの!?』

『今やってます!!』

 

 シンジの気迫に、ミサトも、指揮車両にいる全員がかけた。

 シンジだからという楽観視ではない、命をかけた者だからこそミサトはトリガーを託したのだ。

 再充填のために外では現在も作業員が命がけの作業を今も行っていた。

 命をかけていないものなど、この場には存在しなかった。

 

「シンジ、僕、僕ね……」

「後で、聞く……でもよく頑張ったな、レイ」

 

 操縦桿から手を離し、シンジはレイの頭を撫でる。

 レイはその手を掴み、頬に持っていくとその手を頬ずりをする。

 あぁ、やっぱりシンジはちゃんと褒めてくれた。ゾクゾクゾクッとレイの下半身のある部分が疼いた。

 

「あとは任しとけ」

『シンジくん、イチャつくのもいいけど集中してね……』

 

 あぁ、と返事したシンジは初号機を動かして狙撃位置につかせる。

 シンジが口を開けて、奥歯を食いしばると初号機の顎の拘束具が破壊され、ガバっと口が開く。

 

『ぼ、暴走!?』

『違いますっ! パイロットと連動しているだけです!! でも、そこまでのシンクロを何故!?』

『今は気にすることではないわ。第二射準備ッ! 撃鉄起こせッ!!』

 

 驚愕するリツコとマヤを冷静に窘めるミサトの言葉に、初号機が素早く銃身のレバーを引いてヒューズを交換する。

 銃身から煙が立ち昇り、再び周囲に電力が集中する。

 

『射撃用所元、再入力完了。以降の誤差修正は、パイロットの手動操作に任せます!』

 

 先程の衝撃で、第一射ほどの精度は見込めない。

 ふらつく照準器に、シンジは苛つく、当たり前だ。気合で体を動かしているのだ、一瞬先に気絶してもおかしくないほどにシンジの体はぼろぼろであった。

 そこにレイの手が重なった。

 

「僕もいるんだよ、シンジ」

「……あぁ」

 

 ピタリとシンジの手の震えが止まり、照準が合う。

 だが再充填が完了しておらず、代わりに使徒の第二射が早かった。

 体を変形させながら、使徒は金属音とも叫び声とも似つかない音を絶叫させながら粒子砲を放った。

 

「シンジッ!!」

「頼んだ零号機……いいや綾波ッ!!」

 

 目をそらすレイだったが、シンジは原作での展開を知っており、それに基づいて叫ぶ。

 すると盾に加工されたSSTOを構えた零号機が初号機の前に立ち、踏ん張る。

 次の瞬間、極大の粒子砲が盾に直撃して防ぐが徐々に溶けていく。

 大気圏の再突入を可能にするSSTOを流用した盾なのに融解する温度とは如何ほどか、映像を見ていた全員が冷や汗を垂らす。

 だがSSTOが溶けてしまったら零号機がどうなるかは全員が同時に感づいた。

 

『このままじゃ盾が保たないっ!』

『あと三十秒ッ!!』

「なにっ!?」

 

 原作とは違うセリフにシンジは声を上げる。

 二十秒ですら保たなかったのだ、それが十秒追加されれば零号機は、綾波は、レイ(・・)はどうなる?

 もしもレイ(・・)が死ねば、三上シンジは――――。

 あと十五秒というところで盾が完全に融解し、零号機が粒子砲に晒される。

 ソレを考える前に、シンジは心の中で叫んだ。

 

 ――――レイ(・・)を助けて、オカアサン!!!!

 

 再び、初号機の顎が開き、エヴァの咆哮が辺りに轟く。

 その姿に軍人は不可解な恐怖を、蔵前は目を輝かせて反応した。

 初号機は砲身を抱えていた左手を前に突き出す。

 すると強固なATフィールドが零号機の前に展開され、粒子砲を完全に防ぐ。

 

『なんていうATフィールド……』

『あ、アレがエヴァの力なの!?』

「早く」

 

 ミサトとリツコの言葉にシンジは答えない。

 ただたまらないエネルギーに苛つき声を上げる

 

「早く」

「早く早く」

「早く早く早く早く、早くッ!!!」

 

『エネルギー充填、今っ!』

「人間舐めんなァッ!!、アオビカリィッ!!」

 

 オペレーターの声とともに照準器の音が鳴り、同時にシンジはトリガーを引いた。

 緑色の閃光が、粒子砲を貫き、一寸の狂いもなく敵使徒のコアを貫いた。

 使徒の体がまるで飛び散る鮮血のように広がり、叫び声を上げてコアが弾ける。

 そして体中から鮮血のようなものを垂れ流しながら、ゆっくりと体を崩していった。

 

「や、やったやったよ!!」

『いっ、ようっしゃ!!』

 

 弾ける歓声が無線から届く。

 それは外のシェルターもだった。誰もが抱き合い、拘束されていた串カツ屋の亭主も拘束していた相手に抱きついていた。

 だがソレを成し遂げたシンジは、手に持った陽電子砲を投げ捨てると脇目もふらずに零号機に駆け寄る。

 

「綾波ッ!! 綾波ッ!! 応答しろッ!! くそっ!!」

 

 プログレッシブナイフを抜き放つと、ミサトたちが止める前に零号機の後頭部付近の装甲を切り開き、エントリープラグを強制的に排出させた。

 排出させたプラグから熱されたLCLが排出されるのを待って、シンジはエントリープラグを抜き取り、地面に置いた。

 そして初号機から降りるために、エントリープラグを出そうとして体中の痛みで動きが止まった。

 

「ぐ、ぐぅうっ、あがぁあっ!?!??!」

 

 激痛がシンジの脳を支配する。

 無理もない、動けない体を無理やり動かし、全身打った後にも全力で走ったツケだった。

 人間、大抵のことは気合で乗り越えられるが、乗り越えた後の気の緩んだあとにはしっぺ返しが来るという相場は変わらない。

 痛む体を抑えながら必死にスイッチを押そうとして、レイがそのスイッチを押した。

 

「レ、レイ?」

「……肩、貸すよ」

 

 表情が読み取れないが、シンジの体をレイが支えて、二人で零号機のエントリープラグまで行く。

 強制排出されたせいか、零号機のエントリープラグは開いていなかった。

 シンジが熱されたエントリープラグのハッチを開けようするが、力が入らない体では中々動かない。

 

「い、ったぁ……ッ!」

「レ、イ!?」

 

 その手を添えるようにレイがハッチを掴む。

 じゅぅうっ焼ける音が聞こえて、シンジは最後の力を振り絞ってハッチをこじ開ける。

 

「レイッ!! ごめんっ!!」

「……いいんだよ、あの子、僕らを守ってくれたんでしょ?」

 

 両手を押さえるレイに、シンジは心配そうに駆け寄る。

 だがレイは首を振って、エントリープラグ内部を見るようにシンジの目線を誘導した。

 そこには力なくぐったりとしていたレイがいた。

 

「綾波ッ!! 綾波ッ!! レイ(・・)ッ!!」

 

 反応しない綾波にシンジはエントリープラグ内に入り、手を握りながら声をかけた。

 レイと言った瞬間、綾波の顔が上がる。

 

「……三上くん?」

「おう、三上、三上シンジだぞ……」

 

 涙をボロボロとこぼしながら、綾波の手をぎゅっと握るシンジを、綾波は理解できないかのように号泣するシンジを見る。

 

「……私は、碇レイじゃないのよ」

「知ってる、綾波レイだろ?」

「……あなたも、私ではなく、誰かを見ているんでしょう?」

 

 無感情のような言葉だったが違う。

 少しふてくされたかのような言葉でそういう綾波に、シンジは泣きながら噴き出して笑う。

 

「ばーか、そうだとしても生きてくれてて嬉しいんだよ。確かに俺はお前に、レイを重ねてる。だけどな……戦友が生きているってのは嬉しいもんなんだぞ」

「戦……友……?」

 

 わからないと言う風に首を傾げる綾波に、シンジは笑いながら答える。

 

「友達ってことだよ……綾波、俺とレイを守ってくれて、ありがとう」

 

 ギュッと手を握られた綾波は胸の中に温かいものが広がるのを感じた。

 ずっと、これがほしかったのだ。

 ずぅーっと、ずぅううううっと昔から、たった一人だったあの頃から。

 胸に何かが満ちるのを感じた綾波は、握られた手をそっと握り返して、ささやく。

 

「こんなとき……どういう顔をすればいいのかわからないの」

「知らんのか? 俺とおんなじ顔すりゃいいんだよ」

 

 痛む体のせいでぎこちない笑みを見せるシンジに、綾波はニコリと笑った。

 

 

 

 その二人の様子をじっと見るレイは何も言わない。

 もう褒めてもらったのだから、それに一応守ってくれたからとシンジの様子を見守る。

 だが心に燻る憎しみがドンドン大きくなる。

 僕を、見て。

 僕を見て。

 

「僕だけを見てよ、シンジ……」

 

 遠くから車の音が聞こえる。

 ほのかに灯った光とくすぶった闇に気づかず、シンジは笑う。良かったと、レイ(・・)を守れたと。

 もはや、彼にとって綾波もレイ(守る対象)なのだ。

 何もかもが歪んだまま、戦いが終わる。

 誰も気づかぬまま、誰もが理解しないまま時はすぎる。

 その歪さがシンジの良さだと錯覚しながら――――そして、彼らの破綻は決まっていたのだろう。

 

 




通常時にレイとシンジが乗ってもここまではならないゾ。今回のはレイがヤバイ、レイだけは護ら……ファッ!? なんで動いてるんあの子!?!?! ってなんやこのクソでか感情たまげた……あーいけません!! イレギュラーくん! あーいけません!! お義母さん頑張りたくなっちゃう!! コアが壊れるわ……ってなんか頼まれた、よっしゃやったるで!! とカッチャマがすっげー頑張った結果な模様。(覚醒では)ないです。
ちなみに薬盛れば? って前回の話にあったがこいつ(主人公)精神が無理やり体を常時動かしてるんで、心へし折れない限りやばくなったら起き上がるゾ。なお体は「もう死にてえ!!」と叫んでる模様。自分が生きるのを諦めたけど他人が生きるのを諦めさせないのがうちの主人公です(矛盾塊)

9/14追記、感想返信ガチ遅れてて申し訳ナス! かならず返すからなぁ(ガンギマリ)

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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