中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、気合でエヴァに乗り込んだらなんかとんでもないことになって地雷が増えた

面白いエヴァのSSあるし、少し失踪しても……バレへんか。
と申し訳ない、マジでストックない上に、急いで書いたから面白くないかも……。
あと感想返信、誤字確認出来なくて申し訳ナス! 睡眠時間ほちいの(ロングスリーパー)


主人公の描写が少ない上にまわりから恨まれてる件

 とりあえずラミエル戦の後のことを言おうか……誰に言ってんだ俺? 

 まぁいいや、とりあえず俺はぶっ倒れた。

 そして三日三晩寝続けて……体が治っていた。

 いや何いってんだオメーと言われそうだが、マジでわからん俺にもだ。

 医者の先生曰く――――

 

『解体するね(医学界の未来のため)あばれんなよ、あばれんなよ……何だお前ら!?(看護師乱入)おまえら二人に負けるわけ無いだろ!!(抵抗)流行らせこら! 流行らせこらぁ!! ……何だお前!?(ぶちギレレイ登場)あっ、やめてとめて止めてええええええ!!!』

 

 ………………まぁ、色々あったが、とりあえず三日は検査入院はするらしい。

 吐血したんですがソレは、初撃の余波くらって木に叩きつけられたんですがソレは、と我ながら無茶をしたなぁと思う。

 串カツのご主人……寺田さんと言うらしいが、少しの罰則だけで済んだらしい。終わりよければ全てよしというわけにも行かないだろうし、悪いことをした気分になる。

 

『気にすんな、むしろあの状態で駆け出したときは心底ビビったぜ……シンジ、よく頑張ったな』

 

 嬉しかったが、巻き込んでしまい申し訳なく思う。

 そもそも、俺が油断してノリで行けるやろと現場猫したのが発端だ。

 まぁ、ゲンドウに反対されたってのもあるが今後はこんなことはさせないと見舞いに来たミサトさんが、手を握りながら力説してたが……まぁ、暫くはラミエル級の敵は出てこないから安心だ。

 

「……はぁ」

 

 ベッドに横になりながら、俺は現状を考える。

 使徒の体が残っていない、つまりは新劇場版の世界……ではないのだ。

 海が青い、これはTV版の世界……でもない。

 多分2つが混ざりあった世界だと考えたほうがいいだろう。新劇場版の方は気合でどうにか出来る相手ではない、むしろ気合でどうにかしてしまったらエヴァがヤバイ、自分がサードインパクトを起こしたとなったら間違いなく自殺する。

 まぁ、コレが終わったら速やかに死ぬ予定なんだがな。

 

「……でもどーすんよ」

 

 流されるままその日を暮らしていたが、どうするか考えないといけない。

 少なくともサードインパクト回避、これだけは回避しなければならない。今のレイに旧劇のようなことは出来ないだろうが、追い込まれたらどうなるかわかったもんじゃない。

 それに俺はイレギュラーなのだ。本来であれば少しずつシンジくんを精神的に疲弊させ、ゲンドウがゼーレの計画をぶち壊し、最後の最後で初号機が依代になるように仕向けたが、ここではそうもいかない。少なくとも俺では初号機の完全なる覚醒は不可能だろう。

 ラミエルの攻撃を防いだ時のアレは恐らく覚醒ではない

 というかそう都合よく覚醒出来たら原作のシンジくんはあそこまで苦労をしなかっただろう。

 話が脱線したが、現状では打つ手がない。

 ミサトさんに全部話しても無理だろうし、赤木さんとかさらに無理だ。ミサトさんですら消されるレベルにゼーレという組織は闇が深い。

 というか原作ですら描写が少なくどうして補完計画なんてアホなことをしたのかすら不明だ……まぁ言われても分からないだろうが。

 で、どうするかと言うと実はたった一人しか心当たりが思い浮かばない。

 

「……あの人しかいねえよなぁ」

 

 加持リョウジ、原作にてゼーレ、NERV、日本政府の三大組織のトリプルスパイとかいう訳の分からない事をして、最期は消されたエヴァの登場人物の中では最高に有能な人。

 あの人を味方に引き入れたのならサードインパクトを回避できる見込みが出来ると思える人だ。

 問題はどうやって協力してもらえるかだが……おそらくだが、ある程度信頼がないと聞いてもらえないだろう。

 ゼーレ経由で俺の情報は言われてるだろうし、計画にない存在としてゲンドウにもマークするように言われてるだろう。さらには日本政府からも何か調査を頼まれているに違いない。

 この状況でセカンドインパクトの情報渡すから味方して、と言っても笑顔で殺そうとするのが加持リョウジという人間だろう。

 いや、最低とかそういう問題じゃなくて唐突にエヴァ動かした人物に、何年も追ってることを全て教えようとか黒幕ですほんとうにありがとうございましたと言うしかない。

 なので当面俺が出来るのは、結局のところ使徒を倒すほか無いということだ。

 

「結局モブキャラなんだよなぁ」

 

 そう自虐する。

 気合とノリだけでどうにかできるほど甘くはない。

 確かに変えたものはある、だが変えられない事もあるし、事態を悪化させる可能性だってある。

 

「35人……か」

 

 ヤシマ作戦における殉職者の数だ……粒子砲の余波で消し飛んだり、ラミエルの時間稼ぎをするために散った人達の数。

 気に病むなと言われた、それ以上の数を救ったとも言われた、あなたの行動で今後は国連軍も戦自研も協力してくれると言われた。

 だがエヴァの狙撃のために死んだ人が居るという事実は変わらない。

 そう、変わりはしない……。

 

「……重いよ」

 

 そう呟いてしまう。

 重くて逃げ出したくなる。

 精神世界であぁ啖呵を切ったが、人の心なんて簡単に転がっていく。

 これからも戦うとなると避けて通れないものだけど……慣れはしないだろう。

 だがそう考えたとき、ぐぅーっと勢いよく腹がなる。

 

「……落ち込んでても腹は減るんだなぁ」

 

 思考を打ち切り、目を閉じる。

 はぁ、早くレイのご飯が食べたい。

 

 

 

○○○

 

 

 

「先輩、どうです……?」

「わからないということがわかった、ってところかしらね」

 

 初号機のデータの洗い出しをしていたリツコは白旗を上げていた。

 急激なシンクロ率上昇、その謎を解明するべくこちらも三日三晩データを何回も洗い出してみたがわからないのだ。

 本来であれば二人を乗せて運用するようには作っていないし、そもそもそういう機能も付けていない。

 ただでさえエヴァとのシンクロはデリケートな要素で、開発したリツコたちですらまだわかっていない部分が多い。

 特に初号機は特別な存在であるから、何が起きるか想像がつかない部分が大きいのだ。

 

「愛ですかね、やっぱり」

「それを認めたら科学の敗北よ」

 

 マヤの言葉にリツコは渋い顔をするが、間違ってはいないと思うのは科学者失格だとリツコは自虐する。

 初号機のコア、それに使われているのは碇レイの母親である、碇ユイ。

 当然、娘のレイとの親和性が高いと思っていた。

 最大の誤算はロストチルドレンの三上シンジという存在。

 彼のせいで、レイの精神はシンジに依存し、それによりレイをパイロットにするゲンドウの補完計画は崩壊しつつあったが、リツコはそれでもいいと思っていた。

 

(……ごめんなさいね、ゲンドウさん、私は女よりも母親になりたかったみたい)

 

 三上シンジは決していい子供ではなかった。

 訓練では場所を覚えない、座学中は寝る、訓練の声がうるさいだと挙げればキリがないほどに文句はある。

 だが、だからこそ愛おしいとわりとダメンズ的な思考を持っていたリツコだった。

 ダメな子だが出来ない子ではない、育てる楽しみと言うものをリツコは感じていた。

 そして、それを自覚したのがラミエルとの戦い。敵の攻撃をまともに受けたシンジを見てられず、ゲンドウたちの指示を無視して、柄にもなく歩き回って頭を下げた。

 その結果、国連軍や戦自研の協力を取り付けることが出来た。

 だが、ゲンドウからは見捨てられた気がする。

 ダミープラグの研究が終わるまでは生かされるだろうがそのあとは――。

 

(……報いよね)

 

 不倫を(愛されようと)し、男に溺れきれず、利用されていると理解しながらも溺れようとして、結果愛しきれなかった。

 母親のことを笑えない、どこまでも自分と母親は親子(似た者同士)だったのだ。

 そう自虐しながら、リツコは静かに思考する。

 

(碇、レイ……彼女は似ている)

 

 たった一人を愛し、それに全身全霊をかける姿は紛れもなく、彼女の父親と瓜二つであった。

 だからこそ、レイがシンジを失ったときのことを思うと恐ろしい。

 自分と同じだ、どこまで行っても親子というのはどこか切っても離れない性質がある。

 妻以外を愛しきれなかった男、自分を助けてくれたものを愛する女、根底には一つのものを愛するという純粋なものがある。

 だからこそそれが裏返ったとき、果たして碇レイは戦えるのか?

 

(初号機……いえ、ユイさんはそれに気づいていた)

 

 戦えない、だから三上シンジを受け入れ娘の代わりに戦わせているのではないかという仮説にたどり着き――――理不尽な怒りを覚える。

 自分に、シンジのことを怒る資格はない。元々、リツコも同じだ。

 今は母性に目覚めたが、その前はただのイレギュラー(レイのスペア)でしかなかった。

 

(ほんと、度し難い女ね)

 

 自分のことを唾棄する。

 むしろ自分こそ、彼女に責められるだろう。

 表向きにはゲンドウは配偶者を失った者だ。真正面から愛すればよかったのに、研究があると逃げてしまった。

 そんな度し難い自分がシンジのことで、ユイ(エヴァ)に怒ることなど許されない。

 

「――――輩、先輩っ!」

「えっ?」

「大丈夫ですか? いくら呼びかけても難しい顔してて……」

 

 マヤの呼びかけで、リツコは現実に立ち戻る。

 徹夜のせいかと、頭を覚醒させるためにコーヒーを喉に流し込む。

 

「……でもこのシンクロ率って、よく考えると怖いですよね?」

「なんの話よ?」

「レイちゃんとシンジくんが乗ったときのシンクロ率ですよ、66.6%。あの時はオペレートに必死で気づかなかったですけど、これって意味のある数字に思えません?」

 

 66.6……666という数字に思い当たり、リツコは噴き出す。

 

「マヤ、あなたキリスト教信者だったかしら? そもそも666という数字は科学的根拠もないのよ、それにただの悪口だったって説もあるのよ」

「……でもエヴァは想定以上の力を発揮した、ですよね」

 

 リツコは笑みをピタリと止めて、思い出す。

 ラミエルの粒子砲を完全に受け止めた強固なATフィールド。

 いや、本来のATフィールドと言ってしまっていいのだろう。初号機のコピー元を思えば、あの程度のことは造作もない。

 だが、この段階で開放される力ではないし、シンクロ率が高くなったとはいえこの数値はセカンドチルドレンが優に超えているのだ。

 だが、想定以上の力を出したということは……あながちマヤの言葉は馬鹿にできないのかもしれない。

 

「獣の数字、ね」

 

 存外、リツコという人間はロマンチストだったのだろうと思う。

 こんな荒唐無稽な話を馬鹿正直に考える。

 それにゲンドウが初号機を使い、やろうとしていることを考えれば裏コード的なもので仕込んでいてもおかしくはない。

 そんなときに、マヤは暗い顔をして心情を吐露する。

 

「彼……どうしてあそこまでエヴァに乗ろうとするんですかね。レイちゃんを乗せたくない、それだけですか?」

 

 違うだろうと、リツコは答えずに思う。

 ただ乗せたくないだけならあそこまで命をかけない。

 最初は思春期特有の正義感かと思ったが、そんな甘ったれたものではない。

 あのときのシンジ、ラミエル戦時に国連軍の軍人に返したシンジの言葉は狂気そのものだ。

 十四歳の言葉ではない。

 いっそ強迫的と言ってもいいほどに、あのときのシンジは追い詰められていた。

 

「……」

 

 リツコは空を見つめる。

 たった十四歳、そんな子を追い詰めるほど、自分たちは不甲斐ないのだと自覚する。

 それでいいんだと納得させていた自分、今もなおダミープラグを研究している自分を嫌悪する。

 結局、大人になどなりきれないのだとわかってしまう。

 わかってしまうが――――諦めきれないのだ。

 

「彼は諦めなかった、だから私達が音を上げてはだめよね」

「えっ? え、えぇっ、そうですよね。私達『大人』ですもん」

 

 マヤの言葉に笑ったリツコは、再びデータを精査し始める。

 その背中は誰がなんと言おうが、子供のために頑張る大人の背中であった。

 

 

 

○○○

 

 

「どうするんだ碇」

 

 冬月は焦っていた。

 あのイレギュラーはマズいと独断で薬を盛って殺そうと思った程にだ。

 だがレイとの関係性を考慮して思いとどまったが、邪魔でしかないのには変わりはない。

 だがゲンドウは焦りもせず、いつもの調子で言葉を紡ぐ。

 

「焦る必要はない」

「必要がないだと? ヤツは初号機を覚醒させかけたんだぞ。この時点で覚醒させるのは……」

「問題はない、むしろ好都合だ」

 

 その言葉に冬月は耳を疑う。

 

「好都合だと?」

「あぁ、好都合だ。初号機の覚醒、その片鱗を見せただけで老人たち(ゼーレ)は焦っていた。……計画にないことをするほど奴らは器用ではないさ」

 

 ゲンドウはそっとほくそ笑む。

 ゼーレたちの焦る声を聞くたびに、付け入る隙が出来ているからだ……既に『鈴』のおかげで目的の物はゼーレに気づかれること無く回収された。

 アレが手元にある、それこそがゲンドウを優位に立たせており――――妻が見知らぬ男に力を貸しているという事実に辛うじて堪えていた理由だ。

 怒りだ、ゲンドウの中には煮えたぎる怒りしか無い。

 計画になく、突然現れたイレギュラー。まだ全てをぶち壊されてはいない。

 だが少しずつ、少しずつだが歯車が狂わされている。

 リツコもこちらを離れた。そんなことはとっくに見抜いていた……だがダミープラグの開発を続けるなら母親ごっこをさせてやるのも、ゲンドウなりの慈悲であった。

 そんなゲンドウの思考を知らず、いや理解できず冬月は珍しく声を荒らげる。

 

「やつが全て壊したら意味がないのだぞ! それにやつは初号機の正体に勘付き始めている」

 

 そう、シンジはミスをした。

 極限状態で取り繕うことは不可能だったが、シンジは初号機に『呼びかけてしまった』

 まるで中に誰かいるかのように、搭乗者のレイではなくエヴァに向かって叫んでしまった。

 そしてエヴァが応えて、彼に力を貸した……冬月の怒りも、ゲンドウと同質のものだ。だが見当違いの怒りでしか無い。

 

「ユイくんも力を貸すことに躊躇がなくなっている。このままいけば――――」

「問題はない」

 

 再度断言するゲンドウに、冬月は怒りを爆発させようとし……そのままいつもの調子に戻る。

 

「――――すまん、熱くなりすぎた」

「……懸念材料はある。だが奴では初号機の覚醒には至らんよ」

 

 そう、あくまでも他人なのだ、初号機と三上シンジは。

 どれだけシンジが頑張ろうとシステムという壁が邪魔をし、これからも三上シンジのシンクロ率は局地的には上がることはあれど、大局的には低水準のままだろう。

 いずれはレイの数値が上回る。

 その確信がゲンドウにはあった。

 母と娘、今はわかりあえなくとも、いずれは心を通えると――――自分ができもしないことを平然と考え、そして娘に押し付けていた。

 ゲンドウという人間の失敗は、2つ。

 自分の娘が自分の同類であり、自分にとってのユイ(愛する対象)を既に見つけ、その他を切り捨てていたということだ。

 そのことに気づけないことが、ゲンドウという人間の……あるいは父親としての限界だった。

 

「それまではやつには使徒殲滅の役目を負ってもらうさ」

 

 そしてもう一つは、シンジもゲンドウと同類の人間だったのだ。

 世界に絶望し、人に絶望し、自分に絶望し、全てに絶望した彼にとって、自分などとうの昔にどうでもいいのだ。

 だからこそ精神が体を限界まで動かすし、体が精神を働かせようとするのだ。

 だから、初号機(母親)が守った。それだけの話なのだ。

 だが、ゲンドウも冬月も理解しようとしない。

 自分たちが愛する女性が、母親であったという事実を理解しようもせず、そんなことを考えもせず自分たちの欲望のために他者を巻き込み続けた。

 

「……使い捨てるのか」

「あぁ、その方がヤツも周りも納得するだろう」

「そうだな、イレギュラーに感化された職員も多い。……それにあんなことを続ければ、じきに自滅する、か」

 

 そんな、愚か者たちの、ただの戯言であった。

 

 

 

○○○

 

 

 

「アスカ、明日には出発だ。荷物の準備は出来てるか」

「……」

 

 佐世保の国連軍施設、その一室に髪を伸ばした男性はノックをして入った。

 自分にしか反応しないお姫様の相手をするために、心の中でため息を吐きながら、男、加持リョウジは部屋に踏み入った。

 照明もつけず、ベッドの上で体育座りでうつむいている『彼女』を、本来の彼女を知るものが見たらこう言うだろう。

 

 ――――あれは誰だ?

 

 加持もそれに漏れずに、目の前の少女の感情に困惑していた。

 だがそれを気づかれずに話すことなど、加持には造作もなかった。

 

「おいおい、まだ怒ってるのか」

「……怒ってない」

 

 嘘だと言うほどに、少女からの圧が強まる。

 ここ一ヶ月、特に一週間前からこんな調子だ。

 だがエヴァとのシンクロ率を維持しているのはさすがというしか無い。

 むしろここに来て、シンクロ率が上がっているのは彼女的には嬉しいだろうがその嬉しさを壊す存在がいる。

 加持は、ここでは引かずにむしろ押して行った。

 

「ロストチルドレンな、こっちに来るらしいぞ。どうにも退院して、顔合わせも兼ねてな」

「……」

 

 無言、だが握りしめているシーツのシワ具合がドンドン強まるのを見て、加持はため息をつくが気持ちはわからなくもない。

 目の前の少女にとって、ロストチルドレンという言葉は憎悪の対象にまで昇華していた。

 それだけのことを彼はしてしまったのだ。

 ご愁傷さま、と同情をする。

 

「まぁ、なんにせよ。刺すなよ? 俺はお前を警察に突き出したくはない」

 

 そう冗談で言うが、やりかねないと加持は思っていた。

 目の前の少女の反応がないため、加持は部屋から無言で退出する。

 これでもマシなのだ。自分以外には事務的な会話しかしない。

 会話のドッジボールができるだけ、加持は他の大人よりは信頼されていると評価していたが、部屋から離れて喫煙室に入ると素早くタバコを吹かす。

 

「……引率の先生じゃねえんだぞ」

 

 視点を部屋でふてくされている少女に戻そう。

 彼女は加持が出ていったあと、手元にあった枕を扉に向けて投げた。

 八つ当たり、そう八つ当たりだ。

 父親にかまってもらえずに駄々をこねる娘である。

 だが、加持が居なくなったことで彼女に渦巻いていた憎悪の感情が噴き出す。

 

「あいつは、あいつだけはぜっっっっっっったいに認めないっ」

 

 ヤツ(ロストチルドレン)を認めたら自分はなんだったのか。

 血反吐を吐く思いをして、努力して努力し続けた結果勝ち取り、そしてテストでは結果を出し続けていた。

 自分はエリートだ、自分はできるのだ、自分しかいないのだ(・・・・・・・・・)と誇示し続けてきた。

 それをポッと出の素人がかっさらっていった。

 自分と同世代、訓練もなしにエヴァを動かし、三体の使徒を打倒し、みんなから一目置かれる存在。

 

 

 チガウ。

 

「違う」

 

 チガウジャナイ。

 

「違う」

 

 フザケルナ。

 

「そうよ」

 

 ナンデアタシヲミテクレ(ホメテ)ナイノ。

 

「そうよっ!!」

 

 シーツを引き千切り、少女は憎しみだけを瞳に宿し、ずたずたにしてしまった写真を布団から取り出す。

 そこに写っていたのは三上シンジ、少女が憎んでる(憧れている)対象だ。

 本当なら自分がそこにいたはずだった。

 本当なら自分が受けるはずの称賛も、感謝も、愛も、全部全部コイツに取られた。

 コイツが!! コイツが!!!!

 

「ッ!!」

 

 写真を引きちぎる。

 肩で息をしながら、シンジへの憎しみだけを少女、惣流・アスカ・ラングレーは持ち続ける。

 

 

「認めない認めるもんか認めてやんない……私が、私の方が優れてるのよ……っ」

 

 十四歳にしては尖りきった感情。

 だがそれを受け止める大人は、この場に居なかった。

 夜が更けていく、まるで少女の心を写すように。




割とゲンドウは最低だと思うけど、僕はそんなゲンドウが大好きです、これだけははっきりと伝えたかった。
アスカのクソでか感情は、原作のアスカならこうなりかねないと書いたゾ。そらド素人が結果出してたら面白くないわなって。大丈夫大丈夫、まだ刺したりしないから。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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