中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について 作:re:753
アスカは死なないゾ、まだこんな場所で殺すわけないじゃないか(ニッコリ笑顔)
前回、綾波いなかったら本部がら空きじゃね? と感想言われてもうめちゃくちゃや、マダオが悪いよー、マダオがぁ(責任転換)
惣流・アスカ・ラングレーにとって三上シンジという人間は未知の存在であった。
ファースト、セカンド、サードとマルドゥック機関に見出されたチルドレンではなく、ただサードに付き添い、偶然操縦適性があり、使徒を撃破した一般人。
その報を聞いた際に、アスカは荒れに荒れた。
当たり前だろう。十四歳の半生をかけた努力を、ソイツはあっさりと超えたのだ。
低いシンクロ率、稚拙な操縦技術、何もしていない人生、だがシンジは結果を出し続けた。
使徒を倒したという実績は軽くはない。
NERV支部ではシンジのことで持ち切りだった。
幼馴染であるサードチルドレン、碇レイのために戦っているという事実も、彼の名声に拍車をかけた。
気に入らなかった、シンジという存在が、誰かのために戦うという綺麗事が、エヴァに乗っているということ、全てが気に入らなかった。
憎くて憎くて、憎みきって――――自分の中にある感情を否定するためにさらにシンジを憎んだ。
写真を手に入れた、情報を手に入れた、シンジに関する全てを集めた。
憎い、憎い、憎い、憎い!!! アスカの部屋にはシンジに関するものが増えた。
憎くて憎くて四六時中シンジのことを考えた。
会えると聞いたときに、アスカの憎しみは頂点に達した。
憎いアイツと会える、どんな言葉で罵倒してやろう、どんな言葉で否定してやろう、どんな言葉で自分を見てもらおう。
そう、憎んでいた
惨めだと思った、なんだコイツも泣くのかと思い……アスカの憎しみが膨れ上がった。
ふざけるな、 ふ ざ け る な。
何を泣いてるんだ、何が悲しいんだ、なんで私の前で泣いてるんだ。
堂々としろ、お前は私の
弱い姿を見せるな、あんたは私より上なんでしょう?
そして私に気づけ、私を見ろ、 私 を 見 ろ 。
「へえ、情けないのね、ロストチルドレンって」
そう言ったシンジは呆けた顔でこう言った。
「……お前は」
アスカの怒りが爆発する。
知らないのか? 私を。
知らないっていうの? セカンドチルドレンである私を。
私はなんでも知ってるのに、全部知ってるのに、なんで知らないッ!!!!!
「名前も知らないの? さっすが英雄さんね」
感情のままアスカは動く。
鼻先まで近づき、シンジを見る。
知らないのなら刻みつけてやる。
そんな子供じみた感情を持ちながら、手を振りかざして叩く。
パァンという肉を打つ音が響く。
ゾクゾクっとアスカの背中に何かが走る。
刻んでやった、刻み込んでやった、私が誰か、
未知の感情に酔いしれるアスカだったが、その耳に絶叫が入った。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
訳がわからないが、殺気を感じたアスカは咄嗟に防御する。
なんだ? 誰だ、邪魔するのは、私の邪魔を――――。
「お前ええええええええええええええええええっ!!!!!!!」
「ヒッ……」
アスカの喉が鳴る。
血走った目でこちらを見るのは、サードチルドレンだった。
腕をがむしゃらに動かし、こちらに迫る。
アスカは初めて同年代に恐怖を覚えた。
殺気なんて幾らでも訓練で感じたし、死にそうな目にも実際あった。
だが目の前の少女はそれを遥かに超えていた。
絶対にお前を殺す、そんな気迫が少女の体から滲み出ていた。
「よくも、よくもシンジをっ!!!」
動きは単調だった。
格闘術の訓練も受けていたアスカにとってはそこまでじゃない相手、だがその気迫でアスカの体は完全に目の前の少女を恐れて竦んでいた。
組み合った力は尋常ではなく、同世代では鍛えている方であるアスカは対抗するので精一杯であった。
なんとか腕を振り払い、距離をとる。
息を整え、目の前を見ると血走った少女は拳を振りかぶりアスカに飛びかかっていた。
殺される、そうアスカが思った瞬間、アスカとレイの間に誰かが入った。
「あっ――――」
鈍い打撃音が響き、誰かが倒れる音が聞こえた。
「お前ら何をしてん――――シンジィッ!!」
帽子をかぶった少年、トウジが駆け寄る。
拳を振りかぶった少女も、拳を受けようとした少女も倒れている少年を見た。
なんで、なんで庇ったのよ、とアスカは混乱する。
拳を当ててしまった少女は、先程の気迫が霧散し、髪を掻きむしり絶叫した。
「あ、あぁああああああああ!!!!!」
レイの振るった拳はアスカではなく、なぜかアスカを庇ったシンジの顎にクリーンヒットし、衝撃を受け止めきれずにシンジは床に転がっていた。
騒ぎを聞きつけた兵士や、後から追いかけてきたケンスケ、綾波。そしてミサトと加持が現場に駆けつけて頭を抱えた。
○○○
『大事はない、頭を軽く切った程度だ。一応ベッドを貸すから寝ておけ』
そう言われた俺は、医療設備が整っている輸送艦オセローの医務室で横になっていた。
一応弐号機の運搬を請け負っており、アスカも運搬中の弐号機とのシンクロテストをするため、何が起きても良いように設備が整っていたらしい。
結論から述べると、俺は頭から出血、レイは大泣き、アスカ茫然自失、ミサトさんブチギレ、他面々ポカン計画と中々にやべーことになった。
レイの拳ってくっそ痛いなぁと思いながら、体を起こす。
「やらかした」
この一言に尽きる。
能天気すぎたのだ、俺は。
式波・アスカ・ラングレーならばここまで拗れなかっただろう。
だが惣流・アスカ・ラングレーはこういうことをする人間だと原作知識でわかってたはずなのに、こうして怒りを向けられるまで理解しなかった。
浮かれていたのだろう、前世の推しに会えると思って、その結果が
レイにも悪いことをしてしまった……あのままだと大変なことになっていた。
間違いなく逆上したレイは、アスカという存在にとんでもないことをする。そう考えた俺はアスカの前に立ち、代わりに殴られた。
ミサトさんにフォロー頼んだがどーなってることやら……。
そんなとき、医務室の扉が開き一人の男性がばつが悪そうな顔をして、入ってきた。
「その……ハジメマシテになるな」
「えっと、あなたは?」
すっげーわざとらしいなぁと思いつつも、目の前の男性を知らないフリをする。
男性は頭をかきながら、ため息をついてパンと音を立てて、両手を合わせると俺に謝罪をした。
「加持リョウジ。すまない、こんな事態になって」
「気にしてません、間が悪かっただけです」
そう、最悪のタイミングで最悪が起こっただけだ。
あの後担架で運ばれたので、どうなったかわからないから加持さんに聞いておこうか。
「あの、レイは……?」
「落ち着いた、というかよっぽど君を殴って怪我させたのがショックだったみたいだな。オーバー・ザ・レインボーの医務室で寝てるよ」
加持さんが暗い顔で、俺のベッド傍に置いてあった椅子に腰掛ける。
……レイには悪いことをしたなぁと思う。
俺に対して感情を高ぶらせることはあったが、あそこまでのは初めての経験だった。
というか血は争えないというのか、あのときのレイは暴走初号機を思い出す気迫だった。
絶対にレイを怒らせないようにしよう、あんなん俺殺されるわ……まぁ、レイに殺されるのはやぶさかではないかな。
「葛城にも言われたよ、『あんたがいながら何やってるの』とね。何も言い返せないよ」
「ミサトさんのこと知ってるんですね」
「あぁ、ちょっち訳ありでな」
元カレだろ、と喉にでかかった言葉を飲み込む。
イマイチ掴めんなぁこの人、本気で謝ってるように見えるがアニメみてるとコレも演技の一貫じゃないかって思うんだが……うーん。
「まぁ、そこらへんは追々聞いていこうか……なぁ、アスカに対して何か言うことはないか?」
「ないですよ?」
これは本心だ。
言うことはない、というか俺が惣流・アスカ・ラングレーという人物に何か言えることはない。
彼女の心を乱したのは間違いなく俺だし、黙って殴られようと思ったのも俺の意思だし、庇ったのもレイがアスカを殴るところを見たくなかったってのが本当のところだ。
別に俺を傷つけて精神が安定するなら、例え話になるが刺されたって構わないのだ。
そんな俺の言葉に、加持さんはポカンと口を開けて驚いていた。
「……英雄ってのはどこかしらネジがぶっ飛んでると聞くがマジだったんだな」
「その英雄ってなんですか? アスカにも言われましたけど」
英雄、むず痒いセリフだ。
というかなんだその痛い二つ名は、こちとらごく一般的な男子中学生やぞ。
気合とノリとほんの少しの幸運でやってるだけだ。
「なんの訓練も受けていないどころか見出されていない
「必死なだけです、ミスも多いし、シンクロ率だって高くない」
それに原作になぞってるだけ、と自嘲する。
だが加持さんは肩を叩きながら俺に向かって笑う。
「君は自信を持ったほうが良い。それにそれが出来るのはキミの才能さ」
「……才能」
才能、というなら俺よりもアスカのほうが上だろう。
爆発力ならば初号機が軍配が上がるが、それはシンジくんがエヴァに依存し心を開いていたのも一因だろう。
実際のところ、初号機と弐号機の違いはパイロットの考え方でしかない。
弐号機だって心を開いて、助けてと叫べば助けてくれるはずだ。だがそう出来ずに、弐号機は初号機よりも一歩下を行っていたのは、アスカの考え方のせいだろう。
自分でよって立つ、誰にも頼らないし、頼りたくない。
良い考え方だが、エヴァのパイロットとしては致命的に相性が悪かった。
そして彼女は悲惨な末路を辿った……思い出したくはない。アニメ史上でも最悪のシーンと言える、声優さんの迫真の演技と作画は当時劇場で見た人たちには刺激が強すぎただろうなぁ。
っと、思考がズレた。
「……聞いていたよりもキミは繊細な人物のようだね」
「……強がってるだけなんですよ、俺」
アニメ本編を見ていて、アスカがかっこいい大人として見ていた加持さんだったからか。
俺は誰にも言えない弱音を打ち明けた。
「怖くて怖くてたまらない、俺が失敗すればレイが初号機に乗って戦う。俺が守らなければ第3新東京市が壊れる。俺が動かないと世界が滅ぶ……だからがむしゃらに動くしか無いんだ」
「……」
「俺は結局、自分可愛さに戦ってるだけの臆病者ですよ」
ため息を吐きながら、何いってんだ俺と首を振る。
その肩を加持さんは優しく触った。
「キミは臆病ものじゃない。むしろ、俺たち大人が臆病者さ。死ぬのが怖くてキミやアスカのような子達に戦ってもらっている」
「……」
「正直なところ、安心したよ。どんな状況でも諦めない、どんな逆境でもひっくり返せる、どんな相手にも立ち向かう、キミの外部評価はコレだよ……だが間違いだな、キミは紛れもないどこにでもいる子供だったんだよ」
加持さんは俺の頭に手を乗せるとゆっくりと撫でる。
「訂正しよう、英雄……いいや三上シンジくん。キミはただの子供だ、エヴァに乗れるだけのただの子供だったんだな」
ゆっくりと撫でていく手に、俺は縋り付きそうになった。
逃げたい、逃げてしまいたい、レイと一緒に逃げれば楽だろう。
――――だけど。
「ありがとう、加持さん」
逃げるわけにはいかない。
ここで逃げたら今まで助けてた人たちや、あのとき時間稼ぎで死んだ人たちに顔向けが出来ない。
俺の命が尽きるまで戦って、戦い抜いてやる。
俺がどうなろうと構わない。最期には
だから、この生命を使い果たそう、この世界の人たちのために。
「……ふぅ、んじゃ会って欲しいやつがいるんだがいいかな、俺は部屋の外で待機してる」
そう言って加持さんは席を立ち上がる。
会ってほしいやつ?? と思い、加持さんが医務室の扉を開けるとそこには俯いていたアスカがいた。
「あとはお若いお二人でごゆっくりと」
苦笑しながら、アスカの背を押すと一歩前に出て扉が閉まる。
部屋にはアスカと俺しかいない。
沈黙が部屋を支配する……いやごゆっくりとって加持さんェ、んまぁどうしたもんでしょ。
「……ごめんなさい」
「は?」
小さい声で言ったので聞き間違いだったかと、呆けた声を出すとアスカが叫ぶ。
「ごめんなさいって言ってんのよ!! このバカッ!!」
「お、おう?」
声を荒らげたアスカだったが、そこにはあのとき感じた怒りはない。
どっちかって言うと困惑の感情が伝わってくる……うーん、この感情の振れ幅、そして面倒くささ、間違いなくアスカだな!
アスカはうがー!! と叫びながら癇癪を起こす。
「何よ!! やっぱり英雄様は違うってか!? 私なんかどうでもいいんでしょ!!」
「も、もちつけ」
「はぁ!? あんたバカァ!?」
ヨッシャァ!! あんたバカァいただきましたぁ!! と内心興奮する。
いやぁ、アスカと言えばコレでしょと思う。
「わっかんない!! わかんないわよ!! 泣いてると思ったら、叩いた私は庇う! 医務室に運び込まれて弱気になってると思ったらふざける! あんたなんなのよ!!」
「ごく普通の男子中学生やぞ」
「あんたのような普通がいるかぁ!!!!」
足を踏み鳴らすアスカを見て、苦笑する。
面白いやっちゃなーと、そんなに感情振り切ってたら脳の血管切れんじゃないの?
うがー!!! と叫ぶアスカを見ながら、俺はベッドから出る。
とりあえず挨拶やな。
「三上シンジだ、よろしく」
「……あんた、本当にバカじゃないの?」
叫ぶのを止めたアスカが信じられないようなものを見るようにこっちを見る。
なんかしたか? 俺?
「私、あんたを叩いたのよ?」
「全身焼かれるよか痛くないから多少はね?」
実際、ラミエルに釜茹でにされたせいか知らんが、痛覚が一部鈍くなってるらしい。
叩かれてもぜーんぜん痛くなかったから気にはしてない。むしろレイの暴走状態の一撃がほんと強烈だった。
アスカはポカンとした顔でこっちを見る。
「あ、あんた……頭おかしいんじゃないの!? 私が憎くないの!? 叩いたのに」
「別に?」
別に憎いなんて思わない。
アスカというキャラクターを知ってるからか、それとも同じエヴァのパイロットだからかはわからない。
だが、本心では寂しいと叫んでるだけの女の子を責めるほど俺は非道にはなれない。
「別、に? どうでもいいって言うのこの私を!?」
「いや、俺本当にお前のこと知らんし」
アスカの雰囲気が徐々に怒りに染まっていく。
いや、だってミサトさんとかみんなアスカのことイワナ……書かなかった!? と言うぐらいに言及も書類もないもん。
原作知識なければ「なんだこのお嬢さん!?」って感想しか出てこないゾ。
「あんた――――」
「だから教えてくれよ、お前のこと」
激高しそうになるアスカに、俺は待ったをかける。
教えてくれなきゃ理解できないしな。
拳を振り上げたアスカだったが、相当怒られたのか、外に加持さんがいるのか知らんが拳を開いて降ろすと俯く。
「教える?」
「あぁ、俺は綾波、レイ以外のパイロットに会うのは初めてなんだ。だから教えてくれよ、知らなきゃ憎む以前になんもわからん」
知識としては知っている。
だがこの世界でちゃんと生きるアスカを俺は知らない。
だからこそ知りたい――――
「改めて言うぞ、俺の名前は三上シンジ。お前は?」
できるだけニッコリ笑いながら、手を差し出すがその手は弾かれる。
だが、俺は苦笑して、目の前でムスっとした顔をする少女を見る。
彼女は暫くそうしていたが、ため息をついて腰に手を当てて堂々と言う。
「私は惣流・アスカ・ラングレー。弐号機の、本当のエヴァパイロットよ!」
○○○
『私は惣流・アスカ・ラングレー。弐号機の、本当のエヴァパイロットよ!』
「なんとかなったか」
加持リョウジは医務室から聞こえる声にホッと安堵する。
正直、どうなるかわからなかったがこの場ではどうにかなったと思い、その場から離れる。
久々に会った旧友兼元カノにこう言われた。
『あんたの責任問題でしょ!! フラフラしてないでちゃんと見なさい!!』
「あいつ、見ないうちに立派になったなぁ」
慟哭する
昔のアイツなら出来ない、そう加持は思い、複雑な心境を口にする。
「ロストチルドレンの影響、か」
感謝してるような嫉妬しているかのような感情。
バカか俺は、と嫉妬している自分を叱りつける。
自分では変えられなかった、変わらなかったミサトの変化に加持自身も困惑していた。
ロストチルドレンと出会ったのが一ヶ月、たった一ヶ月で大人になりきれていなかった大人が成長していた。複雑な心境は仕方ないだろう。
一時期は結婚すら考えていた相手が変わる、それに敏感ではない男は男ではない、未練がましいのは理解していた。
「……にしてもアスカすら手懐けるとはね」
正直、先程の焼き直しになると思い込んでいた。
自分とミサトが言い聞かせていたのもあると思うが、アスカという人物の感情の起伏は激しい。
経歴を見ればあの状態で保っているのが奇跡だと思うが、それを崩したロストチルドレンとの邂逅は最悪の結末になる、というのが加持の想定であり、NERV上層部、ゲンドウと冬月の思惑でもあった。
(手出し不要……何を考えてるんだ)
『荷物』を確保したと電話し、佐世保を出港する際にゲンドウに言われた言葉だ。
手出し不要、まるであの二人の仲違いを望んでいるような言葉に加持は引っかかった。
だからこそ精神的に不安定なアスカに何もしなかった、会話はしたが安定させる気はなかった。
そして最悪のタイミングで最悪が舞い込んできた。
サードは気絶、セカンドとロストは仲違い、はしなかった。
(英雄、か)
英雄ではないと加持は言ったが、シンジのあり方は英雄そのものだ。
逆境から全てをひっくり返し、人々に希望を与える。ラミエル戦など噂に尾ひれが付きすぎて、三上シンジはエヴァに乗るために産まれた希望だと言う者まで出てくる始末だ。
だが英雄の最期は悲惨の一言に尽きるし、加持は今のままならシンジは近いうちに潰れるとすら思っていた。
(それに、あの目……)
加持が引っかかったのはシンジが弱音を吐いていたときの目だった。
あの目を、加持はよく知っていた。
シンジくらいの年の頃、自分や仲間たちがしていた絶望の目だった。
親も親戚も何もかも失い放り出されたあの頃の自分たちの目、見間違う、いいや忘れることは出来なかった。
あの頃の体験が、今の加持リョウジという人間を形作っていた。
だが、何故シンジがあの目をしていたのか加持には理解できなかった。
(家族も健在、エヴァに乗ったのは自分の意思、嫌ならとっくに折れている、だが折れてはいないはず……なら何故、あんな瞳になる?)
加持の頭にはシンジの目が焼き付いて離れない。
何故、何故あんな目をする……あの目を見ると、思い出す。
自分の過ちを、救えなかったものを……。
(……英雄はカリスマ、影響力があるって聞くがマジなのかもな)
思考を打ち切って加持は頭を振る。
ちょうど外に出たので、ポケットにあるタバコを一本取り出すと火を付けて煙を吸う。
自分ですら引き込まれる影響力、ただの中学生? バカも休み休み言えというものだ。
修羅場を三度くぐり抜けたシンジの立ち振舞いは、一般的な中学生からかけ離れている。
怒り狂ったアスカならまだしも、平常心に近いアスカならば雰囲気に飲まれるのも無理はない。
アレは否定するまでもなく英雄だ。
「碇司令、あんたはとんでもないやつをイレギュラーにしましたよ」
自分なら間違いなく殺している。
アレはイレギュラーなんて生易しいものではない、全てをひっくり返し、盤上の駒などお構いなしに突き進む化け物だ。
心の奥底に潜むものがなんであれ、アレは排除すべき存在、加持はそう結論をつけた。
だが、殺しはしない。命令もされていないし、報告する義務もない。
「さてっと、二人は大丈夫だから戻るとしま――――なんだぁ!?」
突然の爆音と振動に、口からタバコを落とす。
護衛艦の一隻が何かにえぐられたかのようにポッカリと穴を空けていた。
続いて爆発音と巨大な水しぶきが立つ。
『緊急事態! 緊急事態!! 戦闘配備!! 繰り返す!! 戦闘配備!!』
「まっ、予想してたとは言え今来るか」
加持は苦笑しながら巨大な水柱を上げながら動くもの――――使徒を見る。
おそらく葛城は弐号機を狙って使徒がやって来たとか考えてるんだろうなと思いつつ、背後で何かが立ち上がる音を聞いた。
ギギギっと擬音が聞こえるくらいにぎこちなく首を振り向く加持の目の前には赤い巨人が立っていた。
「マジ?」
『『加持さん逃げて!!』』
男女の声が聞こえて、加持は急いで傍にあった浮き輪を抱えて海にダイブする。
直後、赤い巨人が空を翔け、自分がいた船は真っ二つに切り裂かれた。
「マジかぁああああああああああああ!?」
久々に、本当に久々に加持は叫び声を上げる。
直後、海に着水した。
アスカが情緒不安定なのは、ぶっちゃけ惣流・アスカ・ラングレーってキャラが三上シンジというキャラを見たときどう思うかと思うと、このくそやろう!! っていう憎しみなんだと思う。で、シンジのことが気になるから色々情報を集めると出るわ出るわ憎む要素、憎しみが募って募りきって、それでも憎みきれないのは憧れてるから。
自分を守ってくれるんじゃないかって勝手な期待感、結局の所アスカも他のNERV支部の奴らと同じく、ある種の英雄願望をシンジに持ってた。だからこそ泣いているシンジが見たくなくて、どうしてあんたが泣いてるのよって理不尽な気持ちがあって、自分を見てくれないから見させるために叩いた、結果はレイっていうビーストを開放したんだけどね(白目)
医務室でシンジの言葉を割と冷静に聞いたのは、ミサトと加持に説教されたのもそうだけど、シンジの弱音を聞いて「あっ、こいつも私と一緒なんだ」っていうまたもや勝手な共感を得たから……つまるところアスカって存在は理不尽で、どうしようもなくて、それでいて可愛らしい存在なんだよ!!!(ここまで早口)
憎しみは愛情に変わると言うけど、持論では憎むって行為は愛だよ。だからこれも純愛、愛、愛ですよナナチって感じ。
正直、マジ難産だった。
あと飯食ったら感想返信RTAはぁい、よういスタート(棒読み)
ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?
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いいゾ~これ(両方ともIKEA)
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(ifストーリーだけ)INしてください?
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(その後の話だけ)はい、よういスタート
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どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)