中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について 作:re:753
色々と落ち込むことがあって、何書いてるんだと自問自答して、親に言われた言葉で吹っ切れました。
初心に帰れと、よしじゃあ初心に返ってめちゃくちゃやるぜ! と思い立ったゾ。
とりあえず感想とか評価とか気にしすぎてた! 書きたいもん書く、二次創作なんてそんなもんだ!! うるせえバカ、俺はお前勝つぞお前!!
「……」
トボトボと第3新東京市の朝日の中、俺は歩いていた。
あの後、加持さんと無言で向き合い、居心地の悪さから俺は逃げてしまった。
今頃、レイとアスカが騒いでいるんだろうが……一人になりたかった。
ぐぅーとお腹が鳴る。
……昨日から歩きっぱなしで、何も腹に入れてないからか。
だが食べる気が起きなかった……明日、レイが初号機に乗って、ユニゾンする。
そして俺は補助で乗り込み、レイが戦う姿を間近で見るだけだ。
「……」
加持さん相手に本音をぶちまけたはずなのにスッキリしない。
……情けないなぁ、俺って。
うつむきながら歩いていた俺だったが、背後から聞き慣れた声が聞こえた。
「シンジ? シンジやないか!」
「……トウジ?」
ジャージ姿でかばん持ってるところからするに、登校の途中かと思う。
そういえばユニゾン訓練で缶詰だったせいで、レイとアスカ、あと様子を見にくるミサトさんと加持さん以外とは会ってなかったから久しぶりな感じがする。
トウジは俺に駆け寄ると怪訝そうな顔をした。
「どないした? 元気ないで?」
「……まっ、色々とな」
トウジの顔を見たくなくて、早足でその場から立ち去ろうとして――――その前に、トウジの手が俺の肩を掴む。
振り向くと、トウジが心配そうな顔でこちらを見ていた。
「ほんとおかしいで? なんや、あの二人となんかあったか?」
「……何も、ないさ」
少し言葉に詰まる。色々あったと言えるかもしれない。
ただ自分の気持ちがわからなくなって、どうしたらいいのかわからないという気持ちが強い。
「嘘こけ、あんの二人に挟まれてストレス溜まってんのやろ」
「そんなんじゃ――――」
その時、グゥーと腹が鳴る。
一瞬流れた険悪な雰囲気が消え、トウジの目が点になる。
俺は恥ずかしさのあまり赤面するが、トウジは腹を抱えて笑った。
「なんや、腹減っとんのかい」
「ち、ちが……いや、違わないけど」
「そーかそーか……シンジ、ちょっと付き合えや」
は? と言う暇もなく、トウジが俺の手を引いていく。
いや待って! 待ってクレメンス!?
「おまっ、学校は!?」
「今日は休校日さかい、別にええんや」
「いや、思いっきり登校日だよな!?」
ハッハッハッハ! と豪快に笑うトウジに俺は付いていく。
暫く歩いていくと、見慣れた店が見える……串カツ屋、つまりは寺田さんの店だった。
トウジはノックもせず、店の扉を開けると寺田さんと奥さんがびっくりした顔でこちらを見ていた。
「どうした、鈴原の坊主、まだ営業時間外だぞ」
「いや、聞いてなオッチャン。我らがヒーローの三上シンジくんが腹減ったーって泣きついてきてな? で、寺田のオッチャンのとこ行きたいーって言うんや」
「言ってねえわ!! ごめんなさい! すぐ出ていきますんで」
トウジの手を振り払うと、頭を下げて出ていこうとする。
だがソレに待ったをかけたのは寺田さんだった。
「待て……母ちゃん、今日は休みにすんぞ。仕込んでるもん、全部揚げろ」
「はいよ、少し待っててね、今揚げるから」
「えっ? いや、えっ???」
「つべこべ言わずに席に座れ!! 腹減ってんだろ、シンジの胃袋満足させるにはフル稼働しなきゃならねえからな」
そういう寺田さんの気迫に負け、俺は席に着いてしまった。
隣にトウジが座り、おっちゃーんジンジャエールぅとかのたまっていた。
ジューと揚げる音に、俺の腹と口が催促し始める……ぐ、ぐぬぬぬ……食わぬは恥って言うし、た、多少はね?
俺は無言で、キャベツを出してくれた奥さんに頭を下げると、バリンボリンとかじりつく。
うめえ、野菜の甘味がうめえよぉ。
「相変わらず掃除機かってくらい食うな」
「無言で出したんだけど、相変わらずよく食えるねえ」
周りがなんか言ってるが、気にせずに食べ続ける。
食べ終わった頃に、寺田さんが山盛りの串カツを大皿に乗せて、俺とトウジの間に置いてくれた。
「前に出来なかったよな? 今日は百用意したぜ?」
「……お、大食いチャレンジかなんかか?」
「いったっだきまーす!!」
もはや串カツしか俺の目は見ていなかった。
まずはそのまま食べる、次にタレ、二度漬け厳禁なのでたっぷり付ける、続いては塩や七味などで味に変化を付けていく。
夢中で食べているといつの間にか山盛りの串カツが消えており……悩んだ俺は奥さんに向かって手を上げた。
「キャベツ一玉追加!」
「「「いやそれぐらいにしておけよ!!」」」
三人からツッコまれ、俺はとりあえずは泣く泣くキャベツを諦めた。
ぐぬぬぬ、まだ入るのに……。
そう思いながら、お茶を飲みきると寺田さんが笑顔でこちらを見ていた。
「元気そうで何よりだ。シンジとはあれっきりだったから忘れられたと思ってたぜ」
「色々忙しくて」
「ハッハッハ、そうだよな。なんたってシンジは第3新東京市のヒーローだもんな」
……………………えっ、ヒーロー?
「い、いやヒーローなんかじゃ」
「色々守秘義務? ってのがあるんだってな。おかげで俺なーんもシンジのこと皆に言えねえもん」
「まぁ、口が軽いからこの間サングラスかけた黒服さんたちに説教くらったのよ、この人」
あー、やりそうだなぁと苦笑していると、寺田さんが真剣な表情で笑いかける。
「まぁ、今月末にはここからいなくなるんだ。その前にシンジと逢えてよかったぜ」
「……そう、だったね」
完全に忘れてた、そういえば疎開するんだったな。
色々忙しくて来る機会が……いや、合わせる顔がなかった。
ここに来たら甘えてしまいそうで、そんな自分が許せなくて、会うのが嫌だった。
二人共優しいから、縋ってしまいそうで……ホント、嫌になる。
「シンジ、多分俺にはわかんないくらい、お前さんは傷ついてるんだろうよ」
「げ、元気だよ」
「ウソつけ、鈴原の坊主が連れてきたときに湿気た顔してやがって……おかげで今日の売上ゼロだぜ?」
「ご、ごめんなさい、お金は――――」
「ガキがそういう心配すんじゃねえ!! ……って俺の言い方も悪かったな」
申し訳なくなって、俯く俺に寺田さんは豪快に笑ってくれる。
「子供が気にすんな。それにお前が戦ってくれないとやべえんだろ? ……正直な、俺は怖かったよあのとき。お前さんを送り出したあと、シェルターから見えた閃光に心底震えた」
「……」
「でもお前さんはあの中を恐れずに進んだんだよな? ボロッボロの体無理やり動かしてさ」
寺田さんの顔つきが優しくなる。
そして頭を撫でられる。無骨な男の手が、なぜだか心地よかった。
「逃げても許されるのになぁ、お前は偉いよ」
「……逃げたら、皆死んじまう」
そう、それに俺はこの世界のイレギュラーなんだ。
だから――――
「だから、おめえが傷ついていいってのか? 思い上がるなよ、シンジ」
「寺田さん?」
本気で怒ってるのがわかる。
怒気を言葉にして、俺を厳しい目で見る寺田さんに俺はビクリとする。
「なんで戦ってんだお前は? 傷つくためか? 無理して皆守るためか?」
「……なんで、戦ってる」
その一言に、俺は衝撃を受けた。
なんで戦ってる? それは……それは……守るために。
「違うだろ、お前さんをあの山に運んでるときにずっと唸ってたぜ。レイ、レイってな」
「……マジ?」
「マジのマジだ……レイってのが誰かわからねえけど、女だろ?」
なんでわかるの!? と驚愕するが、寺田さんは笑う。
「男が命かけるときは給料袋もらうときか女って相場が決まってんだよ」
「この人もねえ、若い時は結構いいとこの坊っちゃんだったんだよ、シンジちゃん」
し、シンジちゃんって奥さん。
奥さんは遠い目をしながらふぅっと息を吐く。
「私等女にはわかんない気持ちだけど、男は命かけるんだろう?」
「あたぼうよ……なぁ、シンジ、守るもんはしっかりと見定めとけ。何があろうとそれだけは手放しちゃならねえんだよ」
真剣な寺田さんの言葉に、俺は考える。
守るもんを手放さない、か。
それを聞くと、俺は席を立ち上がり、ずっと無言で見守ってくれたトウジやアドバイスをしてくれた寺田さんや奥さんに頭を下げる。
「ありがとうございました!!」
「ええんやで」
「また食いに来い、シンジ!」
「いつでもいらっしゃい」
その言葉を聞き届け、俺は走り出す。
ごちゃごちゃ考えるのは止めだ。
――――君がどうしてそこまで背負ってるのかわからないし、敢えては聞かない。けどそのままだと君はそれを背負ったまま死ぬぞ?
加持さんの言葉が思い浮かぶ。
あのとき別にいいと答えてしまった。
ヤケになって、
だからもう一度精神の中のソイツをぶん殴る。
そして追い出すように叫ぶ。
「うぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!」
叫びながらも俺は走り続ける。
守りたいものを、守るために。
○○○
「……帰って来ないじゃない!!」
「うるさいよ」
アスカが叫ぶが、レイはそれを鬱陶しそうに言うだけであった。
結局、シンジが帰ってこずに二人で共同生活を続けたのだったが、ドンドン険悪になっていた……それでもツイスターゲームのタイミングがバッチリなのは、仲が良いのか悪いのか。
「帰ってくるよ、シンジは逃げない」
「んなことわかってるわよ!!」
手持ち無沙汰になり、読んでいた雑誌を放り投げると、アスカは地団駄を踏んだ。
帰ってこないわけがない、だがここ数日のシンジの弱い姿にアスカは自身を重ねてしまった。
この先、何かがあってエヴァとのシンクロ率が下がったらどうなるかと思ってしまったのだ。
アスカにはエヴァしか無い、そしてこれを使って証明するのだ――――
そしてまた口論をしようとしたときに、部屋の扉が開き、ものすごい形相のシンジが立っていた。
シンジ、と声かける暇もなく、シンジは部屋に設置されたスピーカーを睨みつけると助走をつけて蹴り壊した。
「あ、あんたなにやってんの!?」
「カメラ、ぶっ壊した」
カタコトでしゃべるシンジにアスカは身を引く。
監視室ではミサトが走り出そうとして、同じように監視していた加持が止めていた。
子どもたちに任せようと。
そんなことを知らずにいる三人だったが、シンジはレイに向き直ると頭を下げる。
「すまん!! レイ!!」
「えっ?」
「俺さ、最初にエヴァに乗るときに言ったよな。『やらなきゃいけないのなら俺がやるっ! レイ一人に押し付けるくらいなら俺が肩代わりする!!』って啖呵切ったのに、今回出来ないって言い訳してお前に押し付けようとしちまった、本当にごめん!!」
シンジは土下座でもするんじゃないかという勢いのまま、頭を下げる。
レイとアスカは目をパチクリさせながら驚く。
そんな二人にはお構いなく、シンジはアスカに向き直る。
「アスカ、今更言うのもアレなんだけど、明日のユニゾンのために俺を鍛えてくれ!! レイも頼む!!」
「……あんたバカァ? 今更すぎるわよ、それに今からやったって――――」
「頼む!!! あきらめたくないんだ!!」
その一言に、アスカは歓喜する。
戻ってきた、自分が
そうだ、コイツは諦めることはない。どんな逆境でも立ち向かい、どんな困難も粉砕するのが
それはレイも同じだった、戻ってきたシンジの強い瞳にレイはある種の優越感を感じる。
ほら言ったとおりじゃないか、シンジは
「……はぁ、じゃあ七光、あんたシンジのサポートしなさい。タイミングがズレるならその都度指摘して、私はあんたになるべく合わせる」
「おう、頼む!!」
笑顔で言うシンジの顔をアスカは直視できずに、赤面しながら顔を背ける。
それをジト目で見るレイは思う。
何が憎んでるだ、そんな顔したらそういうこと思ってないって丸わかりじゃないか。
「んじゃ行くわよ、朝まで寝かさないから!!」
「上等っ!」
その一言を言ったアスカとシンジは本当に朝まで踊り続けた。
そして作戦当日、ミサトはモニターに映った使徒に汗を垂らす。
「目標は依然進行中! 防衛戦を突破し、ゼロ地点に侵入!」
「アスカとレイちゃんは!?」
「両名ともまだ来ていません!!」
はぁ!? とミサトが叫ぶ。
来てないってどういうことなの!? まさか……と顔を青くしたミサトは、一旦司令室から飛び出し、共同生活をしていた部屋に駆け込む。
「二人共! 準備は……ってぎゃああああああああああああ!!???」
おおよそ人間が出していい悲鳴の限界を、ミサトの喉は絞り出した。
寝ていたのだ、アスカとレイ、おまけにシンジが川の字で。
真ん中で寝るシンジの両腕にしがみつく姿に、ミサトは最悪の事態にはなっていないが、ある意味最悪の事態だわと頭を掻きむしる。
「起きて!! いちゃついてる場合じゃないわよ!!」
「……あれ? ミサトさん?」
「アレじゃないわよ、この鈍感おバカ!! 二人を起こして!! もう目標が来てんのよ!」
その一言に、シンジの目が鋭くなる。
「ミサトさん、それなんだけど俺が出るよ」
「はぁ!? シンジくんも納得してたじゃない。それにあなたじゃ」
「ミサトさん、俺がエヴァに乗るときにゲンドウに言った言葉覚えてます?」
その一言に、ミサトの動きが止まる。
強い瞳がミサトを射抜く。
……バカね、私はとミサトは心の中で笑い、そして厳しい言葉を投げかける。
「失敗は許されないわよ?」
「いつものことだ……レイ、あの作戦、頼んだぞ」
「まかせて」
そう言うとレイは寝不足の頭をふらつかせながら走る。
ミサトはシンジの手を離すと部屋から出ていこうとする。
また頼るのかと、ミサトは思うがあの瞳に何度もかけてきた自分を信じることにする。
だから、シンジに向かってこういった。
「頼んだわよ、初号機パイロット、三上シンジくん」
「あぁっ」
力強く頷いたシンジにほほえみ、ミサトも司令室へと急いで戻る。
そこで、泡食ったかのように慌てる副司令の姿があった。
「初号機パイロット、何をしている! 今日はオペレーターではないぞ」
「僕は初号機パイロットじゃありません。初号機パイロットは……彼です」
ブンという音とともにモニターに、プラグスーツを着たシンジの姿を確認して副司令は驚く。
「バカな、訓練結果は見た、君の動きでは――――」
『ごちゃごちゃうっさい!! 何度でも言ってやる!! 俺は初号機パイロットなんだよ!! レイ乗せるくらいなら死んでも生き返って帰って来てやる!!』
もうメチャクチャな論法に、オペレーターたちが笑う。
だが副司令は認めずに叫ぶ。
「葛城一尉! 止めたまえ! こんな不確定――――」
「出撃だ」
「碇!?」
自分の味方だと思っていた者に裏切られた、そんな顔をしている冬月。
だがゲンドウはそれを無視して出撃命令を出した。まるでシンジを認めているような、そんな雰囲気があった。
冬月が驚愕を顔に出すが、それは司令室にいた全員がそうだった。
そんな中、ゲンドウは早くしろと言わんばかりに口を開く。
「何をしている、目標がきているぞ」
「は、ハッ! 外電源パージ!」
その一言で、両エヴァのアンビリカルケーブルが強制脱着される。
表示された時間は1分10秒。
『最初から最大戦速、付いてきなさいよ!』
『付いてこいじゃねえ、お前が――――』
続けてミサトは頼んだわよと祈りながら、静かに言う。
「発進」
『やっぱりかぁあああああああああ!!』
エヴァ二機が急上昇し、エントリープラグに音楽が流れる。
地上の射出口から飛び出したエヴァ二機は空高く飛び上がる。
ラミエル戦の反省を活かして、最終安全装置を解除せずに空中から強襲できるように改良していたのだ。
そのまま急降下した初号機と弐号機は自由落下で膝蹴りを使徒に浴びせる。
たまらずに吹き飛ぶ使徒の体を台にして、エヴァ二機は勢いを殺して地面に降り立つ。
「凄い、息がぴったりじゃない」
「チャーシュー麺!!」
「「「「はぁ!?」」」」
レイが叫んだ言葉に、その場にいた全員が驚愕する。
ちなみにゲンドウも、驚愕で姿勢を崩していた。
レイはモニターを操作しながら、二丁のパレットライフルを武装コンテナから両機に渡す。
それを受け取った二人は寸分違わない動きで、射撃を開始する。
209mmの劣化ウラン弾が使徒のATフィールドを切り裂き、体に着弾する。
使徒は一体では不利だと感じたのか、自ら体を2つに裂いて2体に分離する。
そして目を光らせてビームを放とうとしたとき、レイはまた叫んだ。
「コロッケ!!」
二機のエヴァがパレットライフルを投げ捨てて、バク転しながら後方に下がっていく。
さてここでネタバラシをしよう。レイがさっきから食べ物の名前を叫んでいるが、コレは別にふざけているわけではない。
やはりというか勢いとノリで覚えられるほど、シンジの音楽センスはない。
どうしてもタイミングがズレるのだ。
そこでレイは考えついた、シンジの好きな食べ物を言って、それに対応する動きだけを覚えればいいじゃないと。
当然アスカはお決まりのあんたバカァ!? を言うがこれがびっくら仰天、シンジの動きが格段によくなっていた。
アスカはあんぐりと口を開けていたが、好きなものと一緒に覚えるというのは記憶法でもよくある手法である。
そもそもシンジは持ち前の音楽センスのなさで、音楽に合わせよう、動かなきゃという感じでパニックを起こしていたのだった。
それに気づいてしまえば後は簡単であった。食べ物で動き覚えよう作戦、大成功である。
「餃子!!」
初号機と弐号機が同時にバク転を止め、地面の感圧式スイッチで防壁が迫り上がりエヴァを守る。
そして攻撃が止んだ瞬間、エヴァ二機は体を防壁から出して、防壁内部に設置してあったパレットライフルを再度斉射した。
だがふわりという擬音がつくような動きで、使徒二体が浮き上がり、そのまま腕を振り上げる。
ここはアスカとシンジは勘で防壁から転がり出る。
まぁ、シンジの方はアニメを思い出して、あっそういえばという感じで避けたのだが。
使徒の腕が振り下ろされると、防壁がバターのように切り裂かれる。
「援護射撃!!」
ミサトの言葉で防衛装置と国連軍の無人攻撃機からミサイルが発射され、使徒をその場に足止めする。
地面を転がっていた初号機と弐号機は、体勢を整えミサイルの斉射が終わったタイミングでお互いを見もせずに、使徒へと突っ込む。
着弾した付近は粉塵が舞っていたが、二機のエヴァは臆すること無く正確に分離した二体の使徒へ近接格闘戦を仕掛けた。
「ハンバーグ!!」
初号機は右拳を、弐号機は左拳を振り上げてアッパーカットを使徒に浴びせる。
続けて浮き上がった体を地面に叩きつけるように、踵落としをぶつけた。ここまで動きに誤差はなく、ユニゾンは100%を維持していた。
二体では分が悪いと踏んだのか、再び合体しようとする使徒。その合体するときのタイムラグを利用して、初号機と弐号機は膝を曲げて跳躍する。
レイは仕上げの言葉を叫んだ。
「串カツッ!!!」
『『うぉおおおおおおおおおおおおッ!!!』』
同じ力、同じ高さ、同じタイミングで足を突き出した二人は、意図せず機体背部にATフィールドを展開し、
「どうして実戦でできるのよ!!!」
リツコの理不尽に対する叫び声が響き渡るが、司令室にいた全員が確信した、勝ったなと。
そのまま凄まじい速度を維持しつつ。エヴァ二機のキックは使徒のコアに直撃した。そして使徒は踏ん張りが利かずに地面を削りながら第3新東京市を離れて山間部まで運ばれる。
2つのコアが砕け散る瞬間、突き出していた足と逆側の足で使徒を蹴り飛ばし空中宙返りをするエヴァ二機。
蹴り飛ばされた使徒は完全にコアが破壊された瞬間、大爆発を引き起こし、光の十字架が空高くそびえ立つ。
それをバックに初号機と弐号機が、演技終了と言わんばかりにポーズを取っていた。
「目標反応消失! ユニゾンアタック作戦成功です!」
「おっしゃぁ! よくやったわ二人共!!」
作戦終了の報に沸いているNERV本部だったが、当の二人は電源の切れたエントリープラグ内で出して! と連呼していた。
○○○
「一時はどうなるかと思ったけど、なんとかなったからヨシ! 乾杯!!」
ミサトさんがビールを飲み干しながらそう言うと、俺とアスカは肉を無言で食い始める。
事後処理などで朝から夕方まで何も食べていなかったのだ。
祝勝会ということで、俺、ミサトさん、レイ、アスカ、それに綾波と加持さんとトウジがウチで焼き肉パーティを開いていた。ケンスケまで呼んだのは解せないが、別にどうでもいいので俺は専用のホットプレートの上に焼かれた肉を、タレやレモンをかけて食いまくった。
「にしても5日間も一緒に暮らしてたとかシンジ、ワシはお前に同情して損したと思っとる」
「そうだそうだー!」
「ガツガツガツガツガツ」
そんな二人の言い分を無視して、俺は肉とコメと野菜をかき込む。
やっぱ運動した後のご飯はうんめえなぁ。
「ハハッ、あの後が心配だったが余計なおせっかいだったってわけか……にしても食うな」
加持さんがなんか言ってるが、早々とどんぶりのコメが無くなったので、炊飯器から追加のコメをこんもりと盛る。
ふと綾波が何も手を付けてないのを見る……そう言えば肉は苦手なんだっけな。
どんぶりを置くと、俺は台所で肉を焼いているレイの下に駆け寄ると、傍に置いてあったカット野菜を見つける。
「レイ、これ持ってってもいいか?」
「まだ早くない?」
「綾波のヤツ、肉苦手らしいんで少し早めにな」
そう言うとレイがプイッとそっぽを向いて、足を蹴られる。
めっちゃいてえ……おかしい、痛覚が鈍くなったのにレイの攻撃だけマジで痛い。
とりあえず持っても何も言わないので、ボウルに入ったカット野菜を持っていき、ホットプレートの上で焼く。
なんで焼き肉の野菜ってこんな焼くの大変なんだろうね。
そんなことを思いながら、俺は焼き上がった野菜を皿に盛り付けるとレイの下に持っていく。
綾波がこっちに気づき、声を上げる。
「三上くん?」
「肉苦手だろ? だから、ホラ」
そう言うと綾波に手渡す。
すると綾波は迷ったような仕草をして、箸でピーマンをつまむとぱくりと食べる。
モグモグと何度か咀嚼すると、ポツリとこういった。
「温かくて、おいしい……」
「無理せず食べろよ? 要らなかったら俺が食うから」
そう、綾波の頭に手を置いて撫でた。
……ヤバイ、最近レイの頭撫でまくってたから流れで撫でてもうた。
俺に撫でられた綾波は、驚いたように目を開けるが次第と細くなり、撫でる手と共に頭を揺らす。
心地よさそうな綾波を見て、なんか俺も心がポカポカしていると、ガシッと両肩を掴まれる。
なんだ? と思った俺は振り向いて固まる。
そこにはハイライトが消えたレイと怒り心頭と言った具合のアスカがいた。
俺は綾波の頭から手を離すと、つぶやく。
「ゆ、許して」
「「ダメ」」
ユニゾンアタックと言わんばかりに、俺の両頬に二人の平手打ちが同時に炸裂する。
床に崩れ落ちる俺にトウジたちが絶句していた。
た、助けろよこの野郎。
「まぁ、シンジの浮気性は置いとくとして」
「なぁにシンジくん浮気も男のステータスってね」
「バカ言ってんじゃないわよ! ったく、相変わらずなんだから」
笑い合う皆を見て、俺も口の端が上がる。
こんなに楽しいと思ったのはいつぶりだろうか? というか友達や他の人を呼んで食事会なんて久しくやっていなかった。
「バカシンジ、ニヤニヤして気持ち悪いわよ」
「うっせ、平和を噛み締めてんだよ」
「バーカ、私が合わせなかったら出来なかったのに。昨日のシンジ見せて上げたかったわ、美少女のアスカ様、どうか教えて下さいって土下座してる姿」
おいゴラァ!! そこまではやってないぞ!! 床に頭こすりつけるくらいには頭下げてたけど!!
というかトウジ、てめえなにアホやってんなぁみたいな生温かい目線で見てやがんだこの野郎ッ!!!
もう知らん!! 御飯食べる!! と焼かれていた焼き肉をバクバク食べて視線から目をそらす。
「あっ、そうだミサト、後で部屋の採寸していい?」
「へぇっ? どったのアスカ、まさかウチに越してくるとか言わないわよね」
「そうよ?」
「「「「「「はぁ!?」」」」」
全員が食べるのを……嘘ついた、綾波が野菜を無言で食べていた。
あっ、調味料使ってこころなしか顔つきが明るいゾ、と俺は現実逃避をしていた。
そういえばアスカ引っ越しイベありましたねと言うが、俺はここで物申す。
「アスカさんや、ミサトさんちはキャパオーバーや」
実際、ミサトさんの部屋、レイの部屋、俺の部屋(物置小屋)で満杯なのだ。
ここの部屋は家族部屋ではなく単身者向けだが、さすがNERVのお給料、ここ結構するので部屋が大きいのだ。
だがアスカはあんたバカァ!? といいたげな顔でこっちを見る。
「シンジと一緒の部屋でいいわよ」
「は? 何いってんの?」
台所からエプロン姿のレイが歩いてくる。
ミサトさんはまーた始まったみたいな顔でビールを飲んでいるが俺やトウジ、ケンスケ、加持さんは部屋の隅でガタガタ震えながら縮こまっている。なおペンペンは自分の部屋に退避済みだ。
(どないすんねん!! 修羅場やぞ!!)
(三上なんとかしろよ!!)
(加持さん!! 無敵の大人力でなんとかしてくださいよォーッ!!)
(良いことを教えてやる、修羅場になったら男が取れる行動は唯一つ……逃げるんだよォーッ!!)
加持さんの声掛けで俺たちは、人生最高の速度でその場から逃げようと――――
「「逃げるな」」
『アッハイ』
二人の鬼の言葉に正座して、その場に留まった。
蛇に睨まれたカエルってこんな気分なんだろうなと思いながらも、背後から炎が幻視する二人に俺たちは身を寄せ合ってプルプルと震えていた。
ちなみにミサトさんは5本目のビールを開けている。
「僕の部屋をあげるから、シンジとは僕が一緒だ」
「はん! 縛り付ける女は嫌われるわよ? なーなーひーかーり!」
「何が縛り付ける女だ。シンジにベッタベタしてさ、戦闘で出来るからって調子乗ってんじゃない?」
「悔しかったらエヴァに乗ってみなさいよ。あっ、無理か! あんたのシンクロ率じゃ私には勝てないよねえ」
「エヴァに乗れるからって調子乗るなよ。料理も出来ないくせに、僕の作った料理あんなにバクバク食ってたくせに」
「出されるものは食べるんですぅー!! とにかく部屋割はあんた一人、私とシンジ二人で終わり!」
「前歯全部へし折ってやる!!」
怖い、レイが凄い怖い、というかイカンでしょと思うがギャーギャーと取っ組み合いを始める二人。
てかレイ、お前そのセリフ漫画版のシンジくんのセリフやぞ、あと言うのがもう少し後どころか後半だからな!?
「シンジ、どうにかしろ」
「ムリムリカタツムリ」
「シンジくん、こういう時は両手に花というやつだ……二人と一緒の部屋になるんだ」
「おっ? (頭が)大丈夫か大丈夫か?」
トウジの言葉を否定しつつ、キメ顔でそう言ってくる加持さんの言葉に皮肉を言う。
……だが肉もまだ食いたいし、早々と終わらせようか。
そう決意した俺は、取っ組み合う、アスカとレイの手を取るとこっちを向かせる。
「メンドイから三人一緒の部屋! 終わり! 閉廷! ホイじゃ食事再開!!」
「「ふざけんな!!」」
バァン!! と平手打ちを再び食らい、俺はその場に倒れ込む。
あー、もう好きにしろと天井を見上げる。
アスカとレイの言い争いをバックに、俺は苦笑する。
いつまで続くかワカラナイが、この騒がしい生活は飽きそうにない。
「じゃあ日替わりでシンジの部屋に暮らす!」
「はぁ!? 絶対あんた無視して来るでしょ!! だったら決めちゃったほうがいいわよ!」
「これでも譲歩してやってんだよ!? この分からず屋!!」
「うっさい姑!!」
「どっちかって言うと嫁だろ!?」
「はぁ!? ガキが色気づいてんじゃないわよ!」
……これが毎日かぁと俺は二人の言い争いを遠くの出来事のように聞きながら、目を閉じる。
ちなみに加持さんは酔っ払ったミサトさんの相手をして、俺と同じように諦めていた。
ハハッ、男って辛いね。
○○○
「初号機パイロット、三上シンジ。やつをどう扱うつもりだ」
「やつには使徒殲滅を手伝ってもらう」
暗い部屋の中、ゲンドウとキールは向き合っていた。
記述どおりに事は済んでいる、だがキールは三上シンジという異物を認めきれていなかった。
だからゲンドウに確認をしていた。
そんなゲンドウは資料の一枚を提出する。
「これは?」
「エヴァの建造計画だ。米国で作られている3、4号機のデータ」
「……新型内蔵式のテストベッド。いいや、S2機関の再現機体とその片割れ、これがどうした?」
「おそらくは失敗する」
その言葉に、キールはほぅと声を上げる。
「お得意の『鈴』の仕業か?」
「違う、人の手で生命の実を再現しようとする行為など人の傲慢さが見える行為、どうなるか言わんでもわかるだろう」
「然り、だが結果は良好であると聞くぞ?」
「何事も例外はある、その最たるものがロスト・チルドレンだ」
ゲンドウの言葉に、キールは唸る。
ゲンドウの意図が見えてこない。キールは静かに質問する。
「で、どうするのだ」
「決まっている……おそらく3号機はこちらに寄越す。4号機が事故を起こしたとなれば被害は甚大だからな」
断っておくがゲンドウは、4号機の事故は知らない。
『鈴』からのデータを見て、過去のデータとも比較し、研究者としての見解であった。
キールは鼻を鳴らす。
「なるほど、3号機を与えると」
「あぁ、やつには最後まで働いてもらうさ」
ゼーレの誤算は一つ、そこまでしてゲンドウが初号機パイロットを変更したい理由が掴めなかったこと。
ゲンドウの誤算は一つ、ある意味で彼もシンジの能力を認めていたこと。
だからこそ、悲劇は起きる。
よくある言葉で『地獄への道は善意で舗装されている』というものがある。
アレは嘘だ、別に善意だろうが、悪意だろうが、人が為す業というのは地獄そのものだ。
だから、三上シンジの未来は決まった――――ただ利用してやろうという人の業により地獄に叩き落とされるのだ。
そのことにゲンドウもゼーレも、もちろんシンジも気づかなかった。
加持さんで闇噴き出したけど、なんで串カツのおっちゃんには出さんの? と思うかもしれないけど加持さんはまだ上辺だけしか触れてないから、おっちゃんは踏み込んできたから、その違い。
本当の流れはレイとシンジが一緒に乗って、アスカむくれる→修羅場継続だったけどなんか書きたいのとちゃうな? と全部消して一から書き直したのがコレ。オリ主マンセー? うるせえ、光落ちアスカと気持ちよく戦いてえんだよ、上等だろオォン!?(開き直り)
ちなみに、アスカとレイですが同族嫌悪のようにお互いを敵視しあってるけど、なんだかんだ女同士で、お互いこんなに長い時間一緒にいる同年代の同性がいないので、気になってる……つまりツンデレなんだよ!!!
いやぁ17時までに書けてよかった(なお五分前)
あとなんでまた日間一位とれてんですか(真顔)昨日20位くらいまで下がってたじゃないですかやだー!!
ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?
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いいゾ~これ(両方ともIKEA)
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(ifストーリーだけ)INしてください?
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(その後の話だけ)はい、よういスタート
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どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)