中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について 作:re:753
また精神が闇に落ちかけたのでどうすると思って、とりあえず書くしかねえ!! とかきまくってる。凄いね、人間一日中文字書いてるけど今が一番目が覚めてるよ(白目)(現在深夜一時)
ミーンミーンと蝉の鳴き声が聞こえる。
この世界では年中蝉の声だ。
多くの野生動物が絶滅、もしくは数を激減させたが変わらないどころか増えていく生物もいた。
蝉はその一種だった。
三上シンジは珍しく誰も連れず、雨に濡れている道を歩いていた。
いがみ合うレイとアスカも、手を握ってくる綾波も、ツッコむトウジも、カメラを撮ってくるケンスケもいない。
そんな彼は駅に向かって歩いていた。
とある人物を迎えに行っていたのだ。
「……あっつぅ」
駅につくと雨のせいもあるが人通りはほぼ無い。
当たり前であるが、第3新東京市の人口は減っていく一方だった。
人が減れば経済が動かない、そんな悪循環。シンジのクラスメートも少しずつその数を減らしていっていた。
今ではクラスを統合するなんて話も出ている。
シンジは自販機でジュースを買うと勢いよく飲み干す。
「ぷはぁ……」
「美味しそうに飲むね、シンジ君」
シンジを呼ぶ声に振り向くと、如何にもサラリーマンという風貌なメガネをかけた男性が立っていた。
「……親父」
「久しぶり。元気そうで良かったよ」
ニヘラと笑う父親に、シンジは肩をすくめる。
「そっちこそ、転勤生活楽しんでる?」
「悠々自適さ、さっ、行こうか。今日明日は休みにしてるんだ」
「えっ、なんで」
驚くシンジは、メガネを直した父親を見る。
父親はごく自然に言う。
「なんでって、お前の面談とお世話になってる方への挨拶とシンジの生活ぶりを見に来たんだよ」
視点は変わり、NERV本部。
現在はシンジを抜いて、レイ、アスカ、綾波の三人がハーモニクスおよびシンクロテストを行っていた。
三人は目を閉じながら、プラグ内で集中する。
突出して高いのはアスカだったが、最近はレイもシンクロ率に好転の兆しが見えてきていた。
「レイちゃん伸びてきましたね」
「えぇ、どういう心境の変化かはわからないけどハーモニクスも好調、シンクロ率も40%を超えてきてるわ」
リツコはレイの評価を上げていた。
これならば万が一の際、初号機を任せられる……そしてこのときの判断をリツコは後悔することとなる。
一方、ミサトは硬い表情のままレイを見ていた。
心境の変化、というのはわからないものだと思う。
保護者となって三ヶ月、碇レイという人物は他者を信用しない娘というのがミサトの評価だった。
今、アスカや自分と仲良くしているのはシンジとの関係性で都合がいいから、シンジがいなくなればプッツリと縁は切れるとミサトは冷めた目で見ていた。
だが、大切な家族であることには間違いない。当人がどう思っていようと温かい他人の手で作られた食事なんて、ミサトは久々に食べさせてもらった。
……今日はダメね、とミサトは自分の感情がネガティブだと自嘲する。
出かける前に見た夢のせいだろうか? 十五年前のあの夢を。
「ミサト、気分が悪いの?」
「……ちょっち、ね」
顔にでるほどだったのかとミサトは気を引き締める。
リツコはグラフから顔を離し、ミサトに向き直る。
「最近見てなかったみたいだけど、久々に見たの?」
「……えぇ、ごめんなさい。顔に出てた?」
「しっかりなさい、とは言えないわね。今日、このあと呑みに行かない?」
「ごめんなさい、今日シンジくんのお父さんが来てるのよ」
その一言で、リツコはハッとする。
「あぁ、そうだったわね……レイちゃんのご飯出るの?」
「仕込みバッチリよ。息子に似て食べるらしいわ」
マジかよとその場にいた全員が思う。
シンジの過剰とも言える大食いはNERV食堂ですら見られており、一回出禁にされたほどである。
そのシンジと似ている!? と三上家のエンゲル係数を心配する。
リツコはふぅと息を吐き、ミサトに言う。
「レポート書き終えたら行くわ」
「ったく、レイちゃんに胃袋掴まれてんじゃないわよ」
「美味しいものは美味しいもの……さて、三人ともお疲れ様。上がって頂戴」
試験用のエントリープラグが空き、三人がそこから出て、泳いで対岸の扉まで歩いていく。
そしてシャワーを浴び、体内のLCLを抜ききって着替えている最中、アスカはレイに話しかけてきた。
「そういえば今日、バカシンジのお父さん来てるんだっけ」
「それ、おじさんの前で言うなよ。僕の七光ってのもだ」
「流石にそこまで常識知らずじゃないわよ。で、どんな人なの?」
アスカの言葉に、レイは答えるか迷い、まぁいいかと口を開いた。
「普通の人だよ。詳しい職業は知らないんだ、サラリーマンだって聞いてるけど」
「サラリーマン……普通ね」
アスカはつまんないと言わんばかりにぶーたれる。
シンジのことは知り尽くしているし、『コレクション』は今でも増えているが家族のことは知らないし、普通と言われても、アスカは普通の家族の形を知らなかった。
「……お父さん?」
珍しく綾波もペタペタと全裸で歩いてきた。
レイはこのバカ、いつになったら羞恥心を持つんだと思うが、最近はひよこのように付いてくる綾波が無害だと判定して、だいぶ甘くなっていた。
「そっ、バカシンジの進路相談で来てるんだって」
「……三上くん、そわそわしてたのはそれ?」
「三ヶ月ぶりの再会だもん……僕のせいだけど」
レイも、何も思わなかったわけではない。
一人息子が幼馴染に付いていったら理由もわからずに、見知らぬ土地で住めと言われたのだ。
この間の電話の際、レイは怖かった。また否定されるんじゃないかと。
だが聞こえたのは優しいシンジの母親の声だった。
――――久しぶり、元気にしてたかい?
この言葉にどれだけレイが救われたか、言わなくてもわかるだろう。
アスカはその様子を意外そうに見る。
「あんた、バカシンジ一筋かと思ったら違ったのね」
「お世話になったしね」
「……三上くん、ポカポカしてるの?」
「「は?」」
綾波の一言に、レイとアスカが疑問の声を上げる。
最近シンジに影響されて、変なことを口走るようになったが、何だポカポカってと二人は顔を合わせて首を横に倒す。
「そのポカポカって何よ」
「……三上くんを見てるとポカポカする。碇司令に聞いてもわからないけど、碇司令を見ると同じようにポカポカするから、お父さんと会った三上くんもポカポカしてると……思ったの」
前言撤回、コイツはハエだとレイは綾波を見る。
アスカと同じように、気づいてないだけでシンジという光に惹かれている。
少しでも気を許した自分がバカだったとレイは目を細める。
「ファースト、それってさ――――うぅん、なんでもない」
アスカは言いかけた言葉を途中で引っ込める。
それって好きってことじゃないの? それを言うとなにかが壊れそうで、アスカは言えなかった。
その後は特に会話もなく、三人は更衣室から出る。
そして三人は、NERVの駐車場に向かい、ミサトの車に乗り込む。
「ごっめんねー、ちょっと待ったー?」
「「「別に」」」
三人の言葉がシンクロし、なんとも言えない空気が漂う。
ミサトは可愛げのないやっちゃなーと思いつつも、愛車をかっ飛ばして家路に急ぐ。
「そういえば今日の食事会、大丈夫かしら? シンジくん我慢できずに食べてるんじゃないの?」
「おじさんがいますし、止めてますよ」
「どうだか、あいつのことだし食べてるんじゃない?」
ミサトは苦笑しながらもあり得ると思った。
父親か、と遠い目ですっかり暗くなった夜空を見る。
ミサトの脳裏には十五年前の出来事が過ぎっていた。
あの頃のミサトとレイは似ていた。違っていたのは隣にシンジが居なかったことだろうか?
仕事ばかりの父親に嫌気が差していたが、なぜかあのとき南極の父親が隊長を務める調査隊に同行した。本心では嬉しかったのだ、自分を連れて行ってくれた父親に。
そしてアレが起こった。
セカンドインパクトと呼ばれた現象、何が起きたのか未だに分からない。
覚えているのは巨大な羽のようなものと光る巨人……そして自分を助けてホッとしている父親の姿。
――――お父さん?
次の瞬間、父親の姿が消え暗闇の中取り残された。
そして南極の海の上で漂流し、救助された。
思い出したくないミサトのトラウマ、最近はシンジたちとの生活で見る頻度は少なくなったが、シンジの父親が来るということで思い出してしまったのかもしれない。
「ミサト! そこ曲がるでしょ!?」
「あっ、やっば」
考え事をしていたミサトは急いでハンドルを切る。
見事なドライビングテクニックで曲がっていくが、凄まじいGがかかりアスカやレイがぎゃああああ!! と叫び声をあげる。綾波は少しワクワクしていた。
「ごっめーん! 今日何飲もうか考えてたのヨ」
「こんの飲んだくれ!! 少しは減らしたらどう!?」
「酒は私のガソリンよー?」
にゃはははと無理やり笑うミサトは頭を振る。
いつかは終わる、そんな家族ごっこを今は楽しもうとミサトはアクセルを踏み込み道を急いだ。
ミサトたち四人が部屋に戻るとトウジ、ケンスケ、ヒカリがおり、ふてくされるシンジの隣で柔和な笑みを作っている男性が、すっと立ち上がりお辞儀をした。
「葛城、ミサトさんですね? どうもシンジくんの父です」
「これはご丁寧に、申し訳ありません。来客がいるのに仕事があったものですから」
「お気になさらず。やあレイちゃん久しぶり、少し大人っぽくなったかな?」
「おじさんも変わりないみたいですね。シンジ、今御飯作るね」
「……」
何も言わずに頬杖を突いているシンジは、むくれていた。
アスカがトウジの傍まで行くと耳打ちする。
「何があったの?」
「知らん、ワシらが来たときにはコレや」
「キミは……あぁ、レイちゃんが言っていた同居人だね?」
シンジの父親の言葉に少しムッとしたが、知らないのだからしょうがないとアスカは抑える。
「いつもシンジくんにお世話になってます。惣流・アスカ・ラングレーです」
「ドイツからホームステイしてるんだって? その年で大したもんだ……そちらのお嬢さんは?」
アスカの紹介をにこやかに答え、ミサトが用意していたアスカのカバーストーリーに感心していた父親は、綾波を見る。
だが口下手な綾波は紹介をせず沈黙が場を支配する。
「綾波レイ、さっき言ったろ。口下手だからあんま困らせるなと」
「ハハハッごめんよ。まぁとりあえずこれで全員かな? 随分と大勢だね」
父親は笑いながら見渡す。
テーブルに用意してあるジュース、父親とミサトはビールを注ぐと乾杯の音頭を取る。
「では、今日集まってくださった皆さん。いつもウチのシンジ君と仲良くしてくださってありがとうございます、では乾杯!」
『乾杯!』
思い思いのジュースや飲み物、先に冷蔵庫に冷やしていた前菜などを皆がつまむ。
だが一人、何も手を付けずに居たものがいた、シンジだった。
ずっと不機嫌な表情で頬杖をついていた。
「シンジ、お前が食わないとか気持ち悪いで?」
「……いろいろあんだよ」
虫の居所が悪いから話しかけるなと、トウジを拒絶したシンジの姿にシンジの父親以外が驚く。
ここまでふてくされるシンジは珍しかった。
父親はため息を吐いた。
「進路相談のあれ、まだ根に持ってるのかい?」
「別に、そんなんじゃねえよ」
「あぁああああ!!! ミサトさん!! その襟章!!」
場の空気を読まないのか、ケンスケがミサトの襟章を指をさす。
ミサトたちは目を見開くが、トウジだけが冷静につっこむ。
「ケンスケ、お前また……」
「気づかないのか!! ミサトさんの襟章が線が二本になってる!! 昇進されたんですね!! おめでとうございます!」
「んっ? あぁ、三佐ですか、失礼ですがお年は?」
「えっ? その、もうすぐで三十路ですわ」
「その年齢で三佐とは素晴らしいですね、エリートだ」
ガシャン! となにかが割れる音がした。
全員の目が音の出る方向に向く、シンジが手に持っていた湯呑を落として割った音だった。
「三、佐……?」
「そうだよ!! 凄いよなぁ」
「そんなんじゃないわ――――シンジくん?」
ケンスケの褒め言葉に謙遜するミサトだったが、シンジの様子がおかしいことに気づいて、声をかける。
まるで死んでしまいそうな顔をしたシンジは、父親の肩を掴む。
「親父、外で話したいことがある」
「もう少しでレイちゃんのご飯が来るよ?」
「いいから!! 大事な話なんだよ」
そういうとシンジはフラフラと玄関に向かい、そのまま外に出てしまう。
トウジはケンスケを咎める。
「ケンスケ!!」
「い、いや俺……」
「メガネくんのせいではないよ。ただあの子が僕に甘えているだけだ」
よっこいしょと腰を上げる父親は、微妙な雰囲気になってる場の空気を四散させるためにパンと音を立てて両手を叩く。
そしてニコリと笑うと言う。
「ウチの息子が申し訳ない。少し話してきます。大方進路相談でのことでしょう」
「……シンジ、くんは何と言ったんですか?」
思わず呼び捨てにしそうになったアスカは、なんとかくんを付けるが、父親は困ったように笑うと頭を掻きながら言った。
「『進路なんて無い』、そう言ったんですよ」
○○○
マンションの外は蒸し暑かったが、昼間に雨が降ったおかげか涼しかった。
ミサトさんの昇進、そして親父の二連休、最悪の事態というのは続くのだと俺は思う。
皆に悪いことしたと思う。トウジやメガネは俺が呼んだのだ。親父が来るし歓迎パーティーでもやらないかと。
ミサトさんの昇進の次の日、アイツがやってくる。
衛星軌道上から使徒が降ってくるのだ。
シェルターもあるし、新劇場版仕様なら国連軍などが総出で、住民の避難をしてくれる。
今までの事例から新劇場版設定の奴が降ってくると思うが……正直に言う、怖いのだ。
身内が巻き込まれると思った瞬間、目の前が歪み、どうしようもなく感情が高ぶった。
そしてトウジの気持ちがようやく理解できた……最低だな、俺。身内が巻き込まれて初めて気づくとか。
ふと前を見ると、音もなく親父がいた。
昔から気配を消すことは得意なんだよなぁ、この人。
「……シンジ君、昼間は僕も大人げなかったよ、ごめんね」
「違う、そっち……もあるけどそうじゃない」
「じゃあなんだい?」
言っていいのか、わからなかった。
使徒が来る、今すぐ逃げろといいたくなる。
だが言っていいのか本当にわからない。ここで言えば確実に監視の目と耳に届く、ただでさえ俺はイレギュラーなのだ。万が一、明日突然現れた使徒の存在を知っているとバレたらどうなるかわかったものではない。
そんな俺の葛藤を知らずに、親父は噴き出す。
「な、なんだよ!?」
「いや、子供の成長は早いと言うが本当だなって……レイちゃんだけを見ていたあの頃よりもね」
ドキンと心臓が跳ね上がる、気づいてたのか?
「気づいてたのか? って顔してるね。当たり前だよ、突然連れてきて、コイツを守るなんて言い出した時はヒーローモノの見過ぎかとおもったけど……違うよね?」
「……」
「ふふっ、シンジは母さんそっくりだね。表面は思い切りが良くて、その実、裏で何かに怯えている」
初めて親父が怖いと思った。
というか親父には悪いがこれと言って印象がなかった。
いつも一歩下がり、団らんを眺めているようなそんな印象しかなかったが、今の親父はなんだ? 全てを見透かしてくるような目をしている。
ゴクリと喉が鳴るが、親父は苦笑する。
「まぁ、詳しくは聞かないよ……ただ進路相談のアレは頂けないかなぁ」
「まだ言うのかよ」
進路相談で、俺は正直に答えた。
進路なんてありませんと、中学二年、いや三年になって生きていられる保証は……いや、俺はこの世界で生きていたくない。
誰が好き好んで生きろと言うんだ。
ゼーレとの戦いに勝利して、その先は? また同じようなことが起きないとは言えない。
だから死ぬんだ……わからない未来が怖いんだ。
そう思考が闇に沈みかけて、親父がこちらを微笑みながら見ていた。
「……シンジ君、少し年長者からのアドバイスだ。あんまり悩まない。十代の頃の悩みなんてね、二十代になればあーバカだなぁと思うべきなんだよ」
「……」
「僕だって幾らでも悩んだけど、こうして生きてる。それにね――――自殺願望なんてそれこそセカンドインパクトを生き抜いた僕らは幾らでも見てきてるんだよ」
息が止まる。
知ってたのか……?
「うぅん? さっき話すまでわからなかった。ダメな父親だなぁ。息子がこうなってるなんて気づかなかった」
「……どうして?」
「親はね、子供が思ってるより子供を見てるんだよ。どんなに離れてもね……まっ、今まで気づかなかったダメな父親だけどねえ」
そうケラケラと笑う親父の顔は、いつもより元気がなかった。
落ち込んでる? そう思った俺は親父に声をかける。
「お、親父」
「シンジ君、いいかい? どんな選択だろうと僕は君の意見を尊重する……だけどね、今が辛くても未来には良いことが沢山あるんだ」
親父がここまで饒舌なのを初めて聞いたかもしれない。
それに申し訳無さそうにする親父に、俺はチクリと胸が痛んだ。
そんな俺を気遣ってか、パンパンと手を叩く親父……話は終わりってか。
「さっ、先に戻ってレイちゃんに甘えてきなさい。君のために美味しいものいっぱい作ってくれてると思うから」
「で、でも」
「でももかかしもないよ、今日はオシマイ。父さんだって仕事で疲れてるんだよ?」
首をコキコキ鳴らす親父を見て、俺はため息をつく。
そのまま歩き出して――――ふと立ち止まって言う。
このくらいなら大丈夫だろ。
「明日、早く帰れよ? 母さん心配してんだろ?」
「ハッハッハッハ、観光して帰るさ」
こ、こんのクソ親父……まぁいいか。
――――明日、全力で守ればいいだけの話だ。
「なぁ、親父……今日は、ありがとな……その、不貞腐れて悪かったよ。先に戻ってるな」
「ふふっ、はいはい、あと孫は早めにな、別に国際結婚でも父さんなんにも思わないから」
「こんのセクハラ親父!! 変態! 変態!! 変態!!!」
「ハッハッハッハ、たんのしー!!」
少しでもすまんかったと思った俺がバカだったと憤慨して俺は、ミサトの部屋へ戻った。
○○○
シンジを見送った父親は手を振りながら、物陰に隠れているものに声をかける。
「そろそろ出てきていいよ? リョウジ君」
「……いつから?」
「最初から、君はリスクを好むクセがあるよね。引き継ぎをするときに直すよう言ったのに」
物陰から加持が冷や汗を掻きながら出てきた。
降参するように両手を上げる。
父親は柔和な笑みを見せるが、目は笑っていなかった。
「NERVって温いね。シンジ君が離れたらすぐに目を離してる。いや、質が悪いかな?」
「あなたにとっちゃ皆質が悪いんじゃないですかね」
加持も軽薄に笑うが、緊張で手が震えている。
シンジの父親とは誰か、調べていなかったわけではない。
だが加持もそこまで暇ではないし、まさか自分の元上司だとは思ってなかったのだ。
「高槻先輩……」
「今は三上だよ。裏の世界ともおさらばしてる。ただのサラリーマンだね」
ニッコリと笑う姿に、隙はなかった。
子供も大きくなったし引退します、と唐突に言ったことを今でも覚えている。
そして政府高官が誰一人反対しなかったのも、自分の記録をすべて消していたのも。
「まぁ、僕から言うことは何もないよ。大体は把握したし……ザルと言うか見られても困らないって感じだねぇ、アレ。E計画? 本命じゃないだろう」
「引退して十年経ってませんか?」
「それだけ進歩してないってことでしょ。安心して、あの子にも妻にもなーんも言ってないからね……ただシンジ君がこうなるとは思ってなかったよ」
加持はタバコに火を付けながら震えを誤魔化そうとする。
だが、シンジの父親は笑う。
「現役に勝てるほど自惚れてないよ、鉛筆もないし」
「……鉛筆で二人殺したって話、マジなんですか?」
「えっ? あぁそれは嘘だよ」
父親は加持が持っていたタバコ箱からタバコを引ったくり、懐から出したジッポライターで火を付けて吸って、煙とともに言葉を言う。
「本当は三人さ……ただ息子があそこまで追い込まれてることに気づかない奴さ、全く外のことはわかっても身内のことは何もわからないとはね」
「先輩……」
「リョウジ君、だからちゃんと話すんだよ? あと君の目的もわかってるけど止めといたほうがいい、まだ好きなんだろう? 彼女」
加持の眉が動くのを父親は見逃さなかった。
「キミはスパイをするには優しすぎるよ、リョウジくん」
「……それでも知りたいんですよ、真実を」
父親はゆっくりとタバコを吸うと空を見上げる。
「長生きできないタイプだね」
「おんなじこと、採用のときに言われました」
「ハハッ、そりゃそうだ。あのとき言ったのも僕だもの」
暫くの間笑い合い、父親は加持を見つめる。
「あの子を見守ってくれ。僕は最低の父親だ……バカだよな、子供だからってちゃんと取り合わなかったのさ」
「先輩……どこまでやれるかわかりませんよ?」
「それでいい、もう上司命令じゃないんだから……さて、戻ろうか。レイちゃんのご飯は絶品だぞ!」
なお精神が復調したシンジが全て平らげており、父親と加持はミサトの作ったカップラーメンを食べて仲良く吐き出したのであった。
ちなみに父親は平凡なサラリマンです、不正は一切ない、いいね?
実際のところなーんでここまでやったのか自分でもわからん。ただシンジの両親はちゃんとシンジを愛してるって書きたかっただけなんや……ドウシテ、ドウシテなんですかね……(展開ガバ)
とりあえず走り抜くのみ、次回も大暴走するけど許して。
ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?
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いいゾ~これ(両方ともIKEA)
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(ifストーリーだけ)INしてください?
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(その後の話だけ)はい、よういスタート
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どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)