中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について 作:re:753
やりたい放題だけどよく考えたら最初からシンジくんTS時点で振り切ってるんだから……振り切らせてください(A並感)
あと誤字報告今までスクロールして確認してたけど、表示切り替えで簡単に見れて草……草……orz
使徒発見の報が伝えられたのは唐突であった。
突然現れた。そう表現するしか無いと言うほど唐突にその使徒は衛星軌道上で見つかった。
「三分前に突然現れました」
「映像は?」
「監視衛星からの映像、来ます!」
発令所の巨大なスクリーンに、黒い球体の周りを不規則に動く目のような模様を浮かべる使徒が見えた。
その周囲は歪んでおり、ミサトは冷や汗を垂らす。
「光すら歪めてるの?」
「おそらくは超強力なATフィールドによって歪めてるんでしょうね。国連軍の衛星艦隊の動きは?」
「虎の子のN2爆雷投入とのことですが……」
「おそらく効果なし、か。使徒の動きをMAGIで計算……するまでもないわね」
スクリーンにMAGIによって計算された使徒落下予測地点が表示される。
「
「落下したときの被害は?」
「第3新東京市の消滅、セントラルドグマまで丸裸、そしてここが海へと変貌させられるだけよ」
もはやこれしきで取り乱さないリツコ、一日の休日で前回の精神的ダメージを回復していた。
ミサトは苦笑する。
ATフィールドと使徒本体の質量が降ってくる。
ビームを使ってくる使徒たちはまだ可愛いものだ。ここまで思い切られると逆に尊敬してしまう。
質量兵器による圧殺。単純明快にして敵ながら天晴れ。
だが感心してるだけでは始まらない。落下までの数時間でやれることをやろうとミサトは決意する。
「碇司令とはつながった?」
「ダメです、ATフィールドの影響かジャミングされてます」
「独自に判断するしか無い、か」
ミサトは作戦を組み立てる前に、市民の避難を指示する。
「半径120キロ圏内の全市民の退避を開始。日本国政府並びに関係各所に連絡、特別非常事態宣言D-17を発令します。国連軍にも呼びかけて。なんでもいい、市民を安全圏まで逃がすのよ!」
動きは早かった、というか真っ先に政府関係者が逃げ出したもんだから、その周辺の人員も軒並み逃げ出し、国連軍どころか民間のバス会社まで総出で人員の輸送は落下予測の二時間前までには完了した。
そしてエヴァパイロットであるシンジ、レイ、アスカ、綾波は発令所に集められた。
「敵は電波撹乱をして正確な位置を悟らせないようにしているわ。ロスト直前までのデータから落下地点を予測したのがこれ」
第3新東京市のマップが表示され、広大な赤い光点が表示されて、レイが口を開く。
「広すぎる……」
「そう、だからエヴァ3機の同時運用でカバーしてもらいます」
代わりに青い光点が三つ表示され、中心に『EVA』と書かれていた。
「この配置の根拠は?」
「勘よ」
「「はぁ!?」」
アスカとレイが同時に驚くが、シンジはプラグスーツを弄りながら言う。
「つまりいつもどおりってわけだ」
「えぇ、女の勘も馬鹿にできないわよ?」
「……あ、アバウトすぎる」
シンジの言葉に微笑みながら返したミサトに、アスカは頭を抱えながら悩むが、やるしかないと奮起する。
「……作戦は?」
「手で受け止めるのよ」
その一言に綾波ですら目を見開き、発令所のスタッフも「正気か!?」と驚く。
だがミサトは言葉を続ける。
「最終落下位置が予想できない以上、エヴァ3機は各オペレーターの誘導と自身の目視での自己判断により現場へ急行。ATフィールドにて目標を受け止め、手の空いた機体でコアを破壊するわ。さらにアンビリカルケーブルを脱着しての作戦行動になるから作戦時間は五分が限度ね」
「コースを大きく外れたら?」
レイが質問する。
「その時はアウト」
「機体が衝撃に耐えきらなかったら?」
アスカが質問する。
「ツーアウト」
「電源が切れたら?」
綾波が質問する。
「スリーアウト」
「バッターチェンジする人員がいないんですがそれは」
「勝算なんてないわ。ねえ赤木博士」
コーヒーを啜りながら、説明を聞いていたリツコは冷静に告げる。
「シンジくんがいるでしょ? なら勝率100%でいいわよ」
「い、いやMAGIの計算」
「機械の計算ごときで測れたら苦労しないのよ」
ドロリと瞳が濁ったリツコが見えたので、ミサト、レイ、アスカが抱き合いながら怯える。
シンジは頬を掻きながら恥ずかしがる。
「思いつきを数字で語れませんもんね」
「えぇ、いい加減慣れてきたわ。もうATフィールドでもビームでもなんでも発射しなさい。もう驚かないわ」
「リツコ、そんなこと言うとマジでなるわよ?」
ネタバレで言うと、シンジはマジでナニカを発射することになる。
リツコは、はっ! と鼻で笑う。
「……シンジくん、それだけ私達はあなたに賭けてるの。MAGIの予測すら超えるあなたの行動、それなら大丈夫だって考えて、NERV職員は全員ここに残ってるの」
シンジは目を丸くする。
原作では非戦闘員およびD級勤務者の退避はしていたのだ。
それがない、緊張でシンジの喉が急速に乾いていく。
「失敗するなとは言わない。……だけど、信じてるわ。エヴァンゲリオン初号機パイロット、三上シンジを」
「子供に背負わせるもんじゃねえなぁ……」
シンジは遠い目をしながら、頭を抱える。
「そう、背負わせるものじゃない。だから今回は作戦からの辞退も許可します」
ミサトがそう言うが、四人の瞳は揺れない。
その瞳を一瞥して、ミサトは拳を握りしめる。
「ごめんなさい、一番怖い思いをさせてしまって」
「別に?」
「そうそう、いつものことよね」
「……えぇ」
「僕はシンジが絶対に守ってくれるし」
四人が思い思いの言葉を発して、ミサトはポケットから便箋を出す。
「縁起が悪いけど規則では遺書を遺すことになってるけど……要らなそうね」
全員が首を振る、なんちゅーもん渡すんだボケぇ! と言わんばかりにミサトを睨むので、ミサトは苦笑しながら便箋を握りつぶす。
「終わったらステーキよ!」
「パインサラダ付きでな!!」
「シンジくん、それ死亡フラグよ……」
ネタが分からない、セカンドインパクト世代とネタがわかる職員は一様に噴き出す。
だからこそ、シンジは続ける。
「あとそれだと綾波が食えないんで、寿司行こうぜ! 寿司!! 回らないやつ!!」
「シンジくん、それしたら破産するから許して!! 私の財布壊れる!!」
「ミサト、給料日前ですものね」
ハハハハハと笑い声が溢れていた。
二時間後にはここに使徒が落っこちてくるというのに、誰も死ぬとは思っていなかった。
シンジならやれる、そんな幻想を押し付けていることに誰も気づいていない。
「ではパイロットはエヴァに搭乗後、所定位置で待機……皆、頼んだわよ」
そして四人のパイロットは歩いていく。
その背を見送ったミサトは、モニターに拳を叩きつける。
「……こんなにも悔しいのね」
「えぇ、装備も何もしてやれない、結局はあの子達とエヴァの性能を信じるしか無いのよ、私達は」
「ここが吹き飛んでもあの子達は助かるのよね?」
ミサトは確認するように、リツコに問いかける。
「えぇ、ATフィールドのおかげで生き残るわ」
「ならばよし……皆、本当にいいのね?」
ミサトは発令所、そして今もなおNERV本部に残っている全職員に問いかける。
だが全員の首は縦に振られた。
「子供だけに危ない目にはねえ」
「そうそう、シンジくんの勇姿を見ないと」
「あの子達のオペレーターが出来るの私達しかいませんし」
「……ありがとう」
ミサトは顔を伏せて、拳を握りしめる。
国連軍も目視や早期警戒管制機を出して、最後まで目標の追跡を約束してくれた。
全員、最後の最後まで踏ん張る、それがエヴァパイロットに報いることだと信じていた。
ミサトの肩に、リツコが手を置く。
「感極まるのは全部終わってからね。まずは子どもたちを支えましょう、じゃないとかっこ悪くてかなわないわ」
「そうね、総員!! エヴァのチェック、使徒の落下予測ギリギリまでやって! ここで踏ん張らないと笑われるわよ!!」
『了解!!』
○○○
「……緊張するか?」
「……うぅん、仮に死ぬとしてもシンジと一緒に死ねるならいいよ」
エントリープラグ内で、俺の膝に乗るレイの頭を撫でる。
出撃までおおよそ十分前。
各々、エントリープラグ内でリラックスしていた。エヴァの最終チェックが終わり、今は内部電源に電力を過充電していた。一秒でも多く動くようにすると言っていたが、科学的根拠あるん? と聞いたら気合だ!! と言われて、随分NERV職員のノリ変わったよなぁと思う。
一緒に死ぬ、か……圧死とか楽なんだろうかと思う。
――――自殺願望なんてそれこそセカンドインパクトを生き抜いた僕らは幾らでも見てきてるんだよ
親父の言葉が、心に残る。母さんにはバレてないと思う、あの人細かいの見るの苦手だし……はぁ、親って言うのを舐めてたのかもしれない。
正直に言って、仕事で家にいない親父の印象はあまりなかったが、今回ので百八十度見る目が変わった。
そう物思いに耽っているとミサトさんからの通信が入った。
『シンジくん、今大丈夫?』
「えっ? 何かあったんですか?」
『うぅん、広報部からシンジくんあてに留守電が入ってるって……再生するわね』
ツーという音の後に人の声が聞こえた。
『あー、伝わるかわからんけど、ワシじゃ、トウジや。その……こんな大事になってるからシンジ、また頑張るんやろ? 言葉だけでも……あぁもう! まどろっこしいわ!! いいからはよ帰ってこんかい!! じゃ! ワシ行くで!』
「……トウジ」
次のメッセージが再生される。
『えっと、その……昨日はごめん!! 何が気に障ったかわからないけどさ、それでもあぁなるなんて思わなかったんだ。面と向かって言えばいいけど言えないから……だから、今言っとく、ごめん!! その、頑張れよ!』
「あの、ボケメガネ……」
次のメッセージが再生される。
『えっと、おぼえてるかわからないけど、あのとき助けてくれてありがとね、お兄ちゃん! どこに伝えればいいのかわからないから、お父さんの職場にかければ大丈夫だって言われたからかけたよ! 今度は妹と一緒ににげるからお兄ちゃんは……無理しないでね!!』
「あの子か」
シャムシエルのとき助けた子供の、男の子のほうだろう、声を聞いて思い出した。
次のメッセージが再生される。
『おう、シンジ、久しぶりだな。寺田だ、元気にやってるぜ? そっちはまた大変みたいだな……実はな、孫が生まれたんだよ。これが可愛くてなぁ、シンジにも見せてやりたいから全部終わったらそっち戻る。だからよ、頑張れシンジ。遠い場所だが、また串カツ作ってんだ、腕落とさねえからよ、その、なんだ、また食いに来い!!』
「寺田さん……」
次のメッセージが再生される。
『あぁ、聞こえてる? シンジ君、いやー大変だったよ、いきなり避難とか言われて、おかげでラーメン十杯目食えなくて残念だったなぁ。多分、残ってるんだろシンジ君は? あぁ、切らないで切らないで、何も知らないサラリーマンですから……親として失格だけどさ、シンジ君、僕はずっと見守ってるよ。だってお父さんは最後まで子供を守るためにいるんだからさ。だからずっと見てる、君がどう思っていようとどうなろうと、僕は君の父親だ。それだけは忘れないで。信じてるぞ、シンジ君……じゃ、レイちゃんにもよろしくね、孫は早めで頼むよー』
「お、おじさん!?」
「気にしなくていいぞ、レイ」
顔を真赤にするレイに、俺も少し赤面する。
あんの変態親父。今回のこと母さんにチクってやる。
苦笑するミサトさんの声が聞こえる。
『シンジくん宛のメッセージは以上よ。でも市民からすごい数のメッセージ届いてるわ、諜報部も職務怠慢よねえ、エヴァのことが知れ渡ってるわ』
「なんて?」
『紫や赤のロボット頑張れ、ですって。零号機はあまり出てないからないけど、クラスメートから頑張れって届いてるわ』
『……はん! 職務怠慢よね!! 困っちゃうわ!!』
「アスカ、口の端笑ってんぞ」
通信の向こう側で慌てる声が聞こえる。
図星か……まぁ、悪い気分ではないな。
『……ポカポカしてるの? 皆?』
「そのポカポカってのがイマイチわからないが、今の言葉聞いて綾波、お前どう思った?」
綾波が通信に入ってきたので、質問する。
綾波は少し考えたあと、答えた。
『胸がポカポカする』
「それはな、嬉しいって言うんだよ」
『嬉しい……?」
「そう、だから今度教室行ったら皆に挨拶したらどうだ? 多分ポカポカするぜ?」
少しの沈黙の後、綾波は小さくうんと言うと通信を切る。
アスカが通信に入ってくる。
『ファーストってさ、言っちゃ悪いけどお人形みたいって思ってたけど……ただ感情表現の仕方がわからないだけだったのね』
「せやで、だから色々教えてやってくれ」
『気が向いたらね。あっ、バカシンジ、コレが終わったらちょっとやってほしいことあるのよ』
アスカから頼み事とは珍しいな。
レイがすごい形相してるけど顎をコショコショして機嫌を取る。
あぁ~、ふやけていく表情可愛いんじゃぁ~。
『デートしましょ』
「えっ」
「あ”?」
あー!! いけませんレイ様、暴れては!! あー!! レイ様、あー!!!!!
通信に拳を叩きつけようとするレイを羽交い締めして止める。
アスカはフフンと上機嫌に言う。
『七光ばっか相手してたんじゃ飽きるでしょ』
「前歯全部どころか、そのきれいな顔ふっ飛ばしてやる!! シンジ!! どいて!! ソイツ殺せない!!」
「作戦前に何しとんじゃ!! もちつけ!!」
『じゃあねえ~』
通信が切られ、暴れるレイを押さえつける。
フー! フー!! と髪を逆立てているレイは怒った猫みたいだな、実際はトラみたいな威圧感だしてるけどな!! というかアスカとデートとかどういうことやねん!?
『あんたたち、第3新東京市最大の危機ってわかってる?』
「そんなもんどうでもいい!!」
「良くないからな!? あぁもうめちゃくちゃだよ」
『これもうわかんないわね』
赤木さんも染まったなぁ……(語録に)堕ちろ!! (勝手に)堕ちたな(困惑)
そんな感じでわっちゃわちゃやっていると無線が入り、空気が一変する。
『来ました!! 国連軍から入電!! 最大望遠で使徒確認! 高度おおよそ三万!! 落下予測地点誤差修正!』
『了解、おいでなすったわ。エヴァ全機、スタート位置へ!』
「オンユアマーク……だったっけ?」
俺は聞きかじった知識でそう言うと、ミサトさんはふふっと笑う。
『クラウチングスタートで行くんだものね、いいわねそれ、採用』
『皆よく聞きなさい。ここからは光学観測による落下予測しか出来ないわ。MAGIでギリギリまで予測させるけど一万を切ったら各自の判断に委ねるわ』
『それだけやってくれればあとはいけるわ』
俺は初号機の体勢を低くし、両手を地面につけて、左足を突き出す。
ふぅーと一回息を吐いて、隣に座るレイを見る。
「行くぞ、レイ」
「いつでも」
『目標接近! おおよそ二万!!』
『ではオンユアマーク!』
緊張が全員に流れる。
ミサトさんの言葉が放たれる。
『ゴーッ!!』
「ッ!!!!!」
アンビリカルケーブルが脱着され、内部電源に切り替わるのと同時に俺は初号機を走らせた。
○○○
エヴァンゲリオンという巨大な人型兵器が大地を駆ける。
空気抵抗とかどうなってるんだと指摘する人もいるが、答えは簡単。ATフィールドでどうとでもなる。
市街地を全力で疾走する初号機の姿は圧巻であった。
弐号機、零号機も同じように水路、森の中を疾走していく。
初号機は市街地を走り抜けると、山道を踏み台に山を軽々と飛び越えて、山肌を削りながらまた走っていく。
弐号機、零号機はハードル走のように高圧線を次々と飛び越えていく。
そんな中、使徒の様子に変化が起こる。
身にまとっていた黒い球体を脱ぎ捨て、本体である虹色の球体の姿を見せ、ガラスのような六面体のATフィールドで軌道を変える。
『目標のATフィールド変質! 落下予測地点修正!』
『目標増速! このままでは!!』
オペレーターたちが泡を食ったかのように急いでエヴァに修正した落下予測地点を送る。
風に流されるように落下位置を変え、さらには黒い球体を捨てたせいか落下速度を上げた使徒にアスカは舌打ちをする。
『このままじゃ間に合わない!!』
「ミサトさん!!! 装甲板を! この位置なら605から675を展開してカーブを!」
『了解! 緊急コース形成!!』
レイが瞬時にマップを見ながら、緊急用の装甲板を展開させるように言う。
ミサトはそれが妥当だと瞬時に判断し、装甲板を立ち上げ始める。
坂のように形成されたカーブを走りながら、初号機はスピードを緩めることなく駆け抜ける。
『次っ! 1072から1078を――――』
「まどろっこしい!! ATフィールド展開!! レイ! コースはお前に任せる!!」
「ッ、了解!!」
カーブを駆け抜けきった初号機が飛び上がる。
着地時に足にATフィールドを張って市街地を飛び越えていく。
その様子を見て、ミサトは初号機の指示出しをレイに一任し、アスカと綾波の位置を確認する。
二人共急いで走るが落下予測地点からかなり離れていた。
『987から998までスタンバイ! アスカ! 跳びなさい!』
『わかってるちゅーの!!』
せり上がってくる建物型の装甲板を踏み台に、弐号機はジャンプして加速を続ける。
『まだよ!! 787から834!!』
零号機の目の前で、初号機を曲げたように装甲板が立ち上がっていく。
綾波はそれに飛び乗るとひたすらに走り続ける。
『弐号機、目標まであとヨンマル』
『零号機ナナマル……ダメです! 二機は間に合いません!!』
『シンジくんッ!!』
ミサトは胸の十字架を握りしめて祈る。
本来であれば三人で受け止める予定だったものを一人で受け止めるのだ。
高高度から落ちてくる物体とN2爆雷数十個すら無力化したATフィールドの衝撃をたった一機で受け止められるのかとミサトもリツコも自信はなかった。
「シンジッ!! 無茶だよ!」
「……」
シンジは答えない。
ただ前だけを見て走っていく。
もう周りの声は入っていなかった、あまりの集中力とエヴァとのシンクロでただ降ってくる使徒だけを見ていた。
――――信じてるぞ、シンジ君。
父親の言葉や、出撃前に聞いた皆の声が聞こえる。
信じてる、頑張れ、負けるな、その言葉だけが胸に響く。
だから、シンジは一番聞きたい相手の言葉を欲しがった。
「シンジッ!」
「レイ、俺を信じてくれるか?」
レイはただ前だけ見ていたシンジの声を聞いて、一瞬ポカンとする。
だが、シンジの気持ちに応えるべく精一杯の笑顔で答える。
「うん! 信じてるよ!」
「……行くぞぉオラァン!!! エヴァアアアアアアアアアアアア!!!!!」
シンジが気合の雄叫びを上げる。
いつもいつも無茶ぶりばっかやってるけど、オカアサン! 俺はあんたを信じる! 人の未来を信じてくれたあんたを! あんたが希望を託したエヴァンゲリオンを信じる!! だから、だからあんたも俺を信じてくれ!!!!!!
そう念じながら、初号機の足を前に出して急ブレーキをかけたシンジは右腕を引く、まるでパンチをするかのような形に発令所にいる全員があっ、と察し、リツコは発狂する頭をなんとか押さえる。
バキン!!! といつものように顎の拘束が外れ、初号機の緑色のラインが赤く染まっていく。
『シンクロ率90%を突破!! 先輩コレは!?』
『知らないわよ、もう。シンジくん!! やっちゃいなさい!!』
マヤが質問したが、リツコは匙を投げてシンジに丸投げをした。
「ちぇええええええええりぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
オォオオオオオオオオオオオン!!!!! とシンジの咆哮とともにエヴァが吠える。
引き絞った拳に物質化したATフィールドが展開される。
そして拳を振るうと物質化したATフィールドが落下してくる使徒に向けて発射された。
使徒は咄嗟にATフィールドを下部に集中させるが、物質化したATフィールドの貫通力はそれを大きく上回っていた。
敵のATフィールドに突き刺さった初号機のATフィールドは、敵の中心部に突き刺さり使徒の体を貫通する。
それを見て、弐号機と零号機が足を止める。
使徒の体から力が抜けていくのが見えた。たった一撃でコアがぶち抜かれており、使徒の体が光り輝く。
『『まずい!!』』
再び駆け始める弐号機と零号機は初号機を守るように抱きしめると同時に叫ぶ。
『『フィールド全開ッ!!!!』』
次の瞬間、宇宙まで届くのではないかというくらい巨大な爆発と光の十字架が立ち上る。
凄まじい衝撃波が地下のNERV本部にも伝わり、ガタガタと揺らす。
スクリーンが真っ白に染まり、外の映像が確認できない。
『状況は!?』
『爆発の影響で映像が……いや、来ました!!』
オペレーターが叫ぶ。
映像が表示されるとそこには初号機を庇うように抱きついている弐号機と零号機、そして腕を突き出したまま静止している初号機の姿が見える。
ミサトがバイタルサインをチェックすると、全員オールグリーン。機体の損耗はあるが、そこまででないことを確認するとふぅーっと大きく息を吐き、固唾を呑んで見守る職員に言う。
『状況終了! 作戦成功よ!』
うわぁああああ!!! と叫ぶ職員に、ミサトは苦笑する。
本当に一人でやり遂げたシンジに感涙している者もいた。
誰もが成功に喜び、讃えていた、だが誰ひとりとして、シンジが無理をしてないかとは思ってなかった。
その時、通信が入る。
『南極の碇司令からです』
そう報告したオペレーターの声で、全員がピタリと歓声を止める。
ミサトはお前らと内心で頭を抱えつつも、姿勢を正す。
『碇司令、私の独断でエヴァ三機を破損させてしまいました。責任は全て私にあります』
『構わん、むしろデータを見る限りあの使徒にこの程度の被害で収めるとは……さすが英雄と言うべきかな?』
冬月の言葉に、ミサトの眉が動くが言葉には出さない。
副司令がどういうことでシンジを気に入らないのかわからないが、NERV職員の間ではもっぱらただの一般人だったシンジが活躍するのが気に食わないというのが通説だった。
『彼は英雄ではなく、パイロットです。副司令』
『そうとは思っておらんだろうに……まぁいい』
『葛城三佐、初号機パイロットにつないでくれ』
えっ? と意外な言葉にミサトは素で返してしまうが、気を取り戻してオペレーターに回線を繋げるように指示を出す。
初号機内では、シンジとレイが抱き合っていた。
「凄い、本当に凄いや、シンジ」
「レイが信じてくれたおかげだよ」
そんなとき少し二人の距離が離れた。
レイの瞳が揺れるが、意を決して唇を突き出す、シンジはその唇を――――
『初号機パイロット』
「「わぁああああ!???」」
突然のゲンドウの通信に、シンジとレイが飛び上がる。
冬月がわざとらしく咳払いをする。
『エントリープラグ内は乳繰り合いの場ではないぞ』
『初号機のパイロット?』
何故か怒っているかのような声に、シンジは背筋を伸ばして答える。
「何もしてません!! まだ!!」
『……まぁいい、よくやってくれた。あとレイ』
「なんだよ……」
シンジはゲンドウの褒め言葉にあんぐりと口を開ける。
レイはゲンドウの言葉にぶっきらぼうに答えるが、ゲンドウは気にもせず言葉を言う。
『お前もよくやった。今度、二人でユイの墓参りに行こう』
「は?」
『あとの処理は頼んだぞ、葛城三佐』
『……あっはい』
予想外すぎる言葉に全員が目を白黒していた。
そんななかアスカは、じっと暗闇の中、膝を抱えていた。
「……何よ、私なんか要らないじゃない」
何も出来なかった。
前の自分なら誰かに頼むことなんてなかったのに、間に合わないと思った瞬間シンジに頼っていた。
自分一人で生きていく、そのアスカの
いつの間にか忘れてしまっていた憎しみがふつふつとこみ上げてくる。
「私が!! 私がどれだけ努力したと思ってんのよ!!」
全てを賭けた、本当に全てをだ。
だがそれを飛び越えて結果を出していくシンジをアスカは
「三上、シンジィ……」
ギリッと歯を食いしばった。
「先輩、やっぱ退避してなかったんですか」
「息子を信じない親とかいるのかい?」
とあるビルの屋上、シンジの父親は全てを見ていた。
初号機が走り出し、動き、使徒を殲滅する姿を。
そんな彼を加持は複雑そうな顔で見る。
「だからと言って、危険すぎますよ。もう昔とは違う」
「そうだね、火遊びはここまでだ……だがアレがエヴァか」
シンジの父から笑みが消える。
エヴァを睨みつけるように見つめるのは、親としての怒りかそれとも別のものか、加持には判断がつかなかった。
「あんなものに息子が乗っているとはね」
「英雄、それが今の彼の肩書ですよ」
「へえ……リョウジくん、昔のシンジ君の夢ってなんだったか知ってるかい?」
「……ヒーロー、とか?」
加持は適当に答えたが、父親はニコリと笑う。
「皆を守れる最高のヒーロー……その夢が叶ってるんだよ、今のシンジ君ってさ」
「そりゃ良いじゃないですか」
そう答えて、加持はハッと気づく、父親の拳を握りしめられ血が流れ出しているのを。
「だけど僕は否定した。そんな夢なんて止めたほうがいいって……それからだよ、あの子が変わったのは」
「変わった……?」
「あぁ、その日に高熱を出してね……様子が変わったんだよ。そしてレイちゃんと遊ぶようになった」
「……」
加持は何も言わずに、エヴァを睨みつける父親の背を見た。
「昔はね、誰とでも遊ぶ子だったんだよ。それが突然遊ばなくなって、たった一人に固執するようになった。最初は一目惚れなんて思ってたけど、違ったよ、あの子は碇レイに生きる全てを依存している」
その言葉に加持は言わなかったことを言う。
「お子さんが言ってましたよ、死んでもいいって、レイを守れればそれでいいって」
加持の言葉に、父親の背が震えるのは気の所為ではないだろう。
屋上の手すりを握りつぶしながら、父親は言葉を口にする。
「僕は……僕はバカ野郎だ」
「……」
吐き捨てるように言い、嗚咽をこぼす父親に、加持は何も言えず、夕日に佇むエヴァを見る。
頼もしく見えたそれが、今では何か別のものに見える。
加持はタバコに火を付けて煙を吸い込んだ。
「苦いな……」
なおこのあと回転寿司貸し切って、ミサト+パイロット四人で食べたがほぼシンジ一人が食い切った模様。そして親父も十杯目のラーメン食って普通に帰った模様。
あと冬月先生がどーんどん悪者化してるけど、この人ドヤ顔で「罪にまみれても人の世界を望むよ」とか言いつつ、最終目的がアレだからね。個人的に一番エヴァの登場人物で大人やってないのはこの人だと思う。
あとお母さんはマジで一般人、普通に出会って、普通に恋して、普通に子供産んだ一般人。なお肝っ玉のデカさで大抵のことでは動じない模様、息子が死ぬとか無い限り。
ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?
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いいゾ~これ(両方ともIKEA)
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(ifストーリーだけ)INしてください?
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(その後の話だけ)はい、よういスタート
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どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)