中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ お前を殺して私のもの……ファッ!? なんで死のうとしとんねん! チャート壊るる(ガバ)

今回もシリアス風味だけど許して。


またキスをして修羅場になって鼻血噴き出して倒れた件について

 碇レイという少女が壊れたのはいつだろう。

 母親が消える瞬間を見たとき? 父親に捨てられたとき? 三上シンジ(イレギュラー)と出会ったとき?

 答えは全部だろう。

 愛していた母親が消え、頼りにしていた父親から捨てられ、シンジという愛をもらった少女は壊れた。

 愛をくれない二人は要らない。シンジという自分を見て、愛してくれる存在に全てを尽くす。

 碇レイは壊れていた。

 だがまだどこかに残っていたのだ、父親に対する愛情が。

 だからレイはこの場所に、母親が眠っていると聞かされている墓地へとやってきた。

 

「……」

 

 地平線の向こうまで続く石碑。

 ここは共同墓地だった。セカンドインパクト後の混乱で、大勢が死に、墓地が足りなくなった。

 そして出来たのがここだった。

 広大な、なにもない場所、レイがここに来るのは小さい頃、父親に連れられて来たとき以来だった。

 何も考えずに歩いていく。

 シィンと静まり返る墓地に、レイは気持ち悪さを感じていた。

 実感がなかった、ここに母親が眠っているなど、そもそもなぜ死んだのか、レイはちゃんと知らなかった。

 だから実感など湧かない。

 歩き続け、朧げな記憶を頼りに母親の墓へと歩いていく。

 

「……」

 

 レイはふと足を止めた。

 母親の墓の前で誰かが腰を下ろし、花束を添えていた。

 碇ゲンドウ。彼女の父親である。

 足音に気づいたのか、ゲンドウが振り向く。

 

「……」

「……」

 

 お互いに見つめ合い、無言の時間がただ過ぎていく。

 レイはそのまま墓の前に立つ。

 ゲンドウは腰を下ろしたたまま、口を開く。

 

「ここに来るのは十年ぶりか」

「……覚えてないよ、そんなの」

 

 レイは吐き捨てるように言う。

 ゲンドウはそんなレイを見て、フッと笑った。

 

「母親のことを気にしないのか」

「写真もない、思い出もない、どう思えってんだ」

「……そうだな」

 

 ゲンドウは立ち上がり、墓を見下ろす。

 

「ここにはユイはいない、遺骨もない。ただの飾りだ」

「……じゃあなんで花を手向けるんだよ」

「忘れないためだ、レイ」

 

 ゲンドウは振り向き、レイの顔を見る。

 十年ぶりにしっかりと見る娘の顔に、様々な感情が湧き上がる。

 だがそれを出さない、出してはいけない。

 レイは、ゲンドウを睨みつけ、そして言った。

 

「じゃあ僕のことは忘れていいってことか」

 

 怒りであった。

 溜め込んでいた全てをレイは、目の前の父親にぶつける。

 

「ふざけるな、僕はお前にとってなんだよ」

「……レイ、お前は私によく似ている」

 

 レイの怒りを真正面に受けてもなお、ゲンドウの表情は変わらない。

 むしろ、ゲンドウの言葉にレイは衝撃を受けた。

 似ている? 誰が? 僕が? 目の前のコイツと?

 

「ふざけるなっ!!! お前なんかと似てたまるか!! 僕は、僕はお前なんかと違う!!」

「ロスト・チルドレン」

 

 その言葉に、レイは口を止める。

 ゲンドウは一呼吸置いて口を開く。

 

「アレはお前にとっての光だ。私にとってのユイもそういう存在だった」

「……何が言いたい?」

「失えば、お前は私になる、そういうことだ」

 

 瞬間、レイの思考は沸騰する。

 ゲンドウの胸ぐらを掴みかかり、叫ぶ。

 

「お前がソレを言うか!! 何度も、何度も何度も何度も!!! シンジを使って無茶させて、そして殺しかけたお前が言うのか!!!」

「……」

 

 グルグルと黒い感情がレイの中に渦巻く。

 だがゲンドウは冷たい瞳でレイを射抜く。

 

「何か言えよ!! 僕がどんな気持ちだったかわかろうとしないで!!」

「……私と分かり合おうとするな」

 

 ゲンドウは静かに、だけども忠告するように言う。

 

「お互いを理解する、そんなことは不可能だ」

「僕はシンジの全部を知ってる! 嬉しいこと! 悲しいこと! 好きなところ! 全部、全部を知ってる!!」

「それは表面だけだ。お前が見たい三上シンジを見ているだけの虚像だ」

 

 ゲンドウの言葉に、レイは両手の力をさらに込めていく。

 何を言ってるんだコイツは。

 シンジは隠し事をしない、僕にだけは全部を曝け出してくれる、僕にだけ一番優しくしてくれる、最後は僕だけを見てくれる。

 

「シンジのことを知ろうとしないくせに!!」

「一人の力で生きていこうとしないお前では、ヤツを理解することはできない」

 

 ゲンドウは自身の胸ぐらを掴んでいるレイの両手に力を込めて外していく。

 

「ヤツは自分の足で地に立ち歩いている。だがお前はなんだ? ヤツに寄りかかり、自分の足で立とうとしない」

「そうしたのは誰だよ!! 僕にはシンジしかいなかったんだ!!」

 

 ゲンドウの手を振り払い、レイは頭を掻き毟る。

 両目には涙が溜まっていた。

 

「捨てられた!! 行ってほしくなかった!! でもお前は僕を置いていったんだ!! 一人ぼっちになった僕に手を差し伸べてくれたのがシンジだ!! だからシンジと一緒に生きようとするのが何が悪い!! 親を辞めたお前に何が言えるってんだよ!!!」

「……」

 

 サングラス越しに、ゲンドウの表情が窺えない。

 だが一瞬だけ手が震えたのを、レイは見逃してしまった。

 

「嫌いだ!! お前なんかだいっきらいだ!! 僕を捨てるお前も! 勝手に死んだ母親も!! 僕にこんな思いをさせた世界も大嫌いだ!! シンジ以外のモノは嫌いだ!! 嫌い嫌い嫌い!! 大嫌い!!!!!!!!!」

 

 はぁ、はぁと肩で息をしながら、鬼の形相でゲンドウを睨むレイはそのまま後ろを向くと歩き出す。

 来なきゃ良かった、シンジに言われて行ってみたけど来なきゃ良かった、こんな思いをするくらいならもう期待はしない。

 アイツ(ゲンドウ)は他人だ。

 ズンズンと歩いていくレイの背を、ゲンドウは見るだけだった。

 手を見る。

 嵌めていた手袋を外して、火傷痕が残る手を見る。

 小刻みに震える手を握りしめ、目の前を見る。

 歩き去る後ろ姿に、ゲンドウは一瞬叫びそうになり、口に手を当てる。

 そしてレイは地平線へと消える。

 ゲンドウは手袋を再度嵌めて、墓の前に向き直る。

 

「……ユイ」

 

 まるで縋るような声に、誰も反応しなかった。

 

 だがゲンドウはまだ勘違いをしていた。

 シンジは決して地に足を付けて生きているわけではない。

 ゲンドウにすら、シンジはしっかりと生きているように見えていたのだ。

 

 

 視点は変わり、シンジとアスカ。

 シンジはシャワーを浴びていた。

 ボコボコに殴られた顔面をどうにかするためと、胸に刺したポケットナイフで付けられた傷口を洗うためだ。

 血が流れ、足元を赤く染めていく。

 シンジはソレをじっと見ていた。

 

「……死ねたら良かったのに」

 

 シンジは死ぬ気だった。

 あのとき、アスカのポケットナイフを見てしまったときにシンジは生きることを諦めた。

 殺されてもいいとすら思っていたが、自分は生きている。

 

「……」

 

 目の前に鏡があった。

 そこに映る姿は、まるで死人のようだと他人事のように見ていた。

 ガラリとシャワー室の扉が開かれる。

 

「は?」

 

 思わず振り向いて、シンジは呆然と声を出した。

 そこには生まれたままの姿のアスカがいた。

 何も隠すことをせず、乳房も、大事なところも何も隠すことはないアスカの姿に、シンジの一部分が熱を持つ。

 アスカは無言でシンジの元まで歩いてくる。

 シンジは後ずさりをするが、シャワー室はそこまで大きくはない。

 すぐに壁に背が当たり、逃げ場がなくなった。

 そこにアスカが近寄り、壁に手を当てて、シンジの顔を見る。

 数分、いや数十秒だったが、アスカは暗い瞳を細めるとニコリと笑う。

 

「キス、しましょ」

「アス……んんっ!?」

 

 キスというには荒々しい動きで、アスカはシンジの唇を奪う。

 シンジが逃げようとするが、アスカは体を密着させて逃がそうとしない。

 舌を、シンジの口の中にねじ込むと全体を舐め回すように動かす。

 まるでここは自分のモノだと言わんばかりに、アスカはシンジの口を蹂躙する。

 

「ぷはっ」

「げほっ、ごほっ!!」

 

 口が離れ、シンジとアスカをつなぐように唾液の糸が垂れる。

 アスカは満足そうに笑い、シンジは息を荒々しく吸って咳き込む。

 そんなシンジの姿を見て、アスカの心の中に何かが湧き上がる。

 

 ――――私のものになりなさいよ

 

 かつてのアスカならバカバカしいと切り捨てただろう。

 だが今のアスカは、ソレ(独占欲)を否定せずに受け入れる。

 今のアスカはシンジしか見えていなかった。

 

「もっと」

 

 もっとほしい。

 その欲望のまま、アスカはシンジの唇を再び奪う。

 抵抗しようとするシンジの手を押さえ込み、口の中を蹂躙する(手に入れる)

 ゾクゾクとした未知の感触に、アスカの体が震えた。

 絶頂したとわかるには、アスカの知識も経験も乏しかった。

 

「アス、カ、や、やめ――――んんっ!」

「やぁ」

 

 シンジに覆いかぶさるように、アスカはシンジの唇を奪う。

 もっと、もっとだ、もっと頂戴、あんたの全部、私の全部、その全てを頂戴。

 だって受け入れてくれたじゃない、殺そうとした私を、壊れた私を受け入れてくれた(捨てないでくれた)じゃない。

 今だって嫌なら振り払えばいい。

 あんたなら出来る、レイを守ると言ってるあんたなら出来る。

 やらないというなら、別にいい、手に入れる。

 いつもそうやってきた。

 エヴァのパイロットも、学校も、訓練も全部、全部そうやって手に入れてきた。

 気に入らない、気に入らない!!!

 なんであんたは私のものにならない!

 なんでそんな目で見る!!

 なんでキスを返してくれない!?

 

「なん、でよ、なんでよ!!!」

 

 シンジの体に爪を立てる。

 伸びた爪がシンジの肉に食い込み、血が流れ出す。

 

「なんで!! なんで!!! なんで!!!!」

 

 キスを止めて、アスカはシンジに縋り付いて泣き叫ぶ。

 どうして!! どうして私が欲しいものは手に入らないの!!

 ママも! 一番という称号も! あんたも!! どうして!!

 

「どうしてあたしのものにならないのよ!!」

「……アスカ」

「うるさい!! あたし――――ッ!?」

 

 シンジの瞳には火が灯っていた。

 先程の死人のような表情は消え、戦闘時の、アスカが一番好きなシンジの顔になる。

 ぎゅぅううううっとアスカの下腹部が熱くなる。

 あっ、ダメだ、逆らえない。

 そうアスカの思考が判断すると、全身から力が抜ける。

 ヘタリと、アスカの体がシンジの胸に倒れ込む。

 

「アスカ……ごめんな、俺は誰のものにもなれないよ」

「……」

 

 温かいシャワーが二人を包み込む。

 シンジは倒れ込んできたアスカの体を優しく包み込むと、安心させるように頭を撫でる。

 シャワーの流れる音だけが空間を支配する。

 

「アスカの気持ちは嬉しいよ、けど応えられない」

「……そっか」

 

 どうでもよかった、今この瞬間、シンジと抱き合えているだけでアスカは幸せだった。

 アスカの脳裏に、ドイツの父親と母親になった人物が思い浮かぶ。

 抱き合い、幸せそうだった二人。

 嫌悪感しかなかった、何をしてるんだ、死んだママが可愛そうじゃないか、汚らわしいことをしてとアスカは唾棄した。

 なのに今同じような、いやソレ以上の行為をしているのに、アスカの心の中は満たされていた。

 ふと、鏡に写る自分が見えた。

 

 ――――笑っていた、母親となった人物と同じように。

 

(あぁ、私……)

 

 私も女だったんだとアスカは自覚した。

 だから、アスカは躊躇なくシンジの胸に抱きついて笑った。

 シンジはそんなアスカに気づかずに抱きしめる。

 二人が離れたのは、時間が超過したと判断したフロントが電話をかけてコールが鳴ったときだった。

 

 

 

 

○○○

 

 

 

「……シンジ、重くない?」

「軽いよ」

 

 歩けない、おぶって、そんなことを言うアスカの言葉に、俺は断りきれずアスカをおぶって家路についていた。

 水族館に行って、休憩所に行っただけだったのにもう外は暗くなっていた。

 背中のアスカは体重を預けると頭を擦り付けてきた。

 

「……アスカ」

「良いじゃない、あんなことした仲なんだから」

 

 そう言うアスカは首筋に、キスしてきた。

 ……憂鬱な気分になる。

 レイになんて言い訳しようか、いや言い訳のしようがないだろこれ。

 まるで浮気したみたいだと俺は深い溜め息をつく。

 マンションが見えてきて……俺は天を仰いだ。

 マンションの入り口に仁王立ちしている(レイ)が見えたのだった。

 俺は弁明する気もなく、まるで断頭台に登る罪人のような気分でレイの前まで立つ。

 レイは俺とアスカを一瞥して、口を開いた。

 

「何、これ?」

「見てのとおりよ、七光。シンジがしてくれたの」

 

 見なくてもわかる、アスカの勝ち誇った顔。

 レイの顔からドンドン感情が失われていく、あっ、これマジでキレているときの顔だと判断がついたのは付き合いの長さからか、それとも雰囲気からか。

 その時、アスカが背中から降りて、レイの前に立つ。

 

「お前」

「悔しい? 七光」

 

 挑発するような表情に、レイの口からガリィッという音が鳴る。

 流石にヤバイと思った俺は間に入ろうとしたが、アスカが手で止める。

 

「別に?」

「へえ、じゃあキス、したことある? 七光」

「あ、アスカ!?」

 

 俺の顔は真っ青だっただろう。

 だが真っ青の顔とは逆に、レイの顔は紅潮し叫ぶ。

 

「お前ッ!!! 僕のシンジに何をした!!」

「あんたのじゃないでしょ、七光」

「レイッ!!」

 

 俺の制止が間に合わず、レイの振りかぶった平手がアスカの頬に直撃する。

 避けることもなく、レイの一撃を受けたアスカの顔が大きく揺れる。だがアスカはその体勢のまま、ギロリとレイを見る。

 ビクリとレイの肩が跳ねる。

 

「そうやってあんたは憂さ晴らしすればいいでしょ」

「な、なんだよ」

「シンジなら、直接やっても受け入れてくれるわよ」

 

 勝ち誇ったようなアスカの顔。レイの何かがキレたと判断した俺は、レイの体をきつく抱きしめる。

 

「何をしたっ!! 何をしたんだよっ!!!!」

「レイ!! 落ち着け!! レイ!!!」

「……そうやって守られてればいいじゃない」

 

 アスカの機嫌も何故か急降下し、背を向けて歩き出す。

 レイは声を上げながら、アスカに向けて手をのばす。

 

「お前も!! お前もか!! シンジは渡さない!! 僕の、僕のなんだよ!!!」

「……あんたバカ? うぅん、ガキね。何が僕のよ、バッカじゃないの?」

 

 アスカはそのまま歩き出す。

 

「シンジ、しばらくヒカリのウチに泊まるわ」

「逃げるのかよ!!」

「はぁ? チャンスをあげるのよ、守られてばかりの七光にさ」

 

 バカにしているとはっきりわかるニュアンスで、こちらを振り向かずに歩いていくアスカは、立ち止まってこう言った。

 

「それに守られてるのはあんただけじゃないわよ、七光。ただあんたが勘違いしてるだけ、あんたが先に出会っただけなのよ(・・・・・・・・・・・・・・・)。……私が先だったら、あんたなんかッ」

 

 最後の一言を吐き捨てるように言ったアスカは歩いていく。

 ジタバタと動く、レイを押さえ込みつつ、俺はアスカを見送った。

 しばらくするとレイの動きが収まり、俺はレイを離す。

 レイは虚な目で、こちらを見る。

 

臭い(・・)

「へっ?」

「アイツの匂いがこびりついてるッ!!!」

 

 そのままレイが俺の手を引いて部屋に駆け込む。

 そして脱衣所に着くと、脱衣かごに指をさす。

 

「脱いで」

「い、いや、レイ」

「脱いでよ!! 脱げッ!!」

 

 ビクリと俺はレイの剣幕に圧された。

 そのまま言われたとおり脱ぐと、レイも服を脱ぎ始める。

 勘弁してくれ!! 今日はなんなんだよ!!

 

「レイッ!」

「朝、約束したよね。なんでも一つ言うこと聞くって――――一緒に入ってよ、シンジ」

 

 俺は否定しようとしたが――――できなかった。

 捨てないで、と目で訴えるレイに、俺は何も言えずに……ただ、バスタオルを取り出してレイに渡す。

 

「せめてこれだけは付けてくれ」

 

 じゃないと我慢できない。

 はっきり言おう、アスカのアレもあって大分来ている。

 アスカはギリギリで我慢できた、だけどレイを見たら自分を抑えられる気がしない。

 レイは渋々と言った様子で、バスタオルを付けると下着などを脱ぐ。

 グググッと一部が立ち上がろうとするが、気合で抑え込む。

 

「……いこっか」

「……おう」

 

 ふんわりとレイの髪からいい匂いがする。

 アカン、だいぶキテると思った俺は深呼吸をして精神を平常心に……平常心に、いや無理です、ごめんなさい。

 レイが綺麗すぎてもうあかん。

 毎日寝てるだろって? オメー布切れ一枚無いのとあるのとじゃ全然違うんだぞこの野郎。

 

「……昔、こうやって二人で入ったよね」

「ホント昔だけどな」

 

 小学生の低学年頃の話で、もう記憶も曖昧だけどね!!

 こんなに出るとこ出てないし!

 シャワーを浴びるレイを俺はぼーっと見ていたが、レイは頭を水浸しにすると俺に向けてこういった。

 

「シンジ、洗って」

「えっ」

「難しいこと無いよ、シャンプーで洗って」

 

 断ろうとしたが、ジト目で見るレイに逆らえず、俺はシャンプーを手につけると優しく泡立てていく。

 良い髪質というのだろうか? 長髪なのに、レイの髪の毛に指を入れると特に抵抗なく入りスーッと指が動く。

 そのまま全体を洗うと俺はシャワーをかけるため、声をかける。

 

「かけるよ」

「んっ」

 

 そのままシャワーで洗い流すと、水分を吸って光り輝く髪に俺は心を奪われそうになり、首を振って正気に戻る。

 お湯のせいか、それとも立て続けに起こった非現実的な出来事のせいか、頭がオーバーヒート寸前だった。

 クラクラと眩む頭を抑えつつ、俺はレイを見る。

 レイは振り向いて、光が消えた瞳でつぶやいた。

 

「僕はシンジのことを一番に理解してるんだ」

「……」

「だってずっと一緒だったから、ずっと傍にいてくれたから」

「……」

「だから、だからさ」

 

 レイがバスタオルを剥ぎ取って、生まれたままの姿を見せつける。

 ニコリと笑うレイの姿に、何かが切れる音がした。

 

受け入れて(・・・・・)

「……あっ」

 

 ブバッとなにかが噴き出す音がした瞬間、俺の体から力が抜ける。

 遠くでレイの声が聞こえるが、大量の鼻血を噴き出したと気づいた俺は、自分から流れ出た血の海に倒れ伏すと、あっさりと意識を手放した。

 

 

 

○○○

 

 

 

 誰も居ない部屋で綾波は野菜を切っていた。

 検査を終えた綾波は、リツコに野菜料理で美味しいものはないかと聞いた。

 ひどく驚いた顔をしたリツコだったが、少し考え込むと何かを書いて綾波に渡した。

 

『お祖母ちゃんがよく作ってくれた野菜スープのレシピ。切って煮込むだけだから大丈夫だと思うわ』

 

 そのメニューに書かれたものを買った綾波は、その帰り道見てしまった。

 アスカをおぶりながら歩いているシンジを。

 声をかけられなかった。

 それどころか、綾波はズキリと痛んだ胸を押さえて座り込んでしまった。

 体が痛いわけではない、心が痛みを発していたのだ。

 だが、綾波にはそれがわからない。

 シンジが歩き去って、しばらくすると痛みが収まった。

 そして家に帰り、綾波は料理を作った。

 メニュー通りに、不格好であるが切れている野菜を全て鍋に入れてかき混ぜる。

 ドロドロと溶けていく野菜に、綾波はシンパシーを感じた。

 まるで自分の心のように――――。

 

「……なに?」

 

 ズキリ、ズキリとまた胸が傷んできた、

 笑っていたシンジの顔が思い浮かぶ。

 違う、誰かと笑い合うシンジの顔が嫌だった。

 

「……なんなの?」

 

 未知の感情に、綾波は胸を押さえて座り込む。

 ギュッと手を握ってるだけで良かった。

 困った顔をしながら、それでも握り返してくれるシンジのことが嬉しかった。

 だけど綾波はそれでは満足しなくなっていた。

 

「……なんで?」

 

 同じ名前を持つ碇レイ、ソレにシンジは笑いかけていた。

 ずっと、ずっとだ。

 

 ――――ズルイ。

 

「……」

 

 噴き出してくる感情に、綾波は混乱する。

 自分が自分で無くなってしまいそうな、そんな予感があった。

 委ねてしまえばとんでもないことになる。そう考えたレイは感情を抑えて立ち上がる。

 鍋に入っていたスープはグズグズに溶けていた。

 お玉を入れて、数少ない食器に移す。

 そして一口飲んだ、綾波は眉を顰める。

 

「……不味い」

 

 調味料を忘れたと指摘してくれる人は誰も居なかった。

 

 




なおミサトさんと加持さん、監視していた諜報部からの情報聞いて青い顔してたけど見守るしか……ンンンンンッ!!(レイとアスカの修羅場)マッ゜!!(その後のレイとの風呂入ってシンジが鼻血噴き出して倒れる)アァッ!?(流石に現場に踏み込んでシンジ救急搬送)と感情のジェットコースターに合った模様。
地雷原の一部分が消し飛んだだけですんだぜ!(致命傷)
なお地雷がこの間にも増設されてる模様。
次回はギャグ回の予定なので許して…許してヒヤシンス。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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