中学二年で死ぬから美少女とフラグ立てたらTSした原作主人公だった件について   作:re:753

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前回のあらすじ、感情のN2地雷が爆発したけどまた地雷設置しますね(ガンギマリ)

一日休んだかと思ったか! 馬鹿め!! ストック無いと書くしか無いんだよ!!(ガンギマリ)あと夜勤後に用事済ませて書こうなんて無理だったんや、普通に爆睡シてました(^q^)
絶対に毎日更新はしてはいけない(戒め)。ただスマホゲーやらなくなるから課金が減るよ! やったぜフラン!
あと暗いのが続いてすまんな。一度明るいのやってどん底に突き落とすから許して。
あと予約投稿ガバったよ

追記、あと推薦もらえたよやったぜ!


使徒が溶鉱炉にボッシュートされて零号機とシンクロしたらヤバイことになった件

「いいわ、四人とも上がって」

 

 いつものように、シンクロとハーモニクステストを行うが、モニター室では暗い空気が流れていた。

 シンジの数値が急降下していたのだ。シンクロ率40%、レイとほぼ同率の数値だった。

 

「シンジくん、大丈夫でしょうか?」

「……色々あるのよ、彼にも」

 

 リツコは顔には出さずに、忌々しく先日のことを思い出す。

 セカンドチルドレンとの物理的接触に傷害行為、そしてサードチルドレンとの会話、影響が出るなというのが無理だ。

 先日のことは上層部とリツコ、ミサト、そして加持しか知り得ない情報として秘匿されていた。

 冬月は即刻、ロスト・チルドレンの隔離を提案した。

 即座にゲンドウが却下してそうはならなかったが、次はないと言わんばかりの冬月の眼光。

 無理もない、痴情のもつれで大惨事が起きるところだったのだ。

 セカンドチルドレンとの休憩所での会話に、ミサトやリツコは頭を抱えたものだ。

 三上シンジの自殺願望、これを表沙汰にしてしまったら今のNERVは機能不全に陥る。

 それだけシンジ(英雄)に期待している者が多いということであるが、ここに来てその歪さが表面化してしまった。

 十四歳を支える大人のつもりが、逆に寄りかかっていたことに気がついた。だがそれを直せるほどNERVという組織は成熟していない。

 

「そう、ですよね、まだ十四歳ですもん、ね」

「そうね」

 

 空元気だとわかるほどにマヤの笑顔はぎこちなかった。

 大人組がそれだから、当の本人たちもぎこちなかった。

 シンクロテストが終わると、シンジは早々と更衣室に向かう。

 アスカやレイ、綾波に何も言わずにだ。

 その背に声をかけずに見送った三人のうち二人は口を開く。

 

「お前のせいだ」

「人のせいにすれば楽よね、七光」

「お前っ!!」

 

 思わず手が出そうになったところで、ミサトがマイクを手に取る。

 

「止めなさいレイちゃん、アスカも煽らないで」

「……ッ! どいつもこいつも!!」

 

 振りかぶる直前に止めたレイは、そう吐き捨てると更衣室へ歩いていく。

 アスカはそんなレイの背に侮蔑の視線を送ると、モニター室を見上げて言葉を発する。

 

「殴られても気にはしないわよ、あんな奴」

「アスカ……もういいわ、タイミングをずらして更衣室に行って頂戴」

 

 叱ろうとするが、アスカのドロリとした瞳に、レイと同種の物を感じたミサトは言葉を打ち切る。

 自分の迂闊さをミサトは呪った。

 加持からアスカがまずいと報告を受けていた。だがその後は問題なく、いや問題はあったがこれと比べたら児戯に等しい。

 アスカが揶揄い、レイが反応する。どこか悪友のような雰囲気だった彼女たちに微笑ましさすら感じていた。

 だがそれも今は昔だ。今では殺し合いに発展しそうなほどに険悪となっていた。

 リツコはミサトを睨みつける。

 

「保護者であるあなたの責任よ」

「……返す言葉もないわ」

 

 ミサトは素直に自分の非を認める。

 そう、あの日シンジとアスカのデートを止めていれば……いや、遅かれ早かれだったのだろう。

 言い訳だ、とミサトは自分を責める。

 加持に言った家族ごっこ、その言葉がミサトを苦しめる。

 リツコはしばらくミサトを睨み、そしてため息をつく。

 

「……私も、彼とは訓練で一緒にやってた、けど気づいてあげられなかったのよ。ごめんなさい、責める権利なんて、ないわね」

「E計画に支障が出てるのよ、責めて当然だわ……で、本当に明日やるのね?」

 

 空気を変えるためにミサトは、明日予定されているオートパイロットのためのデータ取得試験について聞く。

 リツコは表情を変えて、話す。

 

「えぇ、ただ第87タンパク壁に変質が見られたの。早急に交換して処分――――」

 

 そこまで話した瞬間、轟音がNERV本部を襲った。

 非常灯が付き、警報装置が鳴り響く。

 ミサトは近くにあった有線の受話器を取ると発令所に連絡をかける。

 

「どうしたの!?」

『第二処分場で爆発が……パターン青が検出されました!』

 

 その言葉にミサトは表情を変える。

 本部内の処分場に、パターン青、まさか使徒侵入!? と覚悟したが、その次に入った報告にミサトの肩の力が抜ける。

 

『い、いえ! パターン青消失! 使徒撃滅時の十字架も確認されました!』

「はぁ!?」

 

 ミサトは素っ頓狂な声を出す。

 訳がわからない、パターン青、つまり使徒が現れたと思ったら撃滅されていたのだ。

 どういうことなのかとミサトは考え、まさかと思って質問する。

 

「処分場で最後に破棄された物はなんなのか調べて頂戴」

『は、はい! ……リストでは第87タンパク壁とありますが、まさか?』

「えぇ、そのまさかよ……警報を止めて、使徒は撃滅されたわ」

 

 ミサトは受話器を置くと、ふぅーっと息を吐く。

 何事かと見てくるリツコの顔を見て笑う。

 

「リツコ、あんた快挙よ。人の手で使徒を倒せたんだから」

「は?」

 

 鳩がガトリングを食らったかのように驚くリツコに、ミサトは自分の考えを話す。

 おそらくは使徒が資材にまぎれて侵入しており、タンパク壁に擬態、もしくは侵食していた。

 そして異常に気づいたリツコが念の為にと、交換作業を行い、処分場に移送された使徒はそのまま溶鉱炉へドボン、熱で溶け切り残滅、という流れだろうとミサトが言うと、リツコは頭を抱える。

 

「まさか、使徒がそんな方法で侵入を試みるなんて」

「確かB棟だったわよね、あそこは使徒襲来してからの工事だもの、急ぐのもいいけど今回のは重要課題だわ」

「危なかった、もしも実験をしてたらシンジ……いえ、パイロットたちが危険だったわ」

 

 リツコが青い顔をしながら、最悪のケースを思い描く。

 万が一使徒が活性化していたら、ちょうどその下で実験するはずだった彼らに何かがあれば、間違いなくシンジが無茶をする。

 どうにかしようと足掻いて、また傷つくのだろう、誰にも言わずに。

 リツコは俯きながら拳を握りしめる。

 

「マヤ、碇司令に繋いで頂戴、許可を得て緊急の施設点検の実施を要請するわ」

「りょ、了解」

 

 マヤが受話器を取り、通信を送る。

 リツコは矢継ぎ早に指示を出す。

 

「明日の実験は中止するわ、ミサトいいわね?」

「もちのろんよ、今日も徹夜かぁ」

「……ここ一週間、あなた家に帰らずリョウジくんのところに入り浸ってるでしょ」

 

 うぐぅ!! とミサトが言葉が詰まる。

 刺激しない、というのは建前だ。

 ミサトは怖いのだ、三上シンジという少年が自分が知っているそれではなく、内に秘めたナニカを言って、自分の中の三上シンジが崩れ去るのが……結局の所、ミサトはいつも通りただ逃げているだけだった。

 リツコはため息をつく。

 

「アスカも、友達のウチとホテル暮らしを行ったり来たり……バラバラね、あんたたち」

「……ホント、何も言い返せないわ」

 

 ミサトは何も言えずに俯いた。

 結局の所、オートパイロットについてはしばらくの延期、全ての施設チェックを終わらせて三日後に初号機と零号機の相互互換実験、並びに弐号機の機体連動試験を行うことになった。

 初号機には綾波レイ、零号機には三上シンジ、弐号機には惣流・アスカ・ラングレーが搭乗する。

 綾波とアスカは問題なく終わる。

 アスカのシンクロ率とハーモニクスは順調で、シンクロ率に至っては80後半をキープ、その数値にリツコたち技術部は感心していた。

 

「流石ね、ここに来て数値を上げるなんて」

『当然よ、エリートパイロットだもの』

『……三上くんの匂いがする』

『「あっ??」』

 

 初号機内にいる綾波の一言で、アスカとレイの声が重なる。

 リツコとミサトは揃ってため息をつき、零号機に集中する。

 

「シンジ……被験者の状態は?」

「神経パターンには問題ありませんが……」

 

 オペレーターは言葉を濁す。

 覇気がない、そう言うほど今のシンジの表情は暗かった。

 だが今更実験を中止することもできなかった。

 ミサトはマイクを握り、通信を送る。

 

「シンジくん、無理しなくていいのよ」

『……大丈夫です、やれます』

 

 そう言ったシンジの言葉に、リツコは一瞬だけ拳を握ると硬い声で実験開始を宣言する。

 

「エントリー、スタート……」

「了解、LCL電化。第一次接続開始」

 

 視点が変わり零号機内のシンジに移る。

 LCLが電化し、エントリープラグ内に周囲の光景が映し出される。

 シンジはLCL内で大きく息を吸い、吐き出した。

 

『どうシンジくん? 何か違和感はある?』

「……他人のエントリープラグだから違和感はありますよ、そりゃ」

 

 シンジはグッと、原作でシンジくんが言った『綾波の匂いがする』というセリフを堪える。

 シンジの言葉にオペレーターたちは、数値などをチェックするが何も問題はなし、オールグリーンであった。

 

『リラックスしていいわ。マヤ、問題がなければ第二次接続に移って』

『了解、第二次接続開始』

 

 零号機とシンジのシンクロが開始され、オペレーターとリツコが慌てて数値を確認する。

 シンクロ率50%、初シンクロでは破格の数値であり、現在のシンジと初号機とのシンクロ率よりも高かった。

 

『シンジくん、何か感じることがあったら何でも言って頂戴』

「……感じる、こと――――ッ!?」

 

 シンジは目を見開く。

 誰かが呼んでいる、そんな気がした。

 エントリープラグの先に誰かがいる……誰だ?

 一方、実験室で見守っていた者たちはパニックを起こしていた。

 勝手に第三次接続が開始されていたのだ。

 リツコが指示を出す。

 

「実験中止! エントリープラグを強制射出!」

「ダメです! 信号を受け付けません!」

「エントリープラグ沈下! プラグ深度が下がっていきます!!」

 

 モニターに表示されているインテリアが徐々に下に下がっていく。

 オペレーターたちが必死にキーボードを叩くが、まるでシンジを飲み込むかのようにプラグ深度は下がっていく。

 レイも臨時オペレーターとして席に座り、キーボードを叩きながらシンジに呼びかける。

 

「シンジ!! そっちに行っちゃダメだよ!!」

『ちょっと何が起きてんの!? シンジに何かあったの!?』

『三上くん!』

「アスカとレイはそのまま待機! アンビリカルケーブルを脱着させて!」

 

 ミサトはそう命令すると零号機の背中からアンビリカルケーブルが外れ、内部電源に切り替わる。念の為、内部電源にはほとんど電力を供給していなかったのが功を奏し、おおよそ一分しか動かない。

 零号機内で、シンジの頭の中に綾波レイの姿が流れ込む。

 今までシンジが見てきた綾波の姿が映し出されては消え、そしてまた別のが間髪を容れずに映り込む。

 あまりの情報の波にシンジは頭を抱えそうになるが、必死に操縦桿を握りしめ、拘束具を外して動き出そうとする零号機を止める。

 

「とま……れっ! 止まれよ!!」

 

 シンジが叫び、必死に機体を抑え込むが零号機は各部位に付けられた拘束具を無理やり外してしまう。

 その時、たしかにシンジには何かが聞こえた。

 

 ――――ナリマショ

 

「ッ!? こんのぉおおおおおっ!!!」

 

 操縦桿を握りしめ、シンジはエヴァの制御を気合で奪い取ると両腕を動かして首を絞める。

 高いシンクロ率のため、シンジの首が絞まるような感じがして徐々に息がしづらくなる。自分が動けなくなれば零号機の動きも鈍る、そう判断したシンジは躊躇なく自分(零号機)の首を絞め上げる。

 

「ゴヒュッ……がぁっ……」

「シンジくん!!!」

 

 外からはプラグ内はモニターできないが、突然首を絞め始めた零号機の様子に、悲鳴にも似た叫び声をあげる者もいた。

 

「シンクロ率60、70……ドンドン上がっていきます!! このままではパイロットが!!」

「全神経接続もカットしてるのに、エヴァからの侵食? ありえないわ!」

「シンジ!! 止めてよ!! シンジが死んじゃうよ!!」

 

 高いシンクロ率のせいで、ほぼエヴァの感覚とシンクロしてしまっているシンジは、もはや自分で首を絞めて自殺しようとしているのと同義だった。

 零号機が苦しむように身を捩らせて、両膝をつく。

 

「時間は!!」

「あと10秒!」

 

 全員が祈るように零号機を見守る。

 マヤのカウントだけが部屋に響く。

 

「5,4,3、2、1、0!」

 

 0の声とともに零号機の動きが止まり、崩れ落ちるかのように体を前のめりにして倒れ込む。

 ミサトの命令を無視して、救出班と救護班が即座に駆けつけ、零号機に取り付けてある手動のプラグ排出レバーを捻じり、エントリープラグを排出させる。

 すぐさまエントリープラグから出されたシンジだったが、意識がないのかぐったりとした様子で救護班に抱えられる。

 

「状態は!」

『大丈夫です! 意識がないだけで問題はありません!』

 

 その言葉に、ミサト含めた全員が安堵の息を吐く。

 リツコはすぐにオペレーターたちに命令する。

 

「零号機からのデータをすぐに洗い出して!!」

『了解!』

 

 オペレーターたちがデータの洗い出しに向かうと、リツコとミサトは部屋の外に出て今回のことについて話し合った。

 

「何が起きたの?」

「……エヴァがシンジくんを欲しがった。状況だけ見るならそうなるわね」

「……前から聞きたかったんだけど、エヴァって何よ」

「…………」

 

 ミサトの厳しい瞳に、リツコは涼しい顔で応える。

 ミサトは言葉を続ける。

 

「最初はシンジくんの想いに応えるものだと思ってたわ。けど今日のは違う、一歩間違えればシンジくんが取り返しのつかないことになってた。ねえリツコ答えて、エヴァってなんなのよ!」

「……人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器」

「そんなことが聞きたいんじゃないわよ!!!」

 

 リツコの胸ぐらをつかんだミサトは、激高するがリツコの表情を見てハッと冷静になる。

 唇から血が出るほど噛み締めたリツコに何も言えなくなってしまった。

 ミサトの手を払い除けたリツコは背中を向けて話す。

 

「さっきの答えで今は納得して頂戴……今回のは技術部としても看過できない問題よ」

「……いつか、話してくれるのよね?」

 

 ミサトは背中を向けるリツコに言葉を投げかけたが、それを返すことなくリツコは歩いていった。

 

 

 

○○○

 

 

 

 

 パチリと目を覚ました。

 体が重い、視点が定まらないと体調最悪でオマケに吐き気も感じる。

 もう一度目を閉じて、息を吐いて目を開けると暗い天井が見えた。

 病室だとわかるのは、ラミエル戦後に慣れ親しんだせいかもしれない。

 ふと両手に何かを感じたので首を動かすと、レイとアスカが手を握りしめたまま眠っていた。

 どういう状況なのか、全く……いや思い出してきた。

 零号機の暴走、ということは覚えていた。

 だがただ拒絶されて意識を失うだけ、そう思ってたのに零号機はまるで俺を無理やり取り込もうとするかのように、強制的にシンクロをしてきた。

 無理やり一体化する感覚というのは説明するのが難しいが、二人三脚で無理やり引きずられるような感じ? かな? 多分。

 アレほどまでの一体感は初号機に乗っていても中々感じられなかった。

 首を絞めたのはやりすぎだったかもしれない。今もちょっと違和感あるもん。大丈夫だよな?

 

「シン、ジ……」

「マ、マ……」

「……ごめんな」

 

 泣き腫らしたのだろう、二人がうつ伏せている布団は湿っていた。

 心配をかけてしまってごめんと心の中で謝る。

 あのとき、零号機での中で聞いた言葉を思い出す。

 アレはこう言っていた。

 

 ――――ヒトツニナリマショ。

 

 ニタリと綾波に似た何かが笑った気がした。

 嫌悪感しかなかった、ふざけるな、てめえなんかとなるかと反骨精神で機体の制御を無理やり奪って首を絞めてやった。

 ……間違いなく、零号機のコア、なんだろうなアレ。

 零号機のコアについてはなんの情報もない。というか明確にエヴァのコアで判明してるのは初号機は碇ユイ、弐号機はアスカのお母さん……の魂の一部だけ、あとは不明なのだ。

 だが、あの人じゃないような雰囲気、そして綾波に似ていた顔立ちに俺は一つの仮説を立てた。

 

「……アレか」

 

 第二使徒リリス、その魂の一部じゃないかと思う。

 アスカのお母さんを例に、魂が分裂することはあると思う。一部が零号機に、残りが綾波レイに宿った……証拠がないから本当に仮説だが。

 ただ、だとするとアイツが俺を取り込もうとした意味がわからない。

 アニメではシンジくんを拒絶して、レイを殺そうとした……まぁ、ミサトさんの推測だからわからんし、これ以後はあんまり零号機がピックアップされることもなかったから、マジで謎が多い。

 ……ダメだ、考えると頭が痛くなってきた。

 ふと、喉が乾いたと思い周囲を見渡して――――悲鳴を上げるところだった。

 じっと椅子に座った綾波がこちらを見ていた。

 

「……」

「……」

 

 叫ばなかったのはそこまで元気がないのと、こちらを見つめる綾波の瞳に光るものが見えたことに気づいたからだ。

 ……泣いてるのか?

 そのまま無言で見つめ合っていると、綾波がギュッと拳を握って呟いた。

 

「ごめん、なさい」

 

 申し訳無さそうに俯く綾波に俺は驚いた。

 ここまで感情が育っているとは思ってなかったからだ。

 最近、クラスメートに挨拶したり、赤木さんと話す姿は見ていたが……なんかこう、子供の成長を見守る親ってこういう気分なのかと思う。

 

「気にすんな、俺は生きてる」

「……皆、心配してたわ」

 

 そっかと俺は笑う。

 嬉しい気持ちと死なせてくれという気持ちが湧き上がる。

 最近、もう隠し切れなくなった気がする。

 アスカとああいうことをして、レイともあんなことがあって……どこかで俺の精神が狂ってしまったのだろう。

 弱いなぁ、俺って。

 あの落下する使徒を相手にした時は誰でもかかってこいって思ったのにな。

 

「お腹、空いてる?」

「空いて……」

 

 ないと言う前にグーとお腹のなる音が響く。

 ……恥ずかしさでくっそ気まずい。

 どんなに落ち込んでも腹は減るんだな。

 

「……その、これ」

「弁当箱?」

 

 銀色の弁当箱を見せる綾波に、俺はガバっと体を起こす。

 ただ両手は二人が握りしめてるから……どうすっべ……どうすっべ。

 

「……食べさせてあげる」

「ほぇ?」

「口、開けて」

 

 弁当箱を開けると不格好なおにぎりが見えた。

 ……どうやら手作りのようだが誰が作ったんだ?

 そんな疑問を覚えつつも、綾波は一つおにぎりを取ると俺の口へ運ぶ。

 俺は口を開けて、おにぎりにかぶりつく。

 うん、おい――――ンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンマッ!(心の悲鳴)

 

「むぐぅっ!?」

「三上くん!?」

 

 口の中いっぱいに広がる塩辛さ。あぁ塩を入れすぎたのか、と思う俺は吐き出しそうになる。

 その時、綾波の表情が見えた。

 泣きそうな顔、それを見た俺は気合でご飯を咀嚼し飲み込む。

 

「み、三上くん」

「おかわり」

「へっ?」

「だから次はよ、はよ」

 

 オープンマウスして催促する。

 綾波は驚きながらもおずおずと口に運ぶおにぎりを口に入れる。

 しょっぱい……けど懐かしい(・・・・)味に俺は苦笑しながら咀嚼して食べ続ける。

 十個程だろうか、海苔も具もないおにぎりを食べ尽くした俺は、綾波に持ってもらったコップの中の水を飲みきって、綾波に言う。

 

「次からは味見してからな」

「……ご、ごめんなさい」

「いいよ、懐かしかったし」

 

 俯く綾波に、俺は笑いながら言う。

 綾波は顔を上げて、首をかしげる。

 

「懐かしい?」

「昔さ、レイも料理へったくそでさ。よくとんでもない料理食わせてもらったもんだよ」

 

 最初に食べさせてくれたのがおにぎりだった。

 まぁ、当時は美少女の手作りだヒャッホイ!! ンアーッ!?(塩分過多)で吐き出しちまったけどさ。

 あのとき泣きそうな顔をしていたレイを思い出してしまった。

 最初から料理が美味かったわけではない。多くの失敗で(主に俺の胃が)犠牲となった。その結果、今のなまらうんめえ料理が食えると思うとアレもいい思い出だと思う。

 

「まぁ、腹は膨れたよ、あんがと」

 

 そう綾波に笑いかけるが、綾波は再度俯いてしまう。

 どうしたのかと思ったが、俯きながら綾波は言う。

 

「最近、変なの」

「……」

「三上くんと手を繋ぐとポカポカする。けど三上くんが他の人と話したり、手を離したりするとチクチクするの」

 

 そう言った綾波はスカートを握りしめて、肩を震わせる。

 

「私……わからないの、これがなんなのか、わからないの、わからなくて――――」

 

 体を震わせる綾波に、俺は笑いながら応える。

 

「寂しいってことだろ」

「寂しい?」

「あぁ、人と繋がり始めたから、かまってもらえなくて寂しく感じてるんだよ」

 

 本当に親なんじゃないかと思うほど、俺は綾波の成長具合に感動していた。

 多分だけど、綾波にとって俺は親みたいな存在なんじゃないかと思う。子供の時よく手を握ってと言うときがあった。

 安心できるし、手を握ると心が温まる気がするのだ。

 そして離されたら寂しくて、悲しく思う……ホント、レイそっくりだな。

 

「綾波、それは悪いことじゃない。寂しいって思うのは間違いじゃないし、それが正しいんだ」

「……正しい?」

「そうだよ。レイもそうだったからな」

 

 綾波を見ていると、ホント出会ったときのレイをよく思い出す。

 おずおずと手を伸ばして、離したら絶望したかのように顔を真っ青にする。

 でもまた握るとぱぁっと顔が明るくなって笑ってくれる、そんなレイに俺は救われたんだ。

 絶望しきった世界でも、俺に縋ってくれる存在がいてくれると思えたから、だからもうちょっとだけ生きようと思えたから。

 

「まぁ、レイみたいにストレートに表現されたら困るけど寂しいなら寂しいって言えよ?」

「……寂しい」

 

 その言葉を言うと綾波はポロポロと無表情のまま涙を流していく。

 い、いやちょっと待って、待ってクレメンス!?

 

「綾な……いや、レイ(・・)

「あっ」

 

 レイとアスカの手を離して、泣いている綾波の頭を撫でる。

 ゆっくりと落ち着かせるように頭をポンポンと叩いて落ち着かせる。

 

「ごめんな、泣かせて」

「これが、涙……私、泣いてるの?」

「大丈夫、大丈夫だから……」

 

 昔みたいに落ち着かせるよう(・・・・・・・・・・・・・)に頭を撫でる。

 レイ(・・)はこうすると落ち着くもんな。

 

「大丈夫、俺が守るから」

 

 決意するように俺は言葉を紡ぐ。

 あぁそうだ、レイ(・・)を守るんだ。

 そのために俺はエヴァに乗ったんだ……忘れるな、レイを守るんだ。

 全部のレイ(・・)を守りきってみせるんだ。

 

「だからさ、安心しろ。もう寂しくしないから」

 

 ギュッとレイ(・・)を抱きしめる。

 そうだ、俺がどうなろうと、どんなに傷つこうが守りきってみせる。

 だから大丈夫、大丈夫だ、大丈夫なんだから。

 

「俺は、頑張るから」

 

 だから俺を捨てないで、レイ(・・)

 




イロウルくん、ボッシュートになります。
ぶっちゃけ活性化する前に溶鉱炉にでもぶちこめば死ぬじゃろ! と出番スキップ。介入のしどころさん!? がないのでしゃーなし、切り替えていこう。
零号機に関しては、正直推測も兼ねて好き勝手やった。ちなみにレイの気持ちがダイレクトに伝わっていたからシンジやんけ!! 一つになろう……ファッ!? 拒絶されたもうまじ無理とすねて素直に停止した模様。万が一、シンジが抵抗しなかったら地下のリリスちゃんのところまで行って、予定外のサードインパクトしてました。
シンジに関しては、アスカとレイの気持ちから逃げたくてしょうがないけど逃げたらどうにもならないから頑張るとかなりのストレスが溜まってる模様。さらに零号機による精神汚染で精神が追い込まれて、綾波の涙であーもうめちゃくちゃだよ。
ちなみにアスカとレイはシンジと綾波が話してる辺りから起きてて、めっちゃ会話聞いてます。

ほんへ完結後、ifストーリーやその後の話とか見たい?

  • いいゾ~これ(両方ともIKEA)
  • (ifストーリーだけ)INしてください?
  • (その後の話だけ)はい、よういスタート
  • どうしてやる必要あるんですか?(現場猫)

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